ゼントラーディー基幹艦隊との決戦において綱渡りの戦闘を強いられたマクロスは、ミンメイアタックに基づく作戦により辛くも勝利を手中とした。  
異星人との衝突から始まったこの戦闘が今後より日常的な抗争に変化していくことなどまだ一般市民の誰もがはっきりとは予測していない。  
軍による情報統制のせいもあるが、誰もがこの勝利が人類の歴史にどう寄与するかなどという迂遠な思考を巡らすよりも、恐るべき『今日』を生き抜いた安堵と日常への被害に対する虚脱に胸を詰まらせていた。  
グローバル准将以下地球統合軍生き残りの軍人達は、艦内のその異様で非日常的な高揚感に包まれつつも、虚脱や不安に考えをめぐらす贅沢を許されぬまま戦後処理に忙殺されはじめた。  
 
一条輝はヘルメットを小脇に抱え、重い足取りでバルキリー格納庫からメインブリッジへ至る複雑なルートを辿っていた。  
全身の筋肉が、絶え間無く長時間に渡った強烈な負荷の影響で鈍く痛む。  
緊張は別にしても、いつもより酷使したという感じはしなかったが…とそこまで考えて輝はふと立ち止まった。  
(そういえば新顔ばかりで飛ぶのは久しぶりだったな)  
彼はいまさらながらに思い至り、目を閉じて旧知の死者たちに短い黙祷を捧げようとした。  
だが直後、うっかり目を閉じたばかりに頭がすうっと後ろにひかれるような疲労を覚え、慌てて目を開ける。  
立ち止まっているとまずいような気がして再び歩き始める。  
 
パイロットスーツを着込んだままでうろうろしていても普段からマクロス艦内では特に目立たない。  
だが今日ばかりはありとあらゆる階級の制服を着込んだ人間が、ある者は怪我をしたまま、またある者はなにやら書類や物資を抱え慌しく走り回っていて、輝は彼等の邪魔にならないようたびたびヘルメットを抱えなおさねばならなかった。  
内部システムの損傷も大きいのだろう、この混乱ぶりを見てとって輝は心中にわずかな汗を感じる。  
あとわずか戦闘終了が遅れていたなら…。  
(やっぱり今は無理か)  
軍専用エレベーターホールの上部にあるスリット窓から高みにあるメインブリッジを見上げ、輝はそれ以上進むことを諦めた。  
待機所から艦内の各場所に次々出動していく不発弾処理班だの消火隊だのの横を擦りぬけて進むこともためらわれたし、なによりも人影が動き回るブリッジ全体が殺気だっているように思えたからだ。  
航空主任管制官の彼女はきっと正確な被害の把握と報告に、そして歌姫の彼女はこれから行われるはずの正式な停戦条件交渉への参加と打ち合わせにむけて慌しいはずだった。  
(戦闘以外で暇なのは俺だけかね…)  
輝は口元に間の悪そうな微笑を浮かべ、ヘルメットの重みのまま腕を垂らした。  
一番会っておきたい人間に会えない状況は、だが今の彼に必要だったのだ。  
ホールの壁にもたれていた輝はやがてずるずると尻を落とした。  
抑えきれない欠伸も半ばに目を閉じる。  
猛烈な倦怠感に身をゆだねる暇もなく走りまわる誰かの足に踏まれるまでのつかの間、彼は熟睡に落ちていった。  
 
*******  
 
ふと、電子機器特有の稼動臭を感じた。  
断続的にキーを叩く小さな音、自分以外の誰かの気配、だがさきほどまでの人いきれと混雑の気配は絶えて、無い。  
目を開くとそこは無機質な狭い部屋で、彼はいすを並べた上に不自然な格好で横たえられているところだった。身じろぎをして上半身を起こしたが、体のどこにも筋肉痛がないところをみると眠っていたのはそう長い間ではないようである。  
「あら、おはよう」  
かけられた声に目をやれば、モニターが並ぶ壁際のコンソールの前に早瀬未沙が座ってこちらを見ているところだった。  
「ここ、どこ?」  
輝は尋ねたが、  
「ちょっと待ってて」  
彼女はキーを押して窓を閉じ、待機状態に戻した。  
立ちあがって、輝のそばに歩いてくる。  
暖かい瞳で、パイロットスーツのままの彼を見下ろした。  
「通信を持って戻っきてた第二補助ブリッジのオペレーターがね、前後不覚で眠ってたあなたの脚に躓いて」  
ちょっと目をそらして笑った。  
「教えにきてくれたの。メインブリッジまで、わざわざ」  
「君に?なんで…」  
その続きは口のなかで消えていった。  
考えるまでもなく、きっと俺達は有名人なんだなと輝は悟ったのだ。  
二人っきりで長期間漂流し、救助された男女なのである。どんな尾ひれがついていても不思議ではない。  
 
