繁華街から少し離れたところのビルの1階にあるバー、レモンハート。
今日は珍しく、常連のメガネさんも松ちゃんも顔を出さない。
客はカウンターにいる男女二人だけだった。
マスターはグラスを磨いたり、カウンターを拭いたりしながらも、二人のことが気になっていた。
席に座ってから小一時間。
オーダーした後、二人は一言も口を聞いていない。
目の前にある水割りの氷はとうに解けてしまっている。
沈黙を破り、男が声を出した。
「……わかってるんだろ……もう…終わりなんだよ……」
マスターは聞こえないふりをしつつも、二人の会話に聞き入った。
「……えぇ、わかっているわ……でも…」
「でも、じゃない。……もう……終わりなんだ……」
そういうと、男は目の前の水割りを一気に食道の中に流し込むと、つぶやくように言った。
「……誰かが悪いわけじゃないんだ……」
「じゃぁ、せめて…せめて最後ぐらいは……」
「……無駄じゃないのか?……未練が残るだけだぞ…」
「それでもいいの。…長いようで短かった付き合いだけど……最後ぐらいは……」
しばしの間、沈黙が場を支配した。
男は、女の方を向くと、かすかに頷いた。
「マスター、お勘定を」
男は二人分の料金を払うと、二人はレモンハートから出て、ホテル街へと歩を進めた。
とあるホテルの一室。
そこには、先ほどの男と女がいた。
「ねぇ、まだぁ〜」
「そうせかすなよ。こっちだって準備があるんだ」
そう言いながら、男はなにやらごそごそとかばんの中を探っている。
「よし。これでOKだ。これで最後かと思うと、ちょっとさびしいな」
「あら?さっき『未練が残るだけだからやめよう』って言ったの、嘘だったの?」
「あっ、ばれたか。俺も未練を残したくないからな。じゃ、はじめようか」
男の言葉に、女はこくりと頷いた。
30分後
「ふぅっ…」
男がいきなり立ち上がった。
「あ、何?もう終わり?早いのね」
「あっ…、すまない。最後かとおもうとつい…」
「じゃ、2回目、期待していい?」
「おいおい、俺を幾つだと思ってるんだ?1回だけだよ、2回目は無理だ」
「まだ、そんな歳じゃないんじゃない」
「いや、最近歳を感じることが多くて…そろそろオッサンの仲間入りだよな」
そういうと、男はベッドサイドの椅子に腰掛けた。
「OpenJaneDoeを起動して…エロパロ板の…『エロパロ的 SSコンペスレ』…ここだな」
「ええ。スレがたったのが8月6日だから…3ヶ月半の付き合いだったわね」
「まあ、いろいろあったけど、なくなるとなるとちょっとさびしいよな」
「でも、しょうがないじゃない。書き手がいなくなっちゃったんだから」
「まあね。あと7KBで480KBだから、少し埋めれば自然にdat落ちするんだよな」
「ええ。1週間放置されればね。だから…だからこそ、最後はSSで締めよう、って思ってたの」
「でも、これで7KBあるのか?」
「残念ながら…ないわね。でも、作者はこれが限界みたいよ」
「そうか…それも仕方ないか。じゃ、最後のSSを投下するぞ」
互いに見つめる目と目。
そして二人は「書き込む(W)」をクリックした。