窓から差し込む朝の光で、スレインはいつにない遅い朝を迎えた。  
既に寝室には妻の姿はない。台所では物音がしているところを見ると、既に起き出しているようだ。  
 
結局昨晩は、すぐにはスレインのモノは役には立たなかった。レイリアは情熱的にスレインと肌を  
あわせながら自分の秘所を指で擦りながら、立て続けに自慰で2回ほどいったようだった。さらに  
遅ればせながら立ち上がったスレインのペニスを1回、搾り出していた。体力のないスレインは  
レイリアの責めでヘトヘトになり、泥のように今まで眠りこけてしまったのだった。  
 
「お早うござます。寝坊をしてあなたにまた迷惑をかけてしましましたね」  
着替え終わったスレインがキッチンに向かうと、既にスレインの分の朝食が用意されており、レイリアは  
小さなニースに乳を与えているところであった。  
 
「いえ。ニースが眼を覚ましたものですから・・。わたくしの方は先に朝食を取らせていただきました」  
「構いませんよ。寝坊した私が悪いのですから」  
そういってテーブルにつくと、スレインは遅い朝食を取り始めた。  
 
少し冷えてはいたが、レイリアの作る料理はいつもおいしく、満足の言うものであった。  
レイリアはその傍らでまだ幼い小さなニースに乳を与えている。朝の光の中、愛娘をいとおしげに  
抱きかかえるその光景は、マーファ神殿にある聖女の壁画を連想させた。おそらくスレインがまだ  
ぐっすりと眠り込んでいる間に起きだし、マーファへの朝の祈りも済ませてしまっているのだろう。  
 
その光景をなんとはなしに見ていて、スレインはレイリアの胸元にいくつか、赤黒い接吻の痕をつけて  
しまったことに気づいた。珠のような白い肌にそこだけが穢れた染みのようにも見える。スレインは  
かすかに自分が聖女を汚してしまったようことに対する後ろめたさのようなものを感じた。  
 
その一方で昨夜の妻として、女としてのレイリアと、今の昼間の母として、マーファに仕える司祭としての  
レイリアという全く違う2つの顔をみていると、女性というものの不思議さと神秘を思わずにはいられなかった。  
 
そんなスレインの感慨など全く気づかぬ様子で、レイリアはニースに乳を与え終わるとその  
肌着を交換しに別室へ連れて行った。戻ってきたレイリアは動きづらいマーファの長い神官着  
ではなく、神官戦士の訓練着である短くやや厚手の木綿の短衣に着替えていた。  
 
短衣からスラリと伸びる四肢には無駄な肉はついておらず、カモシカのような野生を感じさせた。  
普段は長く後ろに束ね流した黒髪は、動きやすい用に短く纏めている。女性が羨むような豊かな胸は、  
今は訓練の妨げにならないように、サラシできつく締め上げており、短衣姿で背筋を伸ばした  
その姿は凛々しさすら感じられた。  
 
「すみません、あなた。昼の間、ちょっとニースを見ていて頂けますか?」  
レイリアが申し訳なさそうにいう。  
「構いませんよ。今日はターバの大神殿での神官戦士の修行の日でしたね」  
「はい」  
 
普段マーファの神官たちはここザクソンより少し離れた、ターバの村のはずれにある大神殿で  
司祭としての修行や奉仕活動に従事している。自衛のための神官戦士としての訓練もまた、  
その修行の一つであった。マーファの最高司祭ニースは既に高齢であり、熱心に彼らの指導を  
してはいるものの、どうしてもその戦士としての訓練には若い高司祭の人手を必要としていた。  
 
本来であるならば大ニースの娘であり高司祭として神官戦士としても優れた実力を持つレイリアが、  
その指導に当たるはずであった。しかし今、レイリアはマーファの公式な職を一切辞している。  
それでも高齢の母に対して少しでも役に立てばということでこれまで月に数回、ターバの大神殿に  
赴いて神官戦士の訓練を手伝っているのであった。  
 
「それではあなた、ニースをよろしくお願いしますね」  
 
そう言い残すとレイリアは帰還の呪文を唱え、ターバの大神殿へと向かった。スレインはその姿  
を見送ると、満足げに再び眠りについた幼子のまだやわらかい髪をなでた。  
「彼女が戻るまでぐずったりせずに、いい子でいてくださいね」  
(こちらの戦いも、まだまだレイリアに教えていただかないとだめですね)  
そう思うと、スレインは思わず苦笑いをこぼした。書斎に戻り魔術所を片手に窓際のニースの  
小さなベッドのそばに腰掛けると、再びいつものようにレイリアが戻るまで読みふけることにした。  
 
 
 
