朝の忙しい時間帯だけあって、駅のトイレは少し混み合っていた。ユメはおぼつかない足取りでそこへ向かい、個室の扉を閉じた。  
 
(…やだ……っ…濡れてる……)  
ユメは乱れたままの下着を直そうとスカートの中に手を入れた。一度は下ろされたショーツは自らの愛液で少し湿った状態になっていた。  
ぺたり、とユメは便器に座り込んで気持ちを落ち着かせる。まだ動悸が正常に戻るまでには少し時間が必要だった。  
 
 
着衣と呼吸を整え、ユメは静かに扉を開いた。湿った下着を着けるのには抵抗があったが止むを得ない。  
「……あれ?」  
トイレ内は何故か妙に静まり返り、構内の騒ついた物音がボンヤリと届いているだけだ。  
ユメは洗面台に近付き、トートバッグからハンカチを取り出した。そして蛇口に手を差し出すと、自動的に水が流れ、そして再び止まった。そうして洗い上げた手のひらをハンカチで拭き取ってゆく。  
(……何で……あんな事になったんだろ……)  
ユメは鏡の中の自分と向かい合い、先程の電車内での恥辱を思い出す。  
……身体を這い擦り回る男達の手…舐め回すような好奇の視線……そして、あの女性の顔……。  
考えただけで膝がガクガクと震えていた。  
 
「……あら、どうしたのかしら…菊池ユメさん」  
不意に声を掛けられ、ユメはハッと目の前の鏡の中を見つめた。……するとそこには、あの女性の姿が映り込んでいた。  
「あ…あ…あなたは…っ」  
振り返ったユメの顔から見る見る血の気が引き、洗面台に着いた後ろ手が小刻みに震え出す。  
「今度は、何にも邪魔されないわ」  
女はトイレの出口を一瞥する。そこには清掃中の案内看板が立っていた。人払いの為に彼女が用意したのだろう。  
「さぁ……続きをしましょうか……?」  
―――怖いッ――!!  
その獲物を見据える様な冷たい眼差しに、ユメは直感的に身の危機が迫るのを知った。  
(何とか…しなくちゃ…っ)  
左手の中指にはめた指輪に触れ、魔法発動への集中を高める。  
……しかし、いつもならば現れるイルカのイメージは姿を見せない。  
「無駄よ」  
そう言う女は、ユメに向かって左手をかざした。その前に鈍く光る球体が突然現れる。  
 
「えっ…魔法…!?」  
ユメの瞳が驚きに大きく開かれた。女性は逆に、少し目を細めて口元に笑みを浮かべる。  
「そう、対抗魔法よ。…これであなたの魔法は無効化されるわ」  
彼女は、「はぐれ」の魔法遣いであった。そんな彼女にしてみればまだまだ研修中の小娘の力を封じるのは造作もない話だった。  
「その礼服…研修着でしょ?」  
気が付けば、女はユメの目の前まで迫って来ている。  
「……私、魔法遣いの若い娘を苛めるのが堪らなく好きなのよ……」  
女はユメの頬を撫でながらうっとりとした表情で呟いた。  
 
「さぁて、コレはなんでしょうか」  
女はバッグから小さなビデオカメラを取り出して、ユメの眼前で再生ボタンを押した。  
『……っく…ぅ…ッ……ふぅん…っ……』  
声を殺して身悶える少女の声と、未成熟な身体に無数の手が群がる映像が流される。その顔は写っていないが、これは…。  
「…なっ……ヤだぁっ」  
ユメは、その自らの恥ずかしい姿に耳まで真っ赤になり、言葉を詰まらせた。  
「ほら…綺麗に撮れてるでしょ?……ちゃんとあなただって判る様に、顔も写してあるのよ……」  
女がカチャカチャとボタン操作すると、画面が切り替わる。  
…唇を噛み締めてか細くも悩ましい表情のユメが、時折切なげな吐息を洩らしながら写っている。  
「や……やめて下さい……ッ…!」  
ユメは涙目で懇願する。  
 
