「お風呂でたぞー」そう言ってルカがルミを抱いてミチルの部屋へ入ってきた。
新米パパらしく、風呂は自分が入れると張り切っているものの、
まだまだ赤ん坊の扱いにおっかなびっくりのルカは、つい長湯になってしまう。
今日もまたのぼせ顔。ルミのことは着替えまで完璧にしてくるくせに、自分のことはおろそかになっている。髪だってタオルでふいただけでくしゃくしゃだ。
「ありがと、るか、のぼせちゃったんじゃない?」
部屋に入るなりルカののぼせ顔はますます真っ赤になった。ミチルがT シャツをはだけて、胸をあらわにしていたからだ。
「あ、ミチル、ご、ごめん」
「ん?ああ、これ?このあいだ、おっぱいの出が悪くなって、熱が出ちゃったでしょ。そのときに助産婦さんに教えてもらったの、こうしてマッサージするといいんだって」
「...へえ、そうなんだ...」裸の胸に照れながら、やっとのことでルカは答えた。
先週、ミチルはひどい熱を出した。ルカが練習を終え、夕方家に戻るとルミの泣き声がする。「ルミ?どうした?」とミチルの部屋に入りベビーベッドを覗くと、
ルミが火のついたように泣いている。おむつを換えても泣き止まない。
ミチルはどうしたのだろう?ルミを抱いて部屋を出てリビングに入ると、ソファにもたれてぐったりしているミチルがいた。
「ミチル、どうしたの?」駆け寄って肩に触れると、服越しにも熱いのがわかった。
「寒いよぉ、るかぁ」とミチルが朦朧としながらつぶやいた。
「すぐに病院行こう!」ルカは急いでタクシーを呼び、ミチルのかかりつけの産婦人科へと向かった。
「にゅうせんえん?」二人にとって初めて聞く病名だった。
「おっぱいが出る道が詰まって炎症を起こしてるの。こっち側、固くなって、熱をもっているでしょう。」と医師が説明しながら軽く右の胸に触れた。
「痛っ!」ミチルが声を上げた。
「詰まっているおっぱいを出してあげないと、熱も下がらないし、赤ちゃんもおっぱいが飲めなくなっちゃうからね」と傍らにいた年配の助産婦が言い、マッサージをはじめる。ミチルは目をぎゅっと閉じ、固く唇を噛み締めて、痛みをこらえていた。
「ミチル、だいじょうぶ?」ルカは片手でルミを抱き、もう片方の手でみちるの手を握りながら、ただおろおろとしていた。
ミチルはルミを抱くとそっと口に乳を含ませた。
風呂上がり、少しむずがっていたルミだったが、安心したように口を動かしながら、うとうととし始めていた。
なんて清らかな光景なんだろう。
ルカは身じろぎもせず、じっとミチルとルミを見つめていた。
どのくらい経ったろう。
「寝ちゃった」そう言ってミチルはそっとルミを抱きなおし、
微笑みながらベビーベッドへと寝かしつけた。
ルミの顔がミチルの乳首から離れていき、一瞬ミチルの白い胸が露になった。
ルカの中で急にゾクゾクとしたミチルへのむき出しの感情が呼び覚まされる。
清らかな母子像に安らぎを覚えている一方で、ミチルを犯したい、自分も乳首に吸い付きたいという強い衝動にかられているのだ。
こんなの嫌だ!一番大切な人を自分が汚しているような気がして、ルカはそんな自分の感情を認めたくなかった。
「ん、笑ってるみたい。夢、見てるのかな」微笑みながらミチルが言う。
「うん...」目をそらした。
「るか、どうかしたの?」とミチルが心配そうな声をだした。
眉間にしわがよっているからだ。自分が嫌になる。
「なんでもないよ」
見つめられて、話が続かない。
「...じゃあ、あたし、寝るね。」
言葉が少しぎこちなくなった。
部屋を出ようとすると「るか...」とミチルに静かな声で呼び止められた。
二人でベッドに腰掛ける。腕にミチルの胸が触れた。
「いつもごめんね、あたし頼りない母親で。ルカに迷惑ばっかりかけて..」
「そんなことない、迷惑なんてぜんぜんしてないよ!」
ミチルがこっちを見ているのに、また目を反らしてしまった。
「るか.....」
ミチルはじっとルカを見つめながらそっとその右手を取り、Tシャツの下から自分の左胸にあてた。
「!!」
初めて触れるやわらかなミチルの胸の感触にルカは昂りを覚えた。
斜めに向き合うように座っているのに、ルカは恥ずかしくてミチルの顔も胸も見ることができない。
「るかぁ。」ミチルがやさしく名前を呼んだ。
「...........」ルカはその声を聞いただけで泣きそうになった。
「るかのすきなように.....していいよ....」とミチルはささやきながら、手を離した。ミチルの左胸の上に置かれた自分の右手。ミチルの鼓動が伝わってくる。
ああ、この人は私を解放してくれる聖母だ。
ルカは左手でそっとミチルの肩を抱きよせ、長い口づけをかわした。