2階に登り、シータの部屋に入るとパズーは灯りをつけた。  
暗所恐怖症のシータの部屋は各所に灯りが配されている。それに一つ一つ灯を  
灯していくうちにパズーの体は硬くなっていった。心の中に住み続けていたたった一人の  
少女とついに男女の障壁を越える。その事実を前にしてパズーは一つ一つの動作にさえ  
神経を集中させなければならないほどの極度の緊張感に襲われていた。  
灯りを灯し終えた彼はシータの前に佇み、彼女の澄んだ瞳と見つめあった。  
頬を赤くしたままパズーは突っ立っていた。情けない事にどうしたらいいか解らないので  
ある。シータに赦されているとしても本当にそんな野卑な心をぶつけていいものかどうか  
彼には自信がない。彼は何か言おうとして言いあぐね、考えに沈み、  
また言おうとして言わずじまいを何度も繰り返した。  
 (おばさんの言ってたことってこれだったのかな・・)  
 先日ドーラに言われた『できるのかい?』という言葉がパズーの脳裏を横切った。  
行為そのものの問題というより切り出し方がわからない。  
そんな彼をしばらくシータは見つめていたが、やがて彼に近づいて自ら彼の腕の中に  
自分の体を密着させた。彼女の感触が腕の中に入ってきてパズーは震えた。  
 「パズー・・」  
 「シータ・・」  
 目の前でシータの瞳を見つめたパズーは我慢ならなくなり、彼女を抱きしめた。  
どうしようもなく体が熱くなって息が苦しくなる。彼女の小さな唇に接吻し、  
体が自然に動くままにシータの背中のドレスの紐を取りにかかった。  
 
 「待って」  
 塞いだ唇の端から制止の言葉を言われてパズーは勢い良く手を離した。  
シータの嫌がることに敏感な彼にはこの言葉が決定的な拒絶に聞こえた。  
 「シータ・・やっぱり・・イヤ・・」  
 「そうじゃないの。ただ服を脱がされると・・・パズー、わたし自分で脱いでもいい?」  
パズーの心臓は跳ねあがった。  
 「え!?あ・・いっいいよ・・・シータが・・そうしたいなら・・・」  
 「ありがとう」  
 強く抱きしめられる事には怯えなかったシータだが服を脱がされることには何か  
触れてはならない精神作用があったらしい。しかし今のパズーにはそんなことを  
考えていられる余裕はなかった。シータは自分で背中の紐を取る。そうするたび、  
服がずり落ちていき、少しずつ彼女の白い肌が露になっていく。それを息を詰めてパズーは  
凝視した。見てはいけないような気もしたがどうしても見たい。  
 やがて複数の灯りの中、シータの肌が晒された。灯りに煌煌と照らされた  
シータの裸体は肌の白さが灯の光を照らし返していて幻想的な姿をしている。  
生唾を飲み込んでパズーはシータの裸に魅入った。もはや完全に足から全身が床と同化して  
固まってしまっている。丸みと肉感の有る爛熟した大人の体とはシータは違う。すらりと  
した細身の肢体に女性特有の柔肉がついている。それでいて全裸になっている  
にも関わらず彼女はいつもの清楚な雰囲気を失っていない。ただ顔全体から醸し出される  
清潔なイメージに反してはっきりと晒された乳房と陰部の淫乱なイメージの差が大きすぎて  
パズーの頭は昏倒した。  
 
