黙って項垂れたままパズーは一言も漏らさなかった。かろうじて泣いてはいないが、  
震える肩がその直前で喘ぐ心を伝えている。彼の中で様々なものが割れて落ちていった。  
それは男としての意識であり、シータを愛するものとしての自信だった。  
最も愛する唯一絶対の女性が自ら肌を赦してくれたにも関わらず、そこで応じるべき自分が  
男性としての機能を果たせなかったのだ。男性としての存在の基盤がパズーの中で倒壊した。  
そしてシータとの相対的な存在意義にも致命的な打撃が加わった。  
彼女のために命を張っているはずの自分というものにパズーは存在意義の欠如を  
見てしまった。いつだって彼女のためを思っているしそのための努力を惜しまなかったが、  
かといって自分は肝心なときに彼女のためになっただろうか?  
長い間抱えていたパズーの中のコンプレクスが舞いあがって彼を呑みこんで行った。  
助けを求めている彼女の心に気づいてやれず「忘れて」と言われただけで  
裏切られた気持ちになっていじけて帰ってしまった七年前、  
彼女を置いたまま遠ざかるラピュタを見つめることしかできなかった悪夢の日、  
彼女が犯される毎日をただただ黙って過ごすしか能がなかった二年間、  
彼女の心を取り戻すことのできなかった三年間、そして今。  
消せない過去を背負って性に関して満身創痍になってしまったはずのシータが  
勇気を振り絞って自分から肉体への侵襲をパズーに許可してくれた。  
それなのに自分はそんな彼女の勇気にも羞恥にも応えてやることができなかった。  
『彼女のためならどんなことでもする』と思っていながら今まで自分は彼女のために  
何ができただろう?シータが最も助けを必要としている肝心な時に  
自分は彼女の役に立っただろうか?自分はやっぱり、肝心な時にシータを  
助けてやれない役立たずなんだろうか?凄まじい挫折感がパズーにのしかかり、  
精神の奈落へ落としていく。挫折と後悔、やるせなさと情けなさにパズーは  
押し潰されていった。人間としても男としても彼はシータの前に  
居られる自信がもはやどこにもなくなってしまった。  
 
 悔恨に震えるパズーにシータはそっと手を伸ばした。俯いていた頬を両手で包み、  
ゆっくりと顔をあげさせる。泣く寸前の潤んだ瞳がシータを黙って見つめてきた。  
パズーは目をそらしてしまった。情けなくてシータに目を合わせられない。  
しかしシータは彼に顔を近づけ、そのまま優しく彼に口付けた。  
パズーは黙ってされるがままだった。シータの唇の感触がじんわりと伝わってきて、  
挫折に打ちひしがれていた心が少しだけ沈静化された。キスのあと、シータは  
パズーの腕の中へ身を埋めた。反射的にパズーは彼女の背中を少し触った。  
抱きしめてやれる自信はいまは彼の中に無い。  
 「パズー、お願いがあるの。わたしのお話を聞いて。最後まで・・・」  
 「・・・シータ・・」  
 既に精神を粉砕されてただの破片の集合体となっていたパズーは、  
泣く寸前の朦朧とした意識の中でシータの言葉を聞いた。  
 「パズーわたしね・・男の人の・・・舐めるの、今が初めてなの・・・」  
 「・・・・・・・え?・・・」  
 判然としない意識の霧がしだいに晴れていく。パズーは俄かに意識を取り戻し始めた。  
心を占めていた挫折感が後方に押しやられ、代わって新たな『事実』に彼の精神は傾斜した。  
水面のように静かなシータの瞳が彼を見つめた。  
 「ムスカが…他の女の人に・・こういったことをさせているの・・わたし見たことがあるの。  
だから……パズーも…・・そうすれば・・元に戻るんじゃないかと思って…」  
 二度目に訪れた天空の城で見た無数の女性の死体をパズーは思い出した。  
子を産ませるためにムスカが献上させた女性たち。彼女達もまたムスカと度々交渉をもったはずで、  
その一端をシータは目撃していたのだろう。シータは俯いた。  
 
 「ごめんなさい。勝手な事をして…」  
 「ちっ違うんだ!シータが悪いんじゃないよっ!ぼくが…」  
何を言おうとしたのかわからないままパズーは言葉に詰まって目を逸らした。  
シータに目を合わせられなかったし、合わせてはいけない気がしたのだ。  
空間に埋め込まれたような沈黙が二人の間に固まった。裸で俯いたまま二人は次の言葉を模索する。  
長い逡巡の末にパズーは一つの細い道を見いだした。聞いてみよう。今まで絶対に尋ねては  
いけないものとして固く閉ざしてきた疑問の扉をパズーは開けようと思った。  
「他の女性とムスカの行為を見ていた」という事実の裾をシータが少しだけ開いたことによって、  
一度『事実』に呑まれたパズーの心が『真実』の希求へと急激に傾いた。  
思い切って聞いてみよう。そうしないことには先へ進めないような気がパズーにはするのだ。  
悪夢の二年間のことはシータが忘れることで解決するしかないと思っていた。  
しかし本当はそうではなくて、シータだけでなく自分も、一緒に乗り越えなければならない  
共通の障壁なのではないだろうか?そしてそれを越えるためにはどうしても一度  
シータの傷に触れておかなければならない。パズーは口を開いた。  
シータの患部に触れることで自分も傷つく覚悟で問いかけた。  
「シータ・・・・あの」  
「ムスカが・・・・」  
「え?」  
しかしパズーが運命の問いかけをするより早くシータが口を開いた。  
「ムスカが私の服を引き裂いて・・・・わたっ、私の胸を・・・触ってきて・・・・」  
自分が聞くより先にシータは自分から傷を見せようとしている。  
パズーは彼女が自発的にそうしていることに驚いた。  
「シータ・・・・」  
「指をっ・・指を入れてきてっ・・・・」  
 
言葉尻が高く掠れた。これを話さなければパズーが落ち着けないだろう様子を悟って  
シータは自ら傷を暴いた。掘り起こされていくおぞましい過去が彼女の喉を詰まらせ、苦しめた。  
「いきなり・・・いきなりムスカの・・・・・・・恐ろしいものを・・・入れてきて・・・・っ」  
堪えきれない涙がシータの頬をこぼれ落ちていく。それを見て咄嗟にパズーは彼女を抱きしめた。  
鋭い痛みと苦しみに二人の心が浸されていく。シータはパズーにすがりついて泣いた。  
「痛かったの・・・・ものすごく痛かったの・・・・もう嫌だったっ・・」  
パズーの耳元からシータの嗚咽が響いてきた。処女を奪われたときの凶悪な記憶がシータを苦しめ、  
その苦しみはそのままパズーに伝播した。パズーはシータが味わった苦痛とその凶状を思い描くことができる。  
ムスカに服を裂かれ、無理矢理体を押し開かれるシータ。泣き叫んで逃れようと必死に抵抗するあの頃のシータ。  
そしてついに力で征服され、たった一つの尊いものを踏みにじられる少女。  
その惨状がまざまざと頭に浮かぶとパズーの瞳に自然と涙が滲んだ。悔しくて、苦しくて涙がこぼれた。  
「それから・・・ムスカは毎日・・・わたしをっ・・・・」  
「シータ・・・・」  
「すごく痛くて・・いつも痛くて・・痛くて痛くて気絶すると・・ムスカは・・・わたしを叩き起こして・・  
また・・・・続けるの・・・・もう嫌なのに・・痛くてしかたがないのに・・・・終わらせてくれなくて・・・・」  
 シータの悲傷の形状が明確にパズーの中に描かれる。彼女の傷が哀しくてパズーは強く彼女を抱きしめた。  
しかしふと彼は心の一角に住み着いた疑問を感じた。ムスカに度重なる性交渉を強制されてきたシータ。  
彼女の四肢は既にムスカに掘られて開墾されているはずである。それなのにシータはムスカとの交渉を  
『痛い』とだけ表現する。パズーは自分自身が性の知識に乏しいのであまり自信が持てなかったが  
そこには矛盾があるように思えた。交渉に体が慣れてしまえば本人の意思とは関係無しに体の痛みは  
薄れるのではないか?逆に交渉に慣らされた体は快感を覚えるようになるのではないか?  
 
この想像はパズーには苦痛を伴なうビジョンだった。ムスカの愛撫に嬌声をあげて悶えるシータ。  
この想像は、シータが犯され続けた事実以上にパズーの心を破壊してしまえる威力を持っていた。  
愛しい女性に他の男の愛撫に堕ちて欲しくない。誰もが抱く感情だった。ただパズーはそこでそれを  
主張してしまえない。もしそうだとしてもシータを責めるわけにはいかない。  
責めるべきはそうなる前に彼女を救えなかった自分にあるはずだ。パズーは常にそう思っていた。  
 シータがムスカとの行為が苦痛であったと表現するのに、反対の『快楽』については全く口にしないことが  
パズーの心に灯った疑問だった。確かに女性の処女破瓜は痛みを伴なうと聞いてはいたが、  
それは回を重ねるごとに沈静化されるものではないのだろうか?彼はシータがなぜそうも『痛み』を  
訴えるのかわからなかった。  
「シータ・・・・痛いって・・・・ずっと痛かったの?ずっとずぅっと・・痛かったの?」  
ここまできたら最後まで聞かないことには終われない。シータを抱きしめたまま彼は疑問を口にした。  
パズーの腕の中でシータはゆっくりと頷いた。やはり彼女は「痛み」しか感じていなかったようだ。  
しかしそれでは話が繋がらない。ムスカとの交渉は痛みのみの交接だったのか?性行為とはそういうものなのか?  
「でっでもシータ、シータはムスカに・・・・」  
どうやって聞こうか迷っているパズーの心に弾けるような理解が訪れた。  
黙って震えるシータの肩に彼は一つの『真実』の存在を感じた。  
何度も交渉を受けたのに痛みしか感じなかったシータ。ドーラから渡された本に書いてあった記事が  
パズーの脳裏に蘇る。それは『絶対にやってはいけないこと』の条に載っていた内容だった。  
「シータ、さっき『いきなり入れて』って言ったよね?まさか・・・・」  
胸に宿った『真実』が一気に広がってパズーの中に巣食った。シータはパズーの腕に埋めていた体を少し離し  
、涙に濡れた瞳を晒した。その瞳が俯いて、パズーは『真実』が肯定されるのを見届けた。パズーは愕然とした。  
「まっまさかっ!そんなっシータ・・・・」  
「ムスカは・・とつぜんやってくると・・・・いきなっいきなり、わたしの中に入れて・・・・」  
 
シータは度々咽を詰まらせ、涙をボロボロと溢れさせながら言葉を一つ一つ搾り出した。  
彼女の仕草一つ一つが痛々しくて、パズーは手を伸ばす。  
急に理解された過去にパズーは壮絶な痛みを感じた。  
シータは苦しみに震えながら尚も語り続けた。  
「痛くてしかたがないのに腰を振ってきて・・・・」  
「シータ、シータもういいよ。もういいよっ」  
耐えきれなくなりパズーは強引にシータを抱き寄せ、細い彼女の肢体を腕に篭めた。  
大声をあげてシータはパズーの腕の中で泣きじゃくった。  
「痛かった!死ぬほど痛かったの!早く死んでしまいたかった!」  
 
