『遠い記憶を呼び起こす何かがそこにはある―』  
 
マグダレーナ・ヘルメーレン  「カレリアの家族」  
 
『必ず「さよなら」を聞かせてちょうだい。わたしの許から消えていった  
愛する人々は誰一人「さよなら」を聞かせていってはくれなかったから』  
 
マリオン・グラッツィアーニ  「ジュリオ・アヴィスタ公の遺産」  
 
 
どうやら戦局はあまり芳しくないみたい。何人かのルームメイトが  
部屋の隅で小声で話すのが聞こえてくる。  
窓からは穏やかな正午前の日差しが柔らかに射し込んで、  
小さなベッドと質素な机の並ぶ部屋を暖かくつつんでいた。  
 
「こんな歳なんかで死にたくない。」  
「私だってゴメンよ。」  
「あんたのとこのお父様って参謀本部付の将校でしょ?  
 コネきかせてよ。」  
「どっかの基地のお茶汲みとかー?」  
「とにかく、早く素敵な名家の子息に見初められて、  
さっさと退役しちゃうのよ。それしかないっしょ。」  
 
「でもさ、それまでに死んじゃったら・・・・・。」  
沈黙が流れる。  
 
やがて、ひとりがポツリと漏らした。  
 
「せめて、それまでに  
別に名家の貴族じゃなくたっていいから  
本当に好きになった人と心から愛し合ってみたい。」  
 
誰も口を開かなかった。  
皆、思いは同じだから。  
 
日頃の彼女たちならこんな歯の浮くようなセリフが出た途端  
大笑いしていた所だろう。  
でも、今日は笑うことなどできなかった。  
もしかしたら明日も笑えないかもしれない。  
そう思うとみんな全てを捨てて逃げ出してしまいたくなる。  
 
いつもかしましく騒いでは、同室のアリスティアとタチアナを  
辟易させていたルームメイト達だったが、  
今はそんなアリスティアも彼女らと、思いを同じくしていた。  
そう、本当に切ない最後のモラトリアム。  
 
しかし、アリスティアの隣にはタチアナの姿は無かった。  
 
やがて彼女らは静かに自分の想い慕う者の話を誰からともなく始めた。  
もし、明日この世界から自分がいなくなってしまっても、  
かつて自分が愛し、添い遂げたいと想った人がいたという事実を、  
思いを同じくした仲間が胸に残してくれていればせめてもの救いに  
なるんじゃないか、そう思ったのかもしれない。  
 
士官学校卒業が繰り上げになり、しかも在学中の生徒は  
卒業年次まで候補生身分のまま各地の戦地に派遣されるという  
勅令が皇帝直々の命で発せられたのはつい昨日のことだった。  
 
アナトレー軍はそこまで前線の将校が不足していたのだ。  
 
アリスティアは小声で聞こえなくなってしまった彼女たちの  
話に耳を傾けるでもなく穏やかな午後の日差しを眺めていた。  
しかし、その心は自然と昨日のあの人との記憶へと移ろってゆく。  
 
「タチアナ・・・・わたし、決めた。」  
 
 
一日前の夕食後・・・。  
古ぼけた礼拝用の講堂に突然生徒たちが集められた。  
学校長の重々しい訓示のあと、皇帝陛下の勅令が  
次席代表によって読み上げられた。  
本来なら士官学校生徒隊首席であるタチアナの仕事だったのだが、  
先日起こしてしまったある事件により、その処遇が審理会で決まるまで  
謹慎処分を受けていた。  
アリスティアは本当なら自分の隣にいる筈のタチアナの不在を、  
この時ほどつらく感じたことは無かった。  
 
「タチアナ・ヴィスラ。あなたは今何処にいるの?」  
 
講堂を出た生徒たちは、皆沈痛な面持ちでそれぞれの宿舎へと戻ってゆく。  
部屋に帰っても誰一人として口を開くものはなく、  
ただ、仲の良い友人同士は時折視線を交わしあい、  
互いの存在を確認することで何とか平静を保とうとしていた。  
 
