はじめは、ほんの戯れのつもりだった。  
なのに、何故。  
「んッ…かなこやめ…ァあんっ」  
「やめないよ…?だって鞠也、すっごく可愛い」  
男が攻めで女が受けで。これは全世界共通の暗黙のルールのはずだ。なのに何故オレはこのデカチチ女に組み敷かれているのか。  
「あッ、ざけん…なあっ、ふ…やあぁっ…」  
自身はこんなクソ女の口に含まれ、はしたなく嬌声をもらして。―――屈辱だ。  
 
 
 
「ねぇかなこさん、あなたもご一緒にいかが?」  
それはいつもの、ボルドーの赤と言う名のトマトジュース。就寝前に一杯やるのが日課だ。我ながら優雅な嗜みである。  
今日はなんだか気分が良いので、グラス片手にクサレ庶民…もといかなこに声を掛けてやることにした。  
「またそんな嘘…未成年なんだからやめなよね」  
「まあ…かなこさんたら、私が嘘を吐いているとでも?」  
「だってどう見…ん!ぅ…」  
 
「オレ様がくれてやると言ってんだ、飲みやがれ」  
「んー!んぅ…っは、」  
庶民のくせに、口だけは達者なヤツ。それを塞げば少しは従順になるかと思いきや、暴れ出すもんだから厄介だ。  
「どうなさったの?お口に合わなかったかしら」  
「当たり前だよ!やっぱりお酒だし」  
かなこがあからさまに苦い顔をする。もっとも、口内は本当に苦いのだろうが。まだまだガキだな。  
「は、オレはおまえと違って大人だからな」  
「なっ、わたしの方が年上だもん!」  
そう主張するかなこにイラッとする。ミジンコの癖に生意気だ。せっかくの気分が台無しになってしまったじゃあないか。  
「ほー?」  
せっかく遊んでやろうと思ったのに、この女。  
「じゃあ、こんなのはどうだ?」  
 
「今度はなに、!」  
ぐ、とかなこの項を掴んで引き寄せ、唇を重ねる。  
「んぅ…ふ…っ、は、ぁ…何、すんのよぉ」  
「どうだ?オレ様の愛らしい唇の味は」  
苦いとは言わせない。なぜならオレ様の唇だからだ。国宝級の代物である。  
「すごく…美味しいです…じゃなくて!もう、どういうつもりかって訊いてるの!」  
「やだ、かなこさんたらお顔が真っ赤」  
「じんましんだよ、ばかぁっ」  
素直な女だ。体は正直とは、このことか。かなこのこういう所は嫌いじゃない。  
「もう、鞠也。ちゃんと答…え?」  
更に言うと、こいつのデカチチも、嫌いじゃない。だが。  
「…誰が、バカだって?」  
今の発見は聞き捨てならない。しつこいようだが、なぜならオレ様だからだ。  
「やだ何…こ、言葉の綾じゃない」  
「二度とそんなこと言えなくしてやるよ」  
この鞠也様を侮辱した罪は重いんだぜ?――言いながら、かなこの上着に手をかけた。少しは楽しませて貰わなくっちゃ、なあ?  
 
「やッ、だってばあ!鞠也っ」  
かゆい。全身が、かゆい。わたしが男に触れるとじんましんが出るって知ってるくせに、鞠也は意地悪だ。でもこれは、意地悪なんてレベルじゃない。  
「うるさい」  
「ん…ふ…っ」  
何が起きているのかさっぱり解らない。何故かわたしは今、ベッドの上であられもない姿を晒している。もちろん自らこうなった訳ではない。鞠也の手によってはぎとられたパジャマや下着は床に散らばっている。洗い立てのシーツもぐちゃぐちゃだ。  
「んんっ…ぁ」  
抵抗すれば口を塞がれる。他人の舌が口内に侵入するなんて、初めての体験だった。気持ち悪い。それよりも、もっと気持ち悪いのは、鞠也の手。  
「いい加減大人しくしろ、クソ女」  
 
