僕は疲れきっている。一五かそこらのガキが何を言ってるんだと思うかもしれないが、  
もの凄い勢いで断言できる。僕は疲れきっている。  
 言わずもがな、アリスティアさんの所為だ。どういう事かというと、数日前に三人でし  
た日からなんとなくアリスティアさんとタチアナの仲が険悪になった。喧嘩しているとい  
うのでもなさそうなのだが、どうやらタチアナがアリスティアさんを一方的に無視し始め  
たらしいのだ。それによるアリスティアさんの荒れようは凄かった。凄すぎた。まず、彼  
女達の険悪なムードを少しでもからかった整備士の連中がアリスティアさんによって殴る  
蹴るの暴行を受けた。これ以上やれば死ぬ、というところでルシオラが止めたらしい。さ  
すがルシオラ、と言いたいところだが、彼に言わせれば「彼女の精神はもはや人の域には  
存在しません。まともにやりあったら私もただでは済まなかったでしょう」だそうだ。そ  
してその人外の標的になったのは勿論僕だった。気がつくと背後に立たれてどこかへ連れ  
て行かれそうになるので、ここのところ毎日のように僕は彼女から逃げ回っているという  
訳なのだ。説明終わり。  
「…ふう…」  
 真夜中。トイレに行った帰りにため息など吐いてみた。ついでにその場でストレッチ。  
だるさの残る筋肉をマッサージしてから部屋に戻ることにした。  
「…ん?」  
 足を少し進めた所で、なんとなく人の気配を感じた。なんとなくと言ってもこういった  
局面で感じた人の気配というのは何故か確実なものだったりする。しかもそのほとんどの  
場合が自分が最も恐れる存在だったりするわけで。周りを見渡してみようか。でもそれで  
本当にあの人がいたりしたら僕はもう本当に。  
「……」  
 心臓が狂ったように活動している。冷や汗も出てきた。  
 落ち着け。気のせいかもしれないし、それにアリスティアさんだと決まったわけじゃな  
い。こんなところ誰だって通りかかる。  
 そうだ。こんな時はヴァルカ家に代々伝わる伝統的な発想法があった筈だ。  
 それは……『逃げる』。  
「クラウス」  
「っっっ!!!!」  
 
 一目散に駆け出そうとした瞬間、横からいきなり声をかけられた。心臓が止まるってこ  
ういう事を言うんだ、と痛感した瞬間だった。本当は構わずに駆け出してしまうべきなの  
かもしれないけど、足が動かない。  
「クラウス」  
 もう一度呼ばれた。女の人の声だ。何故だかは知らないがとてもか細い声なのでアリス  
ティアさんの声にも聞こえるし、知らない人の声にも聞こえた。僕は泣きそうになりなが  
ら声の方に顔を向けた。そこにいたのは、僕以上に泣きそうな顔をしながら不安げにこち  
らを見詰めているタチアナだった。  
 
 とりあえず移動。喉が渇いていたので給湯室で何か飲むことにした。  
「タチアナは何がいい? 水でいいかな。もしくはコーヒーとココアが作れますがいかが  
いたしましょうか」  
「……いらない」  
「…ココアが飲みたいから飲もうっと。タチアナもそれでいいよね?」  
 何も答えてくれない。僕は黙ってココアを作ることにした。当然二人分だ。お湯が無け  
れば話にならないので、とりあえず沸かす。  
「僕に何か話があったんじゃないの?」  
 何も答えてくれない。目線も合わせてくれない。  
 …ここの火力は強いので、お湯はすぐ沸くだろう。  
「………」  
 僕は何も言わない。  
「………」  
 彼女も何も言わない。  
「………」  
「………」  
「とりあえず…謝るよ」  
 沈黙に耐え切れなくなったのもあるが、ずっと言いたかった事を言うために僕はタチア  
ナに体を向けた。そこでやっと目線を上げ、僕を見るタチアナ。  
「この間はさ…勿論アリスティアさんと僕と、君と三人で…うん…」  
 支離滅裂かつ意味不明だった。  
「寝てる君にいきなり…ってのはさすがにまずかったと思う。反省してる」  
 お湯が沸いた。火を止める。  
 
