夕方から降り出した雨は激しく降り続いている。  
ミチルはシェアハウスのドアの前で立ち尽くしていた。  
その右手は、ドアをたたく格好のままで硬直している。  
このドアの向こうには、自分を温かく迎えてくれる仲間がいる。  
それはわかっているのだけれど。  
「ルカ・・・」  
信じている友の名を呟いたその声は、雨音の雑音に消されてしまいそうだった。  
私が恋人のもとに戻ってしまったとき、ルカは何を思ったのだろう。  
 
「今アイツのところに戻ったら、また同じことの繰り返しだよ?」  
 
ルカが言った言葉がよみがえる。  
本当にその通りだった。ミチルの目から一筋の涙が流れる。  
ルカは一生懸命私を守ってくれた。宗佑という存在から。  
それを私は自分の意思で裏切ってしまった。  
ルカに合わせる顔などないはずなのに。  
それでも・・・・  
ルカに・・・会いたい。  
 
そのとき、ドアがガチャリと音を立てて開いた。  
 
「・・・ミチル?」  
聞き慣れた澄んだ声。  
ルカはまるで信じられないといった顔で見つめている。  
「ルカ・・・・」  
必死で絞り出した声はかすれた声にしかならなかった。  
「どしたのミチル!?びしょぬれじゃん!!」  
ルカはミチルの手を引き、リビングのソファーへと座らせた。  
「待ってて。タオル持ってくる」  
そういってルカはそそくさと部屋を出て行った。  
なんだかものすごく安心して、涙が溢れてくる。  
いけない、泣いちゃいけない――  
それでも、どんどん頬に涙が伝っていく。  
そのとき、肩にふわりと柔らかな感触を感じた。  
 
 
「・・・はい、タオル」  
肩に感じる優しい感触に、ミチルの震えは少しずつ治まってくる。  
それでも、漏れる嗚咽と溢れる涙は止められない。  
そして、ルカの顔を見るのが怖くて、ミチルはしばらく俯いていた。  
流れる沈黙。肩にルカの静かな呼吸をわずかに感じる。  
 
ミチルが何を言えばいいのかと迷っていると、ルカが先に口を開いた。  
「良かった。戻ってきてくれて」  
予想外のその言葉に、ミチルは初めて顔を上げ、ルカの顔を見つめた。  
「もう戻ってきてくれないかもって思ってた。ミチルはホントの幸せを見つけられたのかって」  
優しい目でルカはミチルを見つめている。  
ふいに、ルカがミチルの手に触れた。  
「痣――」  
「え」  
ルカは眉間にシワを寄せて、その痣を見つめていた。  
ミチルは耐えられなくなって、口を開いた。  
「ルカ」  
「ん?」  
「怒ってないの?」  
私はあなたの優しさ、強さをいっぱいもらったのに。  
なのに私は、あなたを裏切った。  
どうしてそんなに優しい目で私を見てるの?  
 
ミチルの肩がまた震えだす。  
そのとき、ふわりとミチルの体が温かさに包まれた。  
「ルカ・・・」  
「怒ってないよ」  
自分の背中にルカの腕の体温を感じる。温かい。  
 
「ミチルがいてくれるだけで、私は嬉しい」  
「ルカ・・・」  
ルカの顔がぼやけてみえる。それでも、微笑んでるのがわかった。  
ルカの顔がすっと近づき、唇に温もりを感じる。  
ほんの、一瞬。触れるだけのキス。そして、ぎゅっと抱きしめられた。  
感じるのは、ルカの少し速い鼓動。  
ルカの体温をもっと感じたい。ミチルはルカの少し広い背中に手を回す。  
そして、なんともいえない心地よさにルカに体を預ける。  
両頬に少し冷たい感覚。ルカの手って、なんでこんなに優しいんだろう。  
ルカと2度目のキスは、すこし長く感じた。お互いの温もりを確かめ合うような、深いキス。  
ミチルは体のどこかに残っていた力が、すっと抜けていく感覚を感じた。  
ルカの唇が下がり、首筋をなぞる。  
ゆっくりと、ミチルの存在を確かめるように。  
「んっ・・・ルカ・・・っ」  
「なに?」  
「誰か・・・帰ってくるよっ・・」  
ルカはくすりと笑い、  
「大丈夫。タケルは今日仕事場に泊まるっていってたし・・・エリーとオグリンは出張」  
そういって、ルカは再びミチルの首筋に顔を埋める。  
「ん・・・ルカ・・」  
「声・・・出して大丈夫だから」  
そういって、ルカは雨で湿ったミチルの服のボタンを丁寧にはずしていく。  
「・・寒くない?」  
ルカの言葉に、ミチルは小さく頷く。  
ミチルの白い肌が少しづつ露わになっていく。  
 