「はぁっ…だってこんなの、やめ…」  
いや、鞠也の手自体はすごく綺麗なんだけど。いつもだったらそれだけで鼻血モノだ。その白いな掌が、細い指先が、わたしの乳房を弄ぶ。舌が這う。鞠也が少しでも動く度に、わたしの身体はびくりと反応する。今まで感じたことのない感覚だった。  
「へぇ…胸だけでこんなに感じるのか」  
「感…っ?そんなんじゃな…ぁ」  
そうは言ったものの、自分でも理解していた。わたしは鞠也のこの横暴な行為に、感じてしまっているのだ。その証拠に、わたしの秘部は熱くなっていく。目頭も、同時に熱くなった。  
「ね…っ鞠也、やめよう…?」  
「いやだね」  
「だから、ごめんなさいってばぁ…謝るから、ね…?」  
「そういう事じゃねぇよ」  
 
わたしの懇願はあっけなく却下される。その代わり、鞠也の指が次第に下腹部へと伸びていく。抵抗しようにも、力が入らない。全身の力が抜けてしまっている。お酒のせいだろうか。  
「元々、興味あったしな。デカチチにも…お前にも」  
言うと、鞠也の指がくちゅりと音を立てた。  
「ぁあッ!やだ、まりやァっ」  
「嫌がってるくせに、カラダは正直だな?あァ?」  
くちゅ、くちゃ、その動きはエスカレートしていく。  
「あっ、ん、やぁ…ッ」  
「この、」  
鞠也の唇が耳元で囁く。指は激しさを増すばかりだ。  
「ド淫乱。」  
「ああぁっ…!」  
そう言われた瞬間、わたしは達してしまった。子宮がひくつくのを感じる。気持ち良いのか悪いのか、全然解らない。  
「なんだよ、もうイッちまったのか」  
呼吸が、苦しい。頭がくらくらする―――  
 
 
まさか、指だけでイくもんだとは思わなかった。いや、それはコイツが単に淫乱娘だからなのか。あんなにいやらしい声をあげて、アソコをひくつかせて。かなこの身体は、オレの想像以上だった。  
「おい、どうした。オレ様の指テクはそんなに良かったか」  
更にいじり倒してやろうかと思ったが反応が無い。失神するほどだったのか?このヘンタイならあり得なくもないが。ともかくこのままでもいられないので、起こしてやろう。なんて慈悲深いんだ、オレ様は。  
「かなこ、起き――ぅわっ!」  
かなこを揺さぶろうとしたら、逆に手を取られた。ぐりんと半回転し、組み敷かれる形になる。  
「お前、起きてたのか」  
「…鞠也ぁ…」  
とろんとした目付き。寝ぼけているのだろうか。顔が真っ赤に染まっているのは、先ほどの名残かじんましんのせいか。そういえば、酒も飲ませたんだった。  
「すごく、気持ち良かったよ…鞠也の指」  
 
ヤケに素直で気色悪いが、褒められるのは嫌いじゃない。  
「当たり前だろ。オレ様…、の!?」  
「だから、今度はわたしが…してあげるね」  
そう言うとかなこは、オレのスカートをまくり始めた。  
どこ触ってんだてめぇこの酔っ払い、ふざけんじゃねえおまえなんかの手を借りずともオレ様は…言うか言わないかのその瞬間、  
「ひゃあっ」  
下着もずり下ろされ、下半身が丸出しになってしまった。すかさずかなこの手が伸びる。  
「わ…鞠也っておちんちんも可愛いんだね」  
「てめ…どこ触って、んっ」  
「すごく固くなってる…」  
「やめろって…あッ、やぁん…」  
我ながら気色悪い声を発してしまった。いつもの癖で、つい女みたいな声色になってしまう。  
「は、ぁ…おま、寝ぼけ…ッ」  
「起きてるよ?それに、鞠也もしたんだもん。おあいこ」  
「誰がおまえなんかあっ、やん…ああっ」  
 
