ニースの部屋を訪ねたスパークは困り果てていた。
当のニースはフェリーナ司祭に呼ばれており部屋にはマーモに滞在中のレイリアだけだった。
ニースはすぐに戻ってくるとの事で部屋で待つ事にしたのだが、
自分が「レイリア司祭」と呼ぶと「そんな他人行儀な・・・」と悲しみに満ちた表情になってしまったのだ。
自分としては礼節を守ったつもりなのだが、そんな顔をされてはひどく悪い事をした気になってしまう。
この女性が自分からどう呼んで欲しいかは分かってるがしかし・・・・・・
ああ駄目だ、あの目はすごく期待している。言わざるを得ない。
「はっ・・・義母・・・上」
スパークは顔を赤くし、どもりながらレイリアをそう呼んだ。
恥ずかしさで小さくなってしまったスパークとは対照的にレイリアは心底嬉しそうな微笑みをスパークに向ける。
その微笑みがまた自分の胸を高鳴らせるのだ。
「はい、これからもそう呼んで下さいましね」
途端に上機嫌になりお茶を入れに厨房に行った。
スパークはどっと疲れて深く椅子に腰掛けた。
彼女のような人が義母になった自分はとても幸運な男なのだろう。
男が思い描く「母」を最も理想的に体現してるような女性だ。
彼女が義理とは言え自分の母親だと思うと・・・・・・その、嬉しい。
問題は彼女を「母」としてだけ見れないこの自分だ。
「俺は畜生か・・・・・・母娘にときめいてどうするんだよ」
「なにか仰いました?」
小声で呟いた途端に声を掛けられスパークは椅子から飛び上がった。
「いっいえ!なんでも!
そのお茶美味しそうですね!頂きます!」
「え、あ、ちょっとそんな急に飲んでは・・・」
熱いお茶を一気に飲み干してしまいスパークは激しくむせた。
若く美しすぎる人が母になってしまい幸福と一緒に気苦労が増えてしまったスパークだった。