私には、秘密がある。  
 大きな秘密と、小さな秘密。  
 それは誰にも知られてはいけない、甘い秘密。  
 
 大切な人。それは私の場合、この世界にただひとりだけ。  
 ずっと身近にいてくれて、何を置いても私のことを考えてくれる。  
 それが当たり前で、とても自然なことだってずっと思っていたけど、  
その無償の愛を享受し続けることがとんでもなく贅沢なんだってことに  
気付くことができたのは、つい最近のこと。  
 今までと同じだけど、核心のところが決定的に違う毎日。  
 愛する人と過ごせる日々は、一瞬一瞬がたからもののようで。  
 だけどそのことを周囲に知らせることはできない。  
「はい、コーヒー。飲むだろ?」  
 夕食が終わってソファに座った私に、優しい声がかかる。  
 顔を上げると、カップを二つ持ったお兄ちゃんが隣に座るところだった。  
「ありがと」  
 にっこり笑いながら受け取ると、お兄ちゃんは同じように笑い返してくれた。  
 お兄ちゃんが笑うだけで、ほっこりと心が暖かくなる。  
 だいすき。お兄ちゃんだけが。  
 長く、できるだけ長くこうしていられるよう。  
 この大きな秘密を、知られないようにしなくてはいけない。  
 
「どうかしたのか? なんだかぼーっとしてた」  
 受け取ったカップに口をつけると、  
お兄ちゃんが少し心配そうに私の顔を覗き込みながら言った。  
 私の心の機微にとても敏感に反応してくれるお兄ちゃんに、また愛しさがつのる。  
 カップをテーブルに置いて、私はお兄ちゃんに抱きついた。  
「あ、おい、危ないよ」  
 お兄ちゃんが持っていたカップからコーヒーが零れそうになったけど、  
それを注意するお兄ちゃんの声に、非難の色は入っていない。  
 お兄ちゃんは慌ててテーブルにカップを置くと、ゆっくり抱き返してくれた。  
 それが嬉しくて、私はお兄ちゃんの体をぎゅうっとしながら、  
「だいすき」  
 と小さく言った。  
 微かに笑う声がして、お兄ちゃんの腕にも少し力が入る。  
「お兄ちゃんもだよ。ヒトミは、かわいいな…」  
 また嬉しくなってお兄ちゃんの顔を見ようと体を離すと、すぐにキスが落ちてきた。  
 数え切れないくらい唇を重ねたけど、全然慣れることはない。  
 すぐにどきどきして、心臓が痛いくらいになっちゃう。  
 だんだん深くなるキスに酔って吐息まじりに唇を開くと、その隙間から  
お兄ちゃんの舌がそっと入ってきた。  
 お兄ちゃんの手が私の髪に触れ、優しくなでたり梳いたりする。  
 頭の芯がぼうっとする、お兄ちゃんの情熱的なキス。  
 
 私の腰を抱いていたもう片方の腕が、ゆっくり脇腹を伝って上がってくる。  
 優しく包み込むように胸を触られて、私は小さく声をあげた。  
「あ……。お、にいちゃん…」  
 唇から頬に、頬から瞼に、瞼からおでこにと、顔中にキスを降らせてくれる  
お兄ちゃんに咎めるような声を出すと、少し笑い混じりに、  
「ん?」  
 と問い返された。  
「ここ、リビング……だ、よ」  
「……そうだな」  
 ごく当たり前のことのように肯く間にも、キスは止まらない。  
「……あ、明るい、し……。恥ずかしい……ぁ…っ」  
 私の抗議なんて受け流すように、お兄ちゃんの手は胸をやわやわと揉みしだく。  
 髪をなでていた手もいつの間にか降りてきていて、  
両手で揉まれると服の上からでも充分感じてしまう。  
「いいじゃないか。兄ちゃんはお前のこと、ずっと見ていたいんだよ……」  
 耳朶にひとつキスを落としてから、お兄ちゃんはじっと私の瞳を見つめて言った。  
 もともと熱を持っていた私の頬は、きっともっと真っ赤になってしまって。  
 もう一度抗議しようと開いた口に、お兄ちゃんは強引に唇を重ねてきた。  
 口腔内に侵入してきた舌が、あっという間に私の舌を絡めとり愛撫すると  
それだけでもう、私は何も考えられなくなって、お兄ちゃんの服をきゅっと  
掴むしかない。  
 
