「Legend of Mobius1」の巻き  
 
某国情報管制本部  
「あーあぁ今日も平和だな」  
ここでは軍事衛星からの監視により世界中の情報をモニターしている、一種の監視塔である  
「まぁ世界中で軍縮が叫ばれて、オリンピックもあるんだ暫くは平和さ」  
隣に居た隊員がさも当然のように今現在の状況を話す、そんな普通の会話は突如遮られた  
ブーン!ブーン!ブーン!と突如警報が鳴り響き赤いパトランプが点滅する  
軍事衛星がなんらかの異常を発見した場合、発せられる信号である  
「レッドアラート!?どこだ!?場所は!?」  
「ええと・・着た!Z国!場所はフランダース岬より内陸380キロ!低解像度カメラの分析・・巡航ミサイル!!」  
モニターを確認すると数台の車両が連なって細長い何かを運んでいる  
「違う!これは・・核弾頭じゃないのか!?至急!!データーと共に基地司令官及び、大統領府に連絡!!」  
「計算結果・・まだ燃料補充を済ませていない模様・・しかし!12時間以内には発射可能かと!」  
一瞬で緊迫した模様を見せる施設内・・そして老いた隊員が一つのメッセージを発する  
「若いの、落ち着け・・こういう時には深呼吸だ」  
「落ち着いていられますか!!緊急事態です!!」  
「しかしな?12時間では普通の軍隊は間に合わんだろう?」  
当たり前だ、一番早い航空機を繰り出しても、いくつもの国を経由して行き着く必要があり  
それに1時間程度ならまだしも数時間に及ぶ飛行では身が持たない  
「ここは彼女の出番だよ」  
「彼女?だれなんです?彼女って」  
「ま・・まさか、伝説の・・彼女!?彼女ですか!?」  
一人は知らないようだが、もう一人は知った口である  
「そう・・以前にも似たケースで単機で出撃、警戒網を張る40機の適性航空機相手に機関砲で応戦、すべてをエンジン部に命中させて撃墜数39  
一機は逃げたようだが、パイロット生還率も100%!!その後も凄まじい」  
話によると輪形陣を取った対空機関砲とミサイルの「要塞」に被弾することなく最小限の敵破壊で目標を撃破、悠々帰還したという  
「なんでもここの計算じゃ一個飛行中隊と戦略爆撃機5機分の働きをするみてーだぞ?」  
爆載量が明らかに違う戦爆5機分とは身の毛のよだつ話だ  
「今頃、大統領府でも彼女に連絡してるころじゃないのかな?」  
 
そして日本  
「リーラ、いつもありがとう」  
「いえ、式森様のためですので」  
休日の朝を満喫している彼と一人のメイド、だが唐突にそんな素晴らしい朝が打ち破られる  
彼女の携帯電話が鳴り響く、普通の着信音ではない なにかあったんだろう  
「失礼します、ハイ!私です・・はい・・え?はい……はい、判りました今すぐ出撃の準備を整えます」  
「ど・・どうしたの?切羽詰った顔して・・」  
「申し訳ありませんが、話す時間すら惜しい事態です、私の非礼をお許し下さい、出撃いたします!」  
いったいどこに、と思ったが止めはしない何故ならば絶対に彼女は帰ってくるであろうからだ  
 
駆け足で部屋を出ては、今では普通の光景だが「勝手に」改造した彩雲寮の秘密の部屋にたどり着く  
「準備いいか!?」  
リーラが怒声に近い声を上げる  
「もちろんです!いつでも出撃可能です!隊長!」  
「今回も単機だ、彼方達の出番は無いその代わり天使とダンスでもしていなさい」  
非常事態用にその秘密の部屋は格納庫になっているようで、5機の戦闘機が格納されていて、その内の一機尾翼の「Mobius1」が特徴的な機体  
(F-35 VSTOL機である これなら滑走路の無い所でも飛び立てる)  
「行って来る」  
「Mobius1出撃ぃぃ!!いってらっしゃい!!」  
そこにいた隊員、整備兵が一斉に掛け声を発してジェットエンジンの爆音が唸り出す  
この機体で最寄の飛行場に立ち寄っては最新の情報、作戦指示を受けるのだ これでは出撃しない  
 