 「パズー、あなたも」  
 「え?」  
 すっかりシータの裸に見入ってしまっていたパズーのシャツのボタンをシータは外し始めた。  
何かしていないとシータも恥ずかしくて耐えられないのだ。シータの肌に圧倒されてしまって  
いるパズーはまったく彼女のされるがままだった。下を向くとシータの乳房がはっきりと見えて  
、パズーは唾を飲みこみ、咽が渇くのを防ごうとした。彼女の手がズボンのベルトにかかると  
さすがにそれを制止して彼は自分で脱ぎ始めた。  
 「あっ!いっいいよシータ・・あの・・・自分で・・・脱ぐから・・」  
 さすがにズボンを脱がせるわけにはいかないと思って自分で脱ぎ始めたが、既に彼の体は  
ズボンが脱がせにくい状態になっていた。シータの惜しみなく晒された全裸の映像と  
彼女の肌から直接香ってくる匂いがパズーの若い体を囃し立てていた。こうして二人とも  
生まれたままの姿になり、お互い向き合った。しかし双方とも目のやり場に困って何度か  
目を逸らす。なんとか気持ちを起こしてパズーはシータをベッドへ誘った。いつもは愉しく  
おしゃべりする二人の口はこのときまったく動かなかった。シータをベッドに寝かせ、意を決してその上に  
覆い被さるように四つん這いになる。事実上シータを押し倒した格好になってパズーはシータを  
見下ろした。黒く澄んだ瞳が彼を見上げてきた。  
 「シータ・・・」  
 「パズー・・・」  
 言いたいことも伝えたい事もやまほどあった。ここにくるまでにどれほどの思いを味わってきただろうか。  
しかしパズーの万感の思いは言葉になってはでてこなかった。口を開くとなんだか頓珍漢なことを  
口走ってしまいそうで音声となっては何も出て来なかった。ただ彼のすがるような瞳が  
言葉として現れない想いを語っていた。  
 「シータ・・本当にいいんだね?」  
 「うん。パズー、わたしパズーが好きよ」  
 「シータ・・・」  
 
 「シータ・・・ぼくも・・・」  
 二人の心の芯が恋に震えた。ゆっくりと顔を落としていき、パズーはシータの小さな  
唇に自分のそれを重ねた。少し離して、またくっつける。軽い口付けを何度も繰り返すと、  
シータの両腕がパズーの背中を撫で、首に絡みついてきた。それが合図だったかのように  
パズーはシータの口の中に自分の舌をそろり、と刺し込んだ。腕の中でシータが震えた。  
今まで、シータの悲しい記憶に極力触れまいとしてパズーは彼女に舌を入れるキスもしたことが  
なかった。本当は何度もその欲求に走りそうになったがそうすると必ずシータの背負った  
『事実』が目の前に自然と提示される。シータの傷に対してパズーのほうが敏感になっていた。  
シータにとって舌を入れられるキスは初めてのことだった。ムスカにはそんなことをされた  
覚えがない。未知の体験にシータはいくらか怯えたが、そんな彼女を落ちつかせるように  
パズーの手が彼女の頭を優しく撫でた。するとシータの震えは自然と止んだ。パズーが  
いつだって自分を守り、導いてくれたことを思い出したシータは優しく撫でてくれる彼の手に  
安心感を受け取っていた。シータが落ちついたことを受けてパズーはゆっくりと彼女の  
口の中を愛撫した。舌でゆっくりと口内を探り、歯列を舐めていく。二人の息と唾液が互いの  
口内で循環し、溶けていく。二人の脳に甘い霧が染みこんできた。  
 「んっ・・・んぅ・・・はぁ・・パズー・・ぁ・・」  
 口の端から漏れてくるシータの吐息がパズーの脳を冒していた。愛しくてシータの体を  
抱きしめる。片腕だけでも一回りできそうなほど細いシータ。その細い彼女の体をパズーは  
強く抱きしめた。そうすると自分の胸板に押し潰されるシータの乳房の感触がダイレクトに  
伝わってくる。その感触に急かされた彼の舌の動きは自然と早くなっていった。舌でシータの  
舌を突つき、誘い込むようにめくる。するとシータもそれに答えるようにおずおずと舌を動かし始めた。  
それが嬉しくてパズーは彼女の舌をぐるりと舐めて絡ませる。二人は互いの体を舐め合う動物のように  
互いの舌を舐めあった。二人の唾液が絡む音が静かな部屋に淫猥に響いた。  
 