ターバからの帰りは徒歩であり、ザクソンに帰り着いた時には既に夕暮れ近かった。  
「遅くなりました。すみません」  
神官戦士の訓練を終えたレイリアが我が家に戻ると、スレインがむずがる赤子を相手に  
悪戦苦闘をしているところだった。スレインの腕に抱かれたニースは、イヤイヤをする  
ように体をひねらせては時折泣き声をあげる。スレインも一生懸命に愛娘をあやそうとは  
しているのだが、どうしてもレイリアのように上手くいかないようだ。  
「私が・・」  
「いえ、もう少しわたしが面倒を見ていますから、遠慮しないでください」  
そうスレインは答える。  
 
言われて気がついてみれば、レイリアは今しがた神官戦士たちとの訓練を終えたばかりで  
ある。むき出しの白い腕や太腿にも汗をかいており、訓練で舞い上がった土ぼこりに  
ところどころ汚れている。しかしそれでいて上気した白い肌は、健康的でどこか成熟した  
女性の色気のようなものが感じられた。汗ばんだ全身からにおい立つ女性特有の甘い  
香りもする。見ればきつく巻いたはずの胸のサラシも激しい運動で緩くなっているようだ。  
厚手の木綿の短衣をきていても、レイリアの女性らしい体の線が良く分かる。  
 
「それではお言葉に甘えさせていただきます。すぐに戻りますからそれまでニースをお願いします」  
「心配しないで行ってきてください」  
申し訳なさそうな顔をするレイリアに、スレインは優しい笑顔で答えた。  
 
レイシアは小走りに村はずれの小川まで走ると、急いで全身を清める。初夏にさしかかろう  
かというのに、小川の水は肌を刺すように冷たく、訓練で火照った体に心地よい。  
もう少し水浴びを続けていたいとも思ったが、慣れない手つきでニースをあやすスレインの  
ことを考え手短にきりあげる。用意した白い長衣の神官着に着替えると、レイリアは再び  
家へ戻った。  
 
「おかえりなさい、レイリア」  
スレインがそう声をかける。その脇には男女二人の客人がやってきていた。  
「いらっしゃい、パーン。ディードリッド」  
レイリアは親しい二人の来客に嬉しそうに挨拶をする。  
 
「また、お邪魔しています」  
そう答えたのは、まだ年若い戦士のパーンである。それに合わせて隣に寄り添う  
ように座るエルフの娘もコクリ、と笑顔で会釈する。  
パーンはレイリアがカーラに支配された先の事件から、夫のスレインとともに救い出して  
くれた冒険者の仲間である。その後、フレイムの内戦を共にしたのち、今は夫スレインと  
ともにここザクソンの自治運営の盾となり、隣に座る美しいエルフの娘ディードリッドと  
共に村を守ってくれているのだった。  
 
 
スレインに抱かれたニースは大変ご機嫌ななめの様子だった。  
「ちょっと私に貸していただけますか」  
そういってスレインの腕より幼子を優しく取り上げると、母の胸に抱かれて安心したのか  
ニースは次第に泣き止んだ。  
「さすがレイリアさんよね。スレインとは違うわ」  
ディードリッドが感心したように口にする。  
「私は不器用な人間なんですよ」  
そういってスレインは苦笑する。  
「まぁ、それはスレインを見ていれば分かるけどね」  
自分のことを棚に上げてパーンがそう言うと、一同に笑いがこぼれる。その様子を見て、  
レイリアも思わずつられて笑った。  
 
胸に抱いたまだ幼い娘と愛しい夫、幸せに満ちた家庭。苦楽をともにできる友人たち。  
一度はあきらめかけた幸せな人生がここにはある。レイリアは軽く目を閉じ、その  
幸運をマーファに感謝する。レイリアの守るべきものがそこにはあった。  
 
ふと再びぐずり始めたニースに気づき、  
「ちょっとすみません。この子を寝かしつけたらお茶を淹れますから」  
そういってレイリアはニースを抱いて部屋を後にした。  
 
 
「で、今日は何です。村の開墾については一昨日結論がついたと思っていたのですが」  
そうスレインが口にする。パーンたちとは先日、村はずれの森を畑に開墾すること  
について、議論をしたばかりだった。  
「今日はそのことではないんだ。ちょっとこれを見てくれ」  
そういってパーンが腰の皮袋から取り出したのは、一対の小杖(ワンド)と指輪であった。  
 
「なんですか、これは?」  
そういってスレインが小杖を手にとって見る。黒っぽい色をしたその小杖は、長さ30センチ  
ほどで全体に丸みを帯びている。握りやすいようにするためか、微妙な凹凸がつけられている。  
スレインが握ってみると、軽く体からマナを吸い取られるような感覚がある。これまで  
見たことがないような形状の小杖であった。  
 
