「ヒトミ? 眠くなったのか?」  
 温かくて大きな手が、私の前髪をかき上げた。  
 私は、閉じていた目をそっと開けて、目の前にいる大好きな人の顔を見る。  
 生まれた時から一緒にいるのに、こんな風に優しい目で私を見るお兄ちゃんを  
目にする度、お兄ちゃんに、新しく恋をしているような気持ちになる。  
「うん…飲みすぎたかな?」  
 お兄ちゃんが持って帰ったワインを、横目で見る。  
 それから、首に両手をまわしてお兄ちゃんに抱き付いた。  
「ベッド、連れてって……」  
 お兄ちゃんが笑う気配。  
「まったく、ヒトミは昔から甘えるのが上手だな」  
 それは、お兄ちゃんに対してだけだよ。  
 そう思う私の内心には気付かずに、背の高いお兄ちゃんは、私を軽々と  
抱き上げ、立ち上がった。  
 当然のように、私の部屋ではなくお兄ちゃんの部屋に運ばれながら、  
私はお兄ちゃんのシャツに頬を摺り寄せる。  
 お兄ちゃんは部屋に到着すると、ベッドの上に私を優しく降ろす。  
 ……途端、お兄ちゃんと私の混じり合った匂いが、私の全身を包んだ。  
「おやすみ、ヒトミ」  
 私を寝かせ、傍らに腰掛けたお兄ちゃんは、優しく私の髪を梳く。  
 そんなお兄ちゃんの手を、私はそっと取った。  
「もう少し、起きてたい」  
「…眠いんじゃなかったのか?」  
 そう言いながらも、お兄ちゃんはもう私の言いたい事に気付いているみたいで、  
ゆっくりと覆い被さってくる。  
 
「あれね、嘘。…怒った?」  
「怒らないよ」  
 お兄ちゃんは笑って、ちゅっと私の唇にキスをした。  
 そして、私の体にまわされる腕。  
 ……高校三年の夏。  
 お兄ちゃんの誕生日に、私は、お兄ちゃんの手で大人になった。  
 それからずっと、この体はお兄ちゃんだけのもの。  
 お兄ちゃんに甘く蕩かされ、お兄ちゃんのためだけに昇りつめる事を覚えた。  
 お兄ちゃんが私のカットソーを脱がせ、レースのブラの上からやんわりと  
胸を揉みながら、何度もキスをする。  
 唇が柔らかく解け、私は自分から口付けに応えた。  
 お兄ちゃんが唇を滑らせ、私の首筋を、やわやわと吸う。  
 時折、ちゅっと音がするのがいやらしい。  
 明日がお休みのせいか、お兄ちゃんは時折かりっと歯を立て、遠慮なく跡を残した。  
「ぁ、ん……お兄…ちゃん……」  
 もう、私の息は上がってる。  
 何度抱かれても、お兄ちゃんに触れられるのは気持ちがいい。  
 ブラのホックが外されると、丸い乳房が、ぷるんとまろび出た。  
 お兄ちゃんにたくさん愛されて、高校の頃よりも大きくなってる。  
「んんっ……」  
 お兄ちゃんの指が、そこにゆっくりと沈む。  
「ヒトミの…大きくなったよな」  
 お兄ちゃんも同じように思ったのか、そんなことを呟く。  
「っは……ばか…っ…」  
「ん? 誉めてるのに」  
 
 いつもは、私に対しては甘すぎるくらい甘いお兄ちゃんだけど、ベッドの上では、  
ちょっと意地悪だ。  
 悪戯っ子みたいな目で私を見上げて、胸の谷間に顔を埋め、ぺろっと肌を舐める。  
 お兄ちゃん、大きい方が好きなのかなあ。だったら嬉しいけど、でも。  
「あんまり大きいと…その、垂れるかもしれない、し…っ……」  
 過剰についたお肉がどんなに恐ろしいものか、私は身を持って良く知ってる。  
 だけどお兄ちゃんは、そんなこと、丸っきり気にする様子はなくて、  
微笑みながら胸にキスの痕を残した。  
「バカだな、どんなヒトミだって可愛いに決まってるぞ」  
 言いながら、私の乳房を弄ぶみたいに可愛がってくれる。  
「っ、ぁっ、んんっ」  
 指の間に突起を挟むようにして捏ねると、私の胸は鞠みたいに撓んだ。  
 淡いピンク色だった突起が濃さを増して、まるで誘うみたいに存在を主張する。  
「…ほら」  
 お兄ちゃんが色付いた部分をなぞるみたいに舌を滑らせて、乳首を吸い上げた。  
「あぁー…っ……ぁ、おにい、ちゃんっ……んんっ、お兄ちゃん…やぁ……」  
 いやいやと首を振るけど、本当に嫌がってるわけじゃない。  
 お兄ちゃんのせいで、私はいつのまにか、すごくエッチになった。  
 どこもかしこも、お兄ちゃんに触れられたくて。  
 お兄ちゃんの指や唇が触れる度、その部分がじんわりと熱くなるくらい感じてしまう。  
 勿論、これは相手がお兄ちゃんだから思うことだ。  
「んんっ…ぁんっ、吸いすぎ……だよぉ……っ」  
「……」  
 私の抗議は意に介さず、お兄ちゃんはぴちゃぴちゃと突起に舌を絡める。  
 もう片方の乳首はくりくりと指先に弄られ、ふくらみ全体を押し潰されるように  
揉まれて、私の頭はぼんやりと霞がかったようになった。  
 
