「やだっ…止めて、ソウスケ…」
ソウスケに掴まれた腕が、だんだんと赤くなっていく。
ミチルがどんなに離れようとしても、力で敵う訳もなく、ミチルの泣き声は虚しく部屋に響いた。
「ミチル…こっち向いて?」
恐る恐る見たソウスケの瞳は闇の様に深く、吸い込まれるような恐怖を感じた。
反抗しようものならきっと自分は壊される。反抗心すら消されるほどの恐怖。
「…約束して、僕の側から離れないって」
そう呟くと、ソウスケはミチルにキスをした。
キスと言うよりも、ミチルの口の中を貪る、と言った方が正しいのだろう。
ただ乱暴に、息をする暇さえ与えない。二人の唇の間からミチルの苦しむかすかな声が漏れる。
酸素が欲しい、と身体が叫んでいる。もう掴まれた腕の感覚も無い。
…本当にこの人は私を愛してくれてるの?
ソウスケといると自分が何なのか分からなくなるよ…ねぇソウスケ……
ソウスケが唇を離すとミチルは現実に戻された。今のミチルは、息をする事で精一杯だった。
「約束して。もうあいつには会わないって」
…あいつ?酸欠でぼーっとする頭で考える。
「なんなんだ、あのルカってやつ…絶対許せない」
ルカ…そうだ。私の大切な親友。
「…ルカの事は悪く言わないでって…言ったよねぇ…ソウスケ…」
…こう言えば、ソウスケにどうされるかなんて、分かってる。
だけど、これだけは譲れない。
「…私の友達を…ルカを悪く言わないで!」
ソウスケはミチルを見つめる。その瞳は相変わらず闇に覆われている。
パーン、と単純で乾いた音が部屋に響く。ミチルの頬はみるみる真っ赤になっていく。
もう一度、同じ乾いた音が響く。ソウスケの冷たい手のひらは何度も何度もミチルの頬に当たる。
「何であんなやつ…!僕の方がずっと、ずっとミチルの事愛してる、だから…」
ソウスケはミチルの服を引き裂いた。服が裂ける派手な音が、
ミチルに更に恐怖を与える。下着も乱暴に剥ぎ取られる。
「…だから、僕だけのものになって」
ミチルが考えてる暇もなく、下腹部に痛みが走った。
「…ああっ!ソ…ソウスケ…ダメ…」
ソウスケは激しく腰を打ち付ける。ミチルが傷付こうが構わない。ただミチルが自分のものになればいい。
「ダ、ダメ…だって、ソウスケっ…ああっ…」
その行為に愛は感じられない。ただひたすら苦痛、悲哀の繰り返し。
ミチルは自分でも知らない内に泣いていた。痛いから、悲しいから、じゃないもっと深い感情で。
「ミチル…好きだよ。」
ソウスケの動きは激しさは増していく。
二人の身体がぶつかる音と、ミチルの泣き声だけが部屋を支配する。
「…ミチル、僕、もうっ…」
そう言うと、ミチルの中のソウスケのものが、更に膨張し始めた。
ミチルも本能で何となく分かったのだろう。それがどういう事か。
「ソウスケ…お願いっ…あ、や、止めて、ソウスケ…!」
「ダメだ、ああっ…ミチルっ…」
遅かった。ソウスケはミチルの中でビクビクと動いて、ミチルの奥に射精した。
ミチルのそこからは次々に溢れてくる。それは虚しくなる程に。
「はっ…はぁ…ミチル…ごめん…」
ソウスケはミチルを抱きしめた。それはさっきとは違い、優しさがあった。
「ごめんね、ミチル。ごめん…」
ソウスケは何度も何度謝った。涙を流しながら、必死に謝罪を繰り返した。
…なんでだろう。こんなソウスケを見てると胸が痛くなる。
分からない。自分でも。
でもまだ私はソウスケの事が好きなのかもしれない。
ミチルはソウスケが眠りにつくまで、ソウスケの頭を撫でていた。
静かにドアを閉めて、鍵を掛ける。
外の空気は少し冷たくて、それも心地よくて。
腕の痣は消えないけど、気にしない事にした。
黙って抜け出したらまた何されるか、なんて分かってる。
でも、私はあの家にいたい。
…ねぇ、ルカ。あなたの側にいたい。
END