「事実だしな」  
呟くと未沙が俯いてふくれた。  
「余計なお世話よね。もう」  
「……」  
輝はいすから床におりたつと、首をこきこきと廻した。  
「そういう事はだから思っても言っちゃだめだって」  
「なんで?」  
未沙は恥かしいのか、挑戦的な目で輝をみつめた。  
「余計噂になるよ」  
「…かしら」  
「噂になりたい?」  
ちょっとからかいたくなって輝が問うと、案の定未沙は怒った。  
「バカね」  
「……ぷっ」  
吹き出すと、未沙は頬を赤くした。  
「なによ、もう。ほんと、子供っぽいんだから」  
未沙の拳を避けながら、輝は必死でまじめな顔を作る。  
「わかりましたよ。いい子にしてますよ」  
「そう。じゃあいいけど」  
未沙は拍子ぬけするほどあっさりと、ふりあげた手をおろした。  
このへんの単純さに彼女は自分で気付いているのだろうかと時々輝は思う。  
「……よく無事に戻ってきたわね」  
「まあね」  
 
なにがまあね、なのかはわからないが輝は苦笑して答えた。  
正確には、なんといえばいいのか、まだあの激烈な戦闘の整理が心の中でついていないのである。  
「お疲れ様。ゆっくり休むといいわ…いくら軍人でも、たまにはご褒美だって必要よ」  
未沙が暖かい目を輝にむけながら、小さく呟いた。  
ふと、物足りない想いが輝の胸に湧く。  
あまりにも激しい体験を潜り抜けた挙句に勝ち得たものならば、心のままに確かめてもいいのではないか。生きているというのはそういう事だと、今は思う。  
我侭かもしれない、だが今だけなら許されるのではないか。  
「…そうだな」  
輝は人が悪げな笑みを浮かべた。  
「君からのご褒美も欲しいな」  
「なに?」  
未沙が首を傾げるように、彼の顔を覗きこむ。  
輝は彼女の瞳に視線を返した。  
「抱いてもいい?」  
 
未沙の腕を掴むと、彼女は一瞬肩を竦めた。  
その反射的な仕草を打ち消すかのように、輝は無言のまま彼女を抱きしめた。  
「一条くん…」  
未沙の声がくぐもって胸のあたりに温もりを伝え、輝は彼女の背に廻した指を肌まで届けとばかりにくいこませた。  
軍服に包まれてはいるもののしなやかな体は柔らかくて華奢で、なかなか気持ち良かった。  
「あ…」  
未沙は小さく身を震わせた。長い髪から覗いている耳の付け根まで真っ赤になっている。  
「あの、…まさか…」  
「みんな忙しいんだ。誰も来やしないよ」  
輝は本気でここで今彼女を抱こうと思っていたわけではなかった。  
彼女をしっかりと抱きしめたかっただけだった。衝動のままに、強く強く。  
だが、彼女の現実の暖もりや肉付き、声や吐息に近付いたために、衝動が決心に変化するまでにさして時間はかからなかった。  
ここに到着するまでに実感した艦内の混乱ぶりも、誰も来ないという確信を輝に囁く。  
「誰も…?」  
彼女の不安げな顔を見下ろしながら、輝は頭の片隅ですばやく確認した。  
入り口以外に侵入手段はなし。照明さえオフにすれば、艦長許可が必要な別系統のものは別として、通常の防犯カメラもつかえない。  
未沙を抱きしめたまま輝は囁いた。  
「ブレーカーはどこ」  
「え…」  
未沙は視線を横に流した。  
 