 胸に触れていた手が、ひとつふたつと服のボタンを外していく。  
 全部外さないうちに現れたブラジャーを性急に押し上げると、  
ふるりとふたつの乳房が露わになった。  
「ん………っ」  
 恥ずかしさに身じろぎをすると、お兄ちゃんはちゅっと軽く音を立ててキスをした。  
 胸を直にお兄ちゃんの手に包まれ、息があがる。  
 そっと添えられるだけだった手は、胸の頂きの感触を確かめるように動いた。  
「……もう、こんなに硬くなってる……」  
「あ、や……もう……」  
 言わないで、と声に出したかったけど、それすらもままならない。  
 そんな私を見ながらお兄ちゃんは、きゅっと両方の乳首を摘まむようにする。  
「あ……っ」  
 我慢することもできず漏れ出た声に気をよくしたように、お兄ちゃんは  
胸全体を揉んだり、頂上を指の腹でこするようにしたり、かりかりと弾いたりしている。  
 私はそのひとつひとつの動きに翻弄されるように、素直に反応を返してしまう。  
 首筋に口づけながら、だんだんとお兄ちゃんの頭が降りていく。  
 鎖骨に舌を這わせ、更にその下へ。  
 朦朧とし始めた頭をなんとか保とうとしながら、胸へのキスを待った、その時。  
 
 ピンポーン。  
 
 その場の雰囲気とはあまりにも似つかわしくない音が、部屋中に鳴り響いた。  
 
 
「…………っ!?」  
 突然現実に引き戻されて、私はびくっと体を強ばらせた。  
 思わず顔を玄関に向ける。  
「お、お兄ちゃん……誰か………あ……っ!!?」  
 顔を玄関に向けたまま小声でお兄ちゃんに話しかけた途端、強烈な快感が襲った。  
 慌てて顔を戻すと、お兄ちゃんは何事もなかったかのように私の胸の谷間に  
唇を落としていた。一瞬止まった手も、また動き出して。  
 強く吸って痕を残すと、今度は舌を出して乳首を舐める。  
「……っ。お、にいちゃん……っ」  
 力の入らない腕でお兄ちゃんの肩を押しても、全然効果がない。  
 胸を襲う強い刺激に、また頭がくらくらしてくる。  
 私に見せつけるようにいやらしく胸を愛撫し続けるお兄ちゃんは  
ひどく蠱惑的で、性質が悪い。  
 ピンポーン。  
 またチャイムが鳴る。でもやっぱりお兄ちゃんは手を止めない。  
「………鷹士さーん?」  
 微かに誰かの声が聞こえる。  
「おにいちゃ、ん、ってば…っ。ぁ…っ。だ、誰か…」  
 震える腕に力を入れてお兄ちゃんの肩を揺さぶるようにすると、ようやく  
お兄ちゃんは顔を上げた。ほっとするのも束の間、お兄ちゃんはそのまま強引に  
唇を合わせてきた。  
 抵抗する力もなく瞳を閉じると、胸をいじっていた手が降りてスカートの中に  
入り、内腿をさするようになでた。  
「……!?」  
 びっくりして目を開けると、お兄ちゃんの瞳に至近距離で見返される。  
 その目はまるでこの状況を楽しんでいるかのようで。  
 
