「ある日の休日」の巻  
 
「ちっくしょーーまたやられた」  
珍しく家に籠らず町に繰り出している人物・・伊庭かおりだ  
今は・・と言っても毎回だが金欠なので「ゲーム」を買う余裕がない、ただ100円も無い訳ではないのでアーケードと言うわけだ  
しかし無情にも財布に入っている100円はさっき入れた物で最後で、画面には「GAME OVER」と虚しく表示される  
「あー敵わねーなー」  
女っ気のなく髪をボリボリと掻いてTOP10のスコアを見る・・自分とはほど遠い数字だ  
「しかしこの台はこいつで独占か・・すげーなS・K」  
一種のライバル心を燃やすが・・・何時肩を並べられるか判った物ではない  
「やーめた!やーめた!帰る!」  
ちんぷり返って乱暴に椅子を戻し、家路につこうとするのだが  
「あれ?先生?」  
「んぁ!?おぉ式森・・お前もこーいう所来るのか?折角だから・・・」  
「嫌です」  
まだ無いも言わぬうちから返事をしてやる  
「まだ何も言ってないじゃないか」  
「どうせ、金を貸してくれでしょ、何度言えば・・いいです相手にするだけ・・しっかりしてくださいよ」  
あきれ顔で仕方なく十分と判断した量200円を渡す  
「流石式森だっ!そう言うところは好きだぞ!」  
何食わぬ顔で頬にキスをしたかと思えば風の如く戻っていく  
「ちょ・・はぁ・・忙しい人だなぁ」  
 
「よし!リベンジマッチだ!今度こそやられねぇぞ!!」  
気合いを入れてコインを投入し望みのゲームを選ぶ、スタートボタンを押そうとしたところ・・  
「あれ?先生?ここですか?」  
「ん?わりぃか?まぁいい先生の華麗なるプレイを見ていけ」  
自慢出来るほどじゃないがどっかの素人よりか腕は立っていると自信がある・・ただ「S・K」に勝てないだけだ  
ステージ1・2を軽々とクリアしてみせる  
「どうだ!?凄いだろ!これからちょっと難しくなるんだがな」  
「あー凄いですねー」  
ステージ3は多少ミスをしたがクリアはした、ステージ4ではボスにたどり着く前に  
「うおっ!?ちっきしょーおい!式森!10秒・・」  
「嫌です」  
2度目は甘やかす事はしなかった、待っている自分も悪いのだがこの台に用がある  
「ん?ひょっとしてお前もこれか?やめとけ!やめとけ!どんくさいお前じゃ10分持たないぞ!」  
「えーじゃぁ精々頑張りますよ」  
「っま私のプレイを見てただろうから、15分にしといてやるか!じゃーな」  
少々機嫌が悪いようだが自分の華麗なるテクを見せれて、多少改善したようである  
そして彼式森和樹も自分の担任教師が華々しく散ったゲームにコインを投入する  
 
「で?式森?昨日はどれだけ持ったんだ?12分ぐらいか?」  
「え?計って無かったですね」  
昨日の生徒の出来を学校で聞いてやる  
「なんだ計るのも惨めなくらい早くやられたのか?」  
「そうじゃないんですけど・・多分1時間ちょいだと・・」  
その数字を聞いて呆れるのは伊庭だ  
「はぁ?お前金持ちだなぁ・・何円使ったんだよ・・1時間って」  
「100円ですけど」  
「何・・・だとぉ?」  
どういう理屈だ?あのゲームにはモチロン時間制限だってある、タイムオーバー限界まで頑張ってタイムが加算される地点に向かえば・・  
いや無理だ・・じゃぁどうやって  
「じゃぁなんだ?ミスもしないでクリアでもしたつーのか?」  
「えぇ」  
さらっと簡潔に結果を言って述べる・・なんだと!?  
「な!なにぃ!?玄人専用とも言われたあの「ME○AL SU○G3」をかっ!?」  
「そうですけど・・変です?」  
「変もなにも式森っ!!あっ!?」  
そういえば・・スコアの名前は「S・K」だったか・・いや・・まさか?でも合点はいく  
「まさか・・S式森・K和樹・・だとでも?」  
「えぇそうですよ?」  
にこやかに答えてみせる・・今までこいつを出来損ないと思っていたが・・  
「そ・・そんな・・バカな・・えぇいい!!式森!!」  
血相を変えて彼に問いただす  
「は!はい!?」  
何時もと違い大まじめなのでちょっとドキッとしてしまう  
「その・・なんだ!私に技術を教えろ」  
「えぇと・・あれの場合習うより慣れろです」  
「金が無い」  
全てがその一言で解決させてしまうのが彼女なのだ  
「じゃぁ部屋でPS2版でもやります?」  
「話が判るじゃないか・・今日もみっちりと補修授業だな」  
どっちが補修というか教わる側だったか・・  
「だけど一日二日で上達するもんじゃ・・・・・・」  
「私は一日二日で上達したいんだっ!」  
意地なのか知らないが教師が生徒に教わっては沽券に関わる  
「は・・はぁ・・そ・・そうですか」  
 
