「はぁぁ…」  
 
 
遺失宇宙船(ロストシップ)ソードブレイカーの操舵室で、この船のマ  
スターであるケインは小さくため息をついた。  
仕事探しの為モニターの前に座っているのだが、真面目に探していた  
のは始めだけ。5分もすると集中力が途切れてしまい、画面を見つめ  
たままぼんやりと考え事をしていたのだ。  
ふと時計を見ると、ここに来てから30分も経っている。  
「あ〜あ。仕事も探さないで一体何やってんだ俺は…」  
独り言を呟くと、またため息をついた。  
ケインの頭の中を占めているのは、唯一つ。  
ミリィのことだ。  
最後の戦いが終わり、ミリィの元へ帰ってきてから既に1ヶ月が過ぎ  
ていたが、2人の関係は前と同じで何も変わっていなかった。変わら  
ないどころか告白もまだだったりする。  
お互い相手を愛していたし、愛されていることも感じているのだが、先  
に進めずにいた。再会直後ならまだしも、1ヶ月も経ってしまうとどうす  
れば良いのか分からない。  
ケインだって男だし、出来ればすぐにでもミリィを自分のものにしたい  
と思っていたが、何故か肝心の場面では手が出せないでいた。  
いや、大切に想っているからこそ手が出せないのだ。  
がやはり、同じ船の中にいるとどうしても煩悩は大きくなり、ここのとこ  
ろずっと悶々とした日々を送っていた。  
どーしてあの夜気持ちを伝えなかったのか。あの時あのまま抱きしめ  
ていれば。一昨日だってミリィはキスしても構わないような目をしてい  
たのに…等々、後悔の嵐が頭の中を駆け巡る。  
 
 
 
 
「はぁぁぁ…」  
「どーしたんです?ため息ついて」  
突然、この船の主制御コンピュータであるキャナルの立体映像が、  
ひょいっとケインの顔を覗き込んだ。  
「わああ!いきなり現れるな!びっくりするじゃねーか!」  
「ぼーっとしてるほうが悪いんです。で、どうです?仕事は見つかりま  
した?」  
「え?あ、そ、そうだな。これなんてどうだ?」  
まさか仕事探しをせずにミリィのことを考えていた、なんて言える訳も  
なく、ケインは画面を適当に指差した。  
「ちょっと…かなり怪しげじゃないですか?報酬はいいけど裏に犯罪  
の匂いがしますよ」  
「そうか?それじゃ、これは?」  
「うーん。悪くないけど報酬が少なすぎます」  
「…じゃ、これ」  
「ダメです。これも報酬が少ないし、ここからかなり遠いじゃないですか。  
……ケイン、本当に探してたんですか?」  
ぎくぅぅっ!  
ジト目で睨まれ一瞬ケインの顔がこわばるが、必死に平静を装う。  
「当たり前だろ」  
「嘘ついたら今夜ケインの部屋だけ酸素止めちゃいますよ?」  
「おっ俺が悪かった!謝るからそれだけは勘弁してくれぇぇぇぇ!」  
キャナル相手では仕方の無い事であるが、立体映像にペコペコ謝る  
ケインの姿はかなり情けなかった。  
 
 
「そうそう。人間正直が一番です♪ではちゃっちゃと探してください。  
………まぁ、ケインが仕事を探さずに何考えてたのかは分かりますけ  
どね。ミリィのことでしょ?」  
ぎくぅぅぅぅっ!  
「やっぱり」  
「俺は何にも言ってねぇっ!」  
「誤魔化そうとしても無駄です。心拍数に乱れがありました。  
……ねぇケイン、どうしてミリィに気持ちを伝えないんです?  
ミリィだってケインのことを…」  
「どーだっていいじゃねーか。そんなことより今は仕事だ」  
キャナルの言葉を途中で遮り、ケインは画面のリストを見つめる。  
「いーえ、ダメです。今日こそこの問題を何とかしなければ。いつまでも  
このままって訳にはいきません。ケインだって分かってるんでしょ?  
そんな浮ついた気持ちでは仕事にも影響を及ぼします」  
ケインは反論しようと口を開きかけたが、何も言わずに黙り込んだ。  
キャナルの言う通りだ。分かってる。本当は俺だって…。  
キャナルは本当に手のかかるマスターなんだから、といった感じで  
肩をすくめた。誰も見ていないのでそんなことをする必要は無いのだ  
が、キャナルはこういうところにまでこだわるのである。  
「それに仕事でしたら探さなくても大丈夫です。たった今決まりました。  
これしかありません。他に選ぶ余地はありませんので」  
「………一体なんだ?」  
「今夜ケインがミリィを押し倒して、さっさとモノにすることです」  
ごちずるべしゃぁぁぁぁ!  
ケインは勢い良くコントロールパネルに顔をぶつけた。  
 