無骨なデザインのレバースイッチが天井近くの壁に設置されたパネルの中に設置されている。  
輝は片手を伸ばしてそれに触れた。  
瞬時にして部屋は薄闇に閉ざされ、未沙が驚いたのが腕の中の反応で判る。  
「本気?」  
輝は勘でその呟きを目指して顔を俯けた。  
唇に触れるしっとりとやわらかな感触に、口元をわずかに吊り上げる。  
「ん…」  
短い喘ぎを洩らして未沙が体をよじった。  
「輝…」  
「…」  
輝は体重差を利用して彼女をコンソール横の壁に押しつけた。  
「未沙」  
「……」  
未沙はもがくように輝の抱擁を受けた。  
「ちょ…ちょっと待って…」  
「待てると思う?」  
未沙が俯く気配が伝わった。  
「だって…」  
「だっては無し」  
「あっ」  
未沙の脇をすくうようにして壁に抑えつけたまま、輝は再び唇を探り当てて吸った。  
「…ん……」  
「…は…ぁ…」  
顔を離すと、暗闇になれた目に、非常灯と待機パネルの発光でおぼろに浮き上がった未沙の顔が羞らうように横に背けられるのが見えた。  
「……嫌?」  
「あと…じゃだめ?」  
「…どれくらいあと?」  
 
未沙の眉がかすかにひそめられた。根がまじめなのだ、本気で残された時間を計っている。  
その困惑した表情から察するに、おそらく彼女の休憩時間はそう長くはないのだと輝は悟った。  
たぶん、自分の様子を見守るためにローテーションの調整を無理したのかもしれない。  
「……ごめんなさい、わからない」  
思った通り、未沙は申し訳なさそうに呟いた。  
つまり、今を逃せば当分抱く機会は巡ってこないという事だ。  
「やっぱり今がいい」  
輝は未沙の体をひょいと前のコンソールに持ち上げた。  
「あっ!」  
じたばたと形のいい脚を撥ね上げようとするのを捕まえて、ヒールを掴むと片方ずつ部屋の片隅に投げつけた。  
「やだ、輝、ちょっと待…」  
薄いストッキングを、破れたりしないよう苦労しながら降ろしていく。軍服の下が素足だと勤務に戻った彼女があとで困るから。  
(肌がすべすべなんだからそんなもの要らないだろうに、こんな面倒なものつけてなくちゃいけないなんて女のひとは大変だな…)  
作業を続けながら輝は頭の片隅で、冷静にくだらない事を考えていたりする。  
暖かく滑らかな太腿を探り、それを早く腰に絡ませたくて動悸が早まるのを感じた。  
膝丈長めのタイトスカートをめくり上げるように、輝は未沙のヒップに掌を滑らせた。  
その指を阻むしんなりとした手触りを感じる。下着の薄い防波堤だ。  
「あ…やだ…」  
未沙が腰をくねらせてのがれようとしている。  
輝は下着の上からヒップの丸みを握ってみた。引き締った肌の弾力が彼の指をはじきかえす。  
「や…だぁ…!」  
未沙のちょっと怒ったような声にも輝は恐れなかった。  
 
はじめて体を重ねたあの遺跡の夜以来、彼は彼女を、もう数回は抱いている。  
彼女がかなりの恥かしがりだという事も、そのくせ自分の要求には最終的には折れて応じてくれることもちゃんと知っていた。  
彼女がたぶん一番軍人らしい彼女であるべき場所であるオペレーションルーム(常駐している艦橋のものでこそないが)での行為。  
その背徳感に、決戦の緊張続きで張り詰めていた精神が異様なまでの興奮を覚えているのは自分だけではなく未沙もおそらくそうだろうと、察してもいた。  
部屋が暗いから彼女の『この後』の表情をはっきり見ることができないのが残念だが。  
「…あとどのくらい?」  
その興奮に完全にのめり込む寸前に幸いにも、輝は確認しておかなければならない最後の質問を思い出すことができた。  
スカートから手を引き抜き、未沙の体勢を立て直してやる。  
「え…」  
未沙は乱れかけた髪の毛を肩の後ろに振り払うと、輝を見つめた。  
薄闇の中でもわかるその瞳の潤み加減に、早く続きに移りたくてたまらないが返事を待つまでは我慢だ。  
「一緒にいられる時間」  
「4時、まで」  
「そう」  
あと40分しかない。未沙の後ろの時計を確認した輝は有無を言わせず彼女の上衣の裾をたくし上げた。  
「や、やだっ…てばっ…もう…!」  
 