「…それだけ…?」  
 そこでようやくタチアナは口を開いた。無表情だと思うが、睨んでいるようにも見える。  
「…うーん…」  
 僕はココアを作る手を止めて、もう一度体を彼女に向けた。  
「…それ以外にも…その…ソフィアさんと…したり…アリスティアさんと…も…」  
 段々と表情が険しくなっていくタチアナに対して何も言えなくなってしまった。彼女は  
もう完全に僕を睨みつけていた。でも僕の中での罪悪の念を一概に否定する事も出来なか  
ったので、ここは素直に謝っておきたかった。  
「その…ごめ…」  
「ココア」  
「へ?」  
 意表を突かれて、つい素っ頓狂な声を上げてしまった。タチアナは不機嫌そうに腕を組  
みながらそっぽを向いてしまっている。  
「お湯が覚めてしまうわ。ココア、作ってくれるんだろう?」  
「え、あ…うん、はい」  
 僕は慌ててココアパウダーの入ったカップにお湯を注いだ。それほど広くない給湯室が  
甘い匂いで満たされる。スプーンでかき混ぜてから手渡した。タチアナは何も言わずに飲  
んだ。僕も自分の分を作り、飲み始める。  
「………」  
「………」  
 
 口の中を火傷しないように気をつけながら少しずつ飲む。甘さと苦味のハーモニーが口  
の中でとろけるように広がって……なんちゃって! 美味しんぼかっつーの(爆)!  
「…………」  
「…………」  
 美味しんぼかっつーの!  
「……………」  
「……………」  
 かっつーの!  
「………………」  
「………………」  
 (爆)  
「…………………」  
「…………………」  
「あのさ…」  
 気がついた時には声を発していた。この空気に何時までも耐えられるほど僕は超人じゃ  
ない。タチアナは俯かせていた顔をこちらに向けた。やっぱり無表情だ。それでもさっき  
までの威圧感のようなものが軽減されているのは気のせいだろうか。しかし何を話したら  
いいものか。「あのさ…」の続きを考えていなかった。  
「…なに?」  
 タチアナが尋ね返してくる。だから続きを考えてないんだって。  
 ここで返すべき言葉はなんだろうか。「なんでもない」だけは止めておこう。話かけて  
おいてそれはない。「なんでもねぇよ!!」は単なる逆ギレだ。「おいしい?」とかはど  
うだろうか。当たり障りないが、あまりにも持久力のない切り出し方だと思う。少なくと  
も僕にはそこから話を弾ませる自信は皆無だ。  
「……タ…」  
「?」  
「タチアナとアリスティアさんってさぁ……」  
 限界だ。そう判断した僕は、もういっその事、ずっと気になっていたことをここで聞い  
てしまう事にした。  
 
 タチアナはカップを傾けてココアを一口飲んで、  
「い、いつからレズな関係に?」  
「ぶふぅっ!」  
 噴出した。口から飛び散った茶色い液体が床を汚す。  
「汚いなぁ…」  
「お…お前が変なこと聞くからだろう!」  
「いや、それはそうなんだろうけどさ。この御時世に『飲んだものを噴き出すリアクショ  
ン』ってのはどうなの? そこんとこどうなの?」  
「い、いいからタオルをよこせ!」  
 可哀相なくらい狼狽しながらタオルを催促するタチアナ。そんな彼女を見てなんとなく  
僕はさっき使ったスプーンを手渡してみた。  
「はい、タオル」  
「そうそうこれこれ。超能力で曲げてユリ・ゲラー…ってこれタオル違う!」  
「………」  
「………」  
「…………」  
「…タオルをくれる?」  
 タチアナは精気の抜けたような表情で再度催促してきた。僕はタチアナに対してとても悪い  
ことをしてしまったなぁ、と思いながら、  
「…はい、タオル」  
 まだ中身の入った僕のカップを手渡した。  
「そうそうそうそう。これをクイッっと一気飲み…ってオイ!」  
 そう言ってタチアナは飲み干して空になったカップを床に叩きつけた。当然カップは砕  
け散る。被害は拡大した。  
「ああ…!!」  
 タチアナは苦悶の表情で身悶えた。  
「…タチアナってさぁ…」  
「WRYYYYY!」  
 
