よく晴れた朝、今日も私は学校に行くアキちゃんを、玄関まで見送ります。  
 
「いってらっしゃいアキちゃん。 今日のお弁当はドラミちゃんよ」  
「…それで昨日食い入る様に昨日ドラ●もん見てたのか…」  
 心なしかアキちゃんの顔は曇り気味に見えたので、ちょっと心配になります。  
「どうしたの?食欲ない?風邪かしら…」  
「いや、大丈夫。大丈夫だから」  
 アキちゃんのおでこに手を当てると、ぱっとアキちゃんは慌てたように後退りました。  
「そう?熱はないみたいだけど…少し顔が赤いわ」  
「ほんっっとに大丈夫だから!! …じゃあいってくるよ和美さん」  
 ガチャッ…バタン!  
 
 アキちゃんは素早い動きで鞄にお弁当を詰め込み、いつもは見せない素敵な笑顔を浮かべながら、なんだか慌ただしく出ていってしまいました。  
 まだ時間に余裕はあるのに…。  
 玄関の靴を並べ直しながらそんな事を考えていると、ふとさっきのアキちゃんの科白が思い出されました。  
 
『いってくるよ和美さん』  
 
 あまり見せない笑顔のせいか、(妙に強張って見えたけど) その表情と言葉に、遠く懐かしい記憶が浮かんだのです。  
 
『いってくるよ和美』  
『はい、いってらっしゃいパパ』  
 
 ほんとに短い間だったけど…あの人とそんなやり取りが出来た日々の事。  
 ……アキちゃんたら、最近ますますパパに似てきたわね。  
 くすりと笑みが零れましたが、同時に何とも言えない寂しさが込み上げてきました。  
「あなた…」  
 アキちゃんが出て行ってから、ほんの少しだけ、たまに感じる寂しさ。  
 今日はどうした事か、それをいつもより、一層強く感じてしまいました。  
 
 さみしい…今アキちゃんが側に居てくれたらいいのに…。  
 
 どうしようもない寂しさに、私は洗濯物を干すのも後にしてあの人の仏壇の前へ行きました。  
 写真の中で、アキちゃんのパパは優しく微笑んでいます。  
 
「あなた」  
 写真の前で目をつむって、そっと口付けると、ビリっと体中が痺れるような感覚に捕らわれて、ぱっと体を放します。  
「…んっ」  
 
 私はアキちゃんのママだけど、あの人の前では女でした。  
 寂しいという心を埋めようと本能が動いたのでしょうか。  
 きゅんと胸の奥をい抜かれるような感覚が体を走りました。  
「あ…」  
 私は…久々に自分が高ぶっていくのを感じました。  
 あの人が亡くなってから今まで……堪えられずにアキちゃんにバレない様に、何度か自分を慰めたけれど…。  
 今の私はこれまでで一番、あの人を求めていました。  
 
「ごめんねアキちゃん…」  
 
 良いママじゃなくてごめんなさい。  
 私はそっと自分の右胸を触りました。  
「ふ、あ…」  
 快感がじわりと襲います。そのまま両手でゆっくり揉み続けると、いつの間にか、私の手は頭の中であの人のものになっていました。  
『ここが…いいんだろ和美』  
「そうなの…あ…」  
 いつも私の大きな胸を優しく揉みしだいてくれて。『柔らかくて良い匂いがする』って言って…。  
「は、あ…。あなた…摘んで…なっっあぁあっ」  
 自分の両乳首を少し強く摘むと、強烈な痺れが全身を貫きました。  
 こりこりと押し潰したり優しく撫で回すだけで頭の中でスパークが起きます。  
「ひっ…あなた、もっと…もっとぉ…!」  
 喘ぎ続けて口を閉めるのも忘れ、つ、と涎が顎を伝い畳に落ちました。  
 
