『玖里子×初老の男』
以下は先日テレビで放送された『風椿玖里子インタヴュー』を
文字にしたものである。微塵もエロはない。でもセクハラはある。
<ナレーション>
いつの世も世界は苦痛に満ちている。戦争、疫病、テロ、殺人、自殺。
そんな世の中に救いがあるとしたら、それは心優しき美女だ。
今夜は、そんな美女の日本代表と言ってもいい
風椿玖里子の知られざる真実の姿に迫る――みたいな。
<風景>
晴天。庭園。椅子に玖里子とインタヴュアーが座っている。
インタヴュアーは初老の二枚目で、灰色のスーツを着ている。
(玖:風椿玖里子 イ:インタヴュアー)
イ「忙しいのに、どうもありがとうございます」
玖「(極めて優雅に)いえ、そんな」
イ「(カメラのほうを向く)これから色々お聞きしたいと思います」
玖「(緊張している。顔を赤らめ、うつむく)」
イ「それでは、玖里子たん、式森和樹くんの第一印象を――」
玖「(顔を上げる)ちょっと待って。今“玖里子たん”って言わなかった?」
イ「言ってませんよ。言うわけないでしょう。そんな失礼なこと」
玖「でも聞いた! 確かに聞いた!」
イ「(カメラのほうを向き)言ってませんよ。ねえ?」
画面外からの声1「言ってねえよ」
画面外からの声2「言ってません」
画面外からの声3「言っておらん」
イ「ほら」
玖「そう――ならいいけど(でもまだ納得しきれていない)」
イ「それでは、改めて、式森和樹くんの第一印象を聞かせてください」
玖「(照れる)ええと、最初はボンクラだと思ったんですけど、
段々いいところも見えるようになってきて――」
イ「なるほど、金髪巨乳は彼を駄目なやつだと思ったわけだ」
玖「ちょっと待った! あんた、今“金髪巨乳”って言ったでしょ!」
イ「言ってませんよ。(カメラのほうを向き)でしょう、みなさん?」
画面外からの声1「言ったよ」
画面外からの声2「言ってません」
画面外からの声3「言っておらん」
イ「多数決で言っていないことに決定しました」
玖「(ぶつぶつ呟く)確かに聞こえたんだけどなあ」
イ「それでは二人いるという恋のライバルについて説明してください」
玖「ライバルって、夕菜と凛のこと?」
イ「そうです。『まぶらほ』未見のひとにもわかるように、どうぞ」
玖「夕菜はピンク色の髪の毛の女の子で、すごく嫉妬深いんです」
イ「へえ。ピンクとは卑猥だな」
玖「凛は青い髪をしていて、銃刀法違反ぶっちぎりです。あと体が貧相」
イ「では彼女たちに何かメッセージを」
玖「人気があるからっていい気になるんじゃないわよ! 以上です」
イ「さて、今度はガーターベルトちゃん本人について聞いてみましょう」
玖「ちょっと! あんた今――」
イ「なんですか?」
玖「(少し考えて)なんでもない、です」
イ「じゃあ口挟むんじゃねえよ、ゴミ虫がゴミ虫がゴミ虫がゴミ虫が」
玖「――すみません」
イ「はい、では気を取り直していってみましょう」
玖「(口の中でもごもご不満を呟く)」
イ「おっぱい大きいですね」
玖「(困惑)はあ。どうも。ありがとうございます」
イ「お母様とお父様、どちらがホルスタイン牛ですか?」
玖「どっちも人間ですっ」
イ「(邪悪な笑みを浮かべ、小さな声で)それはどうですかね……」
玖「えっ?」
イ「さて、その乳房、一分おいくら万円で揉ませてくれます?」
玖「ちょっと、“それはどうですかね”って何! どういうこと!」
イ「揉ませてくれたら教えます」
玖「揉ませるか! (カメラに向かって)これ、セクハラですよ!」
イ「(突如として裏声で絶叫)エッチなのはいけないと思います!」
玖「いや、それ、作品が違うから」
イ「(突っ込みスルー)では将来の展望をお聞かせください」
玖「はい?」
イ「だから将来の展望ですよ」
玖「ええと、『まぶらほ』が無事放送終了を迎える、とか?」
イ「それができればいいですけどね(再び邪悪な笑み)」
画面外からの声1「どうだかな」
画面外からの声2「どうだかな」
画面外からの声3「どうだかな」
1,2,3「けけけけけけけけ」
(おわり)