地獄のような拷問は、その日の日没まで続けられた。  
 
 再び鎖で雁字搦めに縛られたシモーヌは、専用の独房へと引き立てられる。  
 思い鉄の玉を引きずりながらの移動は、苦痛そのものであった。  
「早く歩かねぇか」  
 看守が銃剣の台尻で小突き回すので、休んでいる暇はない。  
 
 苦労して到着したのは、5メートル四方ほどの石造りの独房の前であった。  
 天井は高く、小さい窓には太い鉄格子が嵌められている。  
 房の隅には便器代わりのオマルが置かれていたが、遮蔽板などは用意されておらず、外から丸見えの状態であった。  
 
 重々しい軋み音がして、錆び付いた扉が開かれる。  
「さっさと入れっ」  
 看守に蹴りを入れられ、シモーヌが独房の中に倒れ込む。  
「ふむぅぐぅぅっ」  
 受け身が取れないため、肩口を石畳に強かに打ちつける。  
 自殺防止用に噛まされた猿轡の穴から、呻き声が漏れ出した。  
 
 看守が近づいてくるが、シモーヌは身動きすら出来ない。  
 革製の首輪に頑丈な鎖が取り付けられ、鉄格子の1本に繋がれた。  
 
「餌の時間だ」  
 看守が丸い木製の食器を蹴り込んでくる。  
 ドロドロの冷えたスープに、粗末なパンが一片入っていた。  
 後頭部で鍵が外され、ようやく猿轡を吐き出すことが出来た。  
「早く喰えっ」  
 
 いつまで待っても手錠が外される様子はない。  
「このまま食べろってことなの」  
 シモーヌは流石に顔色を変えた。  
「この野郎っ、食わねぇのなら下げるぞ」  
「市民の中には、こんなものすら喰えない者だっているんだぞ」  
 平民出身の看守が怒りを爆発させる。  
 ザラールの宣伝工作が功を奏し、市民のラ・セーヌの星に対する感情は最悪の状態になっていた。  
 
「食べておかないと……明日からの拷問に、体が保たないわ」  
 意を決して、シモーヌが石畳に膝を付き、四つん這いの姿勢を取る。  
 そして専用の食器に鼻先を近づける。  
「うぅっ……」  
 饐えたような臭いが鼻を突き、シモーヌは顔をしかめる。  
 しかし我慢してパンを囓る。  
 
 丸いお尻がクネクネと動き、赤く腫れた性器が剥き出しになった。  
 それをニヤニヤ見ていた看守のズボンが、パンパンに膨らんでくる。  
「流石はラ・セーヌの星だ。いい尻してやがる」  
 看守は生唾を飲み込んで、シモーヌのお尻に見入る。  
 そして我慢出来なくなった看守は、ふるえる指先を伸ばして彼女の尻にそっと触れてみた。  
 
 シモーヌが体をビクッと震わせて硬直する。  
「いいじゃねぇかよ、ちょっとくらい」  
「俺たちと仲良くなっておいて、この先損はしねぇぞ」  
 ヒヒヒと笑う看守の目に危険な光を感じて、シモーヌは後ずさりする。  
 しかし首輪の鎖が、シモーヌの行動を著しく制限した。  
 アッという間にシモーヌを押さえ込んだ看守が、左右から乳房を鷲掴みにする。  
 
 充分発育した乳房は、男の手にも余るほどであった。  
 広げた指の間から、白い乳房がこぼれ落ちそうになる。  
 つきたての餅のような柔らかさであった。  
「たまんねぇなぁ。このオッパイ」  
「なんて柔らかいんだ……うぅっ、我慢出来ねぇ」  
 我慢出来ずに乳首にむしゃぶりつく看守。  
「はぅぅぅっ」  
 敏感な先端部を乱暴にしゃぶられて、シモーヌが切なそうな声を上げる。  
 コリコリと硬くなってきた乳首が舌で転がされ、前歯できつく噛まれる。  
 
「ひぃぃっ」  
 余りに過敏な反応に、男たちが嬉しそうに顔を歪める。  
「ラ・セーヌの星、お前の乳首はなんて敏感なんだ」  
「幾らしゃぶっても飽きがこないぜ」  
 2人が我を忘れて、シモーヌの乳房に夢中になっている時であった。  
 
「何をやっとるかぁっ」  
 彼らの背後から、看守長の怒鳴り声がした。  
「いやっ、こいつが折角の晩飯を粗末にしやがったので……折檻を……」  
 看守が狼狽えながら言い訳をする。  
「お前らにそんな権限はない。さっさと風呂の準備をしろ。入浴の時間だ」  
 