「あぁっ…あっ……ん、ふぅ……」  
 されるがままに喘ぐ私は、いつのまにかスカートのホックを外され、  
ずり下げられていた事にも気付かない。  
 唐突に下着の中に侵入したお兄ちゃんの手が、蜜で潤った場所をなぞりあげ、私は目を見開いた。  
「…っひぁ…」  
 指の先だけを埋めるような格好で、その部分をくちくちと掻き回す。  
 お兄ちゃんは、私のスカートと下着を完全に取り去ってしまうと、腰から  
太腿までのラインを撫でながら、下腹部に唇を落とした。  
 内腿に手が入り込んで、数回撫で下ろす。  
「ヒトミ、足開いて。お兄ちゃんが舐めてやるから」  
 そう言う声はどこまでも優しいのに、どこか淫靡な響きを内包している。  
「ん……ん…」  
 私は逆らう事もできずに、ゆっくりと、足を広げた。  
 凄く恥ずかしいけど、でも、恥ずかしいことは気持ちいいこと。  
 それを教えてくれたのもお兄ちゃん。  
 お兄ちゃんはにっこりと微笑んで、足を開いたことによって僅かに緩んだ  
合わせ目に舌を差し込む。  
「あぁぁ……っ…!」  
 一番敏感な芽を、お兄ちゃんの舌が、優しく皮を剥くみたいな仕草で撫でまわす。  
 あまりの快感に、私は耐える事もできなくて、何度もベッドの上で身を弾ませた。  
「…おに、ちゃ…あぁ……おにぃ、ちゃ…っ……おか、しくな……そう……」  
 知らず溢れた涙が、頬を伝ってシーツに染み込む。  
「…ヒトミ、がまんしなくていいんだぞ」  
 その部分に軽く歯を当てるようにしながら、お兄ちゃんが囁く。  
 堪える間もなく、私は、あっという間に昇りつめた。  
 
「っ…やぁん…!」  
 思考も、理性も、何もかも飛んでしまいそうな官能の渦が私を攫い、  
私はお兄ちゃんの前で極めた。  
 更に溢れ出した愛液を、お兄ちゃんが舌先で舐め取る。  
 達したばかりの敏感な肌に、その刺激は強すぎて、私は何度もビクビクと脈打った。  
「…ヒトミ? 大丈夫か? ごめん、兄ちゃんやりすぎたか?」  
 心配そうな声が聞こえて目を開けると、そこには、お兄ちゃんの顔がある。  
「う……うぅん、大丈夫……。それより、おにい……ちゃん……」  
 そっと肩に手を添えると、お兄ちゃんは理解したように目を細めて頷いた。  
「ああ。お兄ちゃんも、ヒトミと繋がりたい」  
 私の額に唇を押し付けながら、お兄ちゃんの手がサイドテーブルの引き出しに  
延ばされるのに気付き、私は、腕に力を込めて、それを止めさせた。  
「ヒトミ?」  
 今度は、私からお兄ちゃんにキスをする。  
 そして身を起こすと、逆にお兄ちゃんを押し倒すみたいな格好でベッドに寝かせた。  
「どうした?」  
 お兄ちゃんは、目を瞬かせつつも、私にされるがままになる。  
 普段とは逆の格好で、私はお兄ちゃんの上に身を重ねた。  
 ……お兄ちゃんは細身だけど、やっぱりその体には、ちゃんと硬い筋肉が  
ついていて、私を受け止めてもびくともしない。  
 男と女の体は違うんだなと、改めて思った。  
「ん……」  
 キスを求めると、お兄ちゃんはすぐにそれを与えてくれた。  
「ヒトミ…?」  
 舌先を絡ませ合いながら、その狭間にお兄ちゃんが囁く。  
 