 ムスカはシータを愛撫しなかった。  
 胸を適当に揉んで、指で彼女の秘唇を適当にほじくる程度の事はした。  
しかしそれ以上の充分な愛撫はせず、いきなり男根を彼は差しこんできた。彼にとって重要なのは  
シータを一刻も早く孕ませることだった。そして異様なことに彼は『ラピュタ人の純血種を繁殖させる』  
というだけで勃起してしまえる男だった。だからシータに愛撫をしている時間は彼にしてみれば勿体無いのである。  
彼は勝手に勃起して、勝手に挿入して、勝手に吐き出す。シータにとってムスカとの行為は  
破壊的な痛みを伴なう拷問であった。強姦されるにせよ愛撫をされてある程度体の準備が整っているならばまだしも、  
シータの体は何の下準備もなしに異物をひたすらねじ入れられたのである。シータのまだまだ  
未熟だった体はムスカの乱暴で自分勝手な行為のために何度も出血し、起き上がれなくなるほど傷ついていった。  
パズーには黙っていたが、シータは二度目の流産以降、一度も月経を迎えていない。未発達な体に  
あまりにも無理矢理な行為を続けられたシータの体は女性として破壊されてしまった。  
今後治る可能性がないわけではないが、既に五年以上も彼女の『女性』は死滅したも同然だった。  
 
 「他の女の人にも・・ムスカはあんまり体を・・どうにかしたりはしなかったから・・他の人たちは・・  
ムスカに呼び出される前に自分で・・自分を・・弄ったり・・女の人同志で弄ったり・・  
そうしてからムスカのところにいって・・ムスカは女の人の口に入れさせて・・勝手に・・・  
一人で勝手に・・・愉しんで・・いて・・・・」  
 苦しそうに言葉を吐き出すシータをパズーは強く抱きしめた。  
シータの傷ついた心が今はっきりと見える。  
体中を傷だらけにされてしまった彼女の哀しい魂が見える。  
シータの傷ついてしまった心を少しでも治してあげたくて必死に彼女を抱きしめた。  
そうしていながらいつのまにかパズーもとめどなく涙を流していた。  
 「シータ・・シータ…」  
 泣きじゃくるシータを抱きしめながらパズーも泣いていた。陵辱され尽くしたうえに愛撫もされず、  
ひたすら痛みばかり味わわされてきたシータ。まだ未熟な体を無理矢理こじ開けられ、  
勝手な行為で激痛の嵐に放りこまれたシータ。パズーはシータの女陰が今でも滅茶苦茶にされて  
血を流しているように見えた。あんまりだ。パズーは泣いた。こんなのは酷すぎる。  
なぜシータがこんな目に遭わなければならなかったのか。その不条理が悔しくて、彼女が哀れで、  
パズーは自然に涙を零した。シータが可哀想で、あまりにも可哀想で、不条理な哀切にパズーはひたすら泣いた。  
 「ごめん…ごめんシータ・・・ぼく・・シータがそんなに辛い目に遭ってる時に・・・なんにもできなくて  
・・・・シータが・・・シータがつらい思いしてるときに・・助けてあげられなくて・・・  
そばにもいてあげられなくて・・・・」  
 
 泣きながら抱きしめてくるパズーからシータは少し体を離し、彼を見つめた。  
なぜかそこには悲惨な過去に苦しむ顔ではなく、聡明な瞳と少し恥らった表情が彼女の面に浮かんでいた。  
 「さっき・・・パズーにしてもらったとき、わたしとっても気持ち良かったの・・・  
あんなふうになったの・・・わたし、初めてで・・嬉しかった・・ものすごく・・嬉しくて・・幸せだった」  
 パズーの心が激流となってシータへ向けて流れていった。  
熱涙が堰を切って溢れてきて、彼は再びシータを抱きしめた。  
 「シータっシータァっ!」  
 シータの背中を掻き毟るようにパズーは強く抱きしめた。縋りつくように抱きしめた。  
 (ちゃんと最後までしてあげられなかったのに・・・シータが許してくれたのに・・ぼく・・  
応えてあげられなかったよ・・・それなのに・・『幸せ』だなんて・・・言ってくれるの?)  
 パズーはひたすら泣いた。シータがあまりに可哀想で、自分に幸せを感じてくれるシータがあまりに愛しくて、  
嬉しくて、パズーの心は涙と一緒に溢れていった。そんな彼の背中にしがみついて、シータも泣いた。  
初めて自分の受けた惨状を話した事で、それを受けてパズーが泣いたことで、彼女の辛い過去が  
遠くへ流れていくようだった。自分の味わった苦しみがパズーの涙と一緒に消えていくように彼女には感じられた。  
強く抱きしめてくる彼の腕にシータは縋りついて紅涙を零した。  
 「シータごめんっ!助けてあげられなくて・・ごめんっ・・」  
 二人は強く抱きしめ合いながらひたすら泣き続けた。二人の泣き声が部屋に響いて混ざり合う。  
互いの心が熱い涙に溶けて流れていった。  
 
 一生分と思われるほど涙を流した二人は黙って抱き合っていた。長い沈黙を経て頬を伝っていった  
涙の筋が乾いた頃、パズーはシータを抱きしめたまま彼女の耳元に囁いた。  
 「シータ、お願いがあるんだ。よく聞いて」  
 シータは黙って耳元から響いてくるパズーの声を聞いた。涙に濡れてすっかり熱っぽくなった頬を、  
彼の頬に摺り寄せた。頬擦りしてくる彼女にパズーは哀しいほどの愛しさを感じた。  
 「もう一回・・・もう一回・・・チャンスが欲しいんだ」  
 腕の中でシータが震えるのを感じながらパズーは囁きつづけた。  
 「ぼく・・・・シータが・・・そんなに酷い目に遭ってるなんて・・・知らなかったんだ・・・  
シータが・・・ムスカとどんなことをしていたのか・・・知らなかったから・・・勇気がなかったんだ」  
 自らを落ちつかせるようにパズーは息を吐いた。心の震えと一緒に吐いた息が震える。  
パズーの不安定な息を首筋に受けて、シータは彼を抱きしめる腕に力を篭めた。パズーは祈るように囁きかけた。  
 「ぼく・・・シータを・・愛してあげたい」  
 自然とシータの目は見開かれていく。パズーの言葉が心の泉に落ちて染みこんでいった。  
波紋に揺れる心の水面が細波となってシータの肩を震わせた。  
 「シータを・・幸せにしたいんだ。  
だからお願いシータ・・ぼくに・・もう一度だけ・・チャンスをちょうだい」  
 枯れたはずの涙がこみ上がってきてシータは顔を落とした。パズーの肩に瞼をつけて、  
彼の頑丈な肉を濡らす。シータの心はパズーへの恋心で溢れかえっていた。  
全身が涙になって溶けていくような恍惚が彼女の中を満たしている。  
シータは自分の中で洪水を起こしているパズーへの愛しさに浸った。  
背中と頭を撫でてくる彼の腕に抱かれながらシータは既に報われた心を感じていた。  
 
 「シータ」  
 返事を促すようにパズーが自分を呼んだ。シータは少しずつ、彼から体を離すとパズーの瞳を見つめた。  
パズーはシータの透明な涙を見た。吸いこまれるような幸福に充ちた笑顔がシータの顔に現れていた。  
 「パズー・・・パズーわたし・・・もうとっても・・幸せ・・・・・」  
 パズーの言葉一つ一つがシータの傷ついた心を洗い流し、満たしていた。  
自分の言葉が彼女の中でそんな作用を及ぼしているとは知らないパズーは彼女の輝くような笑顔が不思議だった。  
ただただシータの微笑みがパズーには眩しかった。  
 「シータ・・」  
 彼女の頭を撫でていた手を寄せて、パズーはシータに顔を近づけた。  
その様子を悟ったシータは少しずつ瞼を落としていった。  
 「嬉しい・・・パズー・・・」  
 「シータ・・・・」  
 シータが目を瞑るのに合わせて自分も目を閉じる。パズーはそっとシータに口付けた。  
シータの柔らかい唇に自分の唇で触れる。パズーはシータの唇を優しく包んだ。  
そのまま何もせずじっと彼女の唇に触れ続けた。二人の体内に宿る心が唇を通って互いの中に流出する。  
柔らかくて暖かい感覚が二人を包んだ。長い時間、シータの唇に口付けていたパズーはようやく口を離した。  
二人は同時に熱い息を吐く。まるで初めてキスしたときのような緊張と期待と愛しさに充ちた口付けだった。  
 「シータ・・・」  
 「パズー・・」  
 再びシータの細い腰を抱き寄せてパズーはキスした。今度はゆっくりと舌を差しこんでいく。  
パズーの舌を受け入れたシータは少しずつ彼の舌を舐める。長い時間かけて二人は舌を絡ませあい、  
互いの唾液を舐め取った。しだいに体が熱を持ち始め、シータはパズーの肩にすがりついて彼の舌の愛撫を受けた。  
ふと先ほどのパズーを思い出したシータは合わさる唇の端から言葉を吐いた。  
 「パズー・・わたし・・舐めるの・・嫌じゃないの・・・パズーなら・・嫌じゃないの・・・  
だから、舐めてあげたほうがいいのかしら・・?」  
 
 シータの言わんとしている事を理解するとパズーは口を合わせたまま固まってしまった。  
さっき少しだけ自分の分身を舐められた感触を思い出す。パ  
ズーは頬を赤くし、黙ってしまった彼を見てシータは言ってはいけないことだったのかと不安を覚えた。  
 「パズー・・・・」  
 唇をほとんど離さずにパズーは少し困ったような笑顔をシータに見せた。  
 「あの・・・シータ・・・嬉しいんだけど・・それは今度にしよう・・今はぼくがシータを愛してあげたいんだ」  
 「パズー・・」  
 微笑んだ顔を少し引き締めてパズーはシータを見つめた。  
その黒い瞳に信頼できる心の強さが宿っているのをシータは見た。  
 「大丈夫、今度はちゃんとやれる気がするよ」  
 初めての行為に対する緊張や、ムスカに対する負い目はこのときパズーの中で消えていた。  
代わりにシータを今度こそ愛してみせるという決意と、彼女への愛情がパズーの心を満たしていた。  
パズーはシータの腰と膝を抱いて、再びベッドの上に寝かせていった。彼女の上に覆い被さり、  
改まって彼女への侵襲の体勢を取るとパズーはシータの額を撫でた。額に落ちかかる彼女の前髪を慰撫し、  
輪郭をなぞるように頬を撫でる。それだけでシータはうっとりとした瞳をパズーに向けた。  
 「パズー・・」  
 「シータ・・」  
 瞼を降ろし、体を落としてパズーはシータに口付ける。上唇をなぞり、下唇を撫でると促されたように  
自然とシータは口を開いた。彼女が自ら解禁した口の中にパズーは再び入場し、シータの口内を味わった。  
シータの細い腕がパズーの背中に絡みつく。シータの頭を撫で、背を抱いてパズーは口の中を愛撫した。  
ゆっくりと、じっくりとシータの舌と触れ合う。彼女の口内の天井を舐めるとシータはくぐもった声を零した。  
 「んふぅ…ウン・・」  
 
