カラン、と木製の皿をテーブルに戻したところで今日の夕食は終わりだった。
「ごちそうさま。いつ食べてもあなたの料理はおいしいですね」
そう声をかけたのは、髪を短く刈り上げた中年の痩せた男だった。
「あら、ありがとうございます。そういっていただけて嬉しいですわ」
答えたのは台所に立つ黒髪を後ろで束ねた若い女性であった。後姿ではあったが清楚な木綿の
長衣を着ていても、女性的な体つきをしているのが見て取れる。
「あの子はどうしましたか?」
「よく眠っています。起こすのも可哀相だと思いまして」
そういって振り返るりにっこりと笑いかける。漆黒の流れるような髪と透き通るような白い肌が印象的な、
穏やかな目をした美しい女性だった。
「そうですか。それでは私は書斎で読み物をしています。疲れているようでしたら
あなたは先に寝室へ入ってもらって構いませんからね」
「あまり夜更かしをなさらないでくださいね」
そう答えるとその女性は、再び洗い物を片付け始めた。
女性の名はレイリア。ここザクソンの村で夫であるスレインと一人娘のニースとともに、ささやかながら
幸せな家庭を営んでいる。夫のスレインは同じく村に住む若い戦士とともに、この村の指導者として忙しい
毎日を送っていた。魔術師である彼の名声は日ごとに高まり、最近では北の賢者の別名でも知られている。
妻であるレイリアは大地母神マーファの高司祭でもある。本来であるならばマーファの大神殿にあって
最高司祭である大ニースを後継者とも目される人物であったが、とある事件以来、彼女はマーファ神殿
の公式な職を辞して、ここターバの村で平穏な生活を送っている。もっとも神殿にあるとき同様、朝晩の祈りと毎日のマーファの司祭としての修行をレイリアは欠かしたことがない。
二人にはマーファ最高司祭より名を頂いた、ニースと名づけられた1歳になる愛娘がいる。彼女こそが
今の二人にとってかけがえのない宝物であった。
洗い物を終えたレイリアは、夕べの祈りをマーファ神に捧げた。かつて彼女は古代王国期の
魔法使いであるカーラの魂を封じ込めたサークレットに支配され、ここロードス島に取り返しの
つかない厄災を引き起こしてしまった。サークレットの支配から解放されたときレイリアは絶望し、
一時は自ら命を絶とうとさえ考えた。それを思いとどまらせてくれたのが、今の夫であるスレインであった。
スレインは彼女に、今の混乱にあるロードスを立て直すために生きることを教えてくれた。一人では
償いきれない重荷を背負ったレイリアに対して、自分もそれを一緒に背負うと言ってくれた。
自殺を禁じるマーファの教義と人生に対する絶望の狭間にあったレイニアにとって、スレインの慰めは
涙が出るほど嬉しかった。彼女はスレインの言葉で、この人と共にロードスの復興に残りの人生を
捧げようと決意した。それと同時に自分を救ってくれたこの優しい魔術師に感謝し、妻となることとなった。
その意味でレイリアにとって夫のスレインは絶対であり、普通の夫婦以上の固い絆で結ばれていた。
夜の祈りを終えレイリアは寝室へ戻り、平服から夜着に着替える。後ろで束ねた髪を解くと艶やかで
豊かな黒髪が流れた。薄い木綿の夜着姿になると、彼女の女性的な体の輪郭がくっきりと浮かび上がる。
小さなニースを生んだとは言え、レイリアはまだ20代後半であった。日ごろ神官戦士としての修行をつんでいるためか、体には余分な肉はなく体の線も崩れてはいない。それでいてレイリアは女性としては豊かな
胸をしていた。夜着に着替えるとその形がはっきり分かる。ニースに乳を与えているためか、レイリアの乳房はいつにもまして重く、かつ威圧するように衣服を押し上げている。レイリアは夜着に着替え終わると、2、3度胸に手を当て軽く深呼吸をして気分を落ち着けた。これからのことを考えると、どうしても鼓動が早くなるのは抑えきれなかった。
スレインはまだ寝室には戻っていなかった。ローソクの灯った燭台を片手にスレインの書斎に
向かうと、コンコンと軽くドアを叩いた。
「どうぞ」
スレインは魔法の明かりの下で魔術書を開いているところだった。夕食の後、ずっと読み続けて
