「Fen Thanks Week5女武者」の巻
「納得いきませんっ!!!」
怒りを露にした怒号が飛ぶ、折角の美人が台無しである
「だが、これは人類にとって有益なことなのだ・・君には申し訳ないが……」
「だからなんだと言うのですかっ!!人をまるで道具のようにっ!!!」
彼女事、リーラ・シャロンホルストが怒るのも無理は無い、自分の主人「式森和樹」が窮地なのだ
「そうか・・ならば君を罷免するしか無い」
「!!!ッ」
声にもならない声が出そうになる、ここでは階級が絶対・・縦社会なのだ
だからと言って納得がいかない、それではあまりにも残酷だ
「もう用は済んだ、早く荷物の整理をしたまえ、話は以上だ」
「MMMには世話になりました……お礼がしたいので是非受け取ってくださいっ!!」
「ん!?ぷぎゅわぁあぁああ!!!」
その細く可憐な腕のどこにそんな力があるかと思うほどに、椅子に座った上官を殴りつけ窓の外に場外ホームランだ
「私のご主人様が欲しいなら、好きにして下さい、それ相当の対処は致しますがっ」
「ぎ!!ぎみはっ!!何をしたのかっ!!つはっ!!判っているのがねっ!!」
鼻血を押さえ、歯が抜けうまく喋れて居ない
「知ったことではありませんっ、私はもう一般人なんでしょう?中将殿」
「わっ!!わだじわなぁあ!!!各国のじゅのうにもコネがあるんだぁああ!!かっ!!覚悟しておげぇえ!!」
負け惜しみを放ち医務室に向かうようである
「なーにがコネですかっ、私にもコネがあります」
そうしてまだ内なる怒りを抑えつつ彼女は帰路に入った
「ご主人様っ、日本は良い所ですが、夏は若干暑いので、どうでしょう?避暑地に行かれては」
「ん?そう?」
確かに暑いことは暑いが、贅沢に空調の利いた部屋に居るので実感が沸かない
「判りました、包み隠さず話します」
彼女は全ての事情を話した、自分が罷免された事、ご主人様が危ないということ、そして貴方が道具となること
「え?意味が判らないんだけど?」
「つまり、十中八九私腹を肥やすために式森様を実験材料にするおつもりなのです」
そういえば昔そんな経験をしたようなしなかったような
「え?リーラは大丈夫なの?」
「はい?」
罷免されたということは、今はメイドではなく一般人である筈だ
「大丈夫も何も・・私は式森様のメイドです、本部がどうのは関係ありません」
「そっかっ・・ならいいけど・・で?どうするの?」
どうするの?とは和樹とて実験材料になるつもりはない
「はい、辺境ですがロシアにこのような事もあろうかと、私財を投じて要塞を作ってあります」
「よ・・要塞」
和樹の頭にコンクリートで覆われた不気味な建物が連想される
「心配ありません、地下施設に様々な物がありますので、30年は立て篭もる事も容易いことです」
いったいどこまで本気なんだろう?
「さんじゅっ……それはそうと・・勝てる見込みは?」
「何を仰いますかっ、私の計算で相手の兵力はたったの戦車2個師団(約4万輌)歩兵5軍(約30万人)砲兵1旅団(約5千)ぐらいです」
「それ?すごくない?」
「いいえっ、おい入って来い」
「あれ?沙弓さんじゃないですか」
そこには見慣れた顔が一名、そしてメイド服を着ている…うん似合っている
「ご主人様も、ご存知かと思いますが彼女の戦闘行動能力は驚愕するものがあります、勝機はそうですね99.9%と言った所です
「残りの0.1%は?」
「敵の大将が遁走した場合です」
「話は聞きましたっ・・ご主人様に仇す害虫駆除っ!この私に任せて下さいっ!!」
聞くところによると、作戦もクソもないらしく立て篭もっているとみせかけ戦力を集中させて、そこに一騎掛けとのことだ
そうして、ロシアの避暑地に足を運び一週間もしないうちに辺りは凄い光景になっている
「コネっていう程のことはあるっ…戦車3個師団、歩兵6軍、砲兵1師団かっ」
すっかり毒が抜けたシンシアが隣に居る
「私達のすることなんて無いわ、あの子がいるから」
幾千万の軍勢を前にただ単騎でそれを向かえる一人・・だがそのいでたちが真素晴らしかった