 タチアナは奇声で僕の言葉を遮ると、自分でタオルを持ち出して口の周りを拭いてから、  
ついで汚れた床も拭いた。そして急いでホウキとチリトリを持ってきてカップの破片を掃  
除し始めた。ホウキと破片が床を擦る音が給湯室に虚しく響く。何もこんな事をするため  
に士官学校に入っていたわけじゃないだろうに。そう考えるとその光景は涙が出るほど痛  
々しかった。  
「……いつからレズな関係になったの?」  
 話を戻した。それと同時にタチアナの掃除が終わる。ホウキとチリトリを元の場所に戻  
してからタチアナは口を開いた。  
「あの日アリスから…告白されたのよ」  
「へぇ。あの人が。なんて?」  
「…言いたくない」  
「…さっきのノリツッコミってさぁ…」  
「言うわよ!」  
「どうぞ」  
「……『タチアナ、セックスしよっ』」  
「………………………」  
「その後キスされて…口移しで、へ、変な薬を無理やり…飲まされて…うぅ…」  
「あの人の中で何が起こったんだ…」  
「そうしたら…貴方が…」  
「マジですいませんでした」  
 もう一度謝っておいた。タチアナは涙目になりながら今度は自分のカップを煽った。  
「…おかわりいる?」  
「…いらない」  
 まずい。振り出しだ。  
「あ、あのさ」  
 もう一つだけ気になっていた事を聞くことにする。  
「さっきは僕に用があってあそこにいたの? それともただのトイレ?」  
 声をかけられた時のタチアナの表情を思い出す。なんだか僕に何かを訴えたがっている  
感じだった。怒っているようでもなかったし。けどやっぱりタチアナは僕の質問に即答し  
ない。それどころか、前の質問よりも一層答えにくそうな様子だった。  
 
「…タチアナ?」  
「…トイレよ」  
「あ…そう」  
 少しだけガッカリ。  
「でも」  
「?」  
「貴方を見かけて、声をかけなくちゃって思ったんだ。その…最近貴方を無視していたし」  
「…うん」  
「仲直り…したかった」  
「…タチアナ…」  
 …まぁソフィアさんと関係しなければ多分アリスティアさんともしなかったわけで。不  
幸を嘆いていたわりには僕に原因があったというこの現実。少し反省してみる。よし。  
 僕はタチアナに歩み寄った。  
「な、なに?」  
「仲直りしよう。今回は完全に僕に非があるから、タチアナは何もしなくていいよ」  
「ちょ、何が…! ん…ふ…」  
 唇を重ねた。そのまま唇の周りをなぞる様に舌を動かす。僕を突き飛ばそうとするので  
両手を壁に押さえつける。何気に僕の方が腕力があったらしい。  
「んは…やめ…何が仲直り…だ…」  
 口内には差し入れず、じらすように唇を舐めて、吸った。しばらく抵抗を続けていたタ  
チアナだったが、次第にもじもじと体をくねらせるようになった。彼女はもう体に力を入  
れていないようだったので両手を開放する。すぐに僕に力強く抱きついてきた。僕も同じ  
ように抱きしめる。もう一度唇を合わせた。再度じらすように唇の周りを嘗め回している  
と、驚くことに彼女の方から舌を僕の口内に差し入れてきた。僕も負けじと応戦する。  
 息が漏れる。先ほど飲んだココアの甘さと苦味がタチアナの唾液と混ざり合って、僕の  
味覚を刺激した。  
「……ん…はぁん…」  
 タチアナの足が震えている。さっきまでのようにただ抱きしめているのではなく、今や  
僕にしがみついていないと立っていられないようだ。  
 
