タチアナは戸惑っていた。  
 
焦がれていた、クラウスとの情事の時。  
全ての予定が順調に消化され、クラウスの心を惹き付けたまま、  
ベッドの上で、二人は、一糸纏わぬ姿になっていた。  
 
しかし、クラウスのその突起物は、覚悟していた大きさを遙かに上回っていた。  
 
タチアナの身体が、事前に振り払った以上の恐怖にブルブルと震え出す。  
「大丈夫だよタチアナ・・・痛いのは最初だけだから・・・優しくするから・・・」  
違う。そんな事は予め覚悟していたし、クラウス相手にそんな事で怖がったりしない。  
タチアナはそう心の中で叫びながら、クラウスの甘く優しいキスを受け入れた。  
 
クラウスとの行為自体は、むしろずっと夢見ていた事だ。後悔もしていない。  
いざ事に及んだ時にクラウスを拒んだりしなくて済むように、勉強や準備も整えた。  
だから、タイミング的にもいつでも良かった。  
たまたま今日、掴んだチャンスが最後まで何の障害も無く到達出来ただけ。  
ちょっと痛いかも知れない。出来れば痛くないと良いけど、それはどちらでも良い。  
結ばれる今日が、タチアナとクラウスにとって、最高の記念日となる筈であった。  
 
しかし、クラウスのソレは、痛みの有無の問題では無いのではないか。  
ラヴィからクラウスへの悪態を思い出す。クラウスの相手が出来るのはラヴィだけ。  
アリスティアの一言を思い出す。タチアナのパートナーは、アリスティアが勤める。  
それが局部の発達具合を表すのであれば、自分の『女』は、この一夜で壊される。  
・・・でも、壊すのがクラウスなら、それでも良いのか?  
なまじ覚悟を決めていただけに、結論の出ぬまま、体は恐怖に打ち震える。  
それ以上の覚悟を決める事も、クラウスを拒む事も、タチアナには出来なかった。  
 
そんなタチアナをほぐすように、クラウスの愛撫が始まる。  
いつも気高きタチアナが、クラウスの目の前で、生まれたままの姿で震えている。  
まるで赤ん坊の如く滑り潤む肌に、息で、手で、口で、全てで刺激を与えていく。  
その白い肌に触れる度に、タチアナの震える身体がビクンと反応し、微かに呻く。  
傷一つ無い羽二重の肌に吸い付き、肌をも吸い破らんばかりの勢いで吸い上げる。  
押し殺した呻き声が漏れ、内出血の紅い跡が瞬く間にそこかしこに浮かび上がる。  
 
たった数ヶ所の刺激だけで、標準より薄い胸の小さな頂は、小さく自己主張していた。  
クラウスの息が側を流れるだけで、痛い程敏感に検知し、恐怖とは別に体を震わせる。  
女性としての証の上下を隠すタチアナの二本の腕も、形だけの飾りに過ぎない。  
ましてやクラウスが胸の双丘を侵略する際の城壁に、なり得るわけがなかった。  
クラウスの指が右の丘の裾からグルグルと這い登り、彼の舌が左の丘を山頂より弄ぶ。  
 
上半身のみの情交の中、タチアナは二〜三度、軽めの絶頂を迎えた。  
 
胸部までを征服し、クラウスは、息も切れ切れのタチアナをベッドの上部に横たえた。  
触り、揉み、舐め、甘噛みし、吸い付き、下半身にも上半身と同じ模様を付ける。  
秘部を避けて愛撫している事が、最後の砦を守るタチアナの手を籠絡する。  
 
産毛程度の薄い茂みを備えた、異性の一部どころか自慰の手すら触れた事のない場所。  
そこを隠し護る筈の指は、蜜の染み出るその周辺を、徐々に、稚拙な動きで擦り始めた。  
クラウスの愛撫は、秘部を除くタチアナの身体中全てをくまなく蹂躙した。  
それはまるで、タチアナと言う一つの素材の風味を確かめるかのようでもあった。  
 
愛撫と言う前菜の仕上げに、クラウスは、タチアナの女性自身を嬲り始める。  
自ら刺激を与えていたタチアナの手を引き剥がし、代わりに、数倍複雑な刺激を与える。  
空いてる手や口は、愛撫の中で見付けたタチアナのウイークポイントに伸びる。  
自身の想像の範疇を超えた刺激が、タチアナの背に幾度と無く電流を走らせる。  
タチアナの性感の全てを知るのは今、タチアナでは無く、クラウスと言う事になる。  
淫らな水音と共に、タチアナの身体に蹂躙の序章が叩き込まれる。  
 

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