大地に刺した大棒には金色の布に朱の弓の一字、そうしてどこに居ても目立つ煌びやかな金色の甲冑に黒の長髪
両手に同じ大きさの大偃月刀(後の神龍大偃月刀)を構えての仁王立ちである
この銃器の発達したご時勢に誠素晴らしい武者振る舞いである
兵士1「そこのお前っ!!武器を捨てて投降しろっ!!」
「え?どうして?貴方達が武器を捨てたほうがいいんじゃない?」
兵士2「この女狂ってるのか?構わん撃てっ!!」
相互の距離は30メートルも無い、訓練を積んだ兵が外す距離では間違っても無い
瞬時に辺りが銃撃の騒音で包まれる、それでも彼女は身動き一つしない……むしろする必要が無い
兵士1「あっ!!当たらないっ!!?」
兵士2「そ!!そんなバカなっ!!」
まるで銃弾が曲がるかのように弾道を逸らしかするどころか明後日の方向に向かって飛んでいく始末だ
兵士3「魔力障壁だっ!!気をつけろ!!使い手だっ!!」
「正解っ、じゃぁご褒美に私が物の使い方を教えてあげる」
足元に合った小豆ほどの小石を手に取り、親指の腹に乗せ・・中指で弾く
たったのそれだけでその弾道にいた兵士の頭が数個吹き飛ぶ(頭は水分が多く、大威力の重火器でおこる現象、簡単に言うとスイカのように爆ぜる)
兵士2「何っ!!?ええいっ!!怯むなっ!!撃て!撃て!!中和弾を使えっ!!」
急ぎマガジンを交換する作業に移ろうとするが・・
「はいはい、無駄なことはしないっ」
右に持った豪槍で横一線に薙いでやる
「じゃぁ私は行くから……退いてくれる?」
といっても聞くものは居ない、先までそこに居たはずの数十人は直撃を受けて胴が二つになり、また烈風を食らった後続も天高く巻き上げられ無様に地に落ちるのを待つだけである
「さぁ!!行きますよっ!地獄の一騎掛け!!」
戦場の果てで今壮絶?な戦闘が始まった
「はぁぁあ!!そこぉお!!」
兵士4「なっ!!なにをしてっ!!相手は一っ!!」
兵士5「軍そぶぅつう!!」
戦車のような機甲も役に立たない、今は二つになってただの鉄の塊だ、銃を使おうにも恐怖で手が震え、足が笑っている
「ほらほらっ!!!その程度!?」
相手は戦闘を楽しそうにしている、そうしている間にも10人単位で屍が増える一方だ
「そーーれっ!!」
強烈なキックで元が戦車だった物体を吹き飛ばしてやる、当然それにも巻き添えを食らい絶命する者が出る
兵士6「じ!陣まで逃げろっ!!もたないっ!!」
陣といっても要塞を包囲する際に応急で作った野営陣だ、防御効果は無い
「ご主人様のためにっ!!推して参りますっ!!」
兵士7「ほ!!ほうこぉぉくっ!!!戦闘が開始されたものっ!!!状況は一方的っ!!」
「当然だっ!!こちらにはこれだけの大軍を用意したのだっ!!勝って当然っ」
殴られたところがまだ痛いが、これだけの軍勢だ勝利は時間の問題だ
「ち!!ちがいます!!先陣部隊は木の葉の如く打ち払われっ!!既に損害率は40%を上回ってっ・・・」
兵士8「き!!緊急入電!!野営陣Aより連絡途絶!!壊滅した模様!!!」
ものの5分もしないうちにあれよあれよと言わんばかりに被害が増大していく
「なっ!?何!?奴はどれだけ軍勢を投入したんだっ!?」
兵士7「そ!それが!!相手は一人とのことっ!!!れっ!!連絡はいりますっ!!」
無線機の音量を大にする
「たっ!!たすけてくれぇええ!!!あ!!悪魔だぁあ!!!うわぁあああ!!!!」
「本部!本部!!とてもじゃないが勝てないっ!!至急増援っぎゃーー!!!」
入ってくる入電はどれもこれも絶望的な内容ばかりであった
「ええい!!数ではこちらが上なのだっ!!!数だ!!数でおしきれぇええ!!!」
怯える兵士を鼓舞するも効果は薄いだろう
一方最前線は順調に進んでいった
「なーにっ!?逃げるのっ!!?」
当然逃げようとする奴にも容赦せず怒りの鉄槌を下してやる
「私が相手をしよう」(マ○ターチーフ)
「目の前にでないでくれる?」
兵士9「チーーフッ!!!」
目の前に出てきた強化服を着た兵士も軽くあしらってやる(マス○ーチーフ戦死っ!!)