 
「キャナルーーー!お、お前わいきなり何を言うかと思えば!」  
「だってこれしかないじゃありませんか。ねぇ、ケイン。ケインがミリィに  
何もしない理由は分かってます。大事に想ってるから、でしょ?  
でもね、大事に想ってるんなら行動を起こさなきゃダメです。  
ミリィ、この前言ってましたよ。何でケインは何もしてくれないんだろう  
って。なんとも想われてないのかなって悩んでました。大事ならミリィ  
のこと、幸せにしてあげて下さい」  
「キャナル……」  
その時、遠くでずぅぅぅぅん、と爆発音がした。  
「……………」  
「………もう夕食の時間ですね。ほらケイン、キッチンに行って下さ  
い。食事の間に口説き文句考えとくんですよ!」  
ケインは苦笑しながら立ち上がると  
「分かった。………キャナル、サンキュ」  
と言って操舵室から出て行った。  
「どーいたしまして♪………はぁ、んっとにもう。でもこれでなんとかな  
るでしょう。2人が幸せにならないと、私も幸せになれないんですから  
ね…」  
誰もいなくなった操舵室で、キャナルはぽつりと呟いた。  
 
 
 
 
「ごちそーさま。ちょっと食い過ぎた」  
「ケイン、サラダどうだった?ドレッシング新作なんだけど」  
「ああ、美味かったよ。好きな味だな」  
「良かった♪じゃ、また作るわね」  
夕食が終わり、ミリィは食器を片付け始めた。  
それを横目で見つつ、ケインはコーヒーを一口啜る。  
ミリィと一緒に原型を留めていない鍋やフライパンも見えたが、もう毎  
日のことなので今更追求する気も起こらない。キャナルは飽きずに文  
句を言っていたが、それはキャナルとミリィにとって一種のコミュニケ  
ーションなのだ、とケインは解釈していた。  
「ねーケイン。デザート食べる?昨日のアイスがまだあるけど。それと  
もフルーツにする?」  
片付けを終えたミリィは冷蔵庫の前でオレンジを片手に持ち、ケイン  
に呼び掛けた。  
「ミリィがいい」  
「は?」  
「ミリィが食べたい」  
ケインは食事の間中、キャナルに言われた通り口説き文句を考えて  
いた。しかし良いセリフが浮かばず、もっと色々勉強しとくんだったと  
少し後悔しつつも、まぁ、ここはやっぱ王道で行くしかないか、という結  
論に至ったのであった。  
突然の出来事に、ミリィは驚きの余り固まってしまい、そのまま30秒  
が経過した。  
「あの〜、ミリィ?」  
「……ケイン……何なの…それ…」  
「何なのって…」  
「散々…待たせといて…言うセリフがそれなわけ…?」  
言いながら涙が浮かんできてしまったミリィは、見られないようにさっと  
後ろを向いたが、零れ落ちるところをケインは見ていた。  
思わず立ち上がり、駆け寄って背後からぎゅっと抱きしめる。  
「ごめん…これしか思い付かなかった」  
「………………そうよね。ケインだもんね。過剰に期待しちゃ酷よね」  
「…どぉいう意味だ、それわ」  
「そういう意味よ」  
涙を拭い、くすくす笑いながらミリィはケインに向き直ると、じっと目を  
見つめて言った。  
「ね、ケイン。ちゃんと言って?ケインの心を聞きたいの」  
ミリィの青い瞳の中に、自分の姿が映り涙で揺れている。  
「……俺は、ミリィが好きだ。何が起ころうとも、この気持ちが変わるこ  
とは無い。命ある限り、ミリィのことを守り続ける。だから……これから  
もずっと、俺のそばにいて欲しいんだ」  
「…何だか…告白じゃなくて、プロポーズみたい」  
「いいだろ。両方兼ねてて。一石二鳥だ」  
「何よ、それ…」  
ミリィはまた笑いながら、ケインを抱きしめて胸に顔をうずめた。  
やっと言ったわね。ずっと待ってたんだから。このマントおたくを一生  
好きでいるなんて、私にしか出来ないんだから。  
「私も…好きよ。ケインのことが宇宙一好き。何が起きたってずっと、  
一生、そばにいるから…」  
2人は固く抱き合うと、長い長いキスを交わした。  
 