言葉は拒否だが響きは鼓膜が愛撫されているかのように甘かった。  
「好きだよ」  
なんのためらいもなく言えるのはこんな時だからだ。  
張りのあるカップの内側に指を滑り込ませ、少しひんやりと感じる肉を握りしめた。  
充実ぶりを確認するように指をひろげて掴むと、未沙は彼の肩にもたれかかってきた。  
「痛い…輝」  
人差し指が一番柔らかな乳頭にめりこんでいるからだろう。輝は爪先をずらした。  
見えないけれど彼にはわかった。  
今ブラの中ではゆっくりと桃色の勝ったサーモンピンクの先端が、圧迫から逃れて誇らしげにせりあがっているに違いない。  
つくづく視覚が遮られているのが勿体無いので、輝は感触でせめてその情景を味わおうと両手を無理に上衣に突っ込んだ。  
「だめ!…破けちゃう」  
未沙が上体をのけぞらす。  
追うように握りしめる。  
見た目はほっそりしているが案外出るところは出ていると彼はいつもそう感じる。  
ブラウスの内側でブラを縒ってずらせ、やわらかな双丘をリズミカルに捏ねた。  
 
乳房を捏ねながら彼女の口元に耳を寄せれば、荒く早まる吐息のなかに隠しきれずこぼれる甘さがあった。  
その度合いは面白い程に彼の手のひらの動きに連動しているようだった。  
「未沙…」  
輝のふいに与える囁きに、少々乱暴な愛撫に埋没しかけている彼女の体がびくりと意志を取り戻す。  
「…っはぁ……あ…?」  
揺れながらあげられた瞳に非常灯のわずかな光がきらと反射した。その濡れように、そうさせたいと望んだ男の鼓動が早まった。  
「…もっと顔をあげて」  
顎をあげさせ、なめらかな頬に乱れかかる女の髪を己の鼻先でわける。顔を斜めに、開き加減の唇に吸い付いてみればそこはゆるやかに抵抗もなくほころんで彼の舌を受け入れた。  
喘ぎ混じりの柔らかい軟体を弄ぶ。こちらの口腔内に吸い取るほどの力を加えると、鎖骨の両端にすがりついていた掌の温もりが震え、戦闘スーツの生地を摩擦しながら背中にゆっくりとまわされていった。  
「…ふぁ…ん…」  
はっ、としたようにその小さな爪が肩甲骨のあたりで一瞬きしみをあげる。  
だが、輝が体を寄せあやすように揺さぶると安心したようにそのまま滑らかに背中をおおってとまった。  
「……」  
輝は片方の頬でかすかに笑った。  
彼女は頭でっかちなのか慎み深い性質なのか、そもそも最初から鉄壁の羞恥心で全身を鎧っているような女性で、まだどこかで自分を失うことを恐れているのだ。  
この行為の過程においては少々の理性など簡単に吹っ飛んでしまうものだという現実を彼女はここ数週間で学んでいるはずなのだが、それでもそれをあからさまに彼に把握されることにはまだまだ抵抗があるらしい。  
もっともそれゆえにそんな彼女の体と心を解錠していくというどちらかというと陰微な愉しみもあるわけで、あと一時間も時間がない現状を輝はちらと恨めしく感じた。  
 
とりあえず今の彼が感じているのは餓えである。  
彼女の温もりと肉体の重みで現実を取り戻したい、ああ、生きている、と感じたい。それを逃避と呼ばれようと軟弱ととられようと輝はいっこうにかまわない。男と女がそれを共有できるとしたらこの行為が一番だと彼は経験上知っていた。  
だから邪魔な上衣をの前をはだけ、下着をブラウスごとたくしあげて彼は薄闇のなかにほの白い果実を剥き出した。  
未沙は背筋をそらしたが、ぼうと熱っぽい瞼を伏せて、それでも抵抗はやめたようだった。  
解放された肌の匂いが輝の鼻孔に生温く膜をはる。これほど清潔そうな薄さを持つくせに、女の肌と言うのはなぜ奔放なまでに柔らかく、どこか脂を感じさせるのだろう。  
彼女の顔は首筋にいたるまで、薄闇でも伺えるほど血の色をのぼらせていた。それだけの恥じらいを窺わせながらも彼女の胸乳は先端までがふるふると早すぎる鼓動を伝えて震え、包む男の掌に媚態を示し続けている。  
正直すぎる反応を伝える雄弁な肢体をいいことに、未沙は無言のままだった。  
輝も強いて口を開かせたいとも思わない。それは後でいい。  
彼は掌を乳房からはなすと、かがみこむように背を曲げて腕ごと彼女の細い胴回りに巻いた。  
タイトスカートはすでに規律の二文字がへそを曲げそうなほどしわだらけになっており、コンソールの端に腰掛けた彼女の両の脚は男のからだをゆるやかに挟んで空中に伸びている。  
いい加減着衣が乱れているくせに軍服の全てが、ストッキングとヒールをのぞいてはかろうじて体にまつわりついたままだ。  
細い肩に長い髪がなだれ落ち、そむけられた瞳と唇はうっすらと、濡れた露を含んでいる。  
…なかなか…。  
いや、正直にいって、『上官』のこの格好はかなりそそる、と輝は認めた。  
陵辱をしているつもりはない。だが、嗜虐趣味をそれほど豊富に持ち合わせているわけでもない彼をしてなにやら妙な気分にさせる雰囲気を、今の彼女は漂わせている。  
 
