『ニースの夜』
夜が怖い。
ランプに照らされた自室で、ニースは沈み込んでいた。
時刻は既に夜。マーファ神殿からは人影が消え、神官達の住む宿舎も静まり返っている。
ニースも一日を忙しく過ごし、薄水色にの夜着に着替えて寝台へ腰掛けていた。
疲れていないわけではない。その証拠に眠気はどんどんと押し寄せてくる。だが眠るのが怖いのだ。
毎夜のように夢を見る。
それも飛び切りの淫夢を。
夢の中でニースは身体を開き、何度も何度も男達に犯された。
夢は夢でしかない。それは分かっている。
だが、あの夢の何とリアルな事か。
身を這い回る男の手の感触も、口にした男性自身の味も、そこから吹き出た精液の味も、全て覚えている。
実際にこの身は汚されていなかったとしても、心に焼き付いているのなら…それは実際に体験したのと変わらないのではないか?
そして…夢の中の自分は悦んでいた。はしたない喜悦の声をあげて。
だから、自分の中の闇を突きつけられる夜が怖い。
やっはり同じ夢…。
ニースはぼんやりとそう思った。自分が向かう先は神殿の奥の倉庫。収穫の季節の祭礼に使う道具をしまう場所で、普段はほとんど人が訪れない。
訪れるのは管理を任されたニースだけ。だが今は…。
ドアの前に立つ。
入っちゃダメ。こんな所に来てはいけない、と頭の中で警鐘が鳴り響く。
だが、身体は勝手にドアを開けていた。まるで自らの渇きを癒す水場へと赴くかのように。
本来は人気の無いはずの倉庫の中に明かりが灯されている。そして四人の男がそこで待っていた。
「お待ちしていましたよニース様」
一人の男が笑みを浮かべて挨拶を口にする。ゴクリと唾を飲む音がした。目の前の男達からの音かと思ったが、それはニース自身自信の喉が生んだ音だった。
「お、お待たせして…」
「いえいえ、気になさらないでください。それでは早速はじめるとしましょう」
おずおずと詫びの言葉を口にしようとしたニースを、満面の笑顔で男が遮り、その無骨な手をニースの肩においた。
そしてグイッと力を込めてニースを引き寄せ、拒否する間も無くその唇を奪った。
「っっ! …ん、んううっ!」
唇を塞がれた瞬間、ニースの身体を痺れが駆け抜ける。身体の自由が利かず、思考も定まらない。
愛するスパーク以外の男に唇をゆるし、柔らかいそれを啄ばまれ吸われる度にニースの興奮が高まっていく。
にゅるう…、ぴちゃ…、ちゅぶっ…
男の舌がニースの口を割り侵入し、歯と歯茎をなぞり嘗め回す。熱くヌメる感触が口内を蹂躙し、唾液を注ぎ込んでくる。
いつしかニースからも舌を絡め、口の中でお互いの唾液を混ぜ合わせる。
ちゅぷちゅぷと粘膜が奏でる音が脳に直接響き、舌の感触と唾液の味がさらにニースの興奮を引き出す。
否、そうではない。ここを訪れる前から自分は興奮していたのだ。このキスはそれを表に引き出した触媒でしかない。
そう。自分はこうなるのを期待してここに来たのだから。
「んっ、んっ…、ぷふっ、はあっ…あ……」
やっと解放された。唾液が糸を引いて男の唇とニースの舌をつなぐ。
れろんっ
突き出されたままだったニースの舌を男が舐めあげる。眼前で繰り広げられ自分の舌が演じるあまりにも淫らな光景。それをニースは恍惚の表情で見届けた。
口内に残った唾を飲み込むと、自分のではなく、もちろんスパークのものでもない男の味がした。
「ほら、他の連中も待ってますよ」
ニヤニヤと笑いながら、男が呆けたニースを促す。肩を押されて一歩動くと、別の男が待ってましたとばかりにニースの唇へむしゃぶりついた。
「んんぅっ! ふぅっ…ちゅぷっ…」
それからは同じだった。念入りにディープキスをされ、唾液を飲まされる。それが四人分繰り返される。
そして唇から唾液を飲まされた分だけ、ニースの下の美唇は自覚できるほどに潤いを増していった。
「ぷはっ! はあっ、はあっ、ああ……」
四人目の男が唇を離すと、ニースは大きく息をつき、同時にガクリと腰が砕け膝を床についてしまった。身体に力が入らない。
「相変わらずニース様はキスが好きなんですねぇ。…でも、もっと好きなものがあるでしょう?」
「あっ…」
最初の男がニースの手を取り、自分の腰へと導く。そこはもう服の上からも分かるくらい隆起していた。
「ああ…」
ニースは震える手を伸ばし、一瞬ためらった後、その隆起に触れた。
(ああ…こんなに硬くなって…。それに…)
大きさを確かめるようにニースの指がヤワヤワとさする。その表情は熱にうかされたように紅潮し、目は怖れと期待に満ちていた。
「さあ、どうぞ遠慮なく」
「…っ」
下卑た笑いを浮かべる男に促さる。屈辱的な扱いだが、ニースがもう我慢できないということを男は知っているのだ。その証拠にニースの手は勝手に男のズボンを脱がせていく。
ズル…と男の服を脱がせると、既に勃起したペニスがニースの眼前にあらわれた。むっとした男の性臭が鼻をつく。
(ああ…、す、凄い臭い…)
ニースは好物を目の前にしたようにゴクリと生唾を飲み込んだ。その臭いを嗅いだだけでお腹の奥が疼きを増し、新たな蜜が股間を濡らす。
「さあ、早く」
「あっ…は、…はぁ〜〜…」
促されるまでも無く、唇からハァハァと熱い吐息を漏らしながら、ニースのピンク色の舌が男の赤黒いペニスへと伸びる。