「あっふ…うっ…」  
 いつの間にか正座していたのが前のめりになって、私は仏壇の前に倒れ掛かる様にして中腰で胸を弄ってました。  
「ひんっ!」  
 更に体を動かすうちに右の踵が私の恥部に食い込み、縦に動かしより深く食い込ませると、新たな快感が招かれました。  
「ぁあっあああっんぁっ、あなた!好きっ…ぁああっ」  
 胸と恥部を腰を振りながら夢中で刺激し続けていると、頭の中でまたあの人の声が聞こえて来ました。  
『和美、足を開いてみせて。ほら、恥ずかしがらずに』  
「あ、んっ…はいあなたあ…」  
 私はようやく乳から手を放し、愛液でぬるぬるした下着を脱ぎさって、仏壇の前にいるあの人に見える様に大きく開きます。  
「みて、あなた…」  
 あの人が私のを見てる。  
「私を…愛して…」  
 どうしようもなく想いが溢れて、気付くと涙が一筋、零れ落ちていました。  
 
 涙など流してない…記憶を書き消すように、私はどぷっ、と中指と人差し指を自分のものに突き立てました。  
「ひっ…ぁああああっ!!はぁ…んあっ!」  
 それだけで軽い絶頂感が襲い、視界が歪みます。  
 ぬるりとした愛液が指をじゅぷっじゅぷっと激しく出し入れする度に飛び散り、畳を汚していきます。  
 あとで掃除しないと…。頭のどこかでそんな考えが浮かびます。  
 
 そして。  
 じゅぷっっじゅぷっ、びちゃっじゅぽ…。  
『愛してるよ和美』  
「あ…あっ、はぁああああああああんっ!!!」  
 プシュッ!!  
 
 あの人の声がして、私の指が私の小さな豆を摘んだ途端、私の意識はスパークして。  
 
 何もかもが真っ白になりました。  
 
 
「ふあ…?」  
 
 目を覚ますと、午後3時を回っていました。  
 私は約7時間も眠ってしまっていたのです。  
「さんじ…」  
 すっと頭の血が引きました。  
「たっ大変!!」  
 お洗濯も買い物もお掃除もなんにもしていません!  
 それどころかもうすぐアキちゃんが帰ってくるというのに晩ご飯の支度さえも出来ていないのです。  
「あああっどうしましょどうしましょ…っ!」  
 
 ガチャッ  
「ただいまー」  
 
「アッアキちゃん?!」  
 こんな日に限って、アキちゃんがいつもより早く帰って来てしまいました。  
 とととっ  
 慌てて玄関に駆け付け、アキちゃんを見つけるや必死で事態を報告します。  
「アッアキちゃんおかえりなさい! あのね、ママ今日いっぱい寝ちゃってお洗濯もお掃除も晩ご飯もしてないの! ほんとにごめんね、私ママ失格だわ…!」  
 アキちゃんは…なぜか無言でした。  
 
「…お、怒ってるの?」  
「…怒ってない」  
 
 アキちゃんは何か険しい顔で色々考えていたようでしたが、結局なにか苦渋に満ちた表情で、一つ深く頷くと言いました。  
「掃除洗濯は明日でも出来る。飯は出前にしよう。和美さん電話しといて」  
「うん!…アキちゃんほんとに怒ってない?」  
「ああ、だからちょっと退いてくれ。二階に上がるから」  
 そういうとアキちゃんはさっさと自分の部屋に入っていってしまいました。  
 一応、怒っていないようで良かったわ。今度からこんな事ないようにしなきゃ!  
 でもなんでアキちゃん、ズボンの前に鞄当てながら上がって行ったのかしら。  
 …もしかしたらあんな動きが流行ってるのかしら。 若い子の流行りってすぐ変わって着いていけないわぁ…。  
 
 
 
 自分の部屋に籠った俺はベッドに座り込み、早々にズボンのチャックを下ろした。  
 ぱんぱんに怒張し屹立したそれは、勿論和美さんによってもたらされたものだった。  
 
「…勘弁してくれ」  
 なんだあの姿…。  
 
 乱れた髪にしわくちゃの衣服、極め付けは…右足首にぶら下がっていた下着と、そこから香り立つ女の匂い。  
 
「ほんとに勘弁してくれよ…和美さん…」  
 呻いてみても、和美さんが聞き入れる筈もなく。  
 
 こうしてアキトのストレスと欲求不満は、日々溜まっていくのであった…。  
 
 

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