 「ん・・・ふぅ・・・んぅん・・はぁ・・ぁぁ・・」  
 長い口付けで既にシータの頭はぼうっとしていた。今までこんなに甘いキスをしたことが  
なかったのだ。それだけでパズーへの愛しさが溢れてきて、彼女は無意識のうちにパズーを  
抱きしめていた。シータの唇と念願の口内を味わったパズーは息を整えるために一回体を離した。  
既にシータの白い頬は薄っすらと赤味がさしている。そんな彼女の顔を見つめ、ふと目を下にやると  
彼女の二つの膨らみが目に入った。ふっくらとした白い曲線の上に小さな実がついている。  
パズーは生唾を飲み込んだ。なんといってもシータの胸である。昔、塔から落ちるシータを  
抱きしめたとき彼女の胸に顔をうずめる状態になった。あのときの感触も忘れられるものでは  
なかったが、今それが目の前に無防備に晒されている。これを好きなようにしていいのかと  
思うと嬉しさとそれを上回る緊張が彼の皮膚を硬くした。とうとう耐えきれなくなったパズーは  
シータの胸の頂点にあるローズピンクの円形に誘われるようにキスした。  
 「あっパズー!」  
 パズーの口にチョン、と触れられてシータはくすぐったいような感覚に驚いた。そしてそんな  
彼女の声に驚いたパズーは思わず口を離してしまった。  
 「あっごっごめんシータ・・あのっ・・・」  
 「あっ違うの大丈夫よ。ごめんね声出して」  
 「ううん、謝らなくていいよ。・・あの、シータ、好きな時に声出していいからね?」  
 そういったパズーはいつもの優しいパズーだったが、このときの彼がいつになく『男』に  
見えてシータは頬を染めた。目の前に彼の胸板があるせいかもしれない。  
 「うん、ありがとうパズー」  
 パズーはシータにわからないように深呼吸した。そうしないと自分ばかり舞いあがってしまって  
シータに可哀想なことでもしてしまいそうなのである。パズーは気を取りなおしてシータの唇に  
キスし、首筋を舐めた。そして両手でついにシータの胸を触ってみた。  
 「あ・・パズー・・・」  
 
 シータの胸のあまりの柔らかさにパズーの手は感激して震えた。自分ときたらシータの  
胸を触っているのだ。それだけで感動してさっき取り戻しかけた落ち着きなんかどこかへ  
吹っ飛んでしまう。彼は思いきって少し強くシータの胸を掴んでみる。すると柔らかい肉に  
自分の指が食いこんで、押し潰される箇所とは別の箇所の肉が逃げていくように膨らむ。  
その最高の感触を噛み締めるようにパズーの手はそのまましばらく動かなかった。  
 パズーの舌に首筋を撫でられ、両の胸をパズーの手に掴まれたシータは甘い羞恥に全身を  
浸していた。大好きな男の子に胸を触られていると思うだけで彼女の意識は熱に溶けていく。  
今更、自分が性行為に関して驚く事など無いと思っていたシータは初めて味わう感覚に戸惑った。  
パズーに触られているだけで消えてしまいたいほど恥ずかしいと思うのにそれが不快ではない。  
パズーの手に触れられた部分が熱を持って、そのまま心まで焼かれてしまいそうな感覚が  
シータの体に降りかかっていた。胸に触れたパズーの手がゆっくりと揉んでくるとシータは  
さらに羞恥に追いたてられてキュッと目を瞑った。  
 パズーは荒い息をシータの首筋に吐き出した。自分の手の中でシータの胸が様々に形を変える。  
 (うわぁ・・・・シータ・・やわらかい・・・)  
 崩れてしまいそうなほど柔らかいシータの胸の感触がパズーの手の中いっぱいに広がった。  
その感触が掌から伝わってくるだけでパズーの頭はすっかり麻痺してしまった。ただでさえ  
女の肉を触った事がないうえにシータの胸である。パズーの体の延長線は既に脈動を始めていた。  
そのままシータの胸を痛くないように優しく揉む。自分の胸がこんなに柔らかいものだと  
いうことをシータはパズーに揉まれることによって知った。そのパズーの手が揉んでくるたびに  
胸の頂点が擦られる。シータの体にくすぐったいような痺れが流れてきた。  
 「はぁ・・・パズー・・・」  
 