いたのだろう。スレインは体をほぐすように軽く伸びをした。
「あなた、あまり根をつめると体に障りますよ」
「あぁ、そうですね。ところでニースはまだ起きませんか?」
「えぇ、夕食の前にお乳を与えましたから。朝まで寝ているのではないでしょうか」
そういいながらスレインの机の前に歩み寄り、手に持った燭台を置いた。
胸元の大きく開いた夜着の姿で前屈みになると、豊かな胸の谷間が露になる。知ってか知らずか、
スレインは魔術書に眼を向けたままだった。
「あの、あなた」
「なんです、レイリア?」
「…そろそろお休みになりません?」
魔術書を開いたままのスレインの横に歩み寄ると、レイリアはその肩に手を置いてたずねた。
スレインも顔を上げ妻であるレイリアの顔を見上げた。夜着の姿で下から見上げると、豊かな
胸の大きさがより際立って見えた。レイリアが少し恥ずかしそうに両腕を抱え込むようにすると
豊かな両の乳房は薄い夜着をその谷間に挟んで、服をきたままでも豊かな胸の形が露となった。
スレインはレイリアが書斎に入ってきたときに、すでにその意図を察していた。妻が夜着で
迎えに来るときは暗黙の了解があったからだ。
「そうですね。それでは行きましょうか」
しばらくレイリアと見詰め合ってから、スレインはいつもと変わらぬ口調でそう答えた。
「ええ」
小さくそう答えると、レイリアの頬は羞恥と期待で桃色に紅潮した。それを見たスレインもまた、
照れくさそうに頭をポリポリと掻くと、そして魔術書を本棚に戻し美しい妻の手を取って寝室に向かった。
寝室に入ると二人は並んで同じベッドに腰を下ろした。
「それでは、よろしくお願いいたします」
そういってスレインはペコリと頭を下げる。レイリアとしては恥ずかしいのでやめて欲しいのだが、
繊細なスレインが気にするのではないかと思い、そのままにさせている。
スレインは夜の営みにについては、レイリアと結婚するまで経験がなかった。童貞だったのである。
本で読んだ知識はあっても、実際の技術や経験は皆無であった。一方のレイリアもまた、敬虔な
マーファの神官として貞節な生活を送っていた。しかしサークレットに封じ込められた古代王国期の
魔女であるカーラに一年もの間、レイリアはその心と体とを支配されていた。古代王国末期は倫理や
文化も退廃的であったのだろうか、カーラは夜の行為に関しても古代魔術同様、様々な知識や技巧に
熟練していた。その一年間に心ならずもレイリアは、ありとあらゆる性についての経験をしてしまう
こととなった。スレインと結婚してからも暫くはそのことがコンプレックスとなり、マーファ神の
祝福するところである、夫婦の関係を持つことができないでいた。しかしその呪縛からレイリアを
解放してくれたのも、やはり夫のスレインであった。
並んでベッドに横たわると、レイリアはスレインの首に腕を回すと接吻を交わした。舌を入れゆっくりと
相手の舌に絡めていく。スレインの口内を赤いナメクジのような舌が蹂躙しヌルリとした感触が伝わる。
スレインは眼を閉じレイリアのなすがままにその感触を味わっている。レイリアは薄目を開けてその様子を
確認すると、満足げに時間をかけて舌と唇を与えた。接吻をつづけながらスレインの手を自らの豊満な
乳房へ導く。スレインの手の上に重ねるように自分の手を置き、優しく円を描くように胸へと押し付けた。
豊かな胸の果実が服の上からぎこちなくこね回される。レイリアは重ねた手に力を込め、より強く自らの
乳房をスレインの手に握らせる。
「あ…、ん、」
接吻だけでボウッとした様子のスレインを、レイリアは満足げにようやく解放する。
「さぁ、横になって」
スレインをベッドに横にさせると、レイリアはその上に覆いかぶさるように抱きついていった。
そのまま手探りでスレインの肉棒を探り当てると、ローブの上からでも既に熱く脈打っているのが
感じられた。何も言わずゆっくりと腰を下ろし、熱く滾るその肉棒を自らの秘所へと導く。人並みよりは
やや小ぶりだろうか。前戯なしでもすんなりとレイリアの肉壷に収まる大きさだった。やがて