その一瞬の隙だった。  
女はユメの左腕を掴むと、一気に自分の方へ引き寄せた。バランスを崩したユメはそのまま後ろの壁に押し倒され、背中を強く打ち付ける。  
「うっ…!」  
一瞬呼吸が苦しくなってユメの動きが鈍った。  
「…さぁ…動かないで…」  
女が左手をかざすと、彼女の鞄から手錠が音も無く飛び出し、ユメの両手首を拘束した。そのまま壁に張り付き、両手を上に磔にされるユメ。  
「きゃあっ……う…動けない…っ…!」  
何とか逃れようと身体を捩るが自由が利かない。それ程までに、二人の魔法力には差があった。  
「さ…BGMもおあつらえ向きに有る事だし、たっぷり可愛がってあげる」  
洗面台の片隅に女のビデオカメラが置かれ、痴漢行為に弄ばれるユメの映像が繰り返しリプレイされるようにセットされていた。そこから時折ユメの喘ぎ声が洩れてくる。  
「……やぁっ……!」  
その声がユメの羞恥心を煽り、身体をじわりと火照らせてゆく。  
 
女は抵抗できないユメの衣服に手を伸ばし、次々と脱がしていった。  
スカートは剥ぎ取られ、ブラウスのボタンは上着ごと全て外された。ブラが上にずらされ露にされた両胸が大気に曝される。  
「いい格好ね、菊池ユメさん?」  
目の前に立ち塞がった女が少し体を横にずらすと、ユメは鏡に写る裸の自分と目が合ってしまう。  
「いやぁ…ッ!は……恥ずかしい……っ…」  
ユメの瞳から大粒の涙がぼろぼろと零れる。その雫が床の上に小さな染みを付けて、すぐに消えてゆく。  
「……それが邪魔ね」  
女の視線がユメの下半身に注がれる。ユメは両脚を閉ざしてその視姦から逃れようとした。  
「……あら?もう濡れてるじゃない………いやらしいのね」  
「ち…違うっ……これは」  
電車の中で、と続けそうになってユメは口籠もる。  
「それじゃ、さっさと脱がしてあげないとね」  
ユメの言葉などお構い無しといった感じで言う。  
 
(あ…脚が…勝手に…?)  
ユメの意思とは無関係にゆっくりと脚が開いてゆく。これも、彼女の魔法によるものだ。  
続いてするする…と、鏡の中で磔にされるた少女の脚の間を白い下着がひとりでに降りてゆく。すぐに薄い恥毛が顔を出した。  
「いやっ……見ちゃダメ……ダメェ……ッ」  
ユメは頭を必死に振るが、無駄な抵抗だった。  
降りてゆく下着とユメの蕾の間に、つうっ…と糸が引く。恥ずかしさから濡れていたのだろう。  
そうしてユメの下着は脱がされ、そのまま女の手の中まで引き寄せられた。女はそれを自分の顔に近付け、クンクンと鼻を鳴らす。  
「ふぅん……いやらしい匂いだわ……こんなに濡らして…」  
女はわざとユメに見せ付ける様に赤い舌を出し、その恥ずかしい染みの付いた箇所をぺろぉ…と舐めた。  
「やめて…下さ…い……そんな…ぁ………」  
ユメの声はどんどん弱々しい物になっていく。  
「そんなに触って欲しかったの…?…電車の中であんな風にされて、感じちゃったのね…いけない娘…」  
女は言葉で激しくユメをなじる。追い詰められるユメの表情が更に彼女のサディスティックな欲望に火を点けた。  
「それじゃあ…私がもっと嬲ってあげるわ…」  
 