 シータの愛らしい声がパズーにくすぐったい感覚を齎した。パズーはもっと愛してあげたくて  
口内の天井を余すところ無く舐める。そうされるたびシータは熱発していき、  
彼が歯列をなぞるともどかしくなって肩をくねらせた。パズーが彼女の口の奥をせがむように天井を舐め、  
シータの舌の根元を突つく。シータの頭はすっかり甘い熱に麻痺して自らを彼の舌に絡ませた。  
少し息が苦しかったが、呼吸するたび互いの熱い息が互いの口の中に溶けていくと  
二人は急かされるような熱を感じた。パズーは少し口を離してシータの舌先に自分の舌先を絡めた。  
先端だけでくすぐるように舐めあう。唾液の糸が二人の口に架橋する。  
パズーもシータも熱っぽい視線で見つめあい、熱情に呑まれていった。  
 「んぅ・・パズー・・」  
 「・・シータ・・」  
 それからまた何回か口付けて、パズーは少し体を離した。今度はシータの額に唇を落とす。  
パズーの唇に触れられた場所から暖かい安心感がシータの体に染み込んでいった。  
それからパズーは瞼、睫毛、目尻に口付けし、顔の様々な場所にキスしていった。  
シータの白い頬に、鼻筋に、顎に、そして唇に。シータは甘い快さに包まれていった。  
唾液を吸い合うようなキスをすると、再びパズーは頬に口付けし、そのまま顎を舐めてきた。  
シータは痺れるような感覚を受けた。パズーの舌が顎から下を舐め、咽を舐め、首筋を舐めていく。  
だんだんと大きくなる痺れにシータは震えた。パズーの舌が首筋を舐め尽くして最後に耳たぶを噛むと  
弾ける痺れがシータを襲った。  
 「ああっ・・」  
 そのまま耳朶を吸って耳の穴に舌を差しこみ、耳の裏を舐めてくる。  
シータの息はしだいに荒くなっていった。  
まだ性器は少しも弄られていないのに早くもシータの体の芯は発熱をはじめていた。  
パズーの丹念な愛撫がシータの心を愉悦の中に浸している。  
 
耳の裏を舐めたパズーはさらに後ろを舐めていきうなじを吸いこんだ。  
うなじを吸われたシータは吸い込まれるような刺激を受けて鼻にかかった声をあげた。  
 「ああっパズー・・」  
 シータの可愛い声を聞くとパズーは何度も項を吸った。シータは身を捩って愛らしい声を零していった。  
 「あ・・・あ・・・パズー・・はぁ・・・」  
 項をあらかたキスしてしまうと、今度は首すじにキスを繰り返し、彼女の小さな肩に口付ける。  
シータが全身切り傷だらけになっているようにパズーには見えていた。彼女が過去に受けた仕打ちが  
彼にそんなビジョンを見せている。自分のキスで彼女の傷口が少しでも塞がればいい。  
そう思いながらパズーはシータの肌に唇を落としていった。肩を舐め、シータの腕に接吻をしていき、  
手首に優しく口付けたあと、パズーはシータの手の甲に恭しく口付けた。まるで求愛されているようなキスに  
シータは恍惚とした。パズーの優しさと深い愛情が彼女の心に届いていった。手の甲に接吻したあと、  
パズーはシータの指を一本一本舐めていった。根元から指先までをなぞるように舐める。ぞくぞくする感覚が  
シータに伝わってきた。普段はいろんなものを触ったり掴んだりしてもこんな感覚はないのに、  
パズーに舐められるとくすぐったくて痺れるようなもどかしさが体に流れてくる。パズーが指と指の間を  
丁寧に舐めてくるとシータはさらに強まった痺れを感じて震えた。  
 「パズー・・あ・・・パズー・・」  
 どんどん熱くなっていく体をシータは震わせた。パズーは3箇所の指と指の間を全て丹念に舐めていく。  
パズーの舌触りがシータの腕を通って体の芯に響いていく。シータの体全体は熱っぽくなり脈動を始めていた。  
荒い息を繰り返し、火照った頬を晒すシータを見てパズーはさらに彼女が恋しくなった。  
今度は舐めながらシータの腕を下っていき、彼女の肩まで舐め尽くす。シータがくねらせる首に再びキスし、  
もう一方の肩から腕、そして手まで接吻する。今度は指だけに留まらずシータの手全体をパズーは舐めた。  
いたわるようにパズーの舌がシータの手を優しくなぞる。さらに痺れが増してきてシータは甘い息を吐き出した。  
 
だんだんと体の芯が疼いてくる。彼女の『傷』を癒すようにパズーは優しく慎重にシータの肌を舐めていった。  
そして彼の舌に舐められるだけでシータの体は瞬く間に甘く痺れていき、  
彼の舌が再び腕を伝って肩まで降りてくる頃には彼女の頭はすっかりとろけきっていた。  
 「ああ・・パズー・・」  
 肩口まで舐めていくとパズーはそのまま彼女の鎖骨をなぞった。  
鎖骨を舐め、滑らかな胸元も舐めて接吻を繰り返した。だんだんとパズーの口が降りていくと  
シータは羞恥と期待に体を震わせる。これまで丹念にゆっくりとシータを愛していったパズーだが、  
さすがに彼女の胸を目の前にすると童貞の焦りに傾斜した。シータの白くて丸い胸の中心に薄紅色の二重円。  
それを近くで見るとパズーの若さが一点に集中して凝固を始めてしまう。生唾を飲んでパズーはどうにか堪えて  
シータの白い胸に舌を這わせた。丸みの形状をさぐるように輪郭をなぞる。するとシータに甘い疼きが訪れた。  
 「あ・・ん・・パズー・・」  
 柔らかい胸の皮膚の上をパズーの熱くてザラついた舌が這いずってくる。這ったあとに残る唾液の感触も含めて、  
それらはシータの体の中心ににくすぐったくも抗えない疼きを送っていった。ついに再び胸を弄られるのかと思うと  
シータは羞恥に追いたてられた。パズーに自分の胸を触られたり舐められたりすると思うと  
恥ずかしくて困ってしまうのだが、パズーに愛されること自体はシータはやはり嬉しかった。  
舌で輪郭を描くと、パズーはシータの柔らかい胸肉を中心に向かって舐めていった。  
シータの体はどんどん甘い疼きに追いたてられていく。  
 「ん・・ん・・パズー・・あっ・・・ん・・」  
 シータの甘い声を聞きながらパズーは胸を舐めていき、キスの雨を降らせて中心以外の場所を舐め尽した。  
パズーに舐められていない場所が狭くなればなるほど、無意識のうちにシータは胸の頂点を舐められる事に  
期待を膨らませた。最後に残った部分を囲うようにパズーの舌が円を描く。  
 
そして少し舌を離し、パズーは改めてシータの胸を見つめた。桃色の頂きが既に少し立ちあがっている。  
それを見るとパズーは  
咽の渇きを自覚した。一つ息をして、パズーは満を持してその立ちあがった頂点を下から嘗めあげた。  
すると今までよりも鋭い痺れがシータの体に駆け抜けた。  
 「ああんっ」  
 シータの嬌声を聞いたパズーは急かされるように桃色の実を舐めた。下から繰り返し舐め、  
頂きをなぞる様にぐるりと円を描く。パズーに舐められるたびにシータの体は熱に追いたてられていった。  
声を抑えきれずに恥ずかしい声音をこぼしていく。  
 「あ・・あ・・あん・・パズー・・はぁん・・」  
 シータの声がパズーの頭を麻痺させていく。彼はシータの胸の実を何度も舐めたあと、口に含んで吸いこんだ。  
熱い疼きが体内を駆ける。シータは高く鳴いた。  
 「あんっ!」  
 パズーの口に胸の敏感な場所を愛撫されていくうちにシータはますます愉悦に引っ張られていった。  
シーツを掴み、肌を紅潮させて熱い息を吐く。パズーがもう一方の胸を攻略しはじめると  
彼女はさらに抗えない熱の波に運ばれていった。  
 「ああ・・はぁ・・パズー・・ああ・・」  
 同じように胸の輪郭から中心に向けて舐めてくるパズーの舌にシータは熱の細波に浚われていくのを感じた。  
シータの中で恥ずかしさと悦びが次第に勢力図を変えていく。パズーは手練手管を知っているわけではないが、  
ひたすら丁寧に愛撫を施してくる。彼の丁寧な愛撫と二人の愛情と信頼感がこの段階においてシータを  
悦ばせることに成功していた。パズーの舌がついにもう一方の胸の頂きに辿りついた。  
また舐められるのかと思っていたシータは彼の口が突然、胸の突起を口に含んで吸ってきたので驚いて悶えた。  
 「あんっ!パッパズーっ!」  
 
 ここまで耐えてきたパズーだったがシータの高い喘ぎを聞いてやはり熱情に逆らえなくなり、  
シータの突起を夢中で吸った。もう一方の胸を手で掴む。するとシータの胸の柔らかさがダイレクトに  
伝わってきてパズーはさらに彼女を欲する思いに駆られていった。シータの胸を揉み、  
指で突起を挟むとシータはもどかしそうに身を捩った。口で彼女の乳輪をなぞる。  
両方の胸を愛撫されはじめたシータはさらに堪えられない甘い痺れに吸引されて身悶えた。  
 「ん・・ん・・ん・・あっ・・パズー・・ああん・・パズー・・はぁ・・ああん」  
 彼女の桃色の果実を吸い上げながら、もう一方の乳首を指で捻りあげると  
シータは熱い疼きに吸引されて愛らしい声で鳴いた。  
 「んぁ・・ああんっ・・パズー・・あっあんっ!」  
 パズーはそのままシータの胸を愛撫していった。口の中で胸の実を嬲り、指の腹で硬くなった頂点を  
くすぐったり弾いたり摘んだりして彼なりの愛撫をシータに施した。シータは眉間に皺を寄せて喘ぎ、  
ますます疼きを発生させていく体をもてあました。パズーの愛撫でシータの体の肉そのものが熱くなっていく。  
 「はぁ・・あぁ・・ん・・パズー・・パズー・・あっ・・はぁん・・ああっああんっ」  
 パズーの口、舌、指に胸を弄ばれたシータは融解してしまうほど熱くなった体をくねらせた。  
もどかしさと快さをこらえるために目を閉じていたシータはふと瞼を開いた。  
するとパズーにいじられる自分の胸が視界に飛びこんでくる。パズーの口に食べられている自分の胸。  
パズーの指に弄くられている自分の乳房。彼女の頬は急激に真っ赤になった。自分の胸が  
こんなに淫らに見えることは初めてだった。シータはこの世で最も愛しい人にいいようにされている  
自分の胸を見て羞恥の世界に放り込まれた。  
 「あ・・ああ・・パズー・・パズー・・はあぁ・・」  
 パズーに絶え間なく乳房を愛撫されたシータ、シータの胸を愛撫しつづけるパズー、  
二人の体は発熱して早くも熱の逃げ場所を求めていた。シータの乳首を口に含んで転がすたび  
その甘い感触にパズーは感激してしまい、そのたび自分を抑制するのに苦心した。  
 (シータ・・今度はちゃんと愛してあげる。もうシータに痛い思いなんかさせないよ)  
 