しかし今、アリスティアのもとに心通わせる者の姿はなかった。  
 
消灯時刻が来る。一斉に宿舎の照明が落とされた。小さなベッドで  
息を殺すように不安に耐える少女たちを暗闇が容赦なく襲い掛かる。  
しばらくしたあと、宿舎内のあちこちでアリスティアと同じ境遇の  
少女たちのすすり泣く声が聞こえてきた・・・。  
 
部屋の中で僅かに床のきしむ音がし始めた。  
親友のベッドへ向かう少女たちの足音が。  
やがて、床板のきしむ音は、シーツの衣擦れの音へと変わってゆく・・・。  
それにつれて、少女たちの小さな嗚咽は聞こえなくなっていった。  
そして、一部の少女たちは密やかな、余りにも切ない愛の交歓を始めた。  
 
「わたしは・・、後悔したくない。」  
 
アリスティアは静かにベッドを抜け出すと暗い廊下に出た。  
いつもなら点いているはずの当直の教官室の照明も落とされていて  
人の気配はない。おそらく教官達も気を遣って、  
今夜に限っては黙認しているのだろう。  
 
今しかなかった。青白く射し込む月光でアリスティアの姿が  
幻影のように浮かび上がる。  
階段で四階に上がり、大廊下に出て、突き当りの細い廊下を右に・・・。  
謹慎室の鍵が閉まっていて、会えないかもしれないと思っても、  
期待と不安から自然と足取りは早くなってゆく。  
もうすぐ、もうすぐだ。  
 
「待っていて、タチアナ・・・。」  
 
 
タチアナ・ヴィスラは正午前の穏やかな陽光が射し込む  
謹慎室の小さな窓から見える、宿舎の庭を眺めながら、  
昨日のアリスティアとの出来事を思い返していた。  
あれだけ、迷っていたはずだったのに、アリスティアが来て  
その迷いを全てを氷解させてくれた。  
 
そう。わたしはずっと彼女が来てくれるのを待っていたのだ。  
 
惨めなベッドと机しかないこの部屋で、小さくなって  
泣いて震えていたわたしのところへ。  
 
時間だ。  
 
「さあ、行こう。タチアナ・ヴィスラ・・・・。」  
 
タチアナは謹慎されていらい、もう何日も眼下にある  
中庭を昼夜の別なくただぼんやりと眺めていた。  
あの日、士官学校入学以来築き上げてきたキャリアを全てを失い、  
それどころか軍規違反に問われたあげく、犯罪者にされようとしている。  
故郷の年老いた両親、そして、誇り高きヴィスラ家の家名  
みんなに泥を塗ってしまった。  
 
「全て、失ってしまった。もうわたしには、  
何も残されてはいない・・・・・・・・。」  
 
その日、夜の闇が迫るころ、中庭にある講堂に生徒達が  
集められているのが見えた。  
「どうして、今頃・・・・。」  
 
一時間ほどして再び生徒は宿舎に戻り始めた。  
だが、誰もが一様に酷くうなだれている。  
途方に暮れていたり、悲しみに浸っていたり、怒りに震えていたり・・・。  
もちろん外はすっかり日も暮れていたし、人の表情など見えるわけが  
なかった。だが、闇を通して少女たちの感情がまるで厳冬の  
バレンツ海の波濤のように、際限なく打ち寄せてくるように  
タチアナは感じた。  
 
その時、部屋のドアがノックされ、教官の一人が部屋に入って来た。  
沈痛な面持ちをして。良い知らせではあるまい。おそらく。  
「タチアナ・ヴィスラ、話があります。」  
 
今日夕刻審理会の結果がでた。  
判決は放校処分。強制退学でこそないがそれに次ぐ厳しい判決だ。  
二週間以内に正式に放校手続きを済ませた上、一兵卒として、部隊に  
配属されるということだ。  
タチアナはこの話を聞かされたとき、余程教官の目の前で  
舌を噛み切って死んでやろうかと思った。  
 
しかし、すこし間をおいて教官が重い口調で、  
「但し、この判決には注記として、非公式の別処分が付いている。」  
 
「実は、シルヴァーナから君の事を受け入れたいと打診があった。  
今回の君の事件を聞き、畏れ多くも・・・いや、なんでもない。  
シルヴァーナの副官が、直々に君をご指名になった。」  
 