「どこでこれを?」  
スレインがパーンに尋ねる。  
「スレインも知っているだろう。最近冒険者くずれの夜盗が村に現れたのを」  
「ええ」  
「今日もやつらが昼間から村に現れたのよ!」  
気の短いディードリッドが不機嫌そうに口にした。  
「何ですって。それで彼らは?」  
「もちろん、とっ捕まえて痛い目に合わせてやったわよ!」  
ディードリッドが得意げに口にする。ほっとスレインは胸を撫で下ろす。  
「その時、その夜盗の持ち物の中から出てきたのがこれだったというわけさ」  
パーンがディードリッドの後を続けた。  
 
「で、彼らはどこでこれを?」  
スレインはパーンに尋ねた。  
 
「なんでも、モス山中にある古代遺跡の廃墟の中から見つけたとか。彼らに返してやっても  
 良かったんだけど、こういうものはスレインの手元にあったほうがいいと思って、一度見て  
 もらいに来たんだ」  
「あんな奴らに返してやる必要なんてないわよ!これだけ村に迷惑をかけたんだから」  
ディードリッドはまだ憤慨しているようだった。  
それもそうだろう。夜目が利くということで彼女は最近、村の夜の見回りを指揮する羽目になっていたのだ。  
 
「まぁ、それはさておき」  
スレインはいつもながら、歯に衣を着せぬエルフ娘のストレートな言葉に苦笑した。  
一方の指輪をとみると、銀の指輪で小さな青色の石が嵌め込まれている。  
スレインが何気なくその指輪を手にとって見ると、ゾクリ、と全身に悪寒が走った。  
 
「これは!」  
 
思わず指輪を落としそうになり、慌ててもう一度良く見てみる。  
しかし今度は何も感じられなかった。  
 
「だろ?何だか変な感じなんだ。ディードはそうじゃないって、きかないんだけど」  
「だって素敵じゃない、綺麗で。私もあんな指輪、欲しいと思って」  
そういってディードリッドはパーンの方をチラリ、と見る。  
「エルフの貴方は、あまり金属製の装飾品などに興味がないように思っていましたけどねぇ・・」  
 
スレインはまじまじと指輪を仔細に調べながら、怪訝な表情でディードリッドに答える。  
「その指輪は別よ。もし要らないようだったら私が貰うわ」  
「ディード、止めておくんだ。魔法王国時代のものだったらロクなことにはならない」  
軽くパーンがたしなめる。ディードリッドはなによ、と不満そうな顔をするが、  
それ以上その話を続ける様子はなかった。  
 
「・・。とりあえず調べてみましょうか」  
スレインは魔法感知の呪文を唱える。やはり小杖は強い光を放っている。確かに魔法のアイテムの  
ようであった。しかしそれは、スレインがこれまで見たこともないような光り方であった。  
 
 
一方の指輪には、なぜか不思議なことに、魔法はかかっていないように見えた。  
 
しかし、スレインは小杖と指輪にある共通点があることを見出していた。  
 
「この指輪に魔力は感じられませんが・・。しかしこの内側に小杖と同じ刻印がされて  
 います。見たこともないものですが・・。同じ刻印がされている以上、一人の古代魔法  
 王国期の魔術師がつくくったもののようですね」  
「ということは、やっぱりそれもマジックアイテムなのか?」  
パーンが尋ねる。  
 
「まだそうと決まったわけではありませんが・・。ただ私はこの指輪に、なにか不吉で  
 邪悪な意思を感じるのです」  
スレインはそういって静かに指輪をテーブルに戻す。そう言われてみれば、パーンの目にも  
なにか禍々しいオーラのようなものが、指輪から立ちこめているようにも感じられた。  
 
浮かない顔でその指輪を見つめるスレインの言葉に、先ほどまで執着していた  
ディードリッドが驚いたような表情で、恐ろしそうに身震いした。  
思わずそっとテーブルの下でパーンの手を取り、固く握りしめる。  
「言ったろ、ディード。あんなもの持つんじゃないって」  
「そ、そうね」  
強情なディードリッドもスレインの言葉に、ようやく納得したようだった。  
 
「とりあえず、この指輪と小杖は私が預かって調べてみることにしましょう」  
注意深く指輪をテーブルに戻しながらスレインは答えた。  
 
「頼むよ。もし邪悪なもののようだったら、スレインの手で封印してくれないか」  
「分かりました。そのときにはまた、協力をお願いしますね」  
「当然だろ」  
そう笑うと話はここまで、とパーンは立ち上がる。ディードリッドもパーンと  
共に立ち上がると、スレインの家を後にした。気がつくとあたりは既に  
夕暮れに差し掛かるところであった。  
 