 心の中で自分と彼女にそう言い聞かせてパズーは彼女に若さを差し入れたいのを我慢した。  
そんな葛藤をしながらシータの胸を揉み、乳首を舐めて噛んだり吸ったりを繰り返していると  
シータは体を大きく捩って悶えていった。シータの高くて可愛くて甘い声がパズーを恍惚に導いていく。  
 「ぁあっ・・あっ・・パズー・・パズーっ・・あっはぁ・・あんっ」  
 いつもは静寂に包まれた部屋はいまパズーが舐める唾液の音と二人の熱くて荒い息、  
そしてシータの嬌声が響いていた。  
 長い事シータの胸に食いついていたパズーは一旦体を離して彼女を見下ろした。  
体を火照らせたシータは荒い呼吸を繰り返して横たわっている。雪のように白い彼女の肌は桜色に上気して、  
パズーが舐めたあとの唾液がそこかしこで灯火に反射していた。パズーはしばらく彼女の姿態に魅入っていた。  
シータの胸から上には彼が口付けた痕が残っている。自分がつけたのかと思うとパズーは不思議な気分だった。  
嬉しいような申し訳ないような気分がパズーをくすぐった。  
未だ愉悦の息を吐き出しているシータの真っ赤になった頬をパズーは手に包んだ。  
 「シータ、大丈夫?嫌じゃない?」  
 様子を見ていれば彼女が不快でないことはわかっていたが一応聞いておきたかった。  
パズーの手に頬を包まれるとシータは気づいて微笑んだ。  
 「うん、大丈夫・・・ありがとうパズー」  
 赤くなった頬のシータの優しい笑顔。彼女への想いに引き寄せられたパズーは誘われるようにキスした。  
二人は舌を絡ませうねるようなキスを繰り返した。  
 「んっ・・んっ・・んむぅ・・はぁ・・」  
 口の端から唾液が滴り落ちる。愉悦を得たシータの唾液が耐えず分泌されてパズーの口内に溶けこんでいった。  
 「んっ・・・ん・・はぁ・・パズー・・」  
 「・・・・・シータ・・」  
 「んぅ〜んっ・・はぁ・・」  
 
 シータと熱いキスを交わしながらパズーは彼女の腹を撫でた。  
滑らかなシータの肌がパズーの掌に吸いついてくる。  
キスをしながら両手で腹や腰のくびれを撫でまわした。だんだんと下に降りていくパズーの手に  
シータは痺れが下半身へ向けて走っていくのをこらえきれなかった。  
 「ん〜ぅ・・ああ・・はぁ・・ふぅ・・ん」  
 腹を撫で、臍をくすぐり、パズーの手はしだいにシータの下方に降っていった。  
そして今しも彼女の閉ざされた秘境にさしかかろうというとき、シータは緊張とざわめく疼きに目を瞑った。  
しかしそのまま降っていくかに思えたパズーの手は谷間に向かわず両脇に逸れてシータの足の付け根を撫でた。  
シータは困惑した。  
 「あっ・・あ・・パズー?」  
 足に別れたパズーの両手はシータの白い太ももを撫でてきた。太ももの内側をゆっくりと撫でられると  
シータの体内の疼きがくすぶられる。シータは震えた。  
 「ああっ・・あっ・・パズー・・あっ」  
 太ももは隠れた女性の性感帯である。未熟なパズーはそれを知っていたわけではないが、  
シータの全身を愛してやりたい気持ちから自然とそこを撫でた。それが思わぬ成果となってシータに齎されていた。  
疼きの中心点を引っ張られるような感覚にシータは上半身を起こしかけた。  
 「あっああっパズーっ」  
 「・・・シータ?」  
 女性の構造をいまいち解っていないパズーはシータが思ったよりも大きな声で喘ぐのを訝んだ。  
見るとシータはさらに息を荒げて潤んだ瞳を向けている。  
 (もしかして・・ココ・・いいのかな・・?)  
 試しにさらに太ももをさすってやるとシータは体をくねらせて甘い声を吐き出した。  
 「はぁっ・・ああ・・んっ・・パズーっパズー・・ああん・・」  
 
 赤く染まった頬で喘ぐシータの顔があんまり可愛かったので思わずパズーは見入ってしまい、  
手をそのまま動かし続けた。少し擦りつけるように撫でるとさらにシータは震える。  
その様が可愛くてパズーは調子に乗ってさすりまわした。  
 「あっ・・はぁ・・ああん・・パズー・・ああっパズーっ・・はんっ・・あん」  
 眉間に皺を寄せて頬を染め、目をキュッと瞑ってシータは俯いた。  
 (かっかわいいなぁ・・シータ・・)  
 ふと目を開けたシータはパズーの熱心な視線にぶつかった。  
 「パズー?なぁに?」  
 「えっ?!」  
 ハッとしてパズーは動揺した。  
 「あっいや・・なんでもないんだ・・あの・・・・」  
 俯いたパズーは顔を赤くして恥ずかしそうに呟いた。  
 「シータが・・・かわいくって・・・」  
 さらに顔を真っ赤にしてシータはパズーの顔を見つめた。シーツを掴んでいた手で口元を抑える。  
二人はそのまま顔を赤くして黙り込んでしまった。何か言ったほうが良いのだろうが、  
パズーもシータも初めて交接に望むという時に賢くなれなかった。  
 「あっ・・しっシータ!あっ足っ・・いいかな・・?」  
 「えっええ・・」  
 恥ずかしさに耐えられなくなりパズーはシータの足を少し掴んでシータにそう言った。  
もとよりシータの足はあまり閉じられていなかった。既に一度愛撫されたことで緊張が半減されていたし、  
パズーのぎこちなくも誠意の篭った愛撫でシータは自然と足を開いていた。  
太ももを持ち上げるように下から握ってパズーはシータの足をゆっくりと開かせた。  
シータの足がベッドの上でMの字を描く。こうしてパズーは再びシータの秘密の谷間にまみえた。  
 
ずっと焦がれて止まなかったシータの一番大事なトコロ。あんまりじっと見つめるとシータが  
恥ずかしがってしまうことはわかっていたが、男としても、若者としても、  
シータを見つめ続けてきた者としても見ないわけにはいかなかった。黒い樹海に挟まれた紅い谷、  
谷に流れる蜜の川。シータの本体がそこに居るかのような錯覚がパズーを捕らえた。  
驚いた事にシータの秘密の谷間は既に蜜に溢れ、濡れそぼってシーツを濡らしていた。  
パズーの未熟ではあるが丹念な愛撫となによりパズーに愛されていると思うことで  
シータが自分で濡れていったのだ。シータの濡れきった秘裂を見るだけでパズーは自分が  
早まってしまいそうになるのを耐えた。  
 「見ちゃダメ、パズー・・・」  
 再びパズーの目の前に自分の恥ずかしい場所が晒されているのかと思うとそれだけでシータはさらに濡れていった。  
消えてしまいたくなるほど羞恥に追いやられてシータはパズーに懇願する。  
先ほどはそれに即座に対応したパズーだが今は少し違っていた。  
 「ごめんシータ・・・でも・・・・」  
 「え?」  
 自分の秘所にパズーの顔が近づいてくる。それを見てシータは思わず逃げ腰になった。  
 「パズーっ」  
 「見たいんだ・・・シータの・・・・大事な・・ところ・・・」  
 パズーの顔がどんどん自分の場所に近づいていき、ついにそれはそこにくっついた。  
 「あっ!パズーっ!だめっ!あっ・・」  
 蜜を掻き分けてパズーの唇がシータの秘密の入り口に接した。そのまま入り口を  
パズーの舌に舐められると熱のくすぶりが触発されてシータは悶えた。  
 「あああっ!・・パズーっ・・・あっ」  
 
 何度か入り口を舐めて掘り起こし、ほぐすとパズーは意を決して再び人差し指を入れていった。  
パズーの指はさしたる抵抗も受けずにシータの奥に入場していく。  
 「んっあっあああっパズー・・・」  
 ジリジリと自分の中に入ってくるパズーの指にシータは愉悦を刺激されて鳴いた。  
 「シータ、痛くない?大丈夫?」  
 シータが痛がっていないのは解ってはいるのだが、こんな小さな穴に入れると思うと  
どうしてもパズーは不安だった。まして先ほどシータの痛みの歴史を聞いたばかりで  
パズーは彼女の痛覚に対して過敏になっていた。  
 「アッァ・・うん・・痛くない・・大丈夫・・あっあん・・」  
 しかしシータは痛がる素振りはまったく見せず、むしろとろけきった表情をパズーに見せていた。  
それに安堵したパズーは気を引き締めて指を少しずつ動かしていった。  
穴を広げるように動かすとシータの足が痙攣する。  
 「あっ・・あっパズー・・・はぁっはぁん・・・」  
 緊張しながら指を動かすパズーの愛撫にシータは震えていた。パズーの指が動くたび、  
指の届かない奥の部分が熱を持ってきて脈動する。奥のもどかしい疼めきを誘発されてシータはわなないた。  
 「ああっ・・・ああんっパズー・・パズー・・あんっ」  
 「シータ・・・・」  
 「はぁ・・・ああ〜んっ・・パズー・・」  
 シータが無事に悶えているのを確認しながらパズーは指の動きを活発化させていく。  
領土を広げるように動かしていた指を、今度は内側の壁を指の腹で擦るように動かした。  
するとシータは腰を大きくくゆらせて喘いだ。  
 「あっ!・・やっ・・パズー・・ああっ・・はぁ・・あっあんっ!パズーっ」  
 