「大丈夫。鍵もチェーンもかけてあるだろ?」  
 唇を触れ合わせたたまま、お兄ちゃんはそう囁いた。  
 ハスキーにかすれた声が、すごくセクシーに響く。  
「……っ。そ、そういう問題じゃ…ぁ…」  
 足を閉じようとしても、いつの間にか足の間にお兄ちゃんが体を  
割り込ませてしまっていて、それもできない。  
 止める暇もなく侵入してきた手は、下着の上から大事な部分を撫で上げた。  
「………!」  
 自分でもびっくりするくらい濡れているのがわかる。  
 恥ずかしさと、すぐ外に誰かがいるという恐怖感が私を苛む。  
「あれ、いないのかな……」  
 二人くらいの人の気配がドア越しに伝わる。  
 玄関に気を取られていると、下着の脇から侵入した指がわたしを強くなぞった。  
「……っ!!」  
 ずっと合わせられていた唇が、少しだけ離れる。  
 息を乱しながら睨むと、お兄ちゃんは意地悪そうに微笑んだ。  
 そう、お兄ちゃんは普段甘すぎるっていうくらい甘いけど、ベッドの上では  
少し……かなり? 意地悪になる。でも。  
 まさか、こんな状況で……!  
 睨んだって効果がないのは分かってるけど、今私にはそれくらいしかできる  
ことがない。すると今度ははっきり笑みを浮かべながら、お兄ちゃんは  
わざと音を立てるようにして指を動かした。  
 ぐちゅぐちゅ、といういやらしい水音が聞こえると、  
恥ずかしさのあまり私は顔を背けた。  
 
 お兄ちゃんは緑色の石が光る耳たぶを舐め上げながら、  
 指で私の敏感な突起を摘むようにいじった。  
「………!!!」  
 声をあげてはいけない。まだ玄関の向こうには、人の気配がする。  
「駄目だぞ、ヒトミ。声、我慢しないと……」  
 だったら、やめてくれればいいのに!  
 心の声は、嬌声を我慢するのに必死すぎて、言葉になる前に消えてしまった。  
「ヒトミのあんなかわいい声、他の誰にも聞かせたくない。絶対に…」  
 耳に舌を挿しいれながら、お兄ちゃんは囁くように耳に直接  
言葉を吹き込んでくる。  
 耳弱いって、知ってるくせに……!  
「二人ともいないのかな?」  
 話す声が聞こえる。  
 誰かは分からないけど、早く立ち去ってくれることを祈るしかない。  
 ぎゅっと目を瞑って快感の波に耐えようとすると、意地悪なお兄ちゃんの指は  
突然、蜜が溢れ出す源へと入ってきて、中をかきまわすように動いた。  
「…………っ…!!」  
 私は思わず息を止めてしまいながら、押しよせる強烈な快感に必死で耐えた。  
 片手は下腹部を、もう片手は胸を。そして唇は耳からうなじを伝って。  
 頭がおかしくなりそう。気持ち、よすぎて。  
 私たちが暮らす五階には他に誰も住んでいないので、普段はあまり声を  
気にすることもない。だから余計、今のこの状態が辛い。  
 なかに入っている指はいつしか一本から三本に増え、もう私は意識が飛ぶ  
寸前まで追い詰められてしまった。  
 
「ま、別に急がないし、明日にでもまた来ようか」  
 かすかに繋ぎとめられた意識が、その声を聞いた。  
 耳を澄ませると、足音が遠ざかっていくようだった。  
「………行ったみたいだぞ」  
 しれっとした口調で、お兄ちゃんが言う。  
「も………っ! もう! おにいちゃんの、ばか…いじわる…!」  
 ほとんど涙まじりに私が非難すると、お兄ちゃんは何故か極上の微笑みを  
浮かべて、あやすように軽く口づけを落とす。  
「よく我慢できたな。ご褒美、あげないとな……?」  
 またお兄ちゃんの顔に、小悪魔的な表情が浮かぶ。  
 言いながら、入れたまま止まっていた指を一度強く突き上げた。  
「あぁ………っ!」  
 我慢していた反動で、つい大きな声が出てしまう。  
「あ……も、おにい、ちゃん…」  
 ずっと焦らされて。  
「ん?」  
 熱くて。指じゃ足りない。もっと……。  
「欲しい?」  
 お兄ちゃんが腰を私のそれに押し当てる。ジーパン越しでも、硬くなって  
いるのがはっきりわかる。  
 理性なんてもう、焼ききれてる。こくこくと首を縦に振ると、  
「じゃ……お願い、って。お兄ちゃんに…」  
 なんて、蕩けるような微笑みと共に言ってくれる。  
 