 シータの胸を手で包んで揉んでいくうちに丸みの頂点が固くなってきたような気がする。  
これが噂に聞く「胸の頂点が硬くなる」という状態だろうか?パズーはそう思い、首筋を  
舐めるのをやめてシータの胸を見てみた。それほど尖ってはいないが前よりは硬くなって  
いるような気がする。パズーは思いきってシータの両胸の蕾を人差し指でそぅっと触ってみた。  
するとシータの口から可愛らしい声が漏れてきた。  
 「あっ・・」  
 「しっシータ・・嫌じゃない?」  
 「あ・・うん。大丈夫」  
 彼女の傷に敏感なパズーはいちいち了承を得ないと先へ進めないようだった。シータが  
嫌がっていないと確認するとパズーはそのまま指で胸の頂点の形状をさぐるように撫でた。  
くすぐったくて困ってしまうような妙な気分がシータを包んだ。初めて女性の胸を目の前に  
してパズーはその頂点を弄る欲求に抗えなかった。輪郭をなぞるように円を描き、頂点を押したり  
擦ってみたりする。するとだんだんとシータの感覚はくすぐったさよりももどかしさに変わって  
いき、肌は紅潮して、パズーの指の動きに合わせて体が動くようになる。  
 「ん・・・ん・・・パズー・・ぁ・・ん・・」  
 シータの胸の頂きはどんどん硬くなっていき、中心が盛り上がってきた。それをパズーは  
二本の指の腹で擦るように撫でた。シータの足がシーツを滑る。  
 「ん・・んっ・・パズー・・」  
 自分の指に弄られるシータの胸の桃色を見ていたパズーは、硬くなったシータの胸の  
蕾を指で少し強く挟んでみた。するとシータは顔を顰めて甘く呻いた。  
 「あっ・・パズー・・」  
 「シータ・・・」  
 今までよりも強い痺れがシータの体の芯を走っていった。  
 
 シータの反応を見ながらパズーは彼女の胸の実を摘んでいった。キュッキュッ、と  
胸の頂点を摘みあげられてシータは恥ずかしさともどかしさに声を零した。  
 「あ・・あ・・パズー・・あっ」  
 シータの出す可愛い声と、自分の手に摘まれるシータの胸の頂きを見ているうちにパズーは  
耐えきれなくなり、ついにシータの胸の突起を口に含んだ。  
 (えい!)  
 思いきって赤い実を口に含んでみるとシータの口から一際大きな声が漏れた。  
 「やんっ!」  
 その甘くて可愛い声にもう我慢できなくなったパズーは夢中でシータの胸の実を舐めた。  
硬くなってきたそれを口の中で舐めて吸う。  
 「あっ・・あっ・・パズー・・あんっ・・・ああん・・」  
 パズーに胸を舐められるたび股の間が疼いてくる。  
シータは真っ赤になって震えた。体がどんどん熱くなって痺れてくる。  
 (どうしちゃったのかしらわたし・・・こんなの初めて・・・)  
 今までこんな気分を味わった事はなかった。パズーの口が自分の乳房の突起を嬲る。  
もう一方の胸もパズーに揉まれシータの体に抗えない熱が発生してきた。  
その熱がだんだんと下腹部に集まってくる。シータの意識は次第に熱に朦朧としてきた。  
 『シータの胸を吸っている』そう思うだけでパズーの頭は恍惚に包まれた。もう夢中になって  
シータの胸の実を舐めて転がす。シータが甘い声を零すたびに気分が盛り上がって、  
パズーは喜んでシータの赤い果実を吸いこんだ。シータはどんどん快い空間にひきずりこまれていった。  
 「んっんん・・パズー・・ああ・・ああ〜ん、パズー・・」  
 
 シータの胸をたくさん舐めて、手で感触を愉しんだ後、パズーは体を離した。  
シータを見下ろすと、赤くなった頬と少し荒い呼吸、そして呼吸に合わせて上下する  
二つの胸が彼の前にあった。それを見ただけでどうにかなりそうになるのをパズーは堪えた。  
 ゆっくりと体を後ろにずらすとパズーはシータの腿に触れた。  
 「あっ・・」  
 それだけでシータは体が痺れるのを感じた。そんな彼女を見つめながらパズーは慎重に言った。  
 「しっシータ、足・・いいかな?・・」  
 「あ・・うっうん」  
 パズーに促されてシータはおずおずと両足を左右に広げていった。自分で足を広げることも  
パズーに見られてしまう事もとてつもなく恥ずかしかったが、彼を信じて勇気を振り絞って  
シータは足を動かした。そんな彼女に助けられてパズーはシータの白い太ももを割るように  
開いていった。二人とも自分の心臓が信じられないくらい早く脈打つのを感じていた。  
 こうして今まで隠されていたシータの秘境がパズーの前に明かされた。開かれた足の  
間に生い茂っていた花園がパズーの目の前に余すところなく晒される。それまで女性の茂み  
など見た事もなかったパズーは息を詰めてそれを見つめた。じっくりとその形状をよく  
確認する。自分の知っている知識と目の前の光景が合致してくるとパズーは生唾を飲みこんで  
改めて谷間を見つめた。  
 (シータの・・・・これがシータの・・)  
 何かのサイレンがけたたましく脳裏で鳴り響く。心臓がバクバクと自己主張するように脈打って  
息が荒くなってきた。パズーはシータの花園を見つめた。黒い茂みとそこに隠された肉の谷、  
谷底を流れる透明の川。パズーにとってそこは聖域のような場所だった。焦がれて止まないのに  
届かなくて、欲しくてたまらないのに欲しいと言えない。彼にとってそれは御神体そのもののような場所  
だった。それが今彼の目の前に惜しみなく晒されて彼の訪問を待っているのである。パズーの  
性別を表す肉は既に天を仰いで痛いくらいに屹立していた。  
 