女はユメの両胸をその掌で揉み出した。閉鎖空間に二人だけだからか、電車の中での行為よりも乱暴なその手つき。ユメの乳房は次々と掌の中で形を歪ませてゆく。  
「あぁっ……や……あんッ……あ…」  
ユメは眉間に皺を寄せて切なげな声を上げる。そして女の愛撫に、やがてユメは乳首を尖らせていった。  
「可愛いわね……あなたの乳首、ツンと勃って来たわ…」  
そう言うと女はすぐに硬くなったユメの先端を二本の指で摘み上げて刺激し始めた。最初は指の裏側でコリコリと責め、やがて少し伸ばした爪で挟んで来た。  
「あ…ッ…い…痛いッ…!」  
その刺激はユメには余りにも強く、痛みを伴うものであった。苦痛に歪む少女の顔を見ると、女は背筋がゾクゾクする程に興奮してゆく。  
「痛い!?……まあいいわ…じきに快感に変わるわ」  
女は初めは両手でユメの胸を弄んでいたが、やがて右胸を口に含み、舌や歯で刺激を与えていった。  
「あっあっ…はぁ…ンッ…ヤぁ……はあああ…ん」  
ユメは喘ぎ声を堪える事も出来ずに身体を痙攣させて感じさせられてしまい、その恥部からは愛液が流れ出てその太腿を伝っていく。  
「こんなに溢れさせて…はしたない娘ね…」  
女は唇をぺろぉ…と舐めると、そのまま右手の指をユメの淫唇に沈めていき、その膣内で暴れさせる。  
 
「…はぁ…ん……あん…っ…あ……ぁんっ……あぁ…ん……あっ……あん…」  
女の二本の指がユメの膣内で蠢いて愛液を絡め合い、親指はクリトリスを刺激する。その巧みな動きに、ユメは為すすべなく身体を痺れさせていく。  
右の乳首を舌で舐められ、左胸を片手で弄ばれ、恥唇を指で掻き回される。三ヶ所をも同時に責められたユメは完全に女のなすがままになり、切ない声が途切れなく零れる。  
その時、不意に目の前の鏡が視界に入った。…そこに写っているのは、口元からは涎を垂らし、潤んだ瞳で快楽に溺れる少女のいやらしい表情だった。  
「ほら…気持ち良さそうな顔してるでしょう?…とても可愛いわ……」  
(嘘……これが……私…?)  
ユメは自らの淫らな表情から何故か目が離せない。その姿が更に身体を熱くさせて下半身を濡らしてゆく。  
くちゅ…くちゅ……。  
愛液と指が奏でる音が、二人だけのトイレに響き、ユメは駆け上がってる感覚に我慢出来なくなっていた。  
「…はぁ……も…ぅ…ゆるし……て……っ……お願…い……あぁん…っ…」  
ユメは制止を求める言葉を口にするが、最早それが叶わないのは明白だった。ユメの苦しげな仕草の全てが女の悦びになる。  
 
「そろそろ、こっちも苛めてあげるわね…」  
女は胸を愛撫する左手を外し、ユメのお尻を撫でる。  
「…あ………な…に…?」  
ユメは思いがけない感触に視線を彼女に向けた。  
「……後ろの穴は初めてかしら…?」  
尻肉を撫でていた指がユメのアナルに辿り着き、さわさわと入り口を伺う。  
「そ…んな……汚いとこ……ヤだ…ぁ…」  
ユメには考えられない事だった。だが、その拒絶の態度こそが女の願いそのものであった。体を強ばらせて拒むユメを、人差し指が侵食する。  
「…かはっ…いやァッ…!」  
味わったことの無い感覚がユメを襲う。  
(そん…なっ……ひどい…)  
未開発の聖域を、女の指が容赦無く汚してゆく。  
「どう?こんなの、初めてでしょう……?」  
後ろの穴を責め立てながらも、陰部を掻き回す指を止める事無くユメを蹂躙し続ける。その激しい指遣いにユメの乳首は硬く尖って快感を示す。  
 
「…あっ…あぁンッ…ふぁあん…はん…ッ」  
ユメの秘所の内側の両膜がヒクヒクと震え、その時が近い事を責める彼女に悟らせる。  
「もうイキそうなのね」  
「…ああっ……はぁ……はぁん…ッ……んんっ」  
ユメは答えない。だが、その媚声が既に彼女の問いを肯定しているのも同然だった。  
「でも駄目…指だけなんて勿体ないでしょう?」  
女はユメの恥部から指を抜き取り、愛液に塗れたそれを舐め取った。そして残る左手での凌辱も止め、リクルートスーツのスカートのファスナーを下ろし、自らの股間部をユメに晒した。  
 