 キスを止める。粘っこい唾液が糸を引いて、切れた。  
 タチアナは身体全体を押し付けるようにして抱きついてきて、僕の胸に顔を埋めた。キ  
スの所為で硬くなった性器が、柔らかな下腹部にめりこむ。タチアナはとても恥ずかしそ  
うな表情で体を震えさせた。僕はその反応に満足すると、今度はタチアナのお尻に触れて  
揉んだ。  
「っひゃぁ!」  
 ビクンと身体を震わせるタチアナ。気にせずに揉み続ける。寝巻きだから服の生地が薄  
い。胸とはまた別系統の柔らかさだ。さらに性器が硬くなる。窮屈で辛い。  
「タチアナ…我慢できないや…」  
 僕はそう呟いてタチアナのズボンを脱がし始める。膝下までずり下げて、下着も同じよ  
うに下げた。タチアナの甘い体臭が濃厚になる。彼女のその部分は見て分かるほどに濡れ、  
枷を無くした愛液は太ももを伝っていく。  
「そんなに気持ちよかったの?」  
 僕が尋ねると、タチアナは顔をイヤイヤと横に振って、顔を真っ赤にした。僕は少しだ  
け嬉しくなって、タチアナのそこに触れようとした。けれど、  
「…クラウス…」  
 あの時の声が聞こえた。廊下で声をかけられた時の、あの今にも泣き出しそうなか細い  
声。タチアナの顔は、案の定不安げな色で染まっていた。  
「どうしたの?」  
「…クラウスは、ソフィアや、アリスの事が好きなの…?」  
「…え?」  
「私に『好き』って言ってくれたのは、嘘…?」  
「…嘘じゃないよ」  
「三人とも…好き、なのね」  
「…………」  
 ソフィアさんは…密かに憧れの人だった。綺麗だし。大人だし。爆乳だし。アリスティ  
アさんも綺麗だ。意外に胸も大きかったし、凄く綺麗な体をしてるし。怖いけど…その怖  
さが何気に好きだったりする。  
「…うん。好きだ。あの人達が」  
「…そう」  
「勿論、タチアナの事も好きだよ。でも一番を決めろって言われると多分…誰も選べない  
と思う」  
 
「…………」  
「…タチアナ…その…」  
「いいんだ」  
「……ん?」  
「分かっているわ。クラウスは皆に優しいから…」  
「……う〜ん、それはどうだろう…」  
「…分からないのは、私。アリス達に嫉妬してる、私。私は立派なアナトレー軍人になる  
ために努力してきた。それだけを考えてきた。でも、貴方と出会って、貴方を好きになっ  
て、貴方に抱かれて、貴方をもっと好きになって…今はこんなに嫉妬深い女になってしま  
った。……どうして、思い通りの自分になれないんだろう…」  
 喋りながら、タチアナの目尻には涙が溜まっていく。っていうか悪いのは明らかに僕だ  
と思うので、そういう顔をされると良心の呵責が…。  
「タチアナ…」  
「え…?」  
「下半身丸出し」  
「…もう!」  
 タチアナは色んな感情で顔を真っ赤にすると、僕の鳩尾に思い切り正拳突きを叩き込ん  
だ。  
「はぐぅ!?」  
 吹っ飛ぶ。すげぇパンチだ! あまりの威力に呼吸が出来なくなってしまった。悶えな  
がら目線を上げると泣きながらズボンを履きなおすタチアナの姿が目に入った。  
「やっぱりお前は最低だ…! 全然…優しくない…!」  
「タチ…アナ」  
 僕はなんとか立ち上がり、タチアナに歩み寄った。警戒心をあらわにして構えるタチア  
ナ。さすがは士官学校を出ているだけあって、アリスティアさんとまではいかなくてもそ  
れなりに強いのかもしれない。そんな事を考えつつ、僕はゆっくりとタチアナとの距離を  
詰め、もう一度抱きしめた。  
「んぅ…!」  
 さっき抱きしめたときよりも本気っぽい抵抗を受ける。でも僕も本気だった。しばらく  
じたばたともがいていたタチアナだったけれど、やがて落ち着いたのか静かになった。  
 さて、何を言おうか。僕は慎重に言葉を選ぼうとするけれど、やっぱり上手い事は言え  
なかった。  
 