 
 
「あら、既にお帰りになってしまわれたのですか?お茶も出せず、  
 申し訳ありませんでした」  
 
パーンたちと入れ違いに、奥の部屋からレイリアが顔を出した。  
「ニースにお乳をあげていたものですから。で、今日は何のご用時でしたの?」  
と何気なくスレインに尋ねる。  
 
「これです」  
スレインがテーブルの上の小杖と指輪を指差す。それを見たレイリアの表情が  
凍りついた。見覚えのあるその小杖に、サァーと血の気が引く思いだった。  
 
「こ、これは!」  
「知っているのですか?」  
 
驚きで顔色を失った妻の表情を振り返り見ながら、スレインが尋ねる  
 
「いえ!。あ、あの…。はい…。」  
「…カーラですね?」  
 
全てを察したように静かにスレインが尋ねる。というよりも確認しているのだ。  
 
「…。はい…」  
しばし口ごもった後に、小さく消えるような声でレイリアが答える。  
スレインはそれ以上何も言わず静かに椅子から立ち上がると、怯えたように立ちすくむ  
レイリアをそっと抱きしめた。  
子供をあやすように軽くその長い黒髪を撫でてやりながら、スレインは答えた。  
 
「いいんですよ、無理をしなくても。貴女にはいやなことを思い出させてしまいましたね」  
「いえ…、あの…。すみません」  
「無理に言うことはありません。いづれ必要なときに教えてくれれば構いませんから」  
 
そういってレイリアを抱きしめる。その言葉にはスレインの妻に対する思いやりと配慮が  
詰まっていた。スレインの胸に抱かれ、レイリアは次第に落ち着きを取り戻していった。  
 
「ありがとう、スレイン。そんなにたいした物ではないのですけれど…。  
 いずれ機会をみてお話します」  
 
 
それにスレインはちょっと笑って応えただけであった。  
 
 
「それでは私は今からちょっと文献をあたってみます」  
 
そういうとスレインはレイリアを離すと、指輪と小杖を手にして書斎へ向かおうとする。  
その時、レイリアはもう一つの指輪に目を魅かれた。  
 
「あの…、その指輪は?」  
「あぁ、これですか?」  
 
妻を気遣ってこれ以上このことについて話すつもりはなかったスレインは、自分が  
呼び止められたことに少し驚いていた。  
 
「この小杖とともに、出てきたものだということだそうですが、どうも…」  
そう答えるスレインの歯切れは悪い。  
 
レイリアはスレインが指で摘んだ指輪をまじまじと見た。  
こちらは見覚えのある品物ではなかった。が、その青く輝く指輪の石の光が、不思議と  
レイリアの心を捉える。日頃、質素を旨とするレイリアであるにも関わらず、なぜか、  
 
(こんな指輪が欲しい…。)  
 
という思いがちらりと脳裏をかすめた。  
 
「きれいな指輪ですね」  
おもわずレイリアが口にする。  
 
「これがですか?私には指輪の良し悪しは良く分かりません。魔法の指輪ではないようですが…。  
 ただ、私にはなにか、これが唯の指輪ではないように思えます」  
 
意外なレイリアの言葉に、スレインは違和感を感じつつ答えた。  
 
「と、言いますと?」  
「この指輪は、こちらの小杖と同じ魔術師によって作られたものなのです。  
 対で見つかったということは、なにか隠された力があるのかもしれませんが…。  
 なんにせよ、これから調べてみます」  
「そうでしたの」  
 
そう答えて、再度指輪を見つめる。美しい…、とレイリアは思った。しかし、この指輪は  
「あの」小杖と同じ魔術師により作られたのだと言う。だとすればその“秘められた力”も、  
カーラの記憶をもつレイリアには、なんとなく想像が出来た。  
 
遅い夕食が終わるとスレインは書斎にこもり、先ほどの小杖と指輪について調べ始めた。  
レイリアが知っているのだから聞けばすむ話なのではあろうが、そのことで彼女がカーラの  
記憶で思い悩むことを気にしているのだろう。  
 
一方のレイリアもまた、こちらは違った意味で困惑し思い悩んでいた。  
(あんなものがどうしてここに…)  
そう偶然の悪戯を呪わずにはいられなかった。  
 
 
あの魔法の小杖は女性の“淫具”だったのである。  
 
台所の後片付けの手が止まる。  
レイリアがカーラに支配されていたとき、確かにあの小杖を使ったことがある。  
思い出したくもない忌まわしい記憶である。スレインもあの小杖について調べていけば、  
いづれ何かの情報を得てしまうであろう。  
 
 
台所に立ちつくしたまま、レイリアはそのときのことをぼんやりと思い出していた。  
 

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