そう、オレ様とこの虫けらとが対等になるなんて有り得ない。ましてや、オレが下になることなんか、例え太陽と月が入れ替わろうともあるはずがないのだ。  
「んッ…かなこやめ…ァあんっ」  
だから、この鞠也様の麗しいムスコがこんな女の口に含まれるなんざ、あっちゃあならない。  
「やめないよ…?だって鞠也、すっごく可愛い」  
はずなのに。  
「や…まっ、茉莉花!いるんだろ出てこい!」  
「はい、なんでしょう」  
ひらりとスカートを翻して、茉莉花はやはり窓から現れた。毎度ながら、一体どうやってそんな場所から…今はそんな未知の世界を解明している場合ではない。  
「見て分かれ!っ…ぁ、助けやが…れっ」  
まずはこの情況を、打開しなければ。  
「嫌です」  
 
 
「あんっやあ…そ、な…あぁッ」  
こんばんは、茉莉花です。  
今そこで醜くはしたない下品な声を上げているのは私の主人・鞠也様です。どうやらド変態でド淫乱のルームメイト・かなこ嬢が酒に酔った勢いで鞠也様を手籠にしようとしている模様。  
助けを乞われて来たはいいものの、当の主人は股間をまさぐられてむしろよがっているではありませんか。助ける以前の問題です。  
「ん…ふぁ。茉莉花さん、こんばんは」  
「どうも、メスブタ」  
そんな汚いモノをしゃぶっておいしいのでしょうか。さらにはそれに感じている鞠也様も。理解に苦しみます。…けれど。  
「鞠也様」  
 
私も鬼じゃありません。  
「床に頭をこすりつけ哀願されれば訊き入れてやらないこともありませんが」  
「ばッ…誰がする…かっ、アぁ…まつりかァっ…」  
せっかく人が最低条件を提示してやったというのにこのクソ野郎。ハゲてしまえ。  
「出来ないのなら仕方ありませんね」  
思えばこいつからはいつもひどい扱いばかり受けて来ました。心労がたたってげっそりしそうです。ここらでひとつ、弱味を握っておくのも良いかも知れません。  
「ぁんっ…茉莉花…なぁ、っ」  
ふと机に目をやると、なんとも都合良くハンディカムが。これで鞠也様をとらえるとでもしましょう。  
「どうしたの?鞠也…あっ、もっと吸って欲しい?」  
 
「んな訳あ、る…ァあんっやあ、だめっ…あ!」  
鞠也様の身体がびくりと跳ねました。余程強く吸い上げられたのでしょうか。  
「んッ…てめッなにして…!あ…んぁあ」  
「私のことはお気になさらず。」  
あんなにお顔も赤くして、呼吸を荒げて。まさかこのうんこ野郎がこんなに淫乱だとは。  
「鞠也様、いい顔してますよ」  
「うん…ほんと可愛いよ…鞠也。もっと見せて…」  
メスブタと初めて意見が合ったようです。鞠也様がお顔を手で隠そうとなさるので、仕方なく私が加勢することにしました。これでばっちり全身くまなくビデオに収められそうです。  
「あッ、ざけん…なあっ、ふ…やあぁっ…」  
まったく、世話の焼ける主人で困ります。  
 
 
 
 
「ふあぁ…鞠也、おはよう。…どしたの?」  
「どしたのじゃねぇよこのクソアマ!!」  
「え?わ、わたし何かした!?今日はまだなにも…」  
「今日じゃねえゆうべだ!あんなこと…っ」  
「あんなこと…?」  
「おま、覚えてないのか!?」  
「え…あ!そういえば鞠也、わたしにお酒飲ませたでしょ!弱いんだから止めてよねっ」  
「…てめ…」  
「鞠也様、ご安心ください。証拠ならここに…」  
「なっ…おい待ちやがれ茉莉花!ぶっ殺す!!」  
「??朝から元気だなあ…」  
 

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