視線を時計パネルに走らせるとすでに20分以上が経過していた。  
やばい。心の動くままに彼女を弄びたいのはやまやまだが、とてもそんな余裕はない。  
うっすらと汗を佩く首筋に唇を寄せ、彼は呟いた。  
このあたりの肌も今頃、さぞや上気していることだろう。  
「また後で、いろいろゆっくりしよう…な」  
「え?」  
間髪いれず未沙の声が不満を伝えて尻上がりに跳ね上がる。  
「後…って、今は、どうするつも…」  
あっ、と彼女は男の肩にしがみついた。  
最後まで言わせず、太ももの下に指が潜り込んできたせいだ。  
「なにを心配してるのさ?」  
輝は彼女の体を引き寄せながらからかった。  
体でじらせないのならせめて言葉に恥ずかしがる姿を見たくなったからでもある。  
「へえ、やっぱり今ここでしてほしいんだ」  
「あ…あなた、ねぇ…!」  
華奢な体でも女の太ももはむっちりと指に量感をのせてくる。  
「えっち」  
「黙って…もう…」  
あなたがはじめたんでしょう、と未沙はうつむき加減にぼそぼそと囁いた。  
輝は下着と尻の隙間に掌を侵入させた。  
果物の皮を剥く要領でラインにそっておろしていく。  
ちょっとお尻を浮かせて…うん、いいよ。  
いつもは素直に言いなりになることには抵抗があるらしい彼女も、今ばかりはおとなしい。  
それもそのはず、彼が背後からはざまに指先を這わせると未沙は大きく喘いだ。  
「ああっ!」  
湿り気があるとか、濡れているといったささやかな表現では不足なくらい、すでにその花弁は濡れそぼリ咲き誇っていた。  
確かめるようにかき回す彼の指先に、繊細にまとわりついてちゅぷちゅぷと音をたてる。  
「うわ。とろとろだ」  
「いやっ、言わないでったらっ!」  
中指に続いてぬるりと人さし指を添えこむと、彼女は悶えて輝の胸にすがりついた。  
「ああぁっ…」  
 
彼女の重みを受け止めながら、その素直な乱れようにそそられた輝は、つい、とわずかに身をはなした。  
「…あん…」  
おそらく涙目にちかいくらいに瞳を潤ませているであろう彼女が敏感に反応する。  
あいているほうの手でその腕を捕らえて引き寄せる。  
スーツの胸元のファスナーに導くと、彼女は理解したように半裸の身を寄せてきた。  
体が密着しているのでファスナーはもたもたと引っ掛かり、なかなかおりない。もどかしくてたまらなくて、彼は小さくうめいた。  
だが、ファスナーをおろしきり、下着の上から彼自身に触れた彼女が発した一言にそのもどかしさも忘れそうになった。  
「…して…あげよ、か…?」  
きっとぽかんと口があいたかもしれない。  
とっさに唇を引き結び、彼はこの薄闇と体勢で彼女に顔が見えてないだろうことに気付いて現状に感謝した。  
「本当?」  
「……」  
未沙は頷いた。そればかりか、そっと男の体をおしやるとコンソールから床に滑り降りた。よろりと体を支えながら床にひざをつく。  
思っていた以上に彼女が興奮しているらしい事実に彼は思い至る。  
大戦闘の緊張からの開放感、不適切な場所、限られた時間、周囲の状況の全てがいつもの頑固な羞恥心を一時的に麻痺させているらしい。  
今までにも1、2度彼女にこの種の行為をしてもらったことはある。  
だがそれは輝のリクエストを拒みきれなかったという言い訳があるせいか彼女はとても消極的で、まさかこのように自分から申し出るとは…。  
気付くと、男根に細い指が絡んで彼はわずかに息を飲んだ。  
未沙は、繊細な部分を扱うにはいささか乱暴な手付きで勃起しているそれを引き出すと闇のなかにその気配を探るかのように間をおいた。  
なにか言えば彼女の羞恥が蘇りそうで、輝は無言で次の手順を待つしかなかった。  
 