 よく見るとシータは思ったよりも濡れているようだった。それを見ただけでも  
自分の硬くなった部分を早くシータに突き立てたい衝動がパズーを急かしたが  
それをどうにかこうにか堪えてパズーはシータの太ももを掴んだ。  
 (だめだよっ・・まだここはなんにもしてないし・・ここが大事だって本にも書いてあったし・・)  
 まだ読破はしていないものの、ドーラから貰った本をパズーはいくらか読み進めていた。  
こんなに早く願いが叶うとは思っていなかったのでそれほど急いでは読まなかったのだ。  
パズーは懸命に本の字面を思い出そうとした。しかし思い出してはどこかへ飛んでいってしまって  
ちっとも今の彼の助けにはなりそうになかった。  
 「パズー・・そんなに見ちゃ・・だめ・・」  
 消え入りそうな声でシータがそう言ったのを聞いてパズーは慌てた。  
 「あっごっごめんシータ!あのっ・・・」  
 パズーに見られているというだけで羞恥に焼かれそうなのに彼があまりに長い時間  
自分の秘密の場所を覗きこんでくるのでたまらなくなってシータは訴えた。もう泣き出しそう  
なほど恥ずかしくてシータは身をよじっていた。パズーはシータの谷間に顔を近づけた。  
彼の息が自分の場所にかかってくるとシータは緊張と期待に震えた。  
 「シータ・・嫌だったら本当に言ってね」  
 「うん」  
 シータの秘密の場所を至近で見つめるとパズーは緊張した。汗がじっとりと肌を濡らす。  
自分を落ちつかせようとしてできないままパズーはシータの谷間の肉をめくった。すると  
粘液が彼の指を濡らす。パズーのキスとぎこちない胸への愛撫、そして秘所をじっくりと  
見つめられたことでシータは既に透明な川を流していた。それを掻き分け、彼女の最も  
大事な秘蔵の場所を探してる。  
 (こっこれ・・かな?)  
 唾を呑み込み、意を決してパズーはシータの秘密の穴の入り口を舐めた。シータの体が大きく震えた。  
 「あんっ!」  
 
 パズーにそこを舐められた瞬間、シータの体内をもどかしい熱がかけぬけた。  
シータの高い声を聞いて彼女が不快でないと悟るとパズーはそこを丹念に舐めはじめた。  
するとシータの声はどんどん大きくなってくる。  
 「あっあっパズーっパズゥー・・ああんっ」  
 パズーに舐められるたび体に抗えない疼きが孵化してくる。その疼きが全身に広がって  
きて、シータは体をくねらせて喘いだ。シータのソコを舐めているというだけで頭がいっぱいに  
なったパズーはもう無心にそこを舐めた。絶え間なくパズーに舐められ、体内に次々と  
生まれてくる愉悦に体を蚕食されてシータは体をよじって呻く。  
 「あっああん・・パズー・・パズー・・はぁ・・あんっはぁぁんっ」  
 パズーが舐めていくとシータはどんどん蜜を零していった。それも一緒に舐めながらパズーは  
今度は指を入れてみようと思った。しかし紛れもないはずのその場所は見たかぎりでは  
何かが入りそうには見えない。  
 (だっ大丈夫かなぁ・・・)  
 少しずつ、おっかなびっくりしながら入れていくとシータの穴はパズーの指をちゃんと吸いこんでいった。  
 「はぁんっ」  
 彼の指を受け入れたシータは悩ましい声を吐き出した。  
 「シータ、大丈夫?痛くない?」  
 モノを呑みこんでしまう女性の体の不可思議を感じながらパズーはシータを気遣った。  
しかしシータは痛がるそぶりは全く見せず、上気した頬を見せて微笑んだ。  
 「うん、大丈夫よパズー。痛くない」  
 それを聞くと安心してパズーも微笑んだ。  
 (そっか、シータは処女じゃないんだもんな・・・)  
 そのときパズーの心にひょい、と何かが入りこんだ。熱湯の中に冷水がすべりこんだ  
ような鈍い侵入だった。彼は胃の中に未消化物が残っているような違和感を感じたがそれには  
とりあわず、指を動かし、舌で舐めてシータへの愛撫を再開した。中を指で擦られ、舌で敏感な  
肉を舐められてシータはさらに強い愉悦に揉まれていった。  
 「あっあんっパズーっパズゥー、ああんっはぁぁん、あんっ」  
 
