ミチルの体がベッドに沈んだのを確認すると、ルカは部屋の明かりを消して暗くした。  
 
 
ベッドに戻ると、自分も横になりミチルの寝顔をのぞく。  
 
「……ちょっと激しかったかな」  
 
言いながら、ミチルの顔にかかった前髪をはらってやる。  
 
 
ようやく思いの通じた彼女を大事にしたいはずなのに、歯止めが効かない。何度も何度も求めてしまう。  
 
 
この腕の中におさめておかないと…いつかまた自分の前から姿を消すんじゃないかってどうしようもなく不安になる。  
 
 
 
ミチル…?  
 
あなたを抱いている間は、あんなにも満たされていたのに  
 
こうしてあなたの寝顔をみていると不安になるんだ。  
 
へんだよね。  
こんなにもそばにいるのに。  
 
 
ゆっくりと愛おしむように髪を整えてやると、ミチルを起こさないようにそっと抱き寄せてキスをし、目を閉じる。  
 
 
 
 
「おやすみ、ミチル。」  
(今からおはようが待ち遠しい)  
 
 
 
**  
 
「…ん……」  
 
目を覚ますと、ふわふわの茶色が視界いっぱいに広がった。  
 
抱きしめるというよりは、まるで母親に甘えて抱きついている男の子のような彼女。  
 
昨夜の表情とは打って変わってミチルの胸の中で丸まってすやすやと眠るルカがいた。  
 
「フフフ、なんか子どもみたい…」  
 
ルカの短い髪の毛はさわり心地がいいんだってこと、きっと私しかしらない。  
 
 
そんな些細なことでも嬉しくて、幸せで…思わずぎゅっとルカを抱きしめる。  
 
少しずつ、けど確実にルカとの壁はなくなっていって。  
 
 
今ではもう壁を感じることはほとんどない。  
 
 
ただ………  
 
抱きしめている彼女の体は、完全に服に包まれている。  
 
 
ねぇ、ルカ  
 
いつだったか私があなたのシャツの中に手を入れた時、ひどく戸惑っていたあなたの顔が忘れられない。  
 
ルカにとって自分の体をさらけ出すというのがどんなに嫌なことなのかわかってるつもりだよ?  
 
だけど…  
 
だけど私はルカの体に直に触れたい。  
 
 
ともすれば簡単に破れてしまう普通の服なのに、私にはとても分厚い壁のように感じるの。  
 
 
あなたが好きだから、  
かけがえのない存在だから、  
 
ありのままのあなたを受け入れたいの。  
 
あなたにも私を感じてほしいの。  
 
 
「ルカ…私はずっとそばにいるよ?」  
(すべて教えて、あなたのこと)  
 
 

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