開いた唇の間に挟み込むようなキス、柔らかい粘膜が微妙に亀頭に絡みつく。  
「…はぁ」  
すでにそこは自身の分泌した液体で滴り落ちんばかりに濡れており、それだけに彼は敏感に反応した。  
短くかすれた声が漏れる。  
未沙がぬるぬると舐めとるように唇をちいさく開閉させた。  
一番敏感な先端でやられたのではたまらなかった。  
輝は思わず両手で未沙の頭を捕らえ、長い髪の毛に指先を差し込む。  
その拍子、しごかれるように彼のものは未沙の口腔に侵入し、彼女の舌に押し返されてとまった。  
未沙は苦しそうに咳き込みかけたが、堪えた。  
歯をたてぬよう銜えると、唇の内側を使って吸ってきた。  
「ん」  
彼は思わず腰を引きかけた。  
先端の穴を、細い舌がややたどたどしく、だが丁寧に吸い上げていく。まずい、と思った。  
じんじんと、一気に熱さを増した脊髄から腰にかけての快感を持て余す。  
「未沙…」  
名を呼んだが、彼女は一生懸命なのかかすかにも頭をあげようとしない。  
先端を刺激するだけでは物足りなくなったのか、彼女はそっと顔を引いた。  
どこやら輝がほっとしたのもつかの間、彼女は顔を傾けると棹の幹に沿って舌を滑らせてきた。  
どうも暗闇だということが彼女をより、かなり大胆にさせているらしい。  
(うわ…)  
ぞくぞくして彼は背筋を伸ばした。舌は幹の裏側まで伸ばされ、そこに太く浮き出た筋をねっとりと愛撫していく。  
その動きは慣れているとはいえないが、そのたどたどしさがかえってイヤらしかった。  
(やばい…!)  
舌を猫のように薄くして何度もなぞられると限界が見えてきたような気がして彼は焦った。  
 
今日は時間がないのだ。  
イきたいのはやまやまだが、どうせなら彼女を抱いた状態でイきたいのである。  
未練はあったものの、だから彼は腰を引いた。追ってくる彼女の顔を掌で挟んでしゃがみ込む。  
「待って」  
あげてきた顔から肩、脇腹まで手を滑らせると、彼は力任せに床から未沙を引き上げた。  
ぐにゃぐにゃしている彼女をコンソールにもたせかけ、いつのまにかずり落ちて居た上着とブラを押し上げる。  
双つの果実にかぶりつくと彼女はかすれた喘ぎを絡ませて声をあげた。  
捏ねながら揉みしだき、掌のままにぼんやりとほの白い乳房の線を崩す。  
しっかりとした弾力があるくせに底知れぬほどに柔らかい。  
しっとりと肌は掌に吸い付くようだ。指先はどこまでも潜り込んでいきそうだ。  
麻薬に似ているんだろうと彼は白濁しつつある意識の片隅で考えている。  
不思議なことに女の躯は触れているだけでも気持ちよすぎて、もっともっとめちゃくちゃにしたくなる。  
乳房の先端を銜え、どこかさきほどの愛撫に復讐する気分で舌先で捏ねた。  
「んー…、んん…!」  
未沙は、輝の首っ玉にしがみついた腕に力を込めた。  
いやいやをするように躯をくねらせる、このうえなく吐息が熱い。  
「やぁ……、や、ん、…いやぁ」  
すでに拒否の響きはかけらもない。  
乳首もろとも乳頭をべたべたに吸い込んだまま、甘く啼く女の声を耳朶に確かめながら輝は薄い下着を一気に膝まで引き降ろした。  
足首から片方ずつ抜き取ってそのへんに放り投げる。  
「あ…」  
斜にコンソールの上に押し付けると未沙は弱々しく肩を震わせた。  
長い髪が台上から空になだれ落ち、なだらかな腰のラインがうす闇に浮かび上がる。  
もっとあかるければこれ以上淫猥な光景は無いに違い無い。  
 