「行けっ!!ここは俺がっ!!」(ミッ○ェル大尉)
「それはいいけど・・どいてくれる?」
兵士9「大尉ぃぃいい!!」
エリート風の兵士も出てきた気がするが所詮敵じゃない
兵士7「ほっ!!ほっ!!!ほうこくぅうう!!!!マ○ターチーフ及び!ミッチェ○大尉の両名戦死っ!!!」
「そっ!!そんな!!よりすぐりのエリートだぞ!!最強の呼び声高いエリートだぞ!!!」
「そ・・それが・・瞬時に間合いを詰められ・・銃弾一発撃つことも叶わずっ果てたと……」
「う・・嘘だ・・世界で集めた精鋭強兵がまるで・・まるで新兵・・いやそれ以下……」
愕然と事実を受け止めるしかない・・戦闘が始まってまだ10分とたっていない
兵士10「中和弾すら届かないっ!!!どうなってる!!!」
11「機甲部隊っ!!まるで相手になりませんっ!!アクセルを踏んでも発進できずっ!!!打ち払われる一方ですっ!!」
「互いの姿も見えないところからちまちまとなんてっ!!!貴方達男なのっ!!!男なら死合の決着は拳でっ!!」
そういって豪槍を振るい、殴り倒す
たった一人の突進で陣が二つに裂け、機能が麻痺し、恐怖に怯え体が動かない……これではいくら精鋭といえ結果は見えている
12「ほ!!ほうこくっ!!!敵の勢いっ!閃光が如くっ!第一陣の損害率95%!第二陣も既に55%を超えています!!」
13「し!進言します!もはや敗北は明白!命あるうちに降伏をっ!!」
たったの10分もしないうちに自分の軍勢が水に濡らした紙よりも弱く引き裂かれていく現状に意識を保つのがやっとだった
14「な!!なんだ!!あの砂塵はっ!!!嘘だっ!M1戦車が吹き飛んでいるううぅぅう!!!」
数十トンの塊が軽々と宙を舞い、人が烈風に遊ばれている
「そ!そんなっ!!もう!ここまでぇぇええ!!!」
声が震え、足が笑い、失禁までする始末だ
「ここは!撤退をっ!!」
「むむっ!!!や!!やむえん!!!撤退だっ!!」
「どこに撤退するつもりですか?大将さん?」
背筋が凍りついた・・聞きたくない女の声だ、振り返るとそこには金色色の甲冑を着た彼女が立っている
「そ・・そんな・・・あれだけの軍勢を・・たっ・・たった一人で」
「軍勢?あの鉄くずと肉塊のこと?」
彼女の言うとおりだ、今までそこにあったはずの数十万の人間と数万の車両は、鉄くずと肉塊になりはてている
「自分のお金のために・・ご主人様を実験の道具にしようなどっ」
危ない・・瞬時にそう思った、だが逃げようにも足が動かず、失禁までする始末だ
「そ!!そうだっ!!!か!金をやろうっ!!死んだ奴のぶんだけっ!!いや!その倍出そう!!!」
「貴方・・自分のお金だからって・・人を道具かなにかと勘違いしてるの?」
「よ!!世の中は金だっ!!金でなんとかなるっ!!君もそう思うだろう!?」
つくづく生かしておく価値も無い人間だ
「そうかもしれませんっでも私にはお金より価値のある物が何か判りますっ・・これはご主人様の痛みの分っ!!」
「ぷべぇえっつうう!!!」
得物を手放し、右手ビンタを思いっきり相手の左頬にぶつけてやる
「まっ!!まづてっ!!ぐれぇぇ!!」
この期に及んで命乞いとは汚い限りである
「これはリーラの分っ!!」
同じ主人を持ちなにか共感するものがあるのだろうか、左手ビンタを右頬に食らわしてやる
「ばびゅぅぅう!!!」
鼻血をだらだらとたらし赤く染まった頬に手をそえる
「じゃ・・じゃからっ・・まづっって・・」
「これはっ!!私の怒りの分っ!!!」
嫌ではあったが体を押さえて膝撃ちを思いっきりどて腹に味あわせてやる
「うごほぉぉお!!!
吐血をしたがきにしない
「そしてこれはっ!!!道具にされた兵士達のっ!!!」
「はいっ!そこまでっ!!!」
凛とした声が沙弓の最後の一撃を止めた
「どうして止めるのよ」
「この男は軍法会議にかけます、証拠もあがってます、余生はたっぷり刑務所で過ごしてもらいます」
車でかけつけたリーラに止められてやや不機嫌気味な沙弓である
「こんな奴、生かしておく意味も無い・・それにこの男に釣られた人たちが可哀想」
今まで散々その兵士を薙ぎ倒したのは一体誰だと聞きたい
「ですが…貴女なんで態々一人一人に蘇生と記憶抹消をしたの?」
流石は相手は歴戦のメイドだ、自分のしたことが判っている
「つっ・・判ってたの?まぁ悪いのはこいつで、その金で釣られた人たちじゃないし」
「貴女も判ってるじゃない」
ということで万事丸く収まり夏休みが始まった
「んーやっぱりロシアって涼しいんだね」
「ご満足頂けて幸いです」
それどうこうより、愛しのリーラやメイドたちと暮らせるのが一番嬉しいのだが
「ご主人様っ……私には・・そのっ」
「ああぁ判ってますよ沙弓さん、今晩部屋に来てください」
「はいっ!!」