なんだかぼんやりする。
頭に全身の血が昇って、なかなか下がらない。でも心臓はドキドキして、身体に力が入らない。
ちょっと飲みすぎた。いつもよりハイペースだったせいか、加減がわからなくなってしまった。
目の前には、同じように真っ赤な顔で呂律が回らないまま話し続けるエリがいる。
えーっと・・・・いつから飲み始めたんだっけ。
考えてもしょうがないか。
タケルもミチルも、昨日から仕事でいない。帰ってくるのは・・・明日の朝だっけ。
ルカは視線を落とし、熱のこもった息を吐いた。
ミチルに、ちょっと腹を立てていた。
なぜかって、自身の携帯を充電器に差したまま忘れていくという失態を犯したのだ。
おかげでこちらから声を聴くことも出来ない。この寂しさは、いくら飲んでもごまかせない。
「ちょっと〜〜〜ルカ聞いてんのぉ〜」
エリの不満そうな声にルカははっと我に返る。
「聞いてるよエリ」
「うっそ〜〜絶対いま聞いてなかったでしょ〜〜」
「そんなことないない」
ルカはごまかすように笑うが、エリはいきなり勝ち誇ったような顔になる。
「あ!!わかったぁ〜〜ミチルちゃんが心配なんだ〜〜!」
「・・・っ」
自分は酔うとすぐ顔に出るからイヤだ。知らず知らずのうちにそんな顔をしていたのだろう。
エリもこういう事に関してやけに鋭い。
いつもなら反論するところだが、頭がぼーっとしていい言葉が思い浮かばない。
・・・嘘ついてもしょうがないし。
「・・だったらなんだよ」
「やっぱり心配なんだ〜!そんなに想われてるミチルちゃんは幸せだよねぇ〜〜」
「う〜ん、そうかなぁ」
思考回路がぐちゃぐちゃで、よくわからない。
「うん、妬けちゃうくらい」
だってルカかっこいいし、とエリは笑いながら呟いた。
「かっこいい?私が??」
「だってオットコ前だよ〜〜ルカ」
そういいながらエリはルカの首に腕を回してくる。
一瞬、エリの顔が真剣になった・・・気がした。
エリの酔っ払って潤んだ瞳を間近で見て、ルカの速かった鼓動がさらに加速する。
エリ、酔いすぎ。
ルカは軽く腕を押して解こうとするが、エリは気にしない様子で、ニッと笑った。
そのまま、エリの顔がゆっくりと、スローモーションみたいに近づいてくる。
酔って止まりかけていた思考が、完全にストップ。
ルカはどうしようもなく、黙って目を閉じた。
唇に柔らかいものが触れた後、優しく吸われる。チュッと音を立て、簡単に舌の侵入を許す。
ゆっくりと歯列をなぞられ、舌を絡め取られる。お互いの唾液の音が聞こえ、ルカは恥ずかしくなった。
ちょっと体重をかけて押し倒すと、酔ったルカの身体は簡単にソファーに身を委ねる形になる。
エリがゆっくりとルカの赤くなった耳に柔らかい唇を移動させていき、耳朶を口に含む。
「・・っ」
ルカの身体が震えたのをエリは見逃さず、さらに軽く歯を立てる。
「やっ・・・いたっ・・・」
「ルカって耳弱いんだね」
わざと耳に息を吹きかけるように言ってやると、赤かったルカの顔はさらに赤くなる。
エリにはそれがとてつもなく可愛く見えてくるのだった。