「まず初めに、先生は5つので分類すると「強行突破型」です」  
「ほぉ言うじゃないか」  
「判ってると思いますが、ボム等の強力な武器を使ってその場を凌ぐ事ですが、駆け足は確かにステージ1・2ではなんとかなるかもしれませんが、それ以降では息切れしてしまいます」  
もっともだ、敵が強力で尚かつ多くなると、この手は通用しない  
「先生が何を目指してるか知りませんが仮に1コインクリアだとしても、敵の出現パターンくらいは覚えないと話になりませんよ?」  
「わかってるよ」  
ぶっきらぼうな返事をする・・本当に女性化と疑いたくry  
「話を続けますね、どこでどのアイテムが出て、どれを取ってどれを取らず、何を残し何を使い切っていいのか」  
当たり前のサバイバルテクニックを普通に話す  
「こんな感じです「HBGアHア(H)アア(B)アアアア(H)HアCアDアIアHア」なんだか判りますか?」  
そう書いた紙切れを見せてやる  
「んー?なんだこりゃ?新手の暗号か?だが単調だな」  
「えぇステージ1の上・下 川下りルートの捕虜及び敵の出す武器と得点アイテムの順です」  
サラサラと迷いもせず書いた辺り、どれほどそれが頭に入っているかを表しているだろう  
「お前こんな物覚えてやがるのか?その知能を少しは勉強に使え」  
「なんなら1・2・X・3の4作品の隠しアイテム・隠し捕虜を99%教えてあげましょうか?」  
「残り1%はなんなんだ?」  
ご存じの方もいるかもしれないが  
「MS1ステージ3のビル破壊後の4人です、大木を倒すと一本につき上から二降ってくるのですが、発売後10年経っても確実な出しかたは判明してません」  
(ご存じの方是非私にご教授下さい)  
「はぁ・・まぁいい!じゃ!さっそく実技教習をしよう」  
「じゃぁ聞きますが、このシリーズで大まかに言うと敵はどんな攻撃をしてきますか?」  
「何?そりゃ・・私を狙ってくるなぁ」  
「はぁ・・」  
いったいどこから説明すればいいのか・・頭が痛い  
「直線型、誘導直線型、誘導型、放物線状、無差別型、固定型、近接、この7つですOKですか?」  
「ん?意外と・・」  
「少ないと思うでしょ?エフェクトが違うだけで、このカゴテリーに分別できるんです」  
言うのは簡単だが、大抵複数の攻撃が一緒に来るのでやられる訳だ  
「ちなみに、MS3ステージ1の場合直線、誘導直線、固定、放物線・・・全ての分岐を含めてこの4つです、ステージ2では・・」  
「判ったもういい」  
「言うまでもないですが一番簡単なのが固定と直線です、しゃがむなりジャンプするなりで回避可能です」  
いつになくイキイキと説明する和樹である  
「ほー一度に一杯来るからやられる訳か」  
「そうですね、始末する順番も重要ですよ?」  
 