「タチアナは変わったのかもしれないけど…可愛くなった」  
「……前は?」  
「さらに、だよ。もっとだよ」  
 そこでタチアナの目尻の涙を唇ですくい取る。少ししょっぱい。  
「前はこうやって抱きしめることなんか出来なかった。でも、今はそれが出来るんだ。僕  
にはそれが凄く嬉しいよ。これ本当」  
「……」  
「好きだよタチアナ。とっても可愛い君が好きだ。これも本当。本当の本当。こんな事言  
うとつくづく僕って無責任だと思うけどさ。それでも…」  
 タチアナの瞳を覗き込むと、すくい取った筈の涙がまた溢れ出てきた。タチアナは顔を  
俯かせ、やっぱりどこか不満げに言った。  
「…私もだ。悔しいけど……好き」  
「うん」  
 頷いてみせる。すると、タチアナがキスを求めてきた。  
「いいの?」  
「…ええ」  
「最後までしても?」  
「…結局はそれかっ。…ほんとにお前は…」  
「ごめんね」  
「…ん」  
 キスする。舌は使わないけれど、唇だけで十分。角度を変えて、唇を噛むようにして、  
何度もキスをした。そしてさっきの続き。僕はタチアナのズボンを降ろした。下着も下げ  
ると、柔らかな茂みが露になった。脱がせる時に糸が引くほど濡れていたが、今はそれに  
ついては触れない事にした。今はそういう雰囲気じゃない。  
「さっきよりも濡れてるね。キスだけで感じたの?」  
 あ。  
「…やっぱりいじわるだ、お前は」  
 怒気を含んだ声。なぜ思ったことをすぐに言ってしまうのだろう。僕はタチアナの怒り  
が怖くて、すぐに目の前の局部に口付けた。  
「っはぁっっ…ぃゃぁ…」  
 少し強めに唇や下での愛撫を行っていると、早々にもタチアナの膝が笑い始めた。かま  
わず柔らかなソコを舐る。  
 
「んぁあ…っふぅ、あ、ああ…」  
 突然タチアナが膝から崩れ落ちた。限界だったらしい。頭がぶつからないように背中を  
仰け反らせる。ちょうど正座の姿勢になったタチアナと目線が重なった。でもすぐに逸ら  
される。怒っているのかな。浅いキスをすると、タチアナは正座の形になっている足を崩  
した。そして脱がしかけだったタチアナのズボンを完全に脱がした。  
「お尻が冷たい…」  
「ん、立って」  
 タチアナに力を貸して、二人一緒に立った。彼女を壁にもたれかけさせるようにして、  
僕は中途半端にズボンを下ろした。すでに硬くなったモノを取り出す。  
「口でしてもらおうと思ったんだけど…もうそんな余裕もないや」  
 もう体全体で限界だった。入れたい。入れたい入れたい。僕は焦りつつ性器を入り口に  
擦り付けていく。まともにするのはコレが二度目。この間は半分レイプに近かったから。  
 先端が埋没した。すぐさま柔らかい肉に握るように締め付けられた。このまま一気に突  
きこみたいのは山々だけど、もう少しお互いを焦らしてみる。  
 埋没した先端を引き抜いた。ちゅぷりと音を立てて壁が閉じる。もう一度先端だけ入れ  
る。そして抜いた。もう一度。繰り返す。半端な気持ちよさが拷問のようだ。  
「ん…ん…ん…ん…」  
 タチアナも同じらしかった。ほんの少しの快楽がもどかしい。僕だってこのまま入れて  
しまいたい。だけどまだ。もう少し。僕は懲りずに繰り返す。  
「クラウス…」  
「…なに?」  
「………うぅ…分かってる、だろ?」  
「何をさ?」  
「…やっぱりいじわるだ…」  
 あ、泣きそうだ。本当は懇願して欲しかったんだけど、僕は助け舟を出すことにした。  
「入れて欲しい?」  
 タチアナはさらに泣きそうな顔をして、コクンと頷いた。  
「でもタチアナ、忘れてない? ここって一応給湯室なんだよね。誰が何時来ても不思議  
じゃない。本当にいいの?」  
「う…うぅ…」  
 