 私の太腿の間に当たるお兄ちゃんは、しっかりと硬くなっていて、その熱さに赤面した。  
 私は確かめるように、指先で熱の塊に触れる。  
「ヒトミ…」  
 お兄ちゃんが驚いたように目を瞠ったけど、私は構わず、腰を持ち上げる。  
「だいじょうぶ……」  
「…でも」  
「今日は、だいじょうぶ…なの。だから……」  
 このまま……。  
 恥ずかしくて、頬を真っ赤にしたまま言う私を見上げると、お兄ちゃんは、柔らかく微笑んだ。  
 お兄ちゃんの手が腰を優しく撫で、それに促されるように、私はゆっくりと腰を落とす。  
「あぁっ…あ……! んん……っ」  
 巨大な質量が、私の中を押し広げながら入ってくる。  
 お兄ちゃんの手に腰を支えられて、私はそれを、自分の中に受け入れた。  
 いつもは薄い膜を一枚隔てているそれが、今日は直に、私に触れている。  
 そう思ったら、体の中心に痺れが走るような幸福感を感じた。  
「あぁ…っ……お兄、ちゃん……」  
「ヒトミ……」  
 お兄ちゃんが、汗で額に貼り付いた私の前髪を梳いてくれる。  
「平気か? 苦しかったら、無理しなくていいんだぞ?」  
「だい…じょうぶ……」  
 いつだって私の心配ばかりするお兄ちゃんに笑って、私は体を動かし始めた。  
「…あぁ、っ……ぁ…はぁ……」  
「……っ…」  
 私が腰を揺らす度に、お兄ちゃんが軽く息を詰める。  
 私がお兄ちゃんに触れられて感じるように、お兄ちゃんも感じてくれてるんだって  
わかって、凄く嬉しかった。  
 
「ぁ、ん……お兄ちゃん……お兄ちゃん…っ…!」  
「ッ…ヒトミ…」  
 私に合わせて、お兄ちゃんも下肢を揺らし始める。  
 ずん、ってお兄ちゃんが私の最奥を叩く度、例えようもない快感が走った。  
「っぁああ……っ」  
 私が、私の中に受け入れるのはお兄ちゃんだけ。  
 同時に、私以外の誰も、お兄ちゃんに触れさせたりなんかしない。  
 誰にも祝福されなくたって、そんなの構わないの。  
 だって、私がこんなに幸せになれる相手はお兄ちゃんだけ。  
「…っふ……」  
 体の中にいるお兄ちゃんが、更に大きくなった気がした。  
「い、いの……お兄ちゃ、ん……わたしの、なか……出して…っ……」  
 お兄ちゃんの全部を、私自身が感じたい。  
「……ヒトミ」  
 お兄ちゃんが、目を細めた。  
「ぁっ、あっ、あぁぁっ……!」  
 次の瞬間、ぐっと腰を押し付けられ、体の一番奥に何かが注がれるのを感じた。  
「ぁあ……!」  
 すごく、熱い。  
 熱くて、熱くて……気持ちいい。  
「あぁん…っ……ぁ……!」  
 私は、自身が達した事にも気付かないまま、お兄ちゃんに注がれる情欲に酔った。  
 はじめて、本当に一つになれた。そんな幸福感が、私を満たしていた。  
 ゆっくりと倒れ込む私を、お兄ちゃんが、力強い腕で抱き止める。  
 頬にキスされて、そのまま、髪を撫でられた。  
 
「…大丈夫か?」  
「うん……」  
 体の中を満たす温かさと共に、私はお兄ちゃんに寄り添う。  
「ゴメンな、兄ちゃん、我慢きかなくて」  
「お、お兄ちゃんのせいじゃないよ」  
 すまなそうに言うお兄ちゃんに、私は慌てて反論した。  
「でも、もし」  
「平気、ちゃんと調べたから」  
 お兄ちゃんを安心させるようにもう一度言って、私はぴったりと身を押し付ける。  
「それに……もし、できても……構わないもん……」  
 そんなことないってわかってるけど。  
 でも、もしもそれができたら、どんなに素敵だろうって思う。  
 そんな思いを込めて呟けば、お兄ちゃんは優しく微笑んだ。  
「……ああ。俺もだ」  
 私を抱き寄せて、キスしてくれる。  
 お兄ちゃんの腕はいつでも、私に安心をくれる。  
 それは、ずっと前から変わらない。  
 一番近くて、一番大好きな人。  
 私の、たった一人の人。  
 お兄ちゃんの腕に守られながら、私は、今夜も眠りに落ちた。  
   
   

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