ゆっくりとレイリアは腰を動かしながら、角度を調節してより深くまでスレインの男根を導いてやる。
夫に抱きついたまま自分から腰を動かすなど恥ずかしい限りではあったが、二人の営みではそれが
自然な行為となっていた。
「レ、レイリア…」
スレインはレイリアの体の下で荒い息をつきながらその名を呼んだ。
「あなた…。愛していますわ」
レイリアは挿入の動きを止め、長い黒髪をかきあげると横たわる夫の額にキスをした。
スレインのペニスはお世辞にも大きいとは言えず、レイリアは夜の営みにさほど女としての充足を
感じているわけではない。しかしそのため返ってレイリアは性の快楽に身を溺れさせることに対する
不安や抵抗もあまり感じずに済んでいた。また自分を愛してくれている最愛の男性が、自分の行為に
よって喜んでもらえることに妻として心から満足していた。
レイリアはスレインのペニスを中に収めたまま、愛おしげな表情で見下ろした。
「ちょっと動かないでいて下さいね」
そう言うと、スレインはもどかしい手つきでレイリアの夜着のボタンを外し始めた。レイリアは
スレインがボタンを外しやすいように乳房をその顔の前に近づけると、圧倒的な肉感をもつ二つの果実が
目の前に現れた。第2ボタンまで外したところで、その重い乳房がブルン、とその胸元からはだけ落ちた。
「あぁ、レイリア。私のレイリア…」
熱病に冒されたようなような表情で片方の乳房を乱暴にこね回しながら、スレインは子供のように
愛する妻の乳房に吸い付いた。
レイリアは豊かな乳房を稚拙な夫に与えながら、空いた片方の手で自ら残りのボタンを外していった。
「あなた、いいですのよ…。好きにしても…」
レイリアは片手で自分の乳房を捧げると、吸いやすいようにスレインの口元へと持ち上げてやった。
スレインはうっとりとした表情でその固く尖った先端に吸い付いた。片方の乳房に吸い付きながら、
もう片方の乳房を揉みしだくのも止めようとはしなかった。
レイリアはスレインの好みをよく知っていた。レイリアが食事の支度や片付けなどで屈むたびに、
スレインの視線はその胸元にひきつけられていた。その視線にはじめ嫌悪を感じないではなかったが、
今では殆ど気にならない。聞くところによると末っ子だったスレインは、幼いおりに母親と引き離され
賢者の学院での修行を強いられたという。母親はスレインが賢者の学院で中等部に上がるか上がらないか
の頃に病でこの世を去ったということだった。何度か体を重ねた後にスレインからそんな話を寝物語で
聞かされたレイリアには、なんとなく彼の隠された心の弱さや悲しみが分かるような気がした。
レイリアはスレインに乳房を与えながら、ぼんやりとそんなことを思い出していた。
スレインは夜の営みこそレイリアに主導権を握られているが、レイリアの方こそ精神面では完全に
スレインに依存していた。レイリアにとってスレインは自分を絶望から救ってくれ、こうして
ささやかな幸せな家庭と生活を与えてくれている絶対的な存在であった。スレインの性格や生い立ちに
多少の問題はあったかもしれないが、全く気にはならなかった。むしろレイリアはこうしてスレインに
求められること自体に喜びと生きがいを感じていた。自分にとっての絶対者であるスレインに与える
ことが出来るものであれば、それを捧げることに今は躊躇なかった。
「レイリア…、レイリア…!」
スレインはまだレイリアの乳房に吸い付いている。その愛撫はまだまだ稚拙であり、子供が母親の乳房に
吸い付くのと大差はなかった。時折、力加減を理解できずに思い切り強く乳房を吸い上げられると、
思わずその痛みに声が出た。
「痛っ。あなた、ちょっと…」
「あ!す、すみません。痛かったですか?」
レイリアの形の良い眉がひそめられたのを見て、口元から乳首を離したスレインがあわてて謝る。
「いえ、なんでもありませんわ。ただもう少し優しくしてくださると嬉しいのですけど」
心配そうに見上げるスレインを気遣いながら、レイリアは答えた。
「わ、分かりました。でもどうすればいいのか…。ちょっと見せてくれませんか?」
「えっ?」
