「紅慰先生、本当にそれしか方法は無いんですか?」  
和樹が震えながら叫んだ。  
「残念ながら今現在わかっているのは二つだけだ。  
一つ目は悪魔となった彼女を殺すこと。肉体が無くなれば悪魔とて生きてられない。  
もう一つは、君が一緒に悪魔と消え去ること。  
どちらにせよ、今現在悪魔と化した夕奈君を止めるられるのは君しかいない。  
早く決断してくれ」  
そう言い終わるやいなや後ろの方から念話が飛んでくる。  
「式森!早くしろ」  
「和樹。こっちはもう1分も持たせられないわよ」  
夕奈と戦っている凛と玖里子がせかす。  
いかに優秀な魔力の持ち主とはいえ、同じくらい優秀な、  
しかも魔王と化した状態の夕奈が相手である。  
何とか持ちこたえているだけでも奇跡みたいなものである。  
「そうですか」  
和樹はそれだけを言い残し、夕奈の方を向いた。  
すでに心は決まっていた。  
(夕奈を殺すことなんてできない)  
「久里子さん、凛ちゃんどいて下さい。危ないです」  
和樹がそう言い終わると和樹に白いオーラをまとったように輝き始めた。  
それを見た玖里子と凛はすぐさま散り、また魔王と化した夕奈が興味の対象が  
彼女たちから和樹の方に移った。  
そして夕奈が和樹に攻撃しようとした瞬間、彼女がまとっていた黒いオーラが  
和樹の魔法により真っ白に塗り替えられていく。  
そしてそのオーラは玖里子、凛、紅慰先生たちも包み込んでいった。  
 
 
夕奈は病院のベットで目を覚ました。  
まだ、少し体中が痛むが、頭の方はハッキリしている。  
そして、運悪く自分が悪魔になったときのことまで覚えていた。  
そしてその記憶は白いオーラに包まれたときまで続いていた。  
いろいろな記憶をたどっていると、不意にドアが開いた。  
「真宮くん。大丈夫かね?三日も寝ていたぞ。」  
紅慰先生が入って来ながら尋ねた。  
夕奈は軽く大丈夫とだけ言うと、すぐさまあの後のことを聴いた。  
「あの、みなさんは大丈夫だったんですか?」  
「ああ、あの場所にいた人は全員無事だったよ。玖里子君も凛君も」  
「和樹さんもですか?」  
夕奈は少し興奮した様子で尋ねた。しかし、答えはこうだった  
「和樹?誰だ、その人は?」  
 
「何冗談言っているんですか、紅慰先生」  
夕奈は引きつった笑顔で言った。  
「いや、冗談も何も和樹君とはいったい誰だね?」  
「冗談も何も、葵学園2年B組の式森和樹さんですよ。」  
「2年B組、ということは伊庭先生のクラスか。しかしそんな生徒いたかな。  
これでも私は生徒の顔と名前は覚える方でね。特にB組は個性的な生徒が多いから、  
全員覚えたと思ったのだが…」  
(嘘、和樹さんが忘れられてしまうなんて…)  
夕奈は玖里子や凛なら何か知っていると思い、痛む体に鞭うってベットから降りた。  
紅慰先生はまだ寝ていた方が良いと言ったが無視して学校へ向かった  
 

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