 迷ってる。でも、その反応だけで十分だった。僕は両手をタチアナのお尻に這わせて、  
「やっぱり…ここじゃ、んぁあ!」  
 突き入れた。タチアナは目を見開いて身体を震わせている。急な刺激で達してしまった  
のかもしれない。僕は根元まで入り込んだ状態でしばらく静止した。  
「ひ…ん、ひどい…」  
「あんまり大きい声出すと誰か来ちゃうよ…」  
「だってお前がぁ…あっ」  
 動く。体重が軽いタチアナを持ち上げるのは容易い。腰の動きに変化をつけながらグチ  
ャグチャになっているソコを何度も突き上げる。  
「ん! ふっぅ、あ、う、ふぅっ」  
 声を出さないように必死になっている。そんな表情を見せられると、止まらなくなって  
しまうじゃないか。僕はタチアナの唇を貪るようにキスし、愛撫し、何度も何度も突き入  
れた。その度に艶のある息を漏らすタチアナ。入れている部分が溶けてしまいそうになる。  
 淫ら過ぎるピチャピチャとした水音が給湯室に響いて、腰に乳酸が溜まって辛くなって  
来た頃、お互いに絶頂が近づいてきた。  
「はぁ…タチアナ…中に…」  
「うん、出し…出して…」  
 タチアナらしからぬ言葉。よほど気持ちがいいらしい。僕は唇をかみ締めつつ、最後に  
思い切り突き上げた。弾ける。ドクンドクンと流れ出る。タチアナも達したらしい。僕の  
肩に思い切り爪を立てて背中を仰け反らせた。痛みと共に満足感と射精の余韻が後を引い  
ていて、凄くいい気分だ。  
 タチアナを壁に寄りかからせて座らせた。僕ももう立っていられなかった。  
「ふう…」  
「結局…したわね」  
 タチアナが睨みつけてくるが、そんな脱力した表情で睨まれても恐くない。むしろもう  
一回戦出来そうな勢いだ。  
「そんな事言って…『中出しして下さい。クラウス様』って言ってたじゃないか」  
「馬鹿、言ってない!」  
「しー…」  
「あ…」  
 慌てて口を塞ぐタチアナ。何だかんだと色々やったけど、僕としてもこんな所を誰かに  
見られるわけにはいかないのだ。  
 
 僕はズボンを履きなおしているタチアナをまた抱きしめてキスをした。今度は抵抗され  
なかった。しかしタチアナの目が大きく開かれて、唇が戦慄いた。  
「ど、どうしたの?」  
 僕はタチアナの視線の先を見た。給湯室の入り口からアリスティアさんがこちらを覗い  
ていた。  
「ア、アリ…」  
 タチアナは蒼白な表情を浮かべ、僕も口が回らなかった。  
「ど、どこから見てました…?」  
 やっと捻り出た言葉がそれだった。  
「タチアナがノリツッコミをした辺りからかしら」  
「マジかよ…」  
「全然気づかなかった…」  
「タチアナ…クラウスとは仲直りしたのね?」  
 ふいにそんな言葉が投げかけられる。僕とタチアナは顔を見合わせた。そしてタチアナ  
は僕の顔をマジマジと見て考えるような仕草をして、アリスティアさんに向かって僅かに  
頷いた。それを見て微笑むアリスティアさん。久しぶりに穏やかなアリスティアさんを見  
た気がする。アリスティアさんはモジモジと恥ずかしそうにしながらタチアナに尋ねた。  
「私とも仲直りしてくれる?」  
 今度ははっきりと頷くタチアナ。「でも…」と続ける。  
 
「私は、アリスティアとは友達でいたい」  
「セフレ?」  
「違うっ」  
 否定されたアリスティアさんは俯き、その後にどこか寂しそうな笑みを浮かべて頷いた。  
そして次の瞬間には彼女の姿は消えてなくなっていた。僕とタチアナはその場でしばらく  
放心していた。  
 
 翌日。タチアナとアリスティアさんの間での険悪な雰囲気は完全に消えていた。今なんて  
僕の目の前で二人揃って朝食を食べている。クルーのみんなも一安心だ。アリスティアさん  
によって殺されそうになった整備員(イーサンとかいう奴)もなんとか職場復帰している。  
ただ、「アリスティア」という単語が出ただけで気が狂ったように泣き叫ぶらしいけど、ま  
ぁどうでもいいや。  
 とにかく、僕は久しぶりにスガスガしい気分で朝食を取るのだった。  
                                           完  
 

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