最寄の基地に到達した彼女は機体を乗り捨て後を任せる  
「メビウス1!只今到着いたしました!」  
「うむ、早速だが作戦伝達だ、聞いての通り核発射という緊急事態を事前に食い止めてくれ、この作戦は君にしか実行できない」  
そんなことは判っている、大編成で押し寄せてレーダーに感知されて核発射が早まるのがオチである  
「詳しい場所は?フランダース岬より380キロ程度ですと・・険しい山岳地帯の筈ですが」  
「そこが盲点なんだ、険しい山岳地帯の特性上、機動部隊は著しく行動を制限され、航空部隊も低空飛行は困難だ」  
それゆえのその場所で発射用意なのか 判ってはいるが悔しい思いをする  
「そこで君、メビウス1による単独進入を実行して、敵ミサイル発射車両及び敵施設を破壊して欲しい」  
「施設ですか?そこは聞いてませんでした」  
「うん、近くにどうやら濃縮を行う施設も含まれている、各施設を一網打尽にできるプランだよ、どうだい?素敵だろ?」  
確かに素敵過ぎる作戦だ  
「そのような重要施設がむき出しとは考えられません」  
折角の山岳地帯なのだきっとトンネル内部にあるに違いない  
「うむ・・軍事用トンネルから航空機ごと突っ込んで、搭載爆弾を全て放ってくる・・これが作戦全容だ」  
まさにクレイジー!馬鹿げている航空機のトンネル通過など聞いたことの無い話しだ  
「そうですか・・それしかありませんね・・今回も例の機体で出撃ですか?」  
「そうだ!君の愛機だよ」  
ハンガーのすぐ隣の作戦会議室なので小窓からは、かつて世界を救った伝説の戦闘機が出撃を待っている  
(F-22・Mobius1限定仕様 極限にまで防御力を下げた引き換えに手に入れた素晴らしい加速力・最高速・旋回性能!さらには兵器搭載量も改造を重ね  
増槽を4つも取り付け、各種ミサイルを4発づつ搭載可能だ)  
「作戦前にZ国近隣諸国には協力要請をしてある、増槽を捨てたらその分武装も可能だ君の判断に任せるよ」  
あくまでメインは核発射阻止と施設破壊だそれ以上はお任せらしい  
「作戦目標了解・・0830時に出撃、目標空域に向かいます」  
「AWACSも作戦地区に向かわせる、現地での指示は奴から受けろ」  
「了解!出撃します!」  
部屋を飛び出し、華麗にコクピットに身を投げ入れ出撃準備を完了する  
 
「司令官殿?あれが・・」  
「そうだ、よく見ておけかつて世界を救った英雄メビウス1だ」  
近くに居た兵士や整備兵が寄ってくるそれほど伝説的な存在なのだ  
「しかし・・美人ですね」  
「あぁ…勃起た(たった)」  
女とは聞いていたが、普通にメイド服で到着、普通にメイド服で出撃していく それも伝説の由縁である  
轟音とともに一機の戦闘機が飛び立って行く、そう世界を救う為に  
「さて!仕事だ!仕事!」  
 
≪こちら空中管制機、サンダーヘッドまた会ったな≫  
「また貴方?ひさしぶりね」  
≪英雄に覚えて貰えているとは光栄だ、さぁそろそろ作戦空域だお喋りは終わりだ≫  
「貴方の方がお喋りじゃない」  
冗談半分の会話を終了し作戦に入る  
≪作戦に変更なし、レーダーに目標を転送する、頼んだぞ!≫  
無言で機体の速力を上げて山岳地帯に入り込んでいく、ここからは彼女の仕事だ  
「レーダー確認・・方位025、天候は霧絶好の攻撃日和ね」  
3・4分ほど低空で渓谷を巡航で突破して、攻撃目標を視認する予定である  
事前に戦闘機のコンピューターを改造して一番目標を破壊しやすい所にロックするようしてある、勿論システムを一旦切って目分量で発射も可能だ  
「目標視認!攻撃行動に移行・・ロックオン!AGM発射!」  
下から慌てて小銃のような物を発砲しているようだが当たりっこない  
≪確認・・目標破壊!目標破壊!!敵核兵器沈黙!!次だ!≫  
さらに数キロ先には核施設がトンネル内にあるらしい  
「あれ?あれなの?小さい・・でも!行くしかない!」  
閉まっていたシャッターをミサイルで強引にこじ開ける  
≪メビウス1のトンネル進入を確認・・頼んだぞ≫  
トンネル内という事で電波状況が悪い、見ているしかないのだ  
「こんなところにご丁寧に施設を作ってくれましたね、でも・・私がやる」  
目の前に数名兵士が見えるが機関砲でなぎ払う  
「これか!!UGB及びFAEB投下!!対艦ミサイルも同時発射!!」  
確実に目標物を破壊するため搭載してきた爆装を全て施設に向けて発射・投下しておく あとは退散するだけだ  
狭いトンネル内を高速で飛行し一刻も早い離脱をする、遅延式の爆弾・ミサイルであるが業火が自分を襲ってしまう  
「光・・出れる!行ける!!」  
眩いばかりの日の光に誘われるがままに施設外に突き出ると同時に急上昇  
その刹那トンネル内から火山噴火のような焔が吹き上げてきた  
「目標破壊!目標破壊!サンダーヘッド聞いているの!?」  
≪勿論だ!!お手柄だ!また勲章が増えたな!だが作戦成功を喜ぶのは戻ってからだ≫  
「そうね」  
 
