先生の手が、私の太股を這う。
少しひんやりとしたその感触が、くすぐったさよりも、快感をもたらしていると気付いたのは、いつからだろう。
「ちょ…せんせ……っ」
「ん〜?」
スカートが乱れる。
私を後ろから抱きすくめた姿勢のまま、先生はじらすように太股を撫でる。
その指が下着の中へと侵入する感覚に、私は慌ててぴったりと足を閉じ、首を捻って先生を振り仰いだ。
「ほ…保健室っ!まだ午前中っ!!」
「あぁ。──だから?」
「だからっ……」
それがどうしたと言わんばかりに、先生は薄い笑みを浮かべている。
──……やっぱり駄目な訳ですか。
いつもと同じやりとりに、内心涙を流しながら、私は続ける言葉を失った。
去年の卒業式から、何度となく行われてきた秘め事。
拒むことは許されない。
最初のうちは、そりゃ私だって細やかながらも抵抗したわよ。
でも、気付いてしまった。
先生の強引なやり方が、自分が思っていたよりも嫌じゃない事に。
徐々に慣らされるうちに、私の中にしっかりとした形で芽生えた感情に。
それに何より、先生は決して面白半分で、私を抱いている訳じゃない事に。
屈折してるなと思うけど、それが若月龍太郎と言う男なりの、愛し方なのかも知れない。
「ほら、手ぇ付けよ」
先生の重みが、私の背に掛る。
私は言われるままに、目の前の机に両手を付くと、さっきまで半ば意地になって閉じていた足を、少しだけ広げた。
「んっ…」
先生の手が付け根に触れる。
指先で強く撫でられ、往復させられて。
もう片方の手が、背中から上着を託し上げると、ブラのホックが外された。
そのままするりと、先生の手が胸に触れる。
と同時に背中に感じる柔らかな感触。
「っ……あ…」
背中の窪みに沿って、先生の舌が私の背中を、首筋を這う。
既に反応を見せ始めた乳首を指で挟みながら、少し乱暴に胸を揉まれる。
下着の上からだった指は、いつの間にか下着の横から入り込んで、ぴちゃりと水音をたてていた。
「やんっ……あ…んんっ」
まるでリズムを打つように、私の秘部に触れた指は、一定の間隔で水音を放つ。
全身をくまなく刺激され、私の息は上がりっぱなし。
声だけは出すまいとするけれど、私の敏感な部分を知り尽している先生の手にかかれば、それも時間の問題。
「随分濡れるのが早くなってきたじゃねぇか」
「ひぅっ!…や、駄目ぇ…っ!」
耳元で囁かれたかと思うと、先生は私の耳に舌先をねじ込む。
ちゅぱちゅぱとダイレクトに響く水音に、私の膝から力が抜ける。
体を支えるために突っ張っていた両手は、机にしがみつくような形になって。
まるでそれが合図だったかのように、私の秘部に外気が触れた。
膝ぐらいの位置でとどまっている下着が気になるけど、足を動かす事すら出来ない。
耳たぶを噛まれ、吸い上げられ、ぬめりとした感触が耳全体を這う。
先生に教えられるまで、耳が気持ち良いなんて、大袈裟な漫画の世界だと思っていたんだけど。
私は、自分が思っていたよりも、自分の体の事を知らなかったらしい。
「…っ…や…あぁっ…んっ…」
胸を揉みしだく手は、時折強さを変えたかと思うと、不意に乳首に痛みが走る。
でも、それすらも快感で。
秘部を擦る指先が敏感な突起に触れる。
触れるどころか、摘んだり押し潰したり、先生の指の動きは止まらない。
小刻みに擦り合わされて、私はますます机にしがみつく形になった。
感じやすい場所を、同時にいくつも刺激され、私の頭の中はぼんやりと霞が掛る。
押し殺そうとしていた声は、その気持ちとは裏腹に、唇から零れ落ちる。
「あぁっ…!ふぁ……や、ぅんっ…」
震える膝で体を支えるのが精一杯。
そんな私の様子に、先生は耳元から唇を離す。