「じゃ先生この課題をクリアして下さいね・・センセーなら楽勝でしょ?」  
「何!?先生に宿題を出す生徒が居るとは・・・前代未聞じゃないか」  
そこには「とりあえずゲームをクリアしよう」「大まかに敵のパターンを覚えよう」「無駄遣いを無くそう」等と超簡単なノルマが記されている  
「っけ!ふざけやがって!首洗って待ってろよ!式森!」  
「はいはい」  
宿題を出しておいたので放課後に呼び出しを喰らう可能性は少ないだろう  
「よし!式森!敵の位置以外はクリアしたぞ!恐れいったか!!」  
「何か気が付きましたか?」  
「まぁな・・自分の無駄使いとかな・・勉強になったよ」  
一つランクアップだこの調子でガンガン進もう  
「じゃぁ次の課題です、ボスの発狂というか・・攻撃が苛烈になったらタイムアップまで闘ってください」  
「なにぃ!?タイムアップ?」  
つまり一番ミスの多いボス戦に慣れさせる寸法だ  
「ステージ4・5は目をつぶるので123はやりとげて下さいね?」  
「じょ!上等だ!!」  
そうしていくうち伊庭はメキメキと力をつけたのであった(なんだってっ!?)  
「じゃぁ今日はテストです、見事合格できたらご褒美がありますよ」  
「っけなにがだ・・よし!やってやろうじゃないか!」  
この前まで行くのすら躊躇ったゲームセンターに堂々入店する  
「やり方はセンセーの自由です」  
「言われなくてもそーするよ」  
コインを入れていざ勝負だ  
「よし!!私のこの手が真っ赤に燃えるっ!!お前を倒せとっ轟叫ぶうぅぅ!!」  
腕まくりまでして気合十分だ、順調に進み時折「おぉ」とか「ほぅ」とか和樹を唸らせて見せる  
順調にステージ4まで進み、一番愛されている&憎まれているボスキャラクターまで到達する  
「行くぞ!この豚っ鼻っ!」  
「まぁ「消臭ポット」とか「土器野朗」とか「ドキッ!?屍だらけの塔の上♪」とか言われてますからね」  
白熱のボス戦を征しネクスト!ファイナルミッションだ  
「ヒートッ!エンドッ!!見たか!あの黄弾も避けてやったぞ」  
赤くなる前だったので事なきを得たのだが、赤くなった後は冷や冷やしたものだ  
「おーやりますねーいよいよ最終ステージじゃないですか」  
最終ステージも危なげなくこなし宇宙に向かう  
「ほうほう、つっかえなくココまで来ましたか」  
「へへっどんなもんだ」  
宇宙戦では通常と違い画面全体を使えるのでややプレイヤーに有利だ  
「よし!もらった!人間ロケット発動!」  
「おぉそれまで披露しちゃいますか」  
和樹が驚愕するのも無理はない宇宙戦でスラッグを最後まで残し自機突入と、生身バージョンのミサイル突入を見計らい、ミサイル無しで頭突きで装甲板を破る荒技である  
 
宇宙船内でもあぶなげなくこなしクローン兵士地帯まで突進する  
「うらっ!うらっ!!邪魔だ邪魔だ」  
あれよあれよと言わんばかりに捕らわれた仲間を救出しラスボスに臨もうとする  
「ほほぉ・・やりますねぇ・・でも最後までいけますか?」  
「なめんなっ!」  
程なく最終地点に到着し、宇宙船から脱出する  
(しかし、何故あの戦車に大気圏突入能力があるのか・・と考えては負けだ・・そうか!白い悪魔だからかっ!えぇいっ!連邦のMSは化け物かっ!)  
「この脳みそ野郎!寿司のネタにしてやるぞっ!」  
「美味しいかは知りませんけどね」  
なにかと搭乗・脱出無敵を使っても意外に苦戦するこの脳みそ野郎である  
(余談だが、Fを25発とボムをあるだけ当てれば倒せる事は倒せる)  
「爆熱っ!!ゴットッ!フィンガッーーー!!!!」  
定石のCボタン連打である  
「おー知恵をつけましたね」  
だが何が面倒かというと、多少はPの位置に左右するのだが、下からの球体攻撃はランダムなのがネックである  
「おっとっあぶなっ・・・」  
脳みそレーザーを回避しようとスラッグに乗り込もうとしたところ、下からの・・ry(あると思います!!)  
「あーあー順調だったのにぃ」  
「る!るっさい!あと1回ある」  
復活して10個あるボムを当てたところ・・・絶叫と共にボスが朽ち果てていく  
「な!なんだよーー!!!あと少しだったのにっ!!」(これもあると思いますっ!)  
「ほっほーミス1回ですかっ・・流石にノーミスは無理でしたけど十分合格点ですよ」  
頑張った伊庭を褒めてやる和樹  
「ん?合格?そうなのか?で?何をくれるんだ?金か?」  
「ねーよっwセンセー?明日は暇なら・・一日付き合ってもいいですよ?」  
そういえば、この特訓中禁欲というか・・・ご無沙汰だったっけ  
「んー?なんだ?式森ぃ?やっぱりこのゲームより・・セックスの方が得意だってか?」  
ゲームセンターとは意外にウルサイので二人の近い会話なら結構、聞き取れない物である  
「その判断はセンセーに任せますけどね・・で?どうするんですか?」  
「っけしょうがねーな付き合ってやるよ・・・その代わり・・楽しませてくれるんだろ?」  
「そういうことです」  
それが頑張った褒美・・なんか釣り合いが合わないかもしれないが・・どうでもいいことだ  
「そういえば、お前あのゲーム何年やってるんだ?」  
「この道11年になります」(私10の時にこのゲームの素晴らしさに目覚めました)  
「お前いくつだよ」  
 

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