「ふん!・・・ふん!・・・ふん!・・・ふん!・・・ふん!・・・ふん!・・・ふん!」
狭いアパートの一室、何かを堪えるような声が木霊していた。
その部屋の中は汗の臭いが充満し、ある種独特の空間を形質していた。
「せい!・・・せい!・・・せい!・・・せい!・・・せい!・・・せい!・・・せい!」
その部屋は異様なことに、ベットとテレビと小さな冷蔵庫、立てかけられたちゃぶ台と
部屋の4分の1を占めるプロテインとワックス、そして壁一面に張られた筋肉隆々のボディビルダーのポスターだけだった。
「212!・・・213!・・・214!・・・215!・・・216!・・・217!・・・21」
部屋の中央、そこを中心にして絶対空間を作り上げている人物はかれこれ1時間近く腕立て伏せを続けている。
その体は汗にまみれ、どれだけ過酷のトレーニングを積んでいるのかが分かり、体中からうっすらと湯気を噴出している。
「は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!・・・は!」
恐ろしいことにこの人物、インターバルを間にはさむこともなく、休憩なしで続けているのだ。
正気の沙汰とは思えない、ましてや、自ら体を苛め抜くどころか痛めつけていると言っても過言ではない訓練だった。
「ふ!・・・ふ!・・・ふ!・・・はあああ!」
最後に大きく体を持ち上げて深く息を吐き、そのまま倒れこむように仰向けになった。
その顔はには目標を成し遂げた達成感が刻まれ、長時間の運動による紅潮により、全身がうっすらと肌黒く見える。
しばらくその人物はそのまま仰向けになっていたが、呼吸が整ってくると、むくり、と起き上がった。
そして、長時間のトレーニングにより力の入らない四肢に気合を込めて立ち上がり、一角を占めるプロテインを一つ手に取った。
「え〜っと、たしかここに・・・・・違う。それではここに・・・・・・あった」
その人物は何度かプロテインを手にとっては戻すことを繰り返していたが、目的の物を見つけたようだ。
人物は早速プロテインを開けると、中に入っている写真を取り出した。・・・・・・写真?
「ああ・・・護くん。どうして君は、そんなに僕を惑わせるんだい?・・・正直言って、もう我慢できないよ」
その男、の目に暗い欲望があった。
「護くん、君がいけないんだよ。君があんまりにも可愛いから、僕のおにんにんも我慢できなくなっちゃうよ」
男・・・「八木浩介」の孤独な戦いが始まる!