「ただいま…」
五代はいつもより早く一刻館(めぞん一刻)に帰りついたが、
そのせいかいつも迎えてくれる管理人さんが
いないことに違和感を感じた。
(だれも…いないみたいだ…
管理人さんは買い物かな…?)
と考えていると管理人室からかすかな物音がする。
(どっ…泥棒…?)
五代はおそるおそる、管理人室に忍び足で近付き、
管理人室のドアに耳をあて、中の様子を伺う。
「んっ…あぁ…はぁ…」
(管理人さんの声だ…もしかして…)
五代は静かにゆっくりと管理人室の扉を開けてみる。
すると五代の目に信じられないものが飛び込んできた。
「あぁ…惣一郎さん…やぁ…んっ!」
目の前には惣一郎の名を呼びながらオナニーを
している響子の姿があった。
響子はバイブを手に持ち、自分の股間に
激しく出し入れを繰り返している。
「ぁぁ…惣一郎さん…あっ…あっ…」
「惣一郎さん…ぁぁ…あなたが…いないと…
やっぱり…一人じゃ…逝けない…はぁ…」
響子は瞳に涙を浮かべていた。
(管理人さん…)
五代は、惣一郎のことを考えながら響子が
オナニーしていることに、激しい嫉妬と、
自分のふがいなさを感じ、呆然と立ち尽くしていた。
だが、そんな気持ちとは裏腹に五代の股間は
ギンギンに固くなり反り返っていた。
ジリリリン♪
突然、管理人室の電話が鳴る。
響子は入口付近にある電話を見ると
ドアの辺りに人影があることに気付く。
「いやっ…!」
響子はすぐ近くにあったタオルケットで下半身を隠した。
「五代さん…なんで…こんな…早い時間に…」
「管理人さんこそ、なんでそんなこと…」
響子はそう言われ、顔が真っ赤になる
「いや…その…あの…」
「正直…ショックです…」
五代にそう言われ、響子も癇にさわったのか、
ムカッとした顔で切り返した。
「あたしだって一人の女ですから…
人並みに性欲だってあるし…淋しい時だって
あるんです!
五代さんが考えてるような天使みたいな
女じゃないの!」
二人の間に沈黙が流れる。
…
「軽蔑…した…?」
涙目になりながら響子がそういうと五代はこう答えた。
「いえ…違うんです…
俺がショックだったのは、管理人さんが
惣一郎さんのことを思いながら…あの…その…
してたことで…
頭では解ってるんですが…心が…ついていかなくて…」
「俺じゃ…駄目ですか…?」
「えっ?」
そういうと五代はズボンとパンツを脱ぎ、
下半身をあらわにした。
(ご…五代さん…)
「管理人さん…いや…響子さん…
俺にとって響子さんは大事な女の人です
たった一人の…」
「セックスさせて下さい…」
五代は普段とは違い真剣な顔で響子を
見つめている。
「……」
響子は黙って五代の話を聞いている。
「俺…こずえちゃんと約束しました…
泣かせるようなことは絶対しません。
残りのセックスを俺に…下さい…」
しばしの沈黙の後、響子は五代を見上げて口を開く。
「あたしも…さっき八神さんと約束したんです。
五代さんとセックスするって…だから…」
「一つだけ…約束…守って…」
「浮気なんか絶対しません。
付き合い酒はひかえます。
オナニーもなるべくしません」
五代が思いつくことを約束する。
「…そんなことじゃ泣きませんよ…怒るけど」
そんなことじゃないと響子が微笑む。
「お願い…一秒でいいから…あたしより長逝きして…」
「もう…一人じゃ…逝けそうにないから…」
響子の感情が昂ぶり頬を涙がつたう。
「響子さん…」
五代は響子の想いをかみ締める。
「…決して一人で先には逝きません…」
「約束よ…」
響子さんが五代に寄り添い、
二人は一つになった。
…後日、五代の部屋にて
響子は夕飯に五代を呼出そうと五代の部屋に
入ろうとしたが、五代が何か話し掛けて
いるのに気付き、隠れて聞き耳を立てる。
五代は机の上に置かれたバイブを見ながら
話し掛けていた。
「正直言ってあなたがねたましいです…
遺品を奪ったところで響子さん、
絶対あなたのこと忘れないと思う。
忘れるとかそんなんじゃないな…
あなたはもう、響子さんの心の一部なんだ…
だけど…俺…なんとかやっていきます。
初めて響子さんに会った日からあなたがいて…
そんな響子さんを俺は好きになった。
だから…あなたもひっくるめて響子さんをもらいます。」
響子の瞳から涙が溢れ出した。
(総一郎さん…あたしがこの人に出会えたこと…
喜んでくれているわよね…?)
コンコン!
「五代さん、そろそろ夕飯の時間です。
今日はスッポン鍋とトロロご飯ですよ♪
早く降りてきて下さいね♪」
「解りました。すぐに行きます。」
響子は先に階段を降りながら涙を拭いこう思う。
(あなたに…会えて…本当に…よかった…)