「おい茉莉花、脱げ」
なんてことのない土曜の夜。
二人きりの部屋で、前触れもなく突然主がわけのわからないことを言い出す。
この不躾な主人には様々な無理を要求されてきたが
今回ばかりはいきなりの要求に一瞬思考が止まり、数秒間立ち尽くしてしまった。
「何を冗談ぬかしてやがりますか、この変態野朗」
いつものようにきつい言葉で返す。
そう、何かの冗談なのだろう。
こう答えれば向こうもきつい言葉で返してくる。
毎日行われるキャッチボール。普段ならそこで止まるはずだった。
「冗談じゃねえよ。脱げ」
「……」
予想外の暴投。
さらに頭は混乱するが表情は崩さない。
主導権を握るためのアパシー。
そんな風に何年も過ごしてきた
しかしそんな「いつもの茉莉花」を見て、主は苛立った様子で言葉を放つ
「脱ぐの。脱いでセックスする。命令。オーケー。分かったなら脱げ」
「……」
「……なにだんまり決めてんの?文句があるなら強引に脱がすよ?」
鋭い目。
ああ、なるほどそういうことか。
欲情してやがるのだ、この猿は。
きつい言い方をしているが、言っていることは「ヤらせてくださいお願いします」
なるほど、美少女の仮面を被っておきながらこいつも男なわけだ。
しかしどんな野生の猿じみた命令でも主の命令は絶対
うらわかき少女の肉体に己の性欲を押し付けようとする主の頭の悪さに
深いため息をつきながら、茉莉花は自分のメイド服のジッパーに手をかける。
そのまま茉莉花の細く、長く、しなやかな指先はエプロン、ジャンパースカート、ブラウスとメイドを構成する布切れを一枚一枚剥いでいく
その手の人が見たら喜ぶようなメイド少女のストリップショー。
しかし主はその様子を不満げに見ていた
「おせーよ、バカ」
椅子に座りながら、言い放つ。