 パズーの秘唇への愛撫が長い事続いた。シータの体はもはや愉悦で飽和状態になっていた。  
しかし初めて女性の体をいじるパズーの愛撫はどこか決め手に欠けていた。どこで女性を  
決定的に追いつめたらいいかのタイミングを初心者のパズーは図れなかったのだ。シータは  
絶頂を迎えるのに十分な愉悦を得ていながらも決定打となる愛撫を与えられずに  
破裂する直前の風船と同じ状態を長々と味わうことになってしまった。  
 「あ・・あ・・はぁんっ・・ああっ・・パズーっパズーっ・・はぁぁんっ」  
 シータの秘唇を指と舌で愛撫し続けるパズーは荒い息を繰り返した。だらだらと  
汗が肌を降りていく。全身は熱いのに緊張した頭だけキィン、と張り詰めて冷たくなり、  
それでいて激しい渦が脳内を掻き荒らして彼を極限まで追いつめていく。何かが  
ガンガンと五月蝿く鳴り響いて頭の中で反響した。混沌の渦に頭が放りこまれたパズーは  
もはやどれくらいの時間が経っているのか解らずにシータの秘唇を舐め続けていた。  
 (どうしよう・・・どうして・・・)  
 パズーの頭は何かに感染したかのように侵食されてみるみるうちに食い荒らされていく。  
それに抗おうとすればするほど急激に混乱の淵に落ちていき、呑みこまれる。彼は  
ただただシータの秘唇を舐め続けていった。  
 シータは止む事のないパズーの愛撫を長時間受けて戸惑っていた。彼の愛撫は心地良い  
のだがいつまでたっても終わらず、シータはどうしたらいいかわからなかった。  
 「あ・・あ・・パズー・・ああ・・はぁ・・はぁん・・」  
 (あぁ・・わたしどうしたら・・)  
 あまりのもどかしさに身をよじっていたシータは突然パズーの指が抜き取られ、彼の舌が  
離れたことに驚いた。ガクン、と体が崩れ落ちるような感覚を受け、シータの体は  
シーツに沈んだ。ついに終わらなかった体の熱を溜め込む事になったシータは荒い呼吸  
を繰り返しながらパズーを見た。俯いている彼の表情は彼女にはわからなかった。  
 「パズー?」  
 
 熱が充満する体をいくらか落ちつかせてシータは起き上がった。ベッドの上で  
パズーにズリ寄って彼の顔を覗きこむ。そして驚愕した。下を向いたパズーの顔には  
今にも泣き出しそうな表情がくっきりと刻まれていた。  
 「パズー?どうしたの?」  
 彼の心に障らないようにシータは優しく話しかけた。なぜ彼がこんな表情をしているのか?  
シータはパズーに向かって手を伸ばした。もしかしたら自分は何か彼を傷つけるような  
反応をしたのだろうか?もしそうだとしたら謝るつもりで彼に手を伸ばした。するとパズーは  
シータの手から逃れるように顔を背けた。初めてパズーに拒絶といえる反応をされたシータは  
愕然としてその場に凍り付いてしまった。  
 「パズー・・」  
 「ごめん」  
 顔を背けて俯いたままパズーは急に謝ってきた。声が震えていた。  
 「ごめんシータ・・ぼく・・・だめみたいだ・・・」  
 「・・え?」  
 そのとき初めてシータはパズーの握った握り拳が震えているのに気がついた。  
 「ごめんね!」  
 泣くような声でそう叫ぶとパズーは突然立ち上がって出ていこうとした。シータは  
咄嗟に思いきり手を伸ばして去ろうとするパズーの手を掴んだ。  
 「待ってパズー!!」  
 シータに握られたパズーの手がビクッと震えた。彼はシータの手を振り払ったりはしなかった。  
 「いかないで。パズー、お願い」  
 「・・・・・・・」  
 しばらくその場に留まったあと、パズーはゆっくりとベッドに腰掛けた。シータは彼に  
近づいた。  
 「パズー」  
 