 中の肉壁を擦られてシータの股間に溜まった疼きが全身に広まっていった。  
股の間が脈動して愉悦の波を体中に送ってくる。シータはシーツを掴んで疼きの脈動に耐えようとした。  
しかしパズーの愛撫はさらに進歩していき、シータの中を掻き回す様に彼女の中をぐるりと動く。  
蜜と共に秘穴を掻き乱されてシータの体は悦楽の渦に呑まれていった。  
 「ああんっ・・パズーっパズー・・はっ・・あああっ・・」  
 次から次へと押し寄せる愉悦の波にシータは流されていく。自分の指が入っている穴から  
愛蜜が吹き出してくるのを見てパズーはさらにもう一本指を入れる決心をした。  
慎重に中指を彼女の柔肉の陥穽に差しこんでいく。さらに大きな容積が自分の中に入ってきて  
シータはその圧力と悦楽に痙攣した。  
 「ああっ!パズー!あっああパズーっやっ・・・はぁうっ」  
 彼女が痛覚と無縁の状態であると確認するとパズーは二本の指をシータの中で動かし始めた。  
二本の指がまるで生き物のように快感の蜜壷を蠢く。シータはさらに強い疼きに苛まれた。  
ムスカに指を入れて弄られることはあったがこんなふうに快感を得たことはなかった。  
シータはパズーに愛撫されることの悦びを改めて感じながらも、未知の心地良さに怯えた。  
パズーの指が内壁を擦ってくるとシータは鼻にかかった声をあげて快感に悶えた。  
 「はぁぁんっ・・パズー・・パズー・・あっああっ!」  
 愉悦に揉まれるシータの痴態をパズーは息を詰めて見つめていた。大好きな女の子が  
自分の手によって悶えている姿がたまらなかった。パズーは落ちつけるように息を吐くと、  
今度はシータの秘裂を見つめた。そこは既にシータの愛液によって湿地帯となっていた。  
女性の体に対する興味がパズーの中で撒きあがり、シータの谷間の上部へ向けて彼は指を落としてみた。  
ツイ、と指で谷間の肉を上に向かってなぞる。  
 「ああんっパズーっ」  
 
 さらに悶えるシータの喘ぎ声を聞きながら指を進めていくと一つの肉隗に突き当たった。  
するとシータの体が大きく痙攣した。  
 「あっ!ああっやぁんっ」  
 彼女の大きな反応が気になってパズーは近くでそれを見てみた。それは蜜と肉に埋もれていた。  
豆粒みたいな小さな肉がシータの閉ざされた谷間に隠れている。ドーラから貰った本の一節が脳裏に蘇った。  
 (もしかして・・これが・・・・あれかな?)  
 膨れ上がった好奇心にかられてパズーはシータの秘裂に顔を近づけた。至近でその肉隗を見つめると、  
恐る恐る舌で舐めあげた。その瞬間、熱い痺れがシータの体を突きぬけた。  
 「ぁああっやああっ!パズー!」  
 さらに大きいシータの喘ぎ声を聞いてパズーはこれがまぎれもないソレであると悟った。  
パズーは舌で花の蕾のようなそれを舐めていった。するとシータは腰をくねらせ、足を動かして身悶えた。  
自分の割れ目に何か突起物がついている。自分の体であるのにそのことをシータは今まで知らなかった。  
そしてそれが驚くほど自分に大きな喜悦を齎すものだということを彼女は身をもって知らされる。  
シータの体に急激な快感が押し寄せてきた。  
 「アッアッパズー・・あっ・・だめぇっ・・ああっパズーっ・・アンッだめえっ!」  
 前よりも動きの大きくなったシータの腰を掴んでパズーはその粒の回りをなぞってぐるりと舐めた。  
熱い疼きが股間から燃えあがってシータの体を焼いていく。  
 「やああっ!ああんっふああっ」  
 股の間が快感の渦の震源地となって全身を呑みこんでいく。体を左右に振ってシータは快楽に悶絶した。  
パズーの舌がねっとりとシータの花粒を押し包む。悦楽の戦慄が走ってきてシータは足をビクビクと震わせた。  
 「ああっはぁんっ・・パズーっパズーっ!だめっ・・アアッ!」  
 
 陰核は教会によってタブー視される女性の性感帯である。性感帯であるどころか  
教会は女性が快感を得ること自体を「有り得ない事」と定義してきた。  
陰核を弄って自慰などしようものなら「矯正」や「治療」として陰核を切り取られたり  
焼き切られたりされなければならない。男性も女性も陰核の存在など無いも同然として考えているため、  
たいていは存在を知らないし女性はそれを愛撫されることもない。しかしドーラから貰った本が  
東洋のものだったので教会の力の及ばぬ異国の書には陰核に関する記事がたくさん載っていた。  
それを読んでいたパズーは陰核に対する偏見はないし存在を把握することができたのである。  
パズーは何度もシータのそれを舐め続けた。今まで一度も味わった事の無い喜悦の飛沫にシータは足をひきつらせた。  
 「やぅ・・はぁっ・・ああんっパズー・・ふぁぁんっ」  
しばらく初めて舐める陰核に気を取られていたパズーは改めてシータの穴に入れた指を動かした。  
2本の指で内側を擦りながら、口でシータの豆を舐める。  
生まれて初めて敏感な場所を2箇所も攻められてシータはその壮烈な悦楽に驚愕し、慄いた。  
全身が焼けるように疼く。シータは顔を左右に振って悶えた。  
 「ひゃあっ!ああんっパズーっパズーっああっイヤッ・・はぁんっだめぇっ!」  
 股間から尻、骨盤のあたりまでが発熱体のように疼いて脈打つ。シータはさらに愛液を溢れさせ、  
パズーの手や顔を濡らしていった。パズーに蜜壷を弄られ、クリトリスを舐められて快感の雷火にのたうつ。  
シータの愛蜜の味を堪能しながらパズーは花蕾を突ついたり舐め取ったりして嬲った。  
指は彼女の大事な洞窟を愛撫し、同時に動かしてシータをさらに追いつめる。  
愛する女性を攻めあげる男の悦びにパズーは包まれていた。シータの喘ぎが大きくなればなるほど  
パズーもまた興奮していった。パズーは喜んでシータのクリトリスを舐める。  
熱源を刺激されてシータはさらに大きく戦慄いた。  
 「ああんっ!パズー・・あっあっ・・パズゥー・・ああんっああんっ」  
 
 改めてパズーは自分の舐めているものの形状を見つめた。  
まるで秘裂に生えたもう一つの胸の突起のような陰核。  
女性の体そのものをほとんど知らないパズーにとって全くの未知の肉隗だった。  
パズーはそれを口に含んで舐めてみた。するとシータの体に鋭い熱の電流が流れた。  
 「いやぁーんっ!だめぇ・・・アッ!」  
 ビクン、と体を震わせてシータは股の間に貼りつくパズーの頭を両手で掴んできた。  
今まで以上の強力な快感にシータは思わずパズーの頭を剥がそうとした。  
ますますパズーはそれを愛撫したくなり口に入れたまま舐めて吸いこんだ。  
 「ああっ・・ダメッダメッ・・パズゥー・・・あっやぁんっ!」  
 快感の激流に揉まれてシータはパズーの頭を掴んだまま体を左右に振って悶えた。  
パズーに舐められたところから愉悦の波が押し寄せてくる。それが皮膚に跳ねかえってまた股間に返って来る。  
体内を来復する快感の嵐にシータはなすすべも無く身悶えていた。パズーは行為について良くわかっていないが、  
そのぶん容赦が無い。彼が自覚しないままに施した2箇所責めはシータを快感の責め苦に苛んだ。  
陰核を舐めたり吸ったりされ、蜜壷を掻き乱されたシータは快楽の渦に放り込まれ、  
愉悦の高みへと押し上げられていった。  
 「ひゃあんっ!アアッ・・だめっやぁっパズーっパズゥーっ!はぁんっやぁ・・・・  
アッアッ・・だめぇっ・・はぁぁんっパズー・・だめっだめったらぁっ・・ああんっパズゥーっ!」  
 股間に食らいつくパズーの頭を引き剥がそうとしていたシータはいつのまにか  
自分から腰をパズーに差し出していた。液体の音が部屋に響く。  
パズーはもう夢中になって陰核を食らい、蜜壷を虐めた。快感に苛まれたシータは  
体を痙攣させてベッドの上で体をよじり悶絶する。  
 「ああっパズーっパズーっだめ・・わたし・・なんだか・・ああっはぁんっだめぇ・・ひゃああっ!」  
 
 口に含んだシータのクリトリスを強くパズーは吸いこんだ。  
全身がそのまま吸引されるような感覚がシータを襲い、  
彼女はそのまま快感の極地に吹き飛ばされていった。  
 「やぁっああああーーん!パズーっ!!」  
 大量の愛蜜が秘穴から吹き出してきたのを受けてパズーは顔を上げた。  
真っ赤になったシータが汗を流して荒い呼吸を繰り返している。  
 「シータ?」  
 心配になってパズーは彼女の顔を覗きこんだ。  
 「シータ?シータ?大丈夫?」  
朦朧とした意識を抱えたシータはしばらくパズーの呼びかけに気づかなかった。  
だんだんパズーは不安になってきた。もしかしてやり方や手順を間違っただろうか?  
ようやく薄っすらと目を開けたシータは自分を見下ろしているパズーの不安げな瞳に出会った。  
 「パズー・・・・」  
 「シータ・・・・」  
 パズーはシータの火照った頬に触れた。  
 「大丈夫?シータ」  
 「うん。平気よパズー」  
 安堵の溜息を漏らしたパズーは頬に触れた手でシータの髪を撫でた。  
髪から染みこんでくる安心感に包まれてシータは微笑んだ。  
 「パズー・・・・わたし・・とっても気持ち良かったの・・・・こんなの初めて・・」  
 パズーの中で幸福な驚きが広がっていった。  
 「本当?シータ・・」  
 「うん」  
 
 この時になってシータが生まれて初めて『絶頂』を迎えたことにパズーはようやく気づいた。  
俄かに嬉しさがこみ上がってきてパズーの心を満杯にする。じわじわと染みこんでくる喜びが  
パズーの顔に笑顔を作っていった。  
 「やった・・・・・・・良かったシータ・・・アハハッ!やったぁ!!」  
 「きゃあっ!」  
 突然パズーはシータに抱きついた。初めてシータに快感の極みを味合わせる事ができて  
パズーの気持ちは天高く舞いあがった。パズーはシータの細い体をぎゅぅっと抱きしめた。  
 「シータ!良かった!やったあ!!」  
 「ぱっパズー!待ってっ!パズー!!」  
 「え?」  
 シータの顔が羞恥に染まっている。  
彼女が俯いて見つめている方向を見るとそこには自分の性別の象徴があった。  
思わずパズーは体を離した。パズーに抱きつかれた瞬間、股間に自分のものではない肉の塊を感じて  
シータは驚いた。先走ろうとするのを耐えに耐えていたパズーの欲求は代わりにその一点に鬱積して膨張していた。  
パズーが抱きついたときそれが彼女の秘所に当たったのだ。その感触にシータは羞恥し、戸惑った。  
そしてそれを悟ってパズーも顔を赤らめた。さっきまで萎えて項垂れていたのが嘘のように  
パズーのソレは若さを主張して立派な固形物となっている。それを見てシータは改めて  
パズーが男性であるのを知ったように思えた。  
 微妙な沈黙が流れた。自分の主張する思いをシータに悟られてパズーは恥ずかしい思いをしたが、  
やがて決意に向かって心が流れていく。パズーはシータを改めて見下ろした。  
 「シータ・・いい?」  
 彼の黒い瞳の奥に強い光が見えるような気がした。シータは黙って頷いた。  
羞恥というより幸福に彼女は頬を染めていた。  
 「ええ・・パズー・・」  
 二人は笑顔で互いの気持ちを確認した。もっと以前から二人の心は結ばれていたが、  
身体のほうは様々な不条理に邪魔されて中々思うに任せなかった。それがいま、  
何の遮蔽も受けずに思いを遂げる事ができる。パズーは顔を降ろし、シータに口付けた。  
 「シータ・・大好きだよ・・」  
 「パズー・・わたしも・・」  
 シータとパズーは唇で互いの心に根ざした恋心を伝えあった。  
 