「ソフィアが・・・?」  
 
「審理会においても、事情も鑑み公式には君を放免することはできないが、  
これまでの優秀な成績、実力などを考慮して、  
君自身が、自主退学という選択をすれば、シルヴァーナには  
少尉待遇ということで受け入れがきまっている。」  
「もちろん、罪科も全て取り消した上でだ。それに、ここでの在籍記録も残る。」  
 
「どうして?何を今頃・・・。」  
 
「今ここで決めろとは言いません。明日正午までに決断をして、  
学校長の所へ来なさい。」  
 
「あと、これは余談ですが、今夜、みんなにも卒業年次繰上げ、  
候補生の戦地派遣の陛下の勅令が出ました。  
あなただけでなく、みんなにもです・・・・。」  
 
教官は静かに話し終えると最後にこう付け加えた。  
「みんな疲れました。今夜は当直、見回りもありません。  
教官もみんなぐっすり眠りたい。教官は疲れた表情をして、  
私も眠い。だからあなたの部屋の鍵は閉め忘れます。」  
 
「タチアナ・ヴィスラ、あなたもゆっくりおやすみなさい。  
これが最後のあなたたちの猶予期間だから・・・・。」  
教官はそう言い残すと、本当に鍵を閉めずに出て行ってしまった。  
 
「皆殺しのシルヴァーナ」、か。  
「所詮残され貴族のわたしには、こういう所がお似合いなのかもしれない」  
そう口にすると、これまでタチアナを張り詰めていた緊張が  
肩の荷を降ろしたように解けた。そして、気だるい疲労感が押し寄せ、  
いつの間にか去っていった。  
 
タチアナは、すっかり夜も更けた中庭を眺めた。消灯時間も過ぎ、  
当直の教官室でさえ照明が落とされていた。  
夜のしじまに少女たちの乱れる思いを秘めたまま、宿舎はしんと  
静まり返っていた。  
 
夜の闇は夜ごと深くなってゆく。時が刻む度、私達の上に  
静かに、静かに降り積もってゆく。深い静寂がわたしたちの  
心を不安や恐れの辺境に追いやってゆく。  
わたしたちは、今夜を最後にあの人を、思い出せない。  
もう二度と。  
 
「アリスティア、わたし・・・。」  
 
こんな感情は初めてだった。こんな夜にひとりぼっちで  
小さくなっていることがこれ程切ないことだったなんて。  
 
つらくて暗くて切なくてどうしようもなかった。  
だけど、タチアナにはこの部屋を出てゆく勇気はどうしても  
出なかった。鍵のかかっていない扉を開けることが、  
どうしてもできなかったのだ。  
 
「アリスティア・アグリュー、あなたは今何処にいるの?」  
 
 
「大廊下の突き当りを右に・・・・・。」  
アリスティアは夜の闇に静まり返る廊下を進んだ。  
突き当たりから、右の廊下へ曲がる時、柱に二人の人影が見えた。  
アリスティアは黙って彼女たちの脇を通り抜けた。  
彼女たちも静かに抱き合ったまま、アリスティアを見送る。  
もうすぐだ・・・・。  
 
どうして、わたしはタチアナに会いに行こうと思ったのだろう。  
これまでのわたしは、いつもタチアナの後ろで見守っていることしか  
できなかった。あの事件のときでさえ、わたしはタチアナに何も  
してあげることができなかった。  
「タチアナが、わたしを庇うためにした行為だったのに・・・・。」  
 
タチアナはわたしに会ってくれるだろうか。  
こんな夜、ろくに親友の弁護もできないわたしに、ただ寂しくなった  
くらいで会いにきたなんて言うわたしを受け入れてくれるだろうか。  
そもそも、鍵が開いているかさえわからないのに。  
だけどわたしは決めたの。誰がなんと言おうと、  
今夜わたしは、タチアナ・ヴィスラのもとへゆくと。  
 