                                 ※  
 
 冷え切った体に、風呂の湯は火傷しそうに熱かった。  
 シモーヌは頭の上に両手を乗せる姿勢を強いられたまま、100数えるまで湯船に浸かった。  
 湯船から上がると、ハイミスの女看守が2人掛かりでシモーヌを押さえつける。  
 そして石鹸を付けた硬いスポンジで、彼女の柔肌をゴシゴシ磨き始めた。  
「痛いっ」  
 乱暴な扱いにシモーヌが抗議の悲鳴を上げるが、女たちは事務的な手つきでスポンジを使い続けた。  
 
 シモーヌは彼女たちのベルトに、使い込まれたムチが差し込まれているのを確認する。  
 おそらくかなりの使い手なのであろう。  
 素手で戦える相手ではないように思えた。  
 よしんば彼女たちを倒せたとしても、ドアには外側から鍵が掛けられており脱出は不可能だ。  
 ここは大人しく言うことを聞いておいた方が良さそうである。  
 
「股を開きな」  
 女看守が荒っぽい口調で命令する。  
「股を開けっていってんだよ」  
 ムチが一閃し、シモーヌの直ぐ側のタイルがピシャリと鳴った。  
 仕方なく、シモーヌは四つん這いになったまま、股を開いて尻を高々と上げる。  
 剥き出しになった股間に、タップリと石鹸が塗り込まれる。  
 
 先程までとはうって変わって、今度は指先を使ったソフトな扱いになった。  
「あぁっ、そんなとこっ……あぁん」  
 敏感な部分を執拗に責められ、シモーヌの口から思わず甘い悲鳴が漏れる。  
「感じてんじゃないよ、雌ブタが」  
 女たちは無表情のまま神聖な部分に指を突き入れ、また包皮を捲りあげて最も敏感な突起部をこねくり回す。  
 
 女の泣き所を知り尽くした女の責めに、シモーヌはトロトロにとろけさせられた。  
 無意識に腰を振り続けるシモーヌに、冷水が浴びせられる。  
「ひぃっ、ひぃぃぃ〜っ」  
 シモーヌは登り詰める寸前で現実に引き戻された。  
「さぁ、夜伽の部の時間だよ」  
「男爵様のお情けを、たっぷり頂戴しな」  
 浴室のドアが開かれ、看守たちがドカドカと乗り込んできた。  
 
                                 ※  
 
 グッタリとしたシモーヌは、別館の中へと引きずられていった。  
 シモーヌを抱え込んだ一行は、豪華な彫刻を施したドアの前で止まる。  
 看守長がノックすると部屋の中から返事があり、彼は深々とお辞儀をしてからドアを開いた。  
 シモーヌは部屋の中へと引きずり込まれると、ふかふかのベッドに転がされた。  
 スプリングの効いたベッドは柔らかく、シモーヌの体が沈み込みそうになる。  
 
「グフフフッ。待っていたよ、ラ・セーヌの星」  
 暖炉の前には安楽椅子に座ったガルニー男爵の姿があった。  
 男爵はワイングラスを掲げて、シモーヌに挨拶する。  
「夜は長いんだ、タップリ楽しもうよ」  
 男爵の濁った目に、彼の意図を察したシモーヌが逃げ出そうとする。  
 
 途端に、ベッドを取り囲んだ衛兵が、10丁もの銃剣を彼女に突き付ける。  
「うぅっ。こっ……こんなぁ……」  
 男爵はシモーヌの拘束を解く代わりに、衛兵の銃剣で彼女の自由を制限しようというのである。  
 無論、彼女との行為が丸見えになるのは承知の上であった。  
「変態だわ……」  
 シモーヌの顔から血の気が引く。  
 
「それじゃ、準備してよ」  
 男爵が脂肪のタップリ付いたアゴをしゃくって合図する。  
 衛兵が洋服ダンスを開き、中から一組の衣装を取り出す。  
 それを見たシモーヌの顔が異様に歪んだ。  
 
「イヤァァァーッ」  
 衛兵の取り出したのは、グレーのレオタードと漆黒のマントであった。  
 男爵はシモーヌではなく、ラ・セーヌの星を手込めにしようというのだ。  
 
 衛兵がシモーヌを抱え込み、むりやりレオタードに足を通す。  
 レオタードが引き上げられ、切れ込みの厳しいクロッチ部が股間に食い込んだ。  
 袖に手が通され、背中のジッパーが引き上げられる。  
「ん? 少々サイズが小さかったかな。ガハハハッ」  
 プックラした恥骨がクッキリ形を顕したのを見て、男爵が笑い転げた。  
 マントとブーツが付けられ、ベレー帽が被せられる。  
 最後に真紅のマスクが目元を覆うと、ベッドの上にラ・セーヌの星が現れた。  
 
「どうだ、ラ・セーヌの星。今夜こそは逃げられぬぞ」  
 男爵は芝居がかった口調でそういうと、再び豪快に笑い転げた。  
 

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