 パズーは震えて何かに耐えているようだった。顔を覗きこむと彼は苦痛に歪んだ  
顔をシータの前に見せていた。身体ではなく心の苦痛がパズーの顔に現れていた。  
見ているだけで悲しくなるほど彼は何かに苦しんでいた。その何かに押し潰されたかのような  
声をパズーはようやく口から吐き出した。  
 「ごめん・・・ごめんねシータ・・ぼくシータが大好きなのに・・・ものすごく好きなのに・・  
ごめん・・ごめんね・・・ごめんね・・」  
 彼がどうしてここまで苦しんで、そして謝罪するのかわからなかったシータは彼の足の付け根を  
見てその理由がわかった気がした。シータはパズーの悲壮な横顔を見据えた。  
 「パズー、こっちを向いて。お願い」  
 パズーがシータの『お願い』を断れるわけはない。彼はゆっくりと体ごとシータのほうを向いた。  
パズーの黒い瞳に彼の心の悲痛が滲んでいる。それを見て、シータは手を伸ばした。  
そして伸びてきたシータの手が掴んだものを見てパズーは仰天してしまった。  
 「えっ!?しっシータ!?」  
 シータは身を乗り出して顔を降ろしていき、手に掴んだパズーの男性器の先端を舐めた。  
 「わっ!!」  
 シータの舌に自分の先端を舐められてパズーは跳ねあがるような衝撃を受けた。  
何が起こっているのかわからない。そのままの体勢でシータはパズーのソレを舐めはじめた。  
シータに舐められる部分から愉悦が這いあがってきてパズーはすっかり混乱してしまった。  
 「あっだっだめだよシータ!シータ待って!あっ」  
 誰かの舌で自分の性器を舐められた事などないパズーは思わず情けない声を出して喘いだ。  
しかしその舐めている人物が他でもないシータであると解ってくるとパズーは居てもたっても  
いられず無理矢理彼女を引き剥がした。  
 「シータッ!!」  
 
 パズーは一生懸命息を吐き出し、肩を上下させ、呆然としてシータを見つめた。  
シータはいつもと変わらぬ風情で座っている。彼は勢いよく立ち上がると今度はシータが  
制止する隙もないほどの勢いで部屋を出て一階に猛然と駆け下りていった。  
今度こそパズーに去られてしまったのかと思って一瞬愕然としたシータだが、すぐに彼は  
同じ勢いで戻ってきた。彼はコップに入れた水を持ってきてシータに差し出した。  
 「ごめん、汚かったよね?これで洗って」  
 焦っていながらもすまなそうにそれを渡すパズーをシータは見つめた。  
 「汚くなんかないわパズー」  
 そう言いながらも彼女はコップを受け取った。そうしなければパズーのほうが  
安心できない様子だったのだ。シータが水を口に含んで濯ぐのを見つめながら、パズーは  
ベッドに腰掛け、問いかけてみた。  
 「シータ・・ムスカにも・・こんなことしたの?」  
 瞬間的に驚いた表情を彼に向けたシータを見てパズーは我に帰った。  
 「ごっごめん!あのっ」  
 パズーは激しい後悔に焼かれた。ついに聞いてしまった。シータの傷に直接触るような  
ことを言ってしまった。そして今更それを聞く自分にパズーはどうしようもない情けなさを  
感じた。まるでそのことでシータを汚れているとか、穢れているとか、そんなマイナスの  
イメージを自分が持っているかのような言い方をしてしまったのだ。パズーは必死に  
弁解しようとした。そんなことは少しも思っていないと訴えなければならなかった。  
 「ぼく、シータがどんなふうに・・あそこで過ごしていても、全然かまわないんだ。  
シータが好きだから・・・だからぼく、シータがどんな目に遭ってても、全然気になんかしてないんだ。  
気にしてないんだけど・・・なんだか・・・急に・・・」  
 
