「………んっ…は…っあ…」  
くちゅくちゅと粘液の交わる音と少女の苦しげでいてどこか艶めいた声が、夕焼  
けに照らされた誰もいない教室にやけにひびく。  
長く伸びた二つの影は深く触れ合いすぎて、まるで一つになっているかのように  
見えた。  
影の主達、沢登譲と西村あかりは晴れて恋人同士となり1ヶ月ほど。  
良く言えば純粋、悪く言えばお子ちゃまだったあかりが、沢登とこのように深く  
いやらしいキスをする関係へ発展するくらいには長い時間だ。  
   
「あの…せんぱい?」  
「ん、なんだね西くん」  
   
しつこく求めてくる沢登の追及の隙をついてあかりがといかけた。  
その頬は熟れた林檎のようで、沢登の欲を沸き立たせてやまないのだが、あかり  
はそれを知っているのだろうか。  
   
沢登は自分の自制心には自信があった、そうでなければこのように無防備なあか  
りを前にしてこれまで耐えてこれるはずがない。  
だから自制心はある…はずなのだが、どうにもこうにもこの初々しい恋人は沢登  
を煽らずにはいられないようだ…本人にとっては何の他意も無い仕草も、沢登の  
ツボにきてしまう。  
つまりは恋は盲目、それだけの単純な話だ。  
単純なだけに質が悪い。  
   
「あの…あのですね………  
 あたってるんですけど………」  
   
―む………?  
自制心は神、ではなく紙のように既に破れていたらしい。  
沢登のご子息は下着とプリーツスカートを押し上げ、立派に自己主張をしている。  
どうやら影が交わるほどに密着していたせいで、ご子息をあかりに押しつける形  
になっていたようだ。  
 
「これは失敬」  
「いえ…あの…その………でも…」  
   
真っ赤になってあかりは俯いてもにょもにょと呟いている。  
嫌がられてはいない、沢登はそのことに内心胸をなで下ろした。  
しかし改めて良く考えてみると、あかりはあたっているものが沢登のご子息だと  
理解できたのだ。  
これは大きな…いや偉大な進歩である。  
月面に初めて降り立った人類もかくやという感動を胸に沢登はニヤリと笑った。  
林檎を通り越してトマトのようなあかりをみていると唐突にいたずら心が沸いて  
きたのだ。  
沢登は誘うように自らのスカートをほんの少し捲りあげた。  
   
「ところでこいつをどう思うかね西くん?」  
「えっ!?  
 すごく…おおきいです  
 じゃなくて、なんでこんなになってるんですか?!  
 私達キスしてただけなのに…」  
   
いたずらのしっぺ返し。  
あかりはどうやら沢登の予想を上回るお子ちゃま度合いだったらしい。  
つまるところ…彼女はこの年頃の男の生理というものを理解していないようであ  
る…今時の女子高生、しかも双子の弟という近しい男性がいながら…ありえない。 
朝はもちろんのこと、うっかり授業中に昼寝をしてしまっては反応し、可愛いあ  
の子を思い出しては反応し、果てには何もしなくても反応してしまうこの業深い  
『青い春』を知らないのだ。  
しかも、おおきい、と褒められたのも喜んでいいのか…微妙な色気の無さがいっ  
ぱいの回答だった。  
   
「西くん………君という人は」  
「どうしたんですか?  
 はっ!もしかしてキスしかしてないのに先輩のがそんなになっちゃったのは病気  
なんですか!?」  
   
来た、あかりお得意の超解釈だ。  
しかしこれしきのことで沢登はめげないこりないへこたれない。  
伊達に史上最悪の風紀委員長とよばれているのではない。  
   
「病気ではないよ西くん  
 教えてあげよう  
 なんで僕がエレクチオンしているのか…その理由は」  
「その理由は…?」  
   
その時…時間が止まった、彼らにはそう思えるほどの緊迫した間。  
だから何故沢登がエレクチオンなどという古風な単語を使ったのか…誰も突っ込  
まないし、突っ込めない。  
エレクチオン…珍妙だが沢登にはふさわしい気もする。  
   
「君を愛しているからさ…あかり」  
「譲先輩…!」  
   
そして二つの影はふたたび一つになった………。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   
「という夢を見たんだが」  
   
珍しく全員揃った風紀の面々を前に、これまた珍しく妙に真剣な表情の沢登は語  
った…彼の見た夢を。  
それに対する風紀委員達の反応は皆同じものだった。  
   
夢に出て来た当事者の彼女はかわいらしく頬を真っ赤にしてさけぶ。  
「セクハラです先輩!!」  
   
わかめ(何処が、とは明記しない)のような男子生徒は、あかりを庇いつつ白い目  
で沢登を見ていた。  
「訴えた方が良いと思うよ〜ねぇノリちゃん」  
   
その隣で呆れをこめた視線を沢登におくる薄い(何処が、とは明記しない…という  
かかわいそうで出来ない)彼は、珍しく同意している。  
「そうだな今回ばかりは内沼に賛成だ」  
   
興味なさげにしているが、案外律義な彼はどうやらちゃんと聞いていたらしく、  
絶対零度の視線をちらりと沢登に寄越した。  
「………最低ですね」  
   
今日も風紀の愉快な仲間達の日常は………平和だ。  
   
 
おわり  
   
 

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