「………えっ…?」  
ユメは自分の見た物を信じられずに狼狽の声を出す。  
女の黒い下着は明らかに膨らみを帯びていた。それを指でずらすと、隆々と反り返ったモノが姿を現す。  
「ふふ…驚いたかしら?…そう、男性のペニスよ」  
事もなげに女は言う。  
「勿論、私は女…だから、あなたを犯す為に魔法で用意したという訳」  
「そ…んな…ぁっ…」  
(……これだけ汚されて、これ以上更に純潔を奪われるだなんて……耐えられない……)  
ユメを絶望感が襲う。  
「お願い……それだけは……それだけは許して……」  
涙を溢れさせながら、上ずった声で懇願する。  
「大丈夫よ、実際に生えてる訳じゃないわ。あなたの感覚に直接干渉してその擬似的な快楽を与えるだけ…処女膜だって平気よ。ただ感じを出すためにこうして具現化しただけだから」  
女はユメの制止を振り切って、両脚を開かせてその欲望の象徴を恥唇の入り口にあてがう。ユメを拘束した手錠の位置が下にずれて丁度そのまま挿入出来る形になっていた。  
「さあ……淫らな声で鳴いて頂戴……」  
 
………ぬちゅ……ッ!  
ユメの中で熱く脈打つ異物感が蠢く。  
「やッ……いやあああ…んッ……!!」  
とても擬似的なモノとは思えない、生々しい感覚。ユメはその侵入に大粒の涙を零した。  
「ああっ……いいわ、その声……なんて素敵なの…」  
女も恍惚の笑みを浮かべてユメの痴態を愉しむ。  
「さあ……もっとよ…ユメ……もっと激しく鳴きなさい……!」  
ユメの両脚を掴み、更に奥へと打ち付ける。ぐちゅぐちゅっ、と愛液が淫らな音を立てる。  
「あっ……ああンッ……も…もう……っ」  
先程までの責めもあって、ユメは早々限界を迎えてしまう。  
「もう……イカせて欲しいのね…いやらしい娘…。いいわ、イキなさい」  
女の腰使いが更に加速し、ユメを絶頂に誘う。  
「……はっ…はあっ…あっ…あっ……ああぁンッ!!」  
ビクンビクンッ、とユメの膣内が脈打ち、淫らに汁を溢れさせた。  
「それじゃ私も、射精すわ」  
そう言うと、ドクッドクッとユメの膣に熱いモノが注がれる感覚が流れ込む。擬似的な白濁液がユメに中出しされたのだ。  
(嘘っ…あ……熱い…)  
ユメは初めて感じる感覚に頭が痺れていった。  
 
「まだよ…あくまで魔法で出してるモノなんだから、幾らでも続けるわよ」  
結合部からドロッとした粘着液が溢れ出す。女は再びユメを責め始めた…。  
 
 
「はぁ……ふぁあ…んっ……あん…あん…ッ……あッ……あっあっあっあっあぁ…ん……はぁん…」  
両手を洗面台に着き、ユメは後ろから貫かれてカラカラになった喉で媚声を上げる。  
その右手にのみ手錠が繋がれているのは、最早両手が自由になった処でユメがこの凌辱から逃れる事はないと彼女が判断したからだった。その魔法力の分だけ、ユメを犯す方が利口だと。  
「ほら、また射精すわよ」  
熱い粘着質の液がまたユメの膣内に注がれる。既に五回目の中出しだった。しかし彼女のペニスは全く萎える事はない。  
「…段々具合が良くなってるわ…菊池ユメさん…」  
イッたばかりのユメをそのまま犯し続ける。  
 
(あ……奥が…擦れ…て……いい……っ)  
自ら腰を動かして更なる快感を得ようとするユメ。度重なる女の責めに、ユメの身体の奥底の疼きは止まらなくなっていた。  
魔法による行為故に、処女を散らせる事も身籠る事も無いという事実がユメの正常な思考を奪い、刹那の快楽に堕とす。  
「……はぁ…っ……い……いい………いい…のぉっ……!」  
遂にその本音を言葉として洩らしてしまう。  
 