尻肉を両手で掴み、彼が身を寄せると未沙は息をひそめたようだった。  
震えながら両腕をたて、コンソールの上に身を起こす。  
線の丸みを感じ取りながら脇のラインに沿い、なめらかに浮かび上がる腰骨のくぼみに指をかけるようにして女を捕らえた。  
勃起したものの先端を軽く、キスのようにそこに触れさせると未沙はうめいた。  
「あ…あ…!」  
「…うん、すっごく濡れてる」  
ひと呼吸おいて輝は低く囁いてやる。  
「ほら」  
先端をゆっくり浅く出し入れさせるとジュプ、ジュプと、あからさまな潤いの証拠が暗闇に響いた。  
「あは…んっ、もう、だめ…いじわるっ!」  
未沙が小さく罵る。本人は訴えているつもりなのだろうが、その喘ぎにはエスカレートしていく期待感としつこくじらされることへの不満がありありと浮かんでいた。  
変な話だがこんな瞬間、女を抱くのは愉しいことなんだなと彼は思う。  
「ばか…」  
「え?」  
抗議にわざと聞き返す。  
「いじわるっ!…ちゃんと…して…」  
未沙はお尻をくねらせた。刺激にうずいて、動かずにはいられないのだろう。  
「うん」  
輝は簡潔に応じると、すくうように腰を押し付けた。  
屹立した剛直で、熱く濡れそぼり彼を歓迎する襞をおしこみながら一気に奥まで貫いた。  
唐突な力強さは未沙の躯を瞬間押し上げる勢いで、抱きとめている彼女の背中が緊張して、それでも刹那の声はたまらなくだらしなかった。  
「ぁあー…っ…!」  
「ほら、ちょっと声が大きい」  
輝の指摘も聞こえないかのごとく彼女は残りの吐息を吐き出した。  
「あっ…あ、あ…」  
彼女の中は熱くてきつくてぬるぬるで気持ちよかった。  
目前の首筋を舌で舐めるとかすかに塩辛く…汗がにじんでいる…動脈がめちゃくちゃな早さで打っている。  
「ふ…うっ…」  
彼女は苦しそうな、そのくせやけに色っぽい息をついた。  
 
女の躯から力が少し抜けるのを待つ。  
ころ合いをみて腰にからめていた指をはずすと、彼女はふらふらしながらもなんとかコンソールにすがりついた。  
その後ろから、細い躯をはさむように輝もコンソールに両の掌をつく。  
「あっ…」  
その体勢が深く挿入することになったものか未沙がかすかに啼き声を漏らした。  
小刻みに腰をうねらせながら未沙の躯をコンソールに押し付ける。  
大きな動きはできない。躯が密着しているからだ。  
それでもこりこりした膣の感触が先端を押し包み、花弁が幾重にも幹をしめつけまとわりつき、えぐるたびに愛液の芳香が濃厚になっていく。  
「…は…ぁ」  
つきあげて、ぬらぬらと押しいれて、内臓をおしあげるほどに深く、深く…。  
「うっ…ん…あ…。輝…」  
無言で行為に没頭しかけた彼の耳朶に未沙の喘ぎが届いた。  
「や…やなの。…お願い…あ…あ…こんな、このままじゃいや」  
「気持ち、いいだろ…?」  
暴かれたまま動きにあわせて揺れている乳房の先は誇らしげに勃っている。  
彼女を支えている指にかすかに触れるからわかった。  
「ええ…でも…」  
また素直に彼女は頷き、だが必死な響きで囁き続けた。  
「ちゃんと抱いて」  
輝は乱暴にうなじにキスすると、未沙の腕をはなした。  
ちゃんと、というのは彼女の場合正常位をあらわしている。  
女はそれが一番安心するのだとどこかで聞いた記憶があった。  
正直に言って、こちらも耐えられなくなってきている。蓄積された快楽は堰の上限に近付きつつあった。  
 