ちょっと驚いたような表情をしたが、レイリアはスレインの言わんとしているとこを理解した。
再び今度は妖艶な表情でスレインに微笑みかけ、レイリアは囁くように答えた。
「分かりました。ちゃんとよく見ていてくださいね」
そういうと淫猥な笑みを浮かべながら、手で自らの豊満な乳房を口元へ持ち上げるとその先端を
口に含んで見せた。挑発的な目つきで、わざと音を立てて自らの乳房を吸ってみせる。
ちゅる、ちゅう、ぢゅ…
普段の聖母を思わせるレイリアからは想像も出来ない淫靡な光景だった。ゴクリ、とスレインが
つばを飲み込む音が聞こえる。レイリアにこれをさせたくて、わざと下手な演技をしたのだろうか。
魔術師らしい悪戯ともいえたが、今のレイリアには夫のそんな小細工すら愛しく思えるのだった。
(たっぷり見てくださいね・・)
レイリアは豊かな左右の乳房を交互にこね回すように揉みしだいては口元へ運び、自らその先端を
舐めまわしては吸って見せた。スレインはまるで魅入られたかのように妻の痴態を見上げている。
その様子を見ながらレイリアは騎乗位の姿勢で、再びゆっくりと捻るように腰を動かし始めた。
「あ、あ、レイリア、出ます、出てしまいます!」
ゆっくりと焦らすようにレイリアが責めてやると、切羽詰った声音でスレインが歓喜の悲鳴をあげた。
「構いませんわ。出してください」
レイリアは動きを緩めることなく、今度は逆に自分から秘所を締め上げつつスレインを激しく責め立てる。
「あ、あ、あぁ!」
15秒と持たずにスレインはレイリアの中に熱い精液を放った。レイリアはそのまま更に膣を
きつく締め上げると、力を失いつつあるスレインの男根から愛の雫を搾り取った。レイリアは行為が
終わったところで愛を確かめるように、そのままスレインの胸元に抱きつくように倒れこんだ。
荒い息をつく愛する夫を見て、レイリアはその貧弱な胸板に満足げに頬ずりをした。
「どうでしたでしょうか、あなた…」
おそるおそるそう尋ねてみた。スレインはしばらく余韻に浸っているようであったが、胸元に顔を
うずめるレイリアの黒髪をゆっくり撫でてやりながら答えた。
「素敵でしたよ。今まで私がこんな経験をできるとは思ってもいませんでした。」
「はしたない女だと思わないで下さいね」
レイリアはちょっと恥ずかしげに、悪戯っぽく愛する夫に笑いかけた。
「思うわけないじゃありませんか。私は貴女に私を導いてくれるようにお願いしたのです。そして、
私の愛する女性は貴女だけなのです。最愛の女性にこうして愛してもらえることが、私にとって最高の
幸せなのです」
その言葉を聞いてレイリアは胸がつまりそうになった。良かった。この人に会えて良かった。
スレインはレイリアの全てを知った上で、そのありのままを受け入れてくれているのだ。
心の隅々まで満たす喜びのあまり、レイリアは愛する夫に固くしがみついた。
嬉しさで目元が潤むのが止められなかった。
「レイリア…。愛しています」
スレインはそう囁くと、そっと優しくレイリアの背と腰に手を回してくる。
「あなた…」
レイリアもまたスレインに抱きつく。顔を上げると優しく微笑むように見下ろすスレインと眼が合った。
溢れる想いに我慢できず、飛びつくようにして再びスレインの唇を奪った。あまりの勢いにスレインは
気圧された。
「レ、レイリア。息ができませんよ」
なおも激しい接吻をやめようとしないレイリアの肩をつかんで離すと、スレインは咳き込みながら言った。
「あ!あの、すみません」
レイリアはそう答えたが、胸の奥についた炎はゆっくりと彼女の体を熱くしていった。今しがた
スレインの精を受け止めたばかりだというのに、今頃になってレイリアの秘所は熱く滴り始めていた。
「あ、あの・・。もう一度私を抱いて頂けないでしょうか?」
満足げに服装を直そうとする夫を見て、あわててレイリアは声をかけた。
「でも私はいま出してしまったばかりですが…。いいのですか?」
「ええ、構いません。私に任せてくださいますか?」
(そう…、まだ夜は始まったばかりなのですから…)
満たされた笑みを浮かべながら、再びレイリアはスレインに抱きついていった…。