「あらあら、すっかり中出しが気に入っちゃったのね……そんなに良いの?」  
「あ…ああっ……あ……」  
ユメは頭をふるふると振って否定するが、身体は嘘を吐けない。こぽっ……と陰部から白濁液が愛液混じりに溢れ出し、太腿を伝う。  
「…そんなに精液が好きなら、今度はあなたにかけてあげるわ」  
女はユメの手を引いてバランスを崩し、その場にしゃがみ込ませた。そして乱暴にペニスをユメの口に突っ込み、頭を掴んで前後に揺さ振った。  
「…んっ…!?んンッ、ん……ぅんッ…ふぅ…ンッ」  
予想外のフェラを強制されて、ユメは枯れたかに思われた涙を頬に伝わせた。  
(……口でなんて…イヤッ…イヤだ…ぁ…)  
こぽっ…こぽっ……。  
溢れる唾と混じり合って淫らな水音が自分の口から奏でられている。  
混乱する頭で、ユメは無意識にそれにしゃぶりついていた。最早それは雌の本能なのかも知れない。  
「……そろそろ、その可愛い顔に熱いのいっぱいかけてあげるわ……」  
 
女は腰を動かし、ユメは頭を前後に揺さ振り、互いの動きが呼応するように早まっていく。  
(あ……私…また…汚されちゃう………。)  
ユメはそれに怯えつつも、どこか待ち望んでいるような感情をも同時に抱えていた。  
…そして、その瞬間が訪れた。女はユメの口からペニスを抜き取り、その眼前で素早く扱く。  
ドクッ!ドクドクンッ!!  
熱い白濁液が次々にユメの顔めがけて放たれ、勢い余ったそれはユメの髪や胸にまで飛び散る。  
「ふぁぁっ……あっ…あ……あんっ……はぁん…!」  
とても非現実とは思えぬ熱さを持った精液の感触に、膣内に出された時と変わらずにユメはその蕾を濡らして達してしまう。  
 
「素敵よ……ユメさん」  
女は白く汚された少女の痴態を満足気な顔で見下ろした。そしてぐったりと全身の力を失ったユメを無理矢理に立ち上がらせ、鏡に向かい合わせる。  
「あ……ああ…っ……」  
ユメ自身も信じられない程の淫靡な表情の自分と目が合い、言葉を失う。  
「じゃあ、もうじき朝のラッシュも終わりだから次で終わりにしましょ?」  
 
………ユメがこのトイレに入ってから既に小一時間は経過していた。朝のラッシュも終わり、駅構内の人通りも大分落ち着きを取り戻していた。  
「じゃあ、私も仕事があるしね……」  
女はメイク直しを終え、ビデオカメラも鞄に戻して身仕度を整えていた。  
足元で座り込み、肩で息をしているユメ。白濁液に汚された体は、魔法での凌辱を終えて元に戻っている。  
「それじゃ研修頑張ってね…ユメさん」  
最後に一言残して彼女は立ち去って行った。  
 
「……行かなくちゃ……」  
残されたユメも衣類を直して、重い体を引きずり依頼先へと向かった…。  
 
 
一週間を通じての依頼の最終日。いつも通りに新築ビルの管理人室に顔を出す。  
「おはようございます、菊池です。…すいません、遅くなりました」  
「いえいえ、大丈夫ですよ」  
管理人の初老の男性はいつもの穏やかな口調で言う。そして、今日の仕事先のオフィスフロアへとユメを案内する。  
「失礼します。魔法局の依頼で伺いました菊池と申します」  
整然としたその事務所で挨拶し、社長に面会する為に社長室に通された。ユメは深呼吸して気持ちを落ち着かせる。  
(…ちゃんと依頼を片付けなくちゃ……あの事は忘れて…)  
トントン、と静かにノックをする。  
「どうぞ、お入りなさい」  
落ち着きのある女性の声で返事が返り、ユメは社長室に入る。  
「…………………!!?」  
ユメは絶句した。  
そこで待っていたのは、ユメを蹂躙したあの女性だったのだ。  
「………今日は宜しくお願いしますね、菊池ユメさん」  
女は冷たい笑みを浮かべてユメにそう告げた……。  
 
 
―完―  
 

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