 
 
 
ケインは自分の部屋で1人、ウロウロと落ちつきなく歩き回っていた。  
ミリィと共にこの部屋へやってきたのだが、どちらが先にシャワーを浴  
びるかということでちょっとした口論となり、それならそれぞれの部屋  
で入ればいいというミリィの提案で解決したのがつい先程のこと。  
ケインはあっという間に済ませたが、ミリィは中々来ない。  
「あぁぁぁぁもぉぉぉぉこんな時は何してりゃいいんだっ!」  
ベッドに腰掛けたものの、1分ももたずにまた歩き始める。  
そこへ、やっとミリィがドアを開けて入ってきた。可愛らしいピンクのネ  
グリジェを着ている。初めて見る姿に思わず見惚れた。  
「ケイン、お待たせ…って何やってるの?」  
「い、いや、別に…。ミリィもそういうの着るんだな」  
「あ、これ…この前キャナルに無理矢理買わされて…し、仕方なくね」  
「そうか。じゃキャナルに感謝しなきゃな」  
言いながらケインはミリィに近づき、そっとキスをして抱きしめる。鼓動  
は速いが、不思議と気持ちは少し落ち着いてきていた。  
ミリィを抱き上げるとベッドの上に降ろし、額や睫毛に口づけていく。  
「ケイン…お願い……明かりを…」  
「ああ」  
枕元のスイッチに手を伸ばし、部屋の明かりを最小限に落とした。  
 
 
ミリィの唇を味わうようなキスを何度もくり返しつつ、段々と深くしていく。  
最初は躊躇いがちだったミリィも、少しずつ答えるようになっていった。  
「………ん…んんっ……っ…」  
舌を絡ませながら、ケインは胸のリボンをほどき、ボタンをはずして裾  
をたくし上げる。ミリィとの間にある布が邪魔だった。もっとミリィを近く  
で感じたくて素早くミリィを被うものを全て取り去ると、自分も同じ姿に  
なった。  
「ミリィ、すごく綺麗だ…」  
囁きながら、首筋から胸元へ赤い花びらを散らしていく。形の良い胸  
を両手で包み込んだ。仕事で惑星に降りた時にその手の映像は何度  
か見ていたが、触る想像は出来ても映像なので触れることは出来無  
い。初めての柔らかな感触にケインは感動した。  
「ん……あっ………ん…」  
「やっぱり……本物は違うな…」  
思わず口に出して言ってしまう。  
「……え?」  
「何でもない」  
胸の先をそっと口に含むと、ミリィの声が大きくなった。  
その声がもっと聞きたくて、硬くなったそれを舌で転がし、ちゅっと音を  
立てて吸い上げた。更に甘い声が漏れる。  
 
 
ケインは赤い花びらをつけながら下へ移動していった。跡を残すたび  
に、ミリィは自分のものだという想いが湧き上がってくる。  
足の間に手を差し込もうとすると、ミリィは少し力を込めて足を閉じた。  
「ケイン……やっぱりちょっと……恥ずかしい…」  
「嫌ならやめるけど……俺はミリィの全てを見たい…」  
ミリィは何も言わなかったが、力を徐々に抜いていった。  
それを返事と受け取り、ケインは体を足の間に割り込ませ、秘部にそ  
っと口づける。ミリィの体がぴくっと動いた。  
金の茂みの奥からはもう蜜が溢れ出ており、ケインはそこをすくい上  
げるように舌を這わせていく。  
「ああっ!…ん……あ…ダメ、そこ、はっ…!」  
ケインはダメと言われたところをわざと攻めたて、強く吸った。  
「あぁ…ん……はぁ…ん……ぁん…ケ…イン!…っ…!」  
ミリィの手がシーツを握り締める。軽く達したようだ。  
ケインもこれ以上待てなかった。何度か指を入れて秘所を確認する  
と、ミリィに囁いた。  
「ミリィ……いくぞ」  
頷くのを見てからゆっくりと中へ侵入していく。押し寄せる快感にすぐ  
に達しそうになったがなんとか耐え、ミリィの様子を窺った。  
「……いっ……ん……っ!」  
痛みに顔をしかめ目尻に涙が浮かんでいるのが見えて、やめたほう  
がいいのでは、という考えが一瞬よぎったが、動きを止めることはもう  
出来なかった。ミリィの中は熱くきつく、ケインを締め付けてくる。  
無意識に「愛してる…」と呟きながらケインは絶頂に達し、ミリィの中に  
想いを放った。  
 
