森の妖精〈エルフ〉の耳は長い。
もちろん聴覚も並ではないが、それ以上に……とても敏感だ。
パーンが舌を這わせると、ディードリットの耳はぴくんと反応し、緊張したようにそば立った。
「あっ……やめて、パーン」
言葉とは裏腹に、甘い声でディードリットが呟く。
ザクソンの村の北に位置するパーンの家は、集落から少し離れている。陽が落ちるとすぐに暗闇に包まれるので、尋ねてくる客人――つまり、邪魔者はいない。
長い夜を存分に楽しめるわけだ。
「はぁ……はぁ……ンッ!」
簡素なベッドの上で、ディードリットの吐息と、衣擦れの音だけが悩ましく響いていた。
「ディード。感じてる?」
若草色の服の上からたおやかな胸を揉みしだきながら、パーンは再び耳を攻める。
「んん! ――ま、待って……あっ」
白磁の肌を紅く染めて、ディードリットが身をよじる。耳だけはどうしても我慢できないようだ。
「……ずるい。あなたばかり」
「そんなこと言われてもな」
パーンは困ったように栗色の髪をかく。
通常、こういった行為は男性がリードするものだ。至高神〈ファリス〉の経典にもそう書かれているし、昔、親友のエトにもそう教わった。
だが――男女の愛に対して寛大な大地母神〈マーファ〉の教えでは、女性も時には攻めることがあるらしい。
「わたし、レイリアに教わったの。試していい?」
悪戯っぽく微笑みながら、ディードリットはパーンのズボンを脱がしていく。
「ちょ、ちょっとディード――」
「いいから。わたしに、任せて」
すでにいきり立っていたパーンの男根をそっと掴むと、ディードリットはその舌先を這わせた。
(う……うわっ)
これまで経験したことのない感覚。
(こ、これが、マーファの教え……!)
小さく柔らかな舌が、自分のものを絡め取っていく。ディードリットの口内にすべてが吸い込まれ、唇の圧力と舌の動きで蹂躙された。
(レ、レイリアさん、こんなことしてるのか――!?)
一瞬、精力に乏しそうな魔術師に暗い嫉妬の炎を感じたパーンだが、すぐさまディードリットに解かされた。
あまりにも気持ちよすぎて、思考が定まらない。
……ちゅっ……ちゅぱ……ちゅ……。
「はむ……どう、パーン。んん――気持ちひい?」
「あ、ああ。こいつは――反則だな」
「ふふ」
……ちゅっ……ちゅむ……。
(ディード――いいのか?)
森の妖精は果実や野菜を好み、動物の肉は一切口にしないという。そのエルフが、自分の肉棒を熱心にしゃぶっている姿は、かなり背徳的な光景だった。
「はぁ……んん」
舌全体を使って、ディードリットがパーンを舐め上げる。
「う、うあっ――ディ、ディード!」
「はむ……ちゅ……なあに?」
「――ず、ずるいぞ。気持ち、よすぎる」
「ゆるして欲しい?」
「……う」
完全に立場が逆転している。
どこで練習したのか、ディードリットは絶妙の力加減でパーンの男根をしごきあげていく。
口内の空気を吸われ、舌先で亀頭をなぞられると、不覚にもパーンは声を挙げてしまった。
「ゆ、ゆるして、下さい……」
「だめよ――ちゅ!」