とんとん・・・・。深い池の底のような静寂が静かに震えた。  
 
がちゃり。何かが入ってくる。ぱたん。古い床板がわずかにきしむ。  
 
タチアナは頭から被っていた毛布をずらし、扉のほうを見る。  
そこは青白い水底のようだった。その安らかな青の世界に  
ひとりの少女が佇んでいた。  
 
タチアナは何も言わなかった。  
立ち上がり、ベッドを抜け出てその少女のもとへ駆け出していた。  
 
「アリスティア・・・・!」  
 
「会いたかった。」  
 
「タチアナ・・・。」  
 
青白い水底でしっかりと相手を抱きしめる。もう二度と離すものか。  
長い間二人は互いの温もりを肌に感じながら、見つめあっていた・・・。  
 
そして、青白い水底をたゆたうように、  
二人はゆっくりと互いの唇を重ねた。  
とても、自然に。  
 
「タチアナ・・・・・、愛してるわ。」  
「うん・・。わかるよ・・。  
わたしも愛してる。アリスティア・・・・・・。」  
 
今度はアリスティアがタチアナに唇を重ねた。  
「んっ・・・、はあっ。」  
タチアナもアリスティアの口の中へ優しく舌を差し入れた。  
熱い吐息が体を痺れさせ、  
「あ、はあ・・はあ・・・アリ、ス。」  
絡み合う唾液が、とめどなくあふれ、糸を引く。  
二人は夢中で相手を求め続けた。  
 
そして、アリスティアはタチアナの柔らかな胸の膨らみに触れる。  
パジャマの上着のボタンをはずした。  
 
「ア、リス・・・。ベッドへ・・・・・・・。」  
「うん・・・・・。」  
 
アリスティアは先にパジャマを脱ぎベッドに腰掛ける。  
タチアナも恥らいつつズボンを脱いだ。  
アリスティアの体は本当に美しかった。優しい女性的なラインは  
同性の目から見てため息が出るほどだ。  
正直言って胸の膨らみもわたしより大きいし、かたちも素敵だ。  
それにひきかえわたしは・・・・。  
 
「素敵よタチアナ。」  
「え・・?」  
「とても、きれい。」  
 
わたしたちは、これまで異性との、もちろん同姓との性体験などもない。  
だから何も知識などないはずなのに、自然と  
体が動いてくれるのには本当に驚いた。  
ただ、心の赴くままに愛する人をもとめるのだ。  
 
タチアナはきしむベッドに横になり、そして少し緊張を残しつつ  
体の力を抜いた。  
アリスティアはそんなタチアナの姿を見て決意した。  
 
「タチアナ、嫌だったら言ってね。」  
「わかった・・・・。」  
 
アリスティアはタチアナの薄くグレイのかかったブロンドの茂みを  
優しくなでた。タチアナの体が少しこわばるのがわかった。  
 
「力を抜いて、タチアナ。」  
アリスティアは柔らかなタチアナの香りがする性器に舌を這わせた。  
 
「っつはあっ・・・。」  
タチアナの体が鋭く反応した。アリスティアは構わず続ける。  
「アリスティア・・・、わたし、幸せよ・・。  
んんっ、はあ・・・・は・あ・・・。」  
しばらくしてアリスティアは寝かせていたタチアナの上に  
頭を足のほうに向いて覆いかぶさるようにまたがる。  
ちょうど、タチアナの顔の前にアリスティアの茂みと  
大切なところが見えた。  
 
「アリスティア、腰を下ろして。」  
「ええ、わたしのことも、お願い・・・・・・。」  
いつも、アリスティアはわたしのそばにいた。嗅ぎ慣れた香りは  
とても安らいだ気持ちになれる。  
タチアナはアリスティアに初めて舌をはわせる。ぎこちなく、せつなく。  
 
「んあっ・・タチアナ・・はあっ・・・」  
「タ・チ・・・・アナ」  
「もっと、もっとわたしのこと、感じて・・・・。」  
「ええ、アリスティア。あなたは、今ここにいる」  
 
「来て、タチアナ・・・・。愛してる。」  
 
長い時間二人は互いを求め続けた。相手の手が、舌が自分の体の  
どこかに触れるたび、心は歓喜に激しく震えた。  
熱い泥の海の中で何もかも忘れ、ただ、互いの存在だけを  
いつまでも、いつまでも確かめ合っていた。  
 
