「おい、マツリカ」
連休初日マリアは起床直後あることに気付いた
「なんですか?」
「あの汚物は何処に行った?」
そう、いつもこの時間帯ならアホ面のかなこがベッドで寝息をたてているはずなのだ
しかし、かなこのベッドは空だった
「誰かの寝込みでも襲いに行ったのでは?あの変態ならやりかねないかと」
「確かにな」
通常の女学院では有り得ない会話だが、かなこに限っては有り得てしまうところがかなこのかなこたる所以である
「おや?マリア様」
「何だ?」
部屋を見回していたマツリカがかなこの机に何かを見付けた
「これは…置き手紙のようですね」
「置き手紙だと?」
かなこの机の上にはカワイイピンクの紙に何とも女の子らしい字が書いてあった
マリアは何か腹が立ったがとりあえず文面を見てみると
そこには
『ちょっとサチさんと熱海まで行ってきます。ε=ε=┏( ・_・)┛明日の昼までには帰ります。(`∇´ゞ心配しないでね。(^з^)-☆Chu!!
追伸
ただの普通の旅行です。!(b^ー°)』
とあった
「……無性に腹が立ちますね」
「ああ、この顔文字が怒りを殺意までに昇華させやがる、しかも最後の一行と端の赤い染みが全てを物語ってるな 」
マリアの指摘の通り手紙の端には赤い染みが出来ていた
百パー妄想したかなこの産物であろう
「それにしても、あの変態とうとうやりやがりましたね」
「ああ、一番攻略しやすそうなのを狙い撃ちにしやがったな」
「どうしますか?マリア様」
「ハッ、どうもこうもこの天の妃から犯罪者を出すわけにいかないだろうが」
「それでは?」
「当然連れ戻す、そして犯して殺してもう一辺犯す」
「それではマリア様が犯罪者です」
「そうだな、なら全裸の鼎神父に添い寝でもさせるとするか」
「それがいいでしょう」
「3分で出発するぞマツリカ」
「かしこまりました」
こうしてかなこは晴れて追われる身となったのであった
その頃の電車内のかなこ達
「びっくりしたよ〜、かなこちゃんいきなり二人で熱海に行こうなんて言うんだもん」
「ゴメンねサチさん」
電車に揺られながら仲良く肩を並べて座る二人の足元には一泊分の着替えなどが入った荷物がある
しかし、何故かかなこの荷物サチの五倍はあった
「かなこちゃんの荷物スゴイ量だね、何が入ってるの」
「とりあえずウォーターベッドとかコスプレ衣装とか」
「そんなの何に使うの?」
「サチさん、実は熱海へ来た理由なんだけどね、あたし妹がいてね、その妹が熱海の金目鯛が大好きなの」
サチの疑問を見事に流したかなこ
そして、かなこには妹がいる
金目鯛が好きかどうかは定かではない
「へぇそうなんだぁ、でもそれならわざわざ熱海まで来なくてもいいんじゃないの?」
「確かにそうだわ、だけどねサチさん、いつも迷惑ばかりをかけてしまう不甲斐ない姉から愛する妹への贈り物なの、自分の脚で探して自分の眼で選ぶ、それは当然だと、そうあるべきだと思わないサチさん」
「た、確かに…」
サチはかなこの嘘っぱちに胸をうたれた
「サチさんやキリさんがユズルさんへの贈り物を通販とかで済ませないのと同じよ」
ニッと微笑むかなこ
マリアがいたら肩パンとかされそうな顔である
「かなこちゃん、あたし感動しちゃったよ!」
感極まったサチは瞳を輝かせかなこの手をギュッと握る
だがかなこの表情いつものようには崩れなかった
「アハハ、照れちゃうな〜、あとサチさんを一緒に連れてきた理由なんだけどね」
「うん」
「まぁ今まで色々迷惑かけたし色んな物貸してもらったし、せめてもの恩返しと思ってね、でも妹のついでみた形になっちゃってごめんね」
もはやそこにいるのは変態ではなかった、そこには親愛すべき友がいた
少なくともサチにはそう見えた
しかし実際いるのは変態の皮を被った超変態である
「あ、ありがとうかなこちゃん!あたしすごく嬉しいよ!」
「サチさんが喜んでくれならあたしも嬉しいわ、ありがとう」
「かなこちゃん」
こうしてサチはかなこと肩を並べ電車に揺られ行くのだった
かなこの射抜く眼光吹き出る鼻血つり上がる口の端吐き出される生温かい息吹ゴクリッと鳴る喉にも気付かずに……