≪レーダーに敵影・・どうやら返したく無いらしい、敵性反応10!君なら楽勝だろう≫  
「問題ありません、振り切るか撃墜します」  
施設破壊に専念するため対空兵装は積んでない、機関砲のみで応戦する事になるが・・以前の働きぶりから見れば楽勝である  
≪こちら、メテオール3、隊長楽な仕事でしょうね≫  
≪だろうな、戦闘機一機にこっちは10機・・本部も何を考えているんだ≫  
10機の敵が一斉にこちらに機首をむける普通に考えれば絶望的な状況だ  
≪メビウス1!!ENGAGE!!≫  
「メビウス1、ENGAGE」  
スロットルを絞って機体を加速させる、勿論この機体について来られる戦闘機なぞ世界のどこにもない  
≪早い!皆注意・・≫  
≪被弾!被弾!エンジンをやられた・・推力が保てない!!離脱する!≫  
一瞬のすれ違いざまに機関砲をエンジン部に命中させパイロットを生きて帰すのはまさに神業である  
のちに監獄で一人の兵士がこう語った・・彼女の雄姿を  
「目を疑ったさ、IFFの反応は1つどう考えてもこっちの勝利は磐石、だが5分もしないうちに味方の機体は全部撃墜されちまった、背筋が震えたよ」  
≪よし、敵機全滅を確認!さぁ家に帰ろう≫  
「了解です、只今より帰還します」  
≪待て!レーダーに新たなる機影確認・・しぶといな、ん!?多いぞ!大群だ!!≫  
「こちらでも機影を確認・・目標数おおよそ50」  
≪だめだ!逃げろ!流石に無理だ!!≫  
「私は誰ですか?Mobius1ですよ?」  
≪やれやれだな・・判った!だが無理はするな!!≫  
50対1の圧倒的不利な状況で敵に向かうその姿勢・・まさに目に見たものは鬼を見たであろう  
≪レーダーの反応1、だが敵は手馴れらしいしかし数が数だ生きて返すな≫  
≪了解、了解ミサイルはともかく、施設までやられたしな・・ちゃんと代金は払ってもらわないとな!!≫  
だがその50人のパイロットが見たのは真逆の空中戦だった  
≪メイデイ!メイデイ!後ろにつかれた!!誰か!誰かぁ!≫  
≪ブラック8!くそ!ベイルアウトを確認!何者だ・・≫  
まるで此方が狩られているかのように交戦3分で4機が落とされた  
≪こちらイエロー13!ケツについた・・もらった!!何!?≫  
「甘いですね」  
≪う!後ろ!!?いつのまに!?≫  
ボス!ボス!ボス!と機体を叩く音がする機関砲が命中したのだ  
≪ウヲォ!!左翼が・・無い!!だめだ落ちる!離脱する!!≫  
黒煙を吹き上げて落ちるのは味方機ばかり・・それに引き換え奴はこちらの行動を手に取るように判っているのか楽にミサイルや機関砲を回避する  
≪ブラック1より各機!一斉にミサイル発射だ!終わらせろ!!≫  
≪こちらブラック9、何言ってるんですか!!ロックすらできゃしませんよ!!≫  
≪ブラック2より・・が!が!ザー≫  
また一機と黒煙を噴いて戦闘機が落ちている、だが不思議なことに全てパラシュートは確認できる  
 
≪敵性航空機の約半数を撃墜、大丈夫か?≫  
「あと2回おかわりできるわ」  
それはつまり150機相手に戦えると豪語しているのだ  
「それと空中給油か・・補給基地を用意しておいて、すぐ終わらせる」  
≪了解した、敵に誰に喧嘩を売ったか教えてやれ≫  
「式森様・・待っていて下さいね」  
その後あっという間に敵機を壊滅させて敵国の上空をひらひらと羽ばたいて見せて帰還してきた  
時刻が昼の2時をちょっと過ぎたころ一機の戦闘機が戻ってくる  
「あれは・・メビウス1!メビウス1だ!!やった!またやったぞ!!!」  
「あぁ、司令部より命令だ「彼女を最高の状態で出迎えろ」だと」  
滑走路に美しく着陸してはハンガーの近くまで来て機体を止める  
「おめでとう!大統領閣下よりホットラインだ」  
といって携帯電話を渡す  
「そうですか・・私です、代わりました、はい、はい、えぇ作戦成功ですミサイルの破壊を目視、施設も焼き払いました」  
ザワザワと彼女の周りに兵士らが集まってくる、英雄・・もとい美人を一目見ようと来ているのだろう  
「え?報酬ですか?例の口座に・・へ?勲章?結構です、主人の下を離れないといけませんし、はい?それはそれこれはこれです」  
そういって彼女は携帯電話を切った  
「それではこれにて失礼いたします」  
「ま!待ちたまえ!!歓迎会の準備が・・」  
「いえ、主人を待たせる訳には行きません、失礼いたします」  
そう言って笑顔を振りまき帰って行く・・  
全員「メイド万歳・・ハァハァ」  
そのご例の口座にとんでもない程の金額が振り込まれたのは言うまでも無い  
 
「式森様、只今戻りました!お待たせして申し訳ありません」  
「ん?いいよ・・だって大事な用だったんでしょ?」  
ニコニコとそう答え怒ってはいないようだ  
「式森様・・式森様!!」  
彼女の方から飛びついてくる、男としてこれほど幸福なことは無い…と思う  
「ど・・どうしたのさ・・」  
「私・・式森様にお仕えできて幸せです」  
「そ?そう?」  
「はい」  
 

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