長い夜だった。  
星が美しい夜だった。  
だが、もう別れの時だ。  
 
二人は、小さなベッドの上に裸で横になり、  
幸せな、気だるい疲労を心地よく感じていた。  
そんな時、タチアナがおもむろに口を開いた。  
 
「アリスティア、あなたに言わなくてはいけないことがあるの。」  
「え・・・?」  
「放校処分が決まったの。」  
「いつ・・・!」  
「昨日。二週間以内に手続きをしてここを出る。」  
タチアナはゆっくりと起き上がり、新しいショーツをはいた。  
 
「じゃあ、タチアナあなた・・・・。」  
「ただし、シルヴァーナに行くのなら、少尉任官で自主退学扱いになる。  
ソフィアがわたしを受け入れてくれるって。」  
「シルヴァーナに?それでどうするつもりなの」  
アリスティアはベッドから起き上がり、タチアナの手をとった。  
 
「わたしは、シルヴァーナに行く。  
だからアリスティア、これでお別れなの。」  
 
「・・・・・・・。」  
「嫌。わたしは、離れたくない。」  
 
「もう、決まったことなの。わかってアリスティア。」  
 
アリスティアはその小さな瞳一杯に涙を湛えていた。  
タチアナもそんなアリスティアの涙を見ていたたまれない気持ちが  
押し寄せてきた。  
 
「やっと言えたのに・・・。」  
「想いを伝えられたのに・・・・。」  
「どうして?」  
 
タチアナは涙を堪えながらアリスティアを抱き寄せた。  
その表情には何かを決意したものが持つ真剣さがあった。  
 
「アリスティア、わたしと一緒にシルヴァーナに来て。」  
 
「タチアナ・・・・。」  
 
「わたしはあなたの将来まで壊してしまうことになるかもしれない。  
それでもあなた、アリスティア・アグリューに来て欲しい。」  
タチアナは優しくアリスティアに上着をかけてあげると、  
もう一度静かに唇を重ねた。  
 
「もし、わたしと一緒に来てくれるのなら、  
明日の正午、学校長の部屋の前で待ってる。」  
 
そして、アリスティアは自分の部屋に戻っていった。  
 
アリスティアが帰った後、  
タチアナ・ヴィスラは退学手続きの書類を書き上げた。  
荷物も朝のうちにまとめておいた。  
これですぐにでも出て行くことができる。  
タチアナは椅子に座り、窓からこの数週間見慣れた中庭を眺めた。  
暖かい陽光がいっぱいに降り注いでいる。  
小さな蜂が窓の外からタチアナを物珍しそうに見つめた。  
そして、一度だけ軽く窓ガラスにぶつかり、こつんと乾いた音をたて  
またどこかへ行ってしまった。  
 
時間だ。  
 
「さあ、行こう。タチアナ・ヴィスラ。」  
 
タチアナ・ヴィスラはしっかりとした足取りで学校長室のある  
本校舎へと一歩、一歩、歩みを進めていった。  
暖かい光がタチアナを優しく守るように包んでくれていた。  
 
 
その日、プレステールの空はどこまでも青く、  
遠くデュシスまで見渡せそうだった。  
 
終わり  
 
 
 
 
附記 
 
 
アナトレー皇室士官学校生徒記録  
 
プレステール暦664年  タウロス15日  
生徒番号   7785  
学年      第72期生 2学年生  
氏名      タチアナ・ヴィスラ  
年齢      15歳  
 
本校生徒、タチアナ・ヴィスラは一身上の事情により  
664年 タウロス15日を以って自主退学を希望。  
本校はこれを受理せしものとす。  
 
アナトレー皇室士官学校学長 アラミス・ルクレール・ダラディエ  
 
 
アナトレー皇室士官学校生徒記録  
 
プレステール暦664年  タウロス15日  
生徒番号   7786  
学年      第72期生 2学年生  
氏名      アリスティア・アグリュー  
年齢      15歳  
 
本校生徒、アリスティア・アグリューは一身上の事情により  
664年 タウロス15日を以って自主退学を希望。  
本校はこれを受理せしものとす。  
 
アナトレー皇室士官学校学長 アラミス・ルクレール・ダラディエ  
 

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