 天を仰いでシータを求める自分の分身をパズーは彼女の秘所にあてがった。  
彼の象徴の先端とシータの入り口が液体の音を立てて接吻する。  
 「あ・・・・・・」  
 その感触というよりも熱さにシータは驚いた。足を動かして震えるシータの腰を掴んで  
パズーは固定させた。自分の股の間に彼の腰がある。シータはその光景を見つめた。  
前は恐ろしくておぞましくて仕方がなかった光景。その嫌悪はいま彼女の中にはない。  
ただひたすら愛しい人をついに受け入れることができる嬉しさと、そして羞恥、緊張があった。  
 「いくよ」  
 「ええ・・・・」  
 初めて女性の体に挑む緊張感や怯えよりもついにシータと結ばれるという感慨のほうに  
パズーは捕らわれていた。出会ってから七年目にしてようやく彼女の膣に迎えられようとしている。  
そう思うだけでパズーは胸がいっぱいになってともすれば満足してしまいそうになる。  
しかしそれだけではもちろんいけない。なんとしてもパズーはシータの傷ついてしまった  
『性』を取り戻して愛してあげなければいけない。それはパズーが自らに架した使命だった。  
彼はその使命を全うすべく前進する。彼女の股の間に少しずつ腰を沈めていき、  
シータの最も大事な場所に己を進み入れていった。  
 「ぁっ・・・ぁあ〜・・・パズー・・・・」  
 「・・・・はぁ・・・シータ・・・・」  
 ジリジリとパズーの物体が自分の中に入ってくる。パズーの容積に圧迫されてシータは小刻みに震えた。  
痛みはなかったが指などとは比べ物にならない彼の質量にシータは戦慄いた。  
焼けつくような肉が彼女の中で領土を広げていく。  
 「んんっ・・パズー・・・んあっ・・」  
 
 パズーは慎重に腰を落として己自身をシータの股に差し込んでいく。  
シータの肉はざわめきながらパズーの入場を迎え入れた。熱に己を囲まれる感覚にパズーは脈動する。  
そしてさらに彼女の中を占領せんとして前進し、ついに彼女に限界まで自分を埋めこんだ。  
 「シータ・・・」  
 「パッパズー・・・・ああ・・」  
 ついに二人は心だけでなく体でも繋がった。シータの足りない部分をパズーのなり余った部分が埋める。  
熱い肉の接触に二人は唸った。繋がった場所から全身を焼くような疼きが広がってくる。  
生まれて初めて愛する相手と肉を交接させたパズーとシータはその感動を噛み締めて打ち震えた。  
 「シータ・・・・シータって・・・熱いんだね・・・・」  
 「パズーも・・・とっても・・・熱い・・・・」  
 分身を根元まで入れきったパズーはしばらくそのまま動かなかった。  
七年を経てようやくシータの開かずの間に入室できたパズーはその感慨に浸るようにそのまま停止していた。  
そしてシータもやっとパズーを迎えることができた悦びに酔いしれていた。  
しかし互いの脈動がその場所から波紋となって全身に広がってくると二人は自然と互いを求めるようになる。  
パズーは目を瞑ったままシータに懇願した。目を瞑っていないと耐えられそうにない。  
 「シータ・・・動いていい?」  
 「・・うん・・」  
 目を開け、位置を確認し、唾を呑みこんで深呼吸する。緊張を落ちつかせるためと、  
どうしようもなく舞いあがる熱を抑えるための動作だった。  
そして意を決してパズーはベッドに手をついてシータの中心の位置を考えながら体を前に押してみた。  
それほど強くはなく浅い挿入だったが、初めてパズーに腰を振られてシータは  
股間に溜まった熱がざわめいて体内に広がるのを感じた。  
 「あっ!」  
 
 とりあえず最初の一回を終わらせるとパズーは試すように何回か同じ動きを繰り返した。  
しだいにその動きは大きくなり、挿入は深くなる。シータの愛液とパズーの先走り液が  
混ざり合って彼が動くたびにグチャグチャと猥褻な音を立てた。シータはどんどん  
体が愉悦に押し上げられていくのを感じながらシーツを握り締めて耐えていた。  
 「ンッンッ・・あっ・・パズー・・あっ!・・ああっ・・」  
 いくらか慣れてきたパズーは強くシータに向かって腰を押しこむようになる。  
パズーの腰を受けとめるシータは増していく熱の蠢動に戦慄いた。  
 「アッ・・アンッ・・パズー・・パズー・・あっああんっ」  
 シータは自分の中に押し入ってくるパズーの男性自身を『大きい』と思った。  
ムスカに陵辱されていたときはただただ痛いばかりで大きさを感じ取る余裕もなかった。  
男性の大きさを感じたのはシータにとってこれが生まれて初めてである。  
パズーが他の男性と比較してどうであるかは解らないが、今差し込まれてくるパズーのソレが  
彼女にとって唯一の『大きさ』となっていた。その『大きい』パズーの肉がシータの中に出し入れされる。  
せつないもどかしさがシータの腰に染み渡っていった。  
 「はぁ・・ああっ・・・あああっパズー・・はぁっ・・あんっ・・」  
 「シータ・・・・」  
 「ああっ・・・・」  
 
 シータは心地良さを感じていたが、まだ初心者のパズーは効率的な腰の動かし方がわからなかった。  
だから彼はただベッドに手をついてグイグイと進退を繰り返すだけだったが、  
若さと体力があるので長くそれを続けることができた。そうしているうちにシータは悦楽を増していき、  
じっとりと汗をかき足を戦慄かせて悶えるようになる。  
 「ああっん・・・パズー・・・はぁ・・・はぁん・・ふぁ・・はぁぁん・・ああっ・・」  
 シータを攻略する事に腐心していたパズーだが一方で愉悦を堪えることにも苦心した。  
初めて女の肉の味を知ったうえにシータの膣ともなればパズーにとって入れただけでも  
十分絶頂を見てしまいそうなものである。シータの肉はじっとりとパズーの操縦桿に絡みついて締めつけてくる。  
蜜壷が『熱壷』となってパズーを焼き尽くす。その感触を受けながらシータを攻めるのは  
未経験者のパズーにとって至難の技だった。自分でもよくやっていると思う。  
シータを悦ばせてあげたいという思いがパズーのエンジンをフル稼動させていた。  
もともといざとなったら自分の力を120%出しきってなんとかする性質の彼は  
苦労しながらもシータを最後まで攻めようと尽力していた。  
 「あっ・・あっ・・はぁんっ・・ぁああっ・・ああんっパズー・・」  
 そんな彼への応援歌となるのがシータの喘ぎ声だった。シータは元々愛らしい声の持ち主だが、  
こうして喘ぐ声を聞いてみると愛らしさの中に悩ましい響きが混じってパズーはひどく煽情された。  
シータの声に熱情を誘発されてパズーは必死に腰を振った。そして彼が努力すればするほど  
シータの喜悦は高まった。荒い息を吐き出し、腰をくねらせ肌を紅く染める。  
パズーに腰を押し付けられるたび、彼の肉の届かない奥の部分が疼いて発熱する。  
胎内のくすぶった熱にシータは身悶えた。  
 「ああっ・・・ふっ・・あっ・・あんっ!あふぅ・・ふぁんっ・・」  
 
 熱い体をくねらせてシータは喘いだ。全身が熱を持って火照っている。  
 「シータ・・もっと・・・・強くしていい?」  
 潤んだ目を開いてパズーを見てみると彼も頬を火照らせて熱い息を吐いていた。  
 「うん・・そうして・・パズー・・」  
 体内で水かさを増していく愉悦にシータもその先を求めていた。  
彼女の同意を得るとパズーはシータの柔らかい太ももを両手で抱え、腰を少し浮かせる。  
そしてその状態でパズーはさっきまでよりも強く腰を打った。  
突然、下から強く突き上げられてシータの熱い疼きが胎内で踊りまわった。  
 「あああっ!」  
 咽を晒してシータは鳴いた。それからパズーは遠慮せずに強く激しく腰を打ちつけた。  
パズーの肉棒で膣内を掻き回されたシータはかつて味わった事のない快感の濁流に大声で喘ぐ。  
 「アッ!やっやっパズー!ああっパズゥー!はぁぁんっだめぇっ!」  
 先ほどまでのように水平ではなく下から上へ突き上げるパズーのたぎりにたぎった固形物は  
シータの肉壁を容赦なく抉った。パズーの熱槍に媚肉を抉られてシータは腰をぶるぶる震わせた。  
急に激しい快感を矢継ぎ早に埋めこまれてシータは愉悦の嵐に泣いた。  
 「やぅっ!やっ・・ああっ、あっはぁぁんっだめぇっ・・あっああんっパズー!パズゥー!」  
 「ンッ・・・・くっ・・・ぁ・・・シータっ・・・・」  
 「あああっ・・やぁっ・・やっ・・パズー!」  
 力の加減がわからないぶんパズーの挿入は少し乱暴だった。  
パズーの甲高い膨張は激しくシータの蜜を撹拌し膣を抉る。  
急激に増してくる全身の快楽に耐えきれずシータは体をしならせた。  
これまでにない悦楽に受けたシータはパズーをしっかりと咥えこんで脈動した。  
シータの熱い肉叢はうねるようにパズーの男性体に絡みついて収縮する。  
パズーは歯を食いしばってシータの強い締め付けに耐えていた。  
 「ンッ・・・ハァ・・・ハァ・・・シータ・・・くぅっ!」  
 「ああっああっ!はぁんっパズーッ!ああんっ・・あぅっんっパズー!」  
 
鉱山や野良仕事で培われたパズーの逞しい肉体はいまシータを快楽に責めたてるために存在していた。  
パズーの抑圧され続けた欲情は彼の肉隗に漲ってシータを愉悦に苛む。  
パズーが下から突き上げるとシータのクリトリスが裏から衝撃を受ける。  
それが彼女をさらに追いつめ、シータは全身に走る鋭い快感に懊悩した。  
 「ひゃああっ・・ああんっやめてっアッアッアッ!・・・あはぁっパズー!  
やんっ!だめぇ!あああっ!ああっ・・気持ち・・い・・ああ〜んっ」  
 無心で腰を振っていたパズーはシータの漏らした『気持ちいい』という言葉を聞いて、  
いてもたってもいられなくなりさらに激しく腰を突き動かした。  
 「しっシータッ!」  
 「あああっ!ふああっパズー!」  
 思いきりシータへ向けて腰を打ち付け、愛の液を飛び散らせて彼女の腰を揺さぶる。  
パズーの力強さや逞しさをもろに感じてシータはのた打ち回って快楽に焼かれた。  
もはや全身が発情してパズーの肉棒を欲して呑みこみ、巻き込んだ。  
その発情したシータの肉に巻きつかれ揉まれてパズーもさらに発情する。  
一点から這いあがってくる疼きが全身に静電気を送ってくる。シータを愛してあげたい心を残しながらも、  
パズーはしだいに肉欲に引きずられ、シータもまたパズーの肉棒の虜になっていった。  
 「ひゃあっ!ふあっ、はっはんっはぁぁんっパズゥー!パズー!あっあああんっだめえっ!」  
 「ハァ・・・シータっ・・・ハァ・・・ハァ・・・シータ!」  
 