ルカがその肌をなでると、ミチルはぴくりと反応を返してくる。  
「ルカ・・・恥ずかしい」  
「ミチル・・・見られたくない?」  
ミチルは少し顔を紅潮させながら、首を振った。  
「ルカなら・・・大丈夫」  
「下着とっていい?」  
ミチルはこくりと頷いた。ルカは、少し湿ったブラをゆっくりと取る。  
小ぶりだが、形の良いミチルの胸が露わになった。  
ルカはミチルの鎖骨にキスを落とし、唇を下げていく。  
「っルカ・・・ぁ・・・」  
ルカが膨らみにキスをし、ふいに突起を含んだ。その瞬間、ミチルの体が強張る。  
「あっ・・んっ」  
突起を少しきつめに吸い、舌の先でころころと転がすと、ミチルの体が熱を帯び始める。  
ルカの手がミチルの腹をすべり、スカートのホックをはずす。  
ミチルは思わず覆い被さっているルカの頭を抱きしめた。手に伝わるのは、見た目よりもずっと柔らかいルカの髪の感触。  
ルカがいる―――  
こう思うだけで、ミチルは安堵感に包まれ、すべてをルカに預けることが出来た。  
自分の中で、どんどんと快感の波が押し寄せてくるのをミチルは感じながら、目をつぶる。  
「・・・ミチル、脱がしていい?」  
ミチルが小さく頷いたのを見て、ルカはゆっくりとスカートをミチルの足から抜き、足にキスを落とす。  
「ぁん・・ルカ・・」  
触れて欲しい。もっとルカを感じたい。  
ミチルは涙目でルカを見つめるが、ルカは焦らすように指の腹で胸の突起をなぞるだけだ。  
まるでミチルの心の中を見透かしたように。  
「はっ・・・・あっ・・ルカぁ・・っ」  
「・・・何?ミチル」  
ルカはミチルの耳に唇を寄せ、囁くように言う。  
ミチルはぞくりという感覚を覚えながら、ルカの首に腕を回す。  
「何して欲しいか・・・言って?ミチル」  
ミチルは耳まで真っ赤になっているのが自分でもわかった。  
しかし、ルカの耳に口を近づけ、消えそうな小さな声で  
「触って・・・」と呟いた。  
 
ルカは微笑んで、ミチルの頬にキスをすると、下着越しに割れ目に指を這わせる。  
「ああっ・・・んっ」  
「ミチル、濡れてるよ」  
「や・・・だ・・・そんなこと・・んんっ」  
弱弱しく首を振るミチルをルカは愛しげに見つめた。  
ゆっくりと指を上下させるたびに、ミチルの体が小さく震える。  
ルカは一番敏感な突起に指を止める。  
「ミチル・・・もっと感じて?」  
そういって、ルカは突起に爪を立てた。  
「やっ・・!ひぁぁっ」  
突然の強烈な刺激に、ミチルの体が大きく跳ねた。  
ルカは突起をこりこりと摘み、まるでミチルの反応を楽しんでいるかのようだ。  
「ね・・ぇ・・っ・・ルカっ・・」  
ミチルは涙目でルカに抗議の色を示す。  
「ん?」  
ルカは悪戯っぽい目で微笑んでいる。  
「・・・どしたのミチル?」  
意地悪。わかってるくせに。  
私にもう余裕なんてないことも、あなたをもっと求めてるってことも。  
「ルカっ・・っ・・いじわるしないでよぉっ・・・」  
ルカは困ったように優しく笑い、ミチルの唇に自身の唇を重ねる。  
「・・わかったから・・・泣かないで?ミチル」  
そういって、濡れた下着をミチルの足から引き抜いた。  
そして、濡れそぼった入り口に指を滑らせる。  
「んんっ・・・っあぁん・・っ」  
ルカはソコに顔を近づけ、ちゅ・・とキスをした。  
「すごい・・・ミチル、溢れてるよ」  
「や・・いわないで・・っっ」  
やわやわと突起を撫で、ルカはさらにミチルを絶頂へと導いていく。  
「はっ・・・あっ・・ルカぁ・・」  
ルカは人差し指をゆっくりとミチルのなかに沈めた。  
「ひあぁぁっ・・・やっ・・」  
「・・気持ちいい?ミチル」  
ルカはすっと指を抜き、再び挿入する。  
「・・すごい締め付けてくる」  
そういいながら、ルカはどんどんと出し入れを激しくしていく。  
そのたびに、ミチルは悲鳴のような声を出す。  
「あっ・・やぁっっるかぁっ・・」  
「いいよ・・・ミチル・・イって・・」  
 
その甘い囁きが聞こえた瞬間、ミチルの意識はなくなった。  
 
 
ふと目を覚ますと、隣でミチルが静かな寝息を立てていた。  
ルカは、いつかこうして眠っているミチルを口付けを交わしたことを思い出した。  
あのとき、ミチルは泣いていた――  
ちくり、とルカの心が痛む。あの時ミチルは、幸せの中に淋しさを隠していた。  
そのときのあなたは痛々しいくらいで。  
 
隠さなくてよかったのに。  
ルカはミチルの体を黙って抱きしめた。  
 
「ん・・・」  
「おはよ」  
「ルカ・・・おはよ・・今何時?」  
「まだ暗いから・・・5時くらいかな」  
そっか、とミチルは囁き、顔を赤くした。自分の姿に気づいたからだ。  
「あ・・あの、ルカ・・服とかない・・?」  
ルカは微笑んで、ミチルの頭をなでた。  
「あるけど・・・・もうすこしだけ・・こうしていたい」  
ミチルは顔を少し赤らめたまま、黙ってルカの胸に顔を埋めた。  
「ルカ・・・温かいね」  
「・・・服着てるからね」  
「・・・ううん。安心するんだと思う・・・」  
「そう?」  
「ルカと一緒なら・・・幸せになれるかなぁ」  
そういってミチルは照れたように笑った。  
ルカは黙ってミチルの頭をなでながら聴いていた。  
 
ミチル・・  
私はあなたから目を離したくない。  
いつまでもあなたを見つめていたいんだ。  
たとえあなたが私の目の前からいなくなっても・・  
たとえあなたの中で私の存在が消えてしまっても・・  
 
あなたを想う気持ちは変わらないから。  
 
 

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