もつれながら床に崩れ落ちた。  
無理な体勢に堪えきれず抜けかけるものに指を伸ばし、未沙はかなしげな声をあげた。  
「あん…!」  
熱いぬかるみからぬめりの糸をひく男根を引き抜くと、輝は彼女の腰を引き寄せた。  
片手で細い足首をつかみ、投げるように脇に伸ばす。その勢いで同時に大きく開いた太股の間に躯をねじいれおもいきり開かせた。  
すでにタイトスカートは腰、いや腹の上にまでぴっちりとまくれあがり、なんの役にもたってはいない。  
そのスカートをさらに奥に封じこめるように彼女の太股をなめらかな腹に密着させた。  
片脚を肩にはねあげると、輝は挨拶めかせてそのふくらはぎを軽く噛んでみる。  
「ふ…う…」  
甘く震える呼び掛けを確かめると彼は腫れぼったく充血しているであろう谷間に、濡れた音をたてて押し入れた。  
気を持たせる余裕はなく、柔らかな抵抗に弾かれるくらいの奥にまで入り込んだ。  
「あああああああっ!」  
反射的に背筋を大きくのけぞらせた彼女を押し返しながら、摩擦の大きい床の上で抱きすくめる。  
「あん…はあ、あ、あっ…」  
艶をまぶしたような上ずった響きと共に、自由なほうの手が輝の顎に触れてきた。  
その腕を掴んで首っ玉に巻き付けてやると、彼女がはっとしたように躯をこわばらせた。  
「あ…」  
自分が小さからぬ声をあげていることに気付いたのだ。波打っていた腰の動きがふと、ためらうように凪いだ。  
「いくよ」  
つきあう余裕はもうないので彼女の羞恥心には気付かぬふりをして彼は動きはじめた。  
むっちりと脂ののった太股の裏に腹があたり、ぴしゃっ、ぴしゃっと軽い叩き付けるような音が響く。  
ついさっきの無理なポーズほどの圧迫感はないが、それでもその蕩けた花芯は彼の幹をそそりながら扱き、締めつけた。たまらない。  
何度も何度も深く打ち付けた。浅く、自然にひきとめられるところまで引き抜いては貫いて彼女の喘ぎを楽しんだ。  
 
耳もとにたちのぼるその声が、やがて突き動かされるように腰が、彼の動きに完全に同調するまでわずかに十数秒しかかからなかった。  
「ふっ、あ…、ああ、あ、あんっ…!」  
貫かれて跳ねるように小気味いい腰の動きが、その押し殺した切なげな喘ぎとそぐわなくて、そしてとてもみだらだった。  
「ああ、ああ、だ…め、だめっ、もう…!あっ!あっ!ああっ!」  
容赦のない力強い抽入がはやさを増し、悶えるようにして女は細い歓喜の声を漏らした。  
「ああーっ…!!」  
ほとんど同時に、とどめをさすのにも似た勢いで彼は射精していた。  
睾丸がぎゅっと強く引きつり、尿道から精液が強い勢いで波打ち溢れ飛び出していく。  
収縮のたびに強烈な快感がはじけ、輝はうめいた。  
「ううっ…」  
白濁した精液が彼女の膣を満たして行き場をなくして荒れ狂っている様子を、余韻をひいて押し寄せる快感の中で彼はぼんやりと想像していた。  
 
彼女を助け起こして投げ捨てた下着や靴を探し出し、なんとか不審でない程度にそれぞれが身支度を終わるまでそれでも4分ほどかかった。  
「マクロスに軍用犬が乗ってないことをこんなに嬉しく思ったのは、はじめて」  
未沙がほっそりした指でスカートのしわを伸ばしながら呟いた。耳朶が赤い。  
彼がパネルに目をやると残り時間は2分しかなかった。  
そうと知ると彼女は慌てたように長い髪を整えながら立ち上がり、その後ろ姿に輝は声をかけた。  
「じゃ、任務が終わったら連絡してくれる?」  
「そうね…あなたはどうするの?」  
未沙が振り向いて尋ねると輝はにやっと笑い、気楽そうに答えた。  
「部屋に戻って寝なおすよ。…おかげで、ああ、戻ってきた、って気がしてきたから。ありがとう」  
彼女の耳朶だけでなく首筋まで赤くなったのが逆光の中でも確認できた。  
「…いいご身分ですこと。ゆっくり休んでね」  
未沙は廊下に身を翻し、ドアがスライドしてその足音を消し去った。  
おつかれさまと口の中で呟くと彼は転がったままのヘルメットを持ち上げた。  
そうはいってももう一度愛機の状態を見ておきたい。  
今後の編成のための資料や報告もまとめる準備が必要だろう。  
生き残ったパイロットとしての役割はこれで結構あると思う。  
 
やっぱり楽はできそうもないな。  
そう胸の内に唱えると、輝は落ち着いた足取りでドアに向けて歩き出した。  
 
 
【おわり】  
 

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