 技巧的ではないが力任せにパズーは思いきりシータの股に自分を押し付ける。  
愛液を潤滑剤にしてパズーは思うさまシータの中を抽出し続けた。  
パズーの熱く膨れ上がったモノに翻弄されてシータはよがり狂う。灼熱の壷となった膣は  
シータの体の一部でありながら今は完全にパズーのものになっていた。  
パズーはシータの膣内を占領し、善良な独裁者となって内壁を攻撃した。  
肉を擦られ中を圧迫されるたびシータの全身に悦楽の激流が流れる。  
 「あああっふぅっやぁん・・パズー!ああっパズゥー!」  
 パズーに激しく揺さぶられながらシータは彼を見た。彼もまた顔を真っ赤にし、  
汗を流して荒い吐息を繰り返している。パズーも存分にシータと快楽を共有していた。  
とてつもない愛しさが快感と一緒にこみ上がってきてシータは彼に向かって手を伸ばした。  
 「ああっああっパズー!パズー!ああっ」  
 「・・・・シータ・・」  
 「パズーっはぁぁっ」  
 両手を広げてシータが自分を求めている。パズーはそれに気づいて彼女の両腕の中に身を沈めていった。  
屈んだパズーの背中を彼女が抱きしめるのと同時に彼もシータを抱きしめた。  
シータの汗の匂いを嗅ぐとパズーは耐えきれずにシータの口を吸った。  
激しく接吻を繰り返すとシータの手がパズーの頭をまさぐる。  
二人は舌と唾液を交換しあってうねるような口付けを繰り返した。  
 「ンンッ・・・んふぅーんっ!」  
 抱き合った状態でパズーは尚も腰を振った。すると今までよりも深い挿入に  
シータは全身を突きぬける快感に襲われた。  
 「んあっあああーー!!」  
 
 さらに締まったシータの内壁にパズーは歯を食いしばって絶えた。  
そしてさらに腰を振ってシータを追いつめる。シータは足をひきつらせて悶えた。  
いつのまにか彼女も腰を振ってパズーの肉隗を求める。二人は激しく互いを求め合って腰を振った。  
互いの体の間には熱い息使いと喘ぎ声、互いを惹きつけ合う男女の引力が介在していた。  
 「はぁっはぁっパズーっああっああんっキモチィ・・ああっふああんっ!パズー!パズー・・  
好き・・ああ・・好き・・パズー!あっあっあああっ!」  
 「ハァ・・・シータ・・・ぼくも・・・ァッ・・」  
 「ああっパズー!パズー!」  
 快楽に視界が霞んでくる中パズーの心に様々な映像が交錯した。  
出会った時の空から降りてきたシータ、シータを助けられなかった挫折の日、  
彼女を奪われ続けた苦汁の二年、彼女と共に死のうと思った飛行石の間、  
彼女の心に届かないまま過ごした三年、それらが脳裏に巻きあがった。  
知らないうちにパズーは涙を流していた。快感の極地にいながらパズーは  
それまでの辛苦の哀しみに泣いていた。そしてシータも涙を零していた。  
それは悦楽のために流した涙であり、パズーとやっと愛を分かち合える喜びの涙であった。  
二人は泣きながら抱き合い、腰で欲望を貪って情交した。  
 
 「パズー!パズー!」  
 「ハァハァ・・・シータ・・・シータっ・・シータァッ!」  
 「はぁっはぁっもう・・あっきゃっ・・はぁんっだめぇっ!アッアッもうっ・・  
ああんっああっパズー・・わたし・・ああっおかしくなっちゃ・・ああっあんっ!」  
 「シータ・・・ハァ・・・シータッ!ぁぁ・・ぼくも・・・・」  
 「ああっパズーっパズーっ!ああっひゃああんっ・・ふあんっもう・・だっめぇっ!」  
 「シータっ!」  
 パズーに媚肉を苛まれ、悦楽に体を蚕食されたシータは体を弓なりにしならせた。  
シータの膣肉が急激に収縮し、吸盤のように貼り付いたままパズーの情欲の象徴を思いきり締め上げた。  
我慢に我慢を重ねた分身を強烈に絞り上げられてパズーの脊髄から全身に電流のような痺熱が駆け抜けた。  
 「アッ!シータっ!・・くはっ!」  
 パズーの全身で快感が弾けた。ついにパズーは七年分の鬱積と愛情をシータの中に吐き出した。  
自分の中でパズーが突然大きく脈打ち、次の瞬間、熱湯のようなものが膣内を激流となってほとばしった。  
パズーの熱い精を受けて、シータの体に快感の雷が駆け巡った。  
 「あっああああっ!パズー!!」  
 どこか高いところへ吹き飛ばされたような感覚がシータを襲った。  
パズーがさらに痙攣して発作を射出するとシータは  
そこからさらに上へ押し上げられ恍惚の世界へ流されていった。  
 「ふあっはぁっはあああーーーんっ!!」  
 
 二人の汗の微粒子が霧となって部屋に漂っている。  
七年越しの恋をようやく実らせたパズーとシータは湿度の増した空間でベッドに寝ていた。  
パズーに腕枕をしてもらい、シータは彼の胸板や首筋に手を絡ませた。シータの髪を  
両手で撫でてパズーは彼女を慰撫する。  
二人は熱の交接の残照を体に抱え、行為の余韻に浸っていた。  
愛を確認しあった者同士の甘ったるい沈黙が彼らの心身を酔わせている。  
様々な障壁を越えてようやく結ばれた二人はその万感の思いで心が満杯になっていた。  
 「パズー」  
 「ん?」  
 「わたし・・・・何度も死のうと思ったの・・」  
 黒い髪を愛撫していた手をパズーは止めた。  
シータはパズーの胸に顔を埋めたままポツリポツリと呟いていった。  
 「毎日ムスカに蹂躙されるのが嫌だったの・・・・死んで解放されたかった。  
死んで楽になりたかったの。あんな毎日が続くなんて耐えられなくて・・・早く楽になりたかった」  
 今はおぼろげに見える陵辱の毎日がシータの脳裏に蘇っていた。  
パズーは何も言わずシータを抱きしめた。  
彼女の左手にあった大小の傷跡を知っていてこれまで一度も口には出さなかったパズー。  
シータの苦しみを知ると心の深部が軋んでいった。  
 
 「わたし・・・いつもパズーのことを思っていたの。  
死のうとするとパズーの声が聞こえてくるの。  
『シータ!ダメだよ!』って。パズーが最後に会った時にわたしに言った  
『シータ!待ってろ!』って・・・その言葉が心に響いてきて・・・  
死のうとしても・・死ねなかったの。いつか・・・・パズーに会える日が・・・  
来るんじゃないかって・・・・パズーが助けにきてくれるんじゃないかって・・・・  
パズーを待ってなくちゃって・・・・思って・・・・」  
 嗚咽が腕の中から響いてくる。  
悪夢の毎日を思い出してシータは苦しそうに泣いた。  
そしてパズーも涙を流した。  
助け出した時の心を失ったシータと今のシータを見比べてみる。  
そんなに辛い思いをしていたのに自分が助けるのを待っていてくれた。  
パズーは強くシータを抱きしめた。  
泣きながら二人はしがみつくように抱き合った。  
 「シータ・・・・ごめんねっ・・・・・助けてあげられなくてごめんねっ・・・・  
遅くなって・・・ごめんね・・・」  
 大声でシータは泣いた。  
これほど声を張り上げて号泣するシータをパズーは初めて見た。  
子供のように涕泣し、シータはパズーにすがりついた。シータは一晩じゅう泣き続け、  
パズーはシータを一晩じゅう抱きしめていた。朝が来て昼になって眠りから覚めても  
パズーは強く抱きしめたままシータを離さなかった。  
 
 それから二人の関係性は当然ながら変化した。まず互いのスキンシップは今まで以上に過剰になった。  
「おはようのチュウ」は台所ではなくベッドの中で行われるようになり、  
つい濃厚になりすぎていってしまうこともあった。二人の行動の端々にこれまで以上の  
強固な信頼感が生まれ、日常の細かな部分にもそれが行き渡った。パズーの内面も変化していた。  
それまでシータに対して一定の遠慮を抱えていた彼はシータと結ばれる事によって彼女に対して  
自信に満ちて接するようになった。彼女を抱いたことで男性としての自信がついたのである。  
そしてパズー以上にシータに大きな変化が訪れていた。それまでまるで少女のようだった幼い外見が  
大人の女性へと変わっていったのである。硬かった肉は柔らかくなり、全体的に丸みを帯びて  
幼かった輪郭が締まってきた。それでもふっくらとした頬のラインはかわらなかったが、  
彼女は明かに外見を変化させていった。そしてパズーしか知らないことだがシータの胸は  
以前よりも豊かになっていったし、尻肉もついてきて次第に爛熟した女性の身体に向かって  
いっているようである。ムスカとの兇状で一度は女性であることを体が拒絶してしまったシータは  
成長が止まっているふしがあった。それがパズーの愛を受けたことで再び女性になることを体が求め、  
急激に女性として本来の年齢に見合った身体に成長していったのだ。パズーに愛されている自信が  
彼女に幸福な芳香を漲らせている。シータは心身ともに美しくなりつつあった。  
そんな彼女をパズーはますます眩しく見つめた。また精神的にもシータは変わっていった。  
以前は極力外出したがらなかったシータだが今は進んで外に出るようになっていた。  
さすがに背広や眼鏡に出会いそうな賑やかな街には出られなかったが全体的に明るくなってきている。  
これはシータもパズーも知らないことであったが、彼に過去の詳細を話し、  
初めて結ばれたあとパズーの腕の中で思いきり泣き明かしたことでシータの『過去』は一度清算されていた。  
それ以降パズーから繰り返し愛を受けることで彼女に長いこと纏わりついていた暗いものが放逐されていく。  
彼女の心を濁していたものが薄くなり、パズーから貰う幸福が心の貯水池を埋めていく。  
パズーはそれこそ「愛の力」でシータを取り戻しつつあった。  
 