 パズーが自分を不浄視していないのは彼の表情を見れば一目瞭然だった。そんなことよりも  
パズーの悲壮の原因が何であるか、その輪郭が明確に見えるほうがシータには重要だった。  
 「パズー・・もしかして・・ムスカと・・わたしのこと・・・気にしていたの?」  
 パズーの哀しい瞳がシータを見つめた。彼は目を瞑って叫んだ。  
 「ごめんね・・・・ごめんねシータ!」  
 泣いているかのように震えるパズーの肩。項垂れるパズーの頭。そして股の間にあるパズーの  
男性器。シータはそれらを見つめた。シータを愛撫しはじめたころは若さを主張するかのように  
硬さと熱を漲らせていたパズーのソレが今は力なく項垂れていた。  
 シータが痛がらなくて済む非処女であることにいくらかの安堵を覚えていたはずのパズーは  
シータが『処女ではない』と思ったときに冷たい感情の侵入を許してしまっていた。  
それはパズーの心の間隙を縫って入りこみ、彼の心の中に居座ってしまった。  
 『もう処女じゃない』『ムスカに先に入られている』『この肉もムスカが先に蹂躙している』  
 シータを愛撫できる至高の悦びでいっぱいだった頭が次第にそれらの事実のほうに傾斜していき、  
支配されていく。パズーの心の中で膨れ上がっていったその考えはたちまち彼の中を占領した。  
そしてそれは彼に様々な『事実』を打ち出す。  
 『ムスカはどんな愛撫をシータに施したのか』『シータはどんなふうにそれに反応したのか』  
『ムスカは自分よりよっぽど上手いんだろうか?』『ここも、これも、全部ムスカの指や舌が這いずったんだろうか?』  
       『シータはムスカの愛撫に感じてしまったんだろうか?』  
 それらの考えが次々に浮かんできてはパズーの脳内で渦を巻いた。この考えに脅迫されたように  
なってパズーの頭は目まぐるしく『事実』を追い求めた。  
 そうしているうちに自分の分身が力を失い始めていることに気づいてパズーは焦った。  
これ以上ないくらい幸福な状況にあるというのに何の不満があるのか?パズーは慌てて行為に  
意識を集中させようとした。  
 (だめだっ!こっちに集中しなくちゃっ!それにそんなこと・・今はどうだっていいじゃないか!)  
 
 しかし気を取りなおそうにも目の前のシータの性器は既に別の男の蹂躙を受けていると思うと  
さらに心は『事実』の考えのほうに引きずり込まれた。自分の愛撫する場所全てにムスカの  
手がついているのかと思うとやるせなさとむなしさがこみ上がってくる。それを振り払おうとして  
無心に舐めれば舐めるほどシータの性器が無機質に思えてきた。シータのそれは目の前にあるのに  
だんだんとそれが遠くに感じられるようになり、しまいには夢の中の光景のようにおぼろげに  
見えてくる。パズーは凄まじい焦燥に駆られた。最後に見たムスカの狂った高笑いが脳裏に  
蘇る。パズーは必死に全てを振り払おうとした。しかしムスカの高笑いは彼を追ってくる。  
様々な『事実』が目の前をぐるぐる回って彼の精神は極限まで追いつめられてしまった。  
シータへの愛しさがすっかりなりを潜めてしまい、代わって目を背けたい『事実』が彼の  
頭を乗っ取っていた。パズーは混乱し、焦り、火の車のようになって考えの渦に捕らわれていく。  
そしてその極限に追いつめられた精神に置いていかれた体は急激に冷めていった。  
彼が自分の屹立を取り戻そうとすればするほど体は心と切り離されて落ちていった。  
 パズーは萎えてしまった。  
 夢にまで見たシータの肢体を目の前にしながら、今まで問題にしなかったはずの  
彼女の過去に呑みこまれてしまった。  
 
 
 

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