 って、ご褒美じゃ、なかったのか……!  
 そんな突っ込み入れる余裕なんて、私には当然ない。  
 私自身の蜜で染まってしまった下着を、お兄ちゃんが取り去る。  
「ほら、足開いて……? いれて、って、お願いしてごらん」  
 煌々と明るい電気の下、ソファに組み敷かれて。  
 シャツは中途半端にポタンが外され、だけど胸はしっかり丸見えで。  
 大きく皺が寄ったスカートは履いたままだし、なんだか全裸よりかえって  
恥ずかしいけど。そんなこともうどうでもいい。  
 ぎこちなく足を動かし、でもやっぱり恥ずかしさからゆっくりと開いて。  
「………お、にい、ちゃん…おねがい。はいって、きて…」  
 消え入るような声でそう言うと、お兄ちゃんは強いキスをくれた。  
 カチャカチャとベルトを外す音が聞こえ、次いでジーパンを  
引き下ろす音。少しごそごそとしてから、ぴりっと袋を破る音がした。  
 …どこに持ってたんだろ……?  
 頭のどこかでそんな冷静なことを考えてたら、突然足を担ぎ上げるようにされた。  
「……っ」  
 濡れそぼったそこに、熱く脈動するものが当てられる。  
 ずっと待っていた感覚に、喜びが溢れる。  
 お兄ちゃんは奥まで一気に入ってきた。  
 熱い。熱くて大きいものが、私の中を満たす。  
 繋がった、っていう安心感から、私たちは少しだけそのまま抱き合っていた。  
 
「…動いて、いいか?」  
 気遣わしげに声をかけてくれるお兄ちゃんから、もう意地悪な色は消えていた。  
 変わりに、愛に満ち溢れた綺麗な微笑みが見える。  
 お兄ちゃんって、きれい、だな……。  
「うん。動いて……」  
 私が頷くと、お兄ちゃんは慎重に律動を始めた。  
 だんだん激しく、時に緩慢に、抽送を繰り返す。  
「あ…あ、ぁ………! おにいちゃん…!」  
「ヒトミ……っ」  
 お互いを呼び合い、激しく唇を求め合い、幸福感に酔いしれる。  
 打ち付ける激しさが、終わりが近いことを告げる。  
「おにいちゃん……っ……もう………っ」  
「あぁ……一緒に……」  
 一際強く、最奥を突き上げられた瞬間、私は世界が白く輝いたように見えた。  
 
 
 
「お兄ちゃんの馬鹿」  
「あ………っ。悪かったって。あんまりヒトミがかわいかったから、つい…」  
 事後の気だるさから一段落して。身なりを整えて一息つくと、私のなかに  
ふつふつと怒りがこみ上げてきていた。  
「意味がわかんないっ」  
「いや、声を必死で我慢する姿って新鮮で、すごくかわいいって思ったら……」  
 言いながら、何を思い出してるのか変な笑顔が浮かんでいる。  
「もうっ! 反省してない!」  
「あ、ごめん! 兄ちゃん反省してるよ!」  
 平謝りするお兄ちゃんを横目に、私は腕組みをして怒ったフリをした。  
 そう。本当はもうそんなに怒っていないのだ。  
 エッチのときだけ少し意地悪になるお兄ちゃん。  
 だけどそんなときのお兄ちゃんは、とてもとても、かっこよく、て。  
 すごく恥ずかしいことを要求されても、何されても嫌いになんてならない。  
 いたずらっぽい魅惑的な微笑みを浮かべるお兄ちゃんだって、大好き。  
 
 でもそんなことを言ってしまったら、きっとお兄ちゃんは  
もっと意地悪をレベルアップしてしまう気がするから。  
 私は怒ってるフリをする。  
 これは誰にも、お兄ちゃんにだって知られてはいけない、私の小さな秘密。  
 
 ちらりと横目で隣を窺うと、お兄ちゃんと目が合った。  
 お兄ちゃんはまた、私が溶けてしまいそうになる綺麗な微笑みを刷いて  
私を抱き寄せた。そのまま、優しい触れるだけのキスをする。  
 
 誰にも知らせない小さな秘密。  
 でももしかして、言わなくてもお兄ちゃんには筒抜けなのかも……?  
 
 

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