 
 
 
その後2人は無言で幸せな余韻に浸っていた。  
ケインは腕枕をしている手でミリィの髪を梳き、サラサラと落としては  
その様子を眺めている。  
「……ミリィ、ごめんな……」  
しばらくするとケインは手を止め、小さく謝りの言葉を口にした。  
ミリィはケインの肩をそっと指でなぞっていたのをやめて、少し起き上  
がるとケインの顔を覗き込んだ。  
「…なんで謝るの?」  
「いや、何か俺だけ良かったような気がしてさ。それに今日はミリィを  
2回も泣かせたし……。だから、ごめん」  
「…なーに言ってんのよ。謝る必要なんてないでしょ?私は嬉しかった  
んだから。やっとケインと心も体も一つになれたんだもん。……私にと  
って今日は人生で一番幸せな日になったのよ。ケインもそうでしょ?」  
「……ああ。そうだな。でも」  
ケインはミリィを抱き寄せ、頭の天辺にキスをした。  
「明日は、今日よりもっと幸せになろう。一緒に、幸せを増やしていくん  
だ。…死ぬまでずっと…」  
「…うん!」  
きつく抱き合い、またミリィに腕枕をすると、いつしか2人は眠りについた。  
 
 
 
 
 
翌朝――  
朝食を取りにキッチンへ入ると、キャナルが嬉しそうな笑顔で2人の前  
に現れた。  
「おはよー」  
「おはよう、キャナル。…どーしたの、そんな顔して」  
「おはようございます、ケイン、ミリィ。だってやっと2人がくっついたん  
ですよ?嬉しくない訳がありません」  
ケインの頬がひくっと動いた。  
「………まさか、覗いてたんじゃねーだろーな」  
「覗いてなんかいませんよ。ケインっ!私がそんなことすると思うんで  
すかっ!?ひどい、ひどいわっ!」  
キャナルはポケットからハンカチを取り出して、目に押し当てた。  
「いや、ほら、キャナルのことだし…」  
「やっぱり思ってるじゃないですかぁ!……いいんですか?そーいうこ  
と言うと、ミリィに秘密をばらしちゃいますから」  
「え、秘密?」  
「そーなんです、ミリィ!ケインったら私のコントロールパネルにコーヒー  
をこぼすって脅して、無理矢理ミリィの入浴映像を撮らせたんですよっ!」  
「キャ、キャナルっ!それはお前の方から持ちかけたんじゃねーか!  
それに絶対秘密にするって約束で対空ビーム砲買わせたくせに!」  
 
 
 
 
「ケーーイーーン。一体どういうこと?」  
はっと気付いた時には既に遅かった。ミリィは指をポキポキと鳴らしな  
がらゆっくりと近づいてくる。  
「ま、待て、ミリィ。落ち着いて話し合おう。なっ?」  
「落ち着いていられる訳ないでしょぉぉぉぉっ!こらーーー、待ちなさい、  
ケインーーーーっ!」  
テーブルの周りをぐるぐると走り回って逃げるケインを満足げに見  
ながら、キャナルは、ほぅ、とため息をついた。  
「それにしてもケインが、『命ある限りミリィのことを守り続ける』とか  
『すごく綺麗だ』とか『明日は今日よりもっと幸せになろう』なーんてキ  
ザなセリフを言うようになるなんて……。大人になりましたねぇ」  
うん、うんとうなずくキャナルの前に、ケインがキキィィッ!っとブレー  
キをかけて止まった。聞こえないように小さな声で言ったのだが、ケイ  
ンの耳には届いていたらしい。  
ケインはキャナルに噛み付かんばかりの勢いで絶叫した。  
「キャナルーーーーー!何が『覗いてない』だっ!最初から最後まで、  
しっかり全部見てたんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
 
 
 
 
END  
 

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