薄く瞼を押し上げて見ると、生理的に浮かんだ涙で揺れる視界の向こうで、先生は何処か満足そうな表情を浮かべて、私の体から離れた。
けれど、私に刺激を与える事を止めた訳じゃない。
私の足元にしゃがみ込んだ先生の手がお尻を広げたかと思うと、淫猥な音と共に、私の中に生暖かい物が侵入した。
「やぁ…んっ…!…あぁ…っ」
ぴちゃぴちゃなんて生易しい音じゃない。
激しく動く舌先は、私の中を蠢いたかと思うと、その上にある突起を擦り上げる。
時折じゅるりと蜜を吸い上げる音が耳に届いて、私の理性は頭の隅へと追いやられる。
「…ふっ…あぁっ。…せん…せぇっ…!」
「遠慮しなくて良いんだぜ?気持ち良いなら、気持ち良いって言えよ」
首を捻っても、その姿は見えなくて。
代わりに与えられる刺激で、私は先生の存在を確認する。
「んぁぁっ…あ、あぁっ…!」
私の秘部を這う舌と、ゆっくりと差し込まれる指の感覚。
いやらしい水音と同時に、体の中を往復する、ひんやりとした感触に、私は声を上げる事しか出来ない。
差し込まれた指は、角度を変えて、何度も私の体を刺激する。
その度に私の体は正直に反応して、溢れる蜜の音が保健室に響く。
「せんせ…っ…も……だめぇっ…」
ふるふると首を振りながら、懇願すると、先生は私の体に指を埋め込んだまま顔を上げた。
「ちゃんと教えただろ。どうして欲しいんだよ」
「ひぁぅっ…うぁっ…」
言いながら、手の動きは止まらない。
性格が悪いだとか、いじめっ子気質だとか、根性が曲がってるだとか。
そんな言葉が、頭の中を霞めては消えていく。
「せんせ……入れ、て…っ」
何とか言葉を絞り出すと、先生は私の体から指を引き抜き立ち上がった。
呼び出す時は常に忍ばせているんだろうか。
白衣のポケットから避妊具を出す様子を確認した私は、息を整えようと荒い呼吸を繰り返した。
でもそれも束の間。
「おい」
肩を捕まれ振り返ると、先生は私の体を引き寄せた。
身長差のせいもあってか、固くて熱い感触が、私のお腹に触れる。
薄い膜を一枚隔てただけで、その熱さははっきりと分かる。
先生に促されるまま、机の端に腰を掛けると、先生は膝にとどまったままの下着を抜き取り、ゆっくりと私の中に体を沈めた。
「くぅ…うあぁ……」
「っ…力抜けって」
酷い圧迫感が掛る。
何度も感じた事のある質量なのに、私の体はいまだに、それに慣れていないらしい。
浅い律動を繰り返しながら、私の中に全てを埋め込んだ先生は、私の体を抱き締めると、汗ばむ額に掛る前髪を掻き上げてくれた。
「ふぅっ……あっ…あぁっ…」
先生の体に腕を回し、その動きを受け入れる。
最初はゆっくりだった律動も、私の声に促されてか、徐々に早さを増して行く。
「あ…ん……っ…んんっ」
噛みつくような口付けと、体の奥から沸き上がる快楽。
舌を絡め貪るように唇を合わせながら、貫かれる快感に、唇の端から声にもならない声が漏れる。
「んっ、あぁ……せんせ…っ。せん…っ!」
口許から離れた先生の唇は、私の顎と言わず頬と言わず、触れては柔らかな噛み跡を残して行く。
触れる八重歯が痛みよりも快感を増し、頭の芯が痺れるような錯覚をもたらす。
──食べられる。
そんな単語が浮かぶけれど、体の奥を揺さぶられ、思考回路は切り放される。
「…っ……」
「あ、あ…っ!や…、はぅ…!」
キシキシと揺れる机の音も、その上に乗った灰皿のカタカタと言う音も、もう耳には届かない。
水音すら、私と先生の間で聞こえるとは思えないほど遠い。
「…もぉ…っ!…ん、…あぁっ、あぁぁっ!」
全身で感じる若月龍太郎と言う存在に全てを預け、私は意識を手放した。
遠くなる意識の片隅で。
『好きだ』
そんな声が聞こえた気がしたけれど。
それを確かめる術は、今の私にはまだなかった。