 
 二人が結ばれてから約1年たった頃、再びタイガーモス号がゴンドアへやってきた。  
瑞々しい美しさをたたえたシータを見たドーラ一家の面々はその変化に全てを悟った。  
 「この野郎!うまいことやりやがったな!」  
 「チクショウ!おーまえばっかりイイ思いしやがって!」  
 「ちょっとみんなやめてってば!」  
 「いいなぁ・・」  
 「兄貴〜もっと殴ってやれ〜!」  
 「うわあああっ!おばさん助けてよぉ!」  
 「男だろ。自分でなんとかしな」  
 かつてのシータの『親衛隊』たちにパズーは激しい洗礼を浴びた。  
みんなに揉みくちゃにされているパズーをシータは微笑ましく見つめた。  
荒っぽい形ではあるがこれがドーラ一家流の祝福である。   
 ドーラの私室に呼ばれたパズーは通過儀礼でボロボロにされた体をドーラの前に晒していた。  
部屋の外ではシャルル、ルイらがシータに向かって「パズーに酷いことされなかった?」  
「あいつ下手くそだろ?どう考えてもガキだったからなぁ」などの甚だ不本意な言葉を  
かけているのを知っているのでパズーは少し憮然としていた。  
 「うまくいったようだね」  
 「うん。おばさんのくれた本のおかげだよ」  
 1年前ドーラに貰った性技書をパズーは差し出した。  
シータと関係を結ぶようになってから急いで貪るように読み尽くし、  
彼にとってはバイブルのようになっていた。パズーはそれをドーラに返そうとした。  
 
 「なんだい?もうそこに書いてあることは全部実践したってことかい?」  
 「ううん。シータとはまだ基本的な事しかしてないんだ。いきなり変な事すると  
やっぱり壊れちゃいそうで・・・でも書いてある内容は覚えたんだよ?  
だからぼく大丈夫だよ。ありがとうおばさん」  
 初めてシータと結ばれてからパズーは少しずつシータと関係を持つようになった。  
いきなり何回も繰り返し求めてしまうと彼女がまた心を失ってしまうように思えたのだ。  
パズーは少しずつ彼女の様子を見ていこうと思ったが、しかし童貞の常で  
一度味を知ってしまうともはや我慢がならなかった。最初の二ヶ月は慎重に関係したパズーだが、  
シータが慣れてきて彼女が少しも嫌がらないどころか進んで声をかけてくるのに  
引きずられてついにパズーはシータにむしゃぶりついてしまった。週に一回が二回になり、  
三回になってそれ以上になる。それまでの我慢の反動でパズーはシータを激しく求めるようになった。  
もちろんシータの心身を気遣ってはいたが若いパズーは愛情も精力も体力も有り余っている。  
それを全てシータに注ぎ込み、それを受けた彼女の身体は熟していった。  
シータはパズーの激しい求めに応じ、二人は互いの若さを貪りあった。  
ただパズーはほとんど正常位でシータと交わった。それ以外の体位はやはり  
シータを傷つけてしまいそうで中々踏みこめないのだ。もう少し慣れてから彼女の同意を得て  
行おうと彼は決めていた。だからドーラから貰った本の3分の一はまだ実践していないのである。  
しかしそれでもパズーは充分、満足だった。  
 満面の笑みを浮かべるパズーをドーラはぎょろっとした瞳で見つめた。  
幸せ一杯という風情のパズーにドーラは内心では安堵していたがそれを顔に表す事はなかった。  
黙ってパズーから返された本を受け取ると例の豪奢なタンスにそれをしまいこみ、  
それと代わって別の本を取り出した。改めて別の本を放り投げられて慌てて受け取りながら  
パズーは不思議そうにドーラを見つめた。  
 
 「え?おばさん?」  
 「お前に渡しておいたのは初級者編だよ。それは応用を入れた中級編さ。  
あの程度の本を覚えたくらいでいい気になるなんざ考えが甘いよ」  
 真っ赤になってパズーは硬直した。  
 「シータ!ちょっとこっちへおいで!」  
 パズーを部屋に入れたままドーラはシータも呼び寄せた。  
シータが部屋に入ってくるとパズーは思わず貰った本を後ろ手に隠した。  
 「なぁに?おばさま」  
 そして先ほどしまったはずの本を再び取り出してシータに与えるドーラに、パズーは仰天した。  
 「これはね、パズーの愛読書だよ。お前もこれを読んで勉強おし」  
 「おおおばさぁんっ!!」  
 動転してパズーは持っていた本を落とした。  
しかし既にシータはパズーの『愛読書』をめくって内容を把握してしまった。  
 「あっあの・・・シータっ・・」  
 「まぁっ!パズー、これを見て勉強していたの?」  
 「わああっ!ちっ違うんだ!ごめんねシータ!!」  
 意味もなく謝るパズーにドーラは呆れた溜息をついた。  
 「おばさまありがとう!わたしこれを読んでしっかり勉強します」  
 「えっ?シータ?」  
 「好きにおやり」  
 「おっおばさぁんっ!」  
 シータは貰った本をしっかり受け取ってパズーに微笑んだ。  
 「パズー、わたしこれを読んで勉強するわ」  
 「・・・・・・・・・・シータが勉強するの?」  
 「ええ!パズーのこと喜ばせてあげられるようにわたしがんばるわ!」  
 「・・・あ・・・・うん・・・・ありがとう・・・・ぼくも・・・・がんばるよ」  
 頬を紅くしてパズーは情けない笑いをこぼした。  
 
 ある日、夕方にパズーとシータは手をつないで散歩をした。  
金色に輝いた暮れの太陽がゴンドアを金色に染めていく。  
 「このあいだおばさんたちが来た時ね、ルイに言われたんだ。お前いつからシータが好きだったのか?って」  
 「え?」  
 「あははっ考えてみた事もなかったよ。だってぼくずーっと、いつのまにかシータのこと好きだったから」  
 ふいに繋いだ手を離してパズーは崖のほうに走っていった。  
谷底へ向かって何事か大声で叫ぶと谷間に声が反響した。  
振りかえったパズーの精悍な瞳がシータを見つめてきた。  
 「ぼく、初めて会ったときからシータが好きだったんだよ。きっと」  
 シータの黒い瞳が驚きに見開かれた。それを見てパズーは照れた顔をして続けた。  
 「シータが夜空から輝いて降りてきたとき、すごく綺麗で、不思議だなって思ったんだ。  
次の日もハトに餌をあげてるシータを見て・・本当に可愛いなぁって・・  
きっと天使がいたらこんな顔してるんじゃないかなって思ったよ」  
 初めて会った頃の光景を二人はそれぞれに思い出していた。人生で最も輝いている  
たった三日間の思い出。二人にとってかけがえのない幼い日の記憶が心の中に蘇ってきた。  
 「ぼく、最初にシータを見た時から・・・ずっと・・・ずーーーっとシータが好きなんだ」  
 そう言うとパズーは破顔した。彼の太陽のような笑顔がシータの心に潮流を作っていく。  
パズーの言葉一つ一つがシータにあらゆる感情を心の根底から巻き起こさせた。  
哀しい音楽を聴いた時のようにシータの心は震えていた。  
 「シータ?どうしたの?」  
 凍ったようなシータの愁いた瞳にパズーは訝んだ。  
何か彼女を傷つけるようなことを言っただろうか?彼はそう思って不安になった。  
その不安を現すようにシータは暗い言葉を零した。  
 「わたし・・・・・ラピュタのこと忘れたい」  
 
 息を詰まらせてパズーはシータを見つめた。心に黒い波紋が広がって沈殿していく。  
 「最初からなければいいって何度も思ったわ。  
あの石もラピュタも最初からなければあんな思いしなくて済んだのにって」  
 「シータ・・・・」  
 初めて聞くシータの本心にパズーは胸が軋んだ。二人にとって共通の  
苦しくて悲惨な記憶が彼女の口から語られる事は稀だった。  
彼女がそう思っているだろう事はパズーは解っていたが、  
シータの口からラピュタや飛行石を否定する言葉が出るのはやはり辛かった。  
彼女がラピュタはおろか飛行石を拒絶する事は、とりもなおさず  
その石によって出会うことができた自分すらも彼女が放逐することになるのだ。  
かつて父と共に夢見た天空の城はパズーにとって今や悪夢の城だった。  
あれのために世界もシータも奪われたのだ。彼自身もラピュタを恨んでいるが、  
それでもシータに全てを放棄されるのは辛かった。  
 「出会った頃にパズーはこんなこと言ってたわ。  
『あの石があったからぼくはシータに会えたんだ』って」  
 「・・・・・うん」  
 二人で見た夜の雲海がパズーとシータの心に再現された。二人は見つめあった。  
風が流れて互いの黒い髪が揺れる。寂寥色の夕焼けが二人の頬を染めていった。  
 
 「わたし・・・・・・パズーに会えて・・よかった」  
 心の波紋がじんわりと広がっていく。パズーはシータの頬から零れ落ちた一滴の涙を見つめた。  
 「嫌な思いたくさんしたけど、パズーに会えないのは・・・・もっとイヤ」  
 「シータ・・・・」  
 ラピュタも飛行石もなければ彼女は陵辱される事も流産させられることもなかった。  
しかしその代わりにパズーには会えない。だがそれはそれで幸福にはなれただろう。  
悪夢も知らなければ本当の幸福も知らない。パズーと居られる幸福の頂きも知らなければ  
残酷の谷間を見る事もない。彼女は幸せの絶頂と不幸の谷底の中間点を歩んでいき、  
平坦ではあるが平和な人生を終える事ができただろう。シータは平凡で穏やかな道と、  
パズーとの至福とそれに付随する不幸を無意識のうちに秤にかけた。  
そしてついにパズーとの幸福に天秤が傾いたのだ。  
ラピュタと飛行石があったら辛い思いをしなければならないだろう。  
しかしそれでもパズーがいる。シータはパズーと歩む過酷ではあったが最高に幸せな道を取り、  
幸も不幸も平坦な仮想の人生に背を向けた。山が高くあるためには谷が深くなければならない。  
そしてもはや谷底が見えないほど山を登った。彼女はそれで良いと思った。  
パズーに出会うために必要な辛さだったのならばそれも受け入れよう。  
パズーに出会えたことが人生で最大の幸福であるとシータはいま心の底から感じていた。  
 
 「今でもラピュタのことは辛いけど・・・・それでもパズーに会えてよかった。  
パズーに会えて・・・・よかった・・・・・」  
 熱涙が溢れてきてシータは止めどなく泣いた。彼と出会えた幸福にシータは打ち震えた。  
そんな彼女を黙ってパズーは抱きしめる。彼の瞳にもまた彼女と同じくらい熱い涙が滲んでいた。  
シータが自分がいなくても平和な人生を選ばないでいてくれた。パズーは涙した。  
そして今度こそ彼女を不幸な目には二度と遭わせないと決意した。  
 「ごめんねシータ。もう離さないからね。ずっとずっと一緒にいよう」  
 「パズー・・・もう・・・離れていかないで・・・」  
 もう逃がすまいとしてパズーはシータを強く抱きしめた。熱と涙に二人の暗い過去が溶けていく。  
シータはこの腕の中に自分が居られることをこの世のあらゆるものに感謝した。  
パズーは夕日を見つめた。シータを失った時も夕日が空を染めていた。  
あれ以来彼の中で忌まわしい色だった夕日の紅は、この日から幸福の象徴として心に刻まれていった。  
 
 
 
 
−完−  
 
 

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