「もうっ、どうして和樹さんと手を繋ぐんですか!?」  
夏の夕方。  
買い物帰りの道すがら、夕菜、和樹、そして舞穂の3人は  
スーパーのビニール袋を下げて歩いていた。  
中には5人分の食材が詰まっている。  
離れてください、と言う夕菜の言葉に、舞穂は「む〜」と唸り頬を膨らませる。  
それでも手を離そうとはしなかった。  
夕菜の怒りのボルテージが上昇する。  
「あ、いや、あのね、舞穂ちゃん。 手ならまた今度繋げばいいから・・・」  
和樹の妻を名乗る少女から滲み出るオーラに恐れをなし、なんとかこの場を収めようと努力はするのだが。  
「まあっ、私のいないところでイチャイチャする気ですか!?」  
危機的状況を回避せんがためののその言葉は、火に油を注ぐ結果となる。  
ますます殺気が膨れ上がった。  
何をどう言おうとも、彼女の超必ゲージは鰻登りに高まるばかりであった。  
火の精霊が騒ぎ始める。  
「早く離れてください!!」  
先ほどよりも語調を荒げ、こちらに一歩踏み出す。  
和樹はその分、一歩後ずさる。  
 
ヤバい、これは三十六計逃げるにしかず・・・と思ったそのとき。  
「む〜、たまには二人と手を繋ぎたいよ〜」  
いよいよ火山が噴火を始める、というところで  
左手で和樹の手を握ったままの舞穂が、右手で夕菜の手を取った。  
唐突に手を握られ、驚いた拍子にサラマンダーが散って行く。  
「舞穂、和樹君と夕菜さんの二人と手を繋ぎたいの!」  
そう言って、そのまま二人をグイグイと引っ張って歩き出す。  
つられて歩き出す二人。  
揺れる買い物袋。  
夕日に長く伸びる影。  
困惑顔で引きずられる和樹と、すっかり勢いを削がれてしまった夕菜に  
舞穂は誰とは無しに語り掛ける。  
「こうして歩いてると、なんだかお父さんとお母さんと歩いてるみたい・・・」  
幼くして親元を離れなくてはならなくなった舞穂。  
おそらくまだ、親のぬくもりが恋しい年頃なのだろう。  
自分の言葉にはずかしくなり、うつむいた。  
少し照れたような顔の赤さは、夕日のせいだけではないようだ。  
舞穂の胸中を見て取った和樹と夕菜は、たがいに見詰め合い、微笑み合った。  
夏の夕日に照らされて、長く尾を引くその影は、  
まるで本当の親子のように見えた。  
 
 

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