『This is my daily life』  
 
 目が眩むような日差しの差し込む午後のカフェテラス、二月ももうすぐ終わる。一年で今一番寒い時期は過ぎたもののまだまだ寒い日は続き春の気配は姿を見せない。  
 テラスに差し込む西日は低く傾き、高級なカーテンといえどその光を遮るには力足りないらしい。あと一月半もすれば高校一年の課程も終了し、秋晴達は進級をすることになる。  
 それは同時にこの白麗陵で生活を始めてから一年が経つことになる。転入してきた秋晴は他の生徒よりも二月ほど短いが。  
 そうすれば一期生であり直接の先輩のいなかった従育科に後輩ができるし、自分達の学ぶべきこともより専門的な部分が増えたり、重要な事柄が増えるだろう。そう考えると気を引き締めなくてはいけない。  
 ただでさえ、ただでさえ自分の生活に多大なる影響を与えている大問題を抱えているのだから。  
「今日はいらっしゃらないのですわね」  
「個展が終わったばかりですからね。あと片付けだったりいろいろとお忙しいではないのでしょうか」  
 秋晴は従育科の日課である奉仕活動をしているだけだった。ここ数日諸事情により参加できていなかったこと、そして給仕の欠員が出たことが重なり急遽秋晴が担当となった。  
「そうかもしれませんわね。でもそれなら個展の準備の手伝いと称してずっと奉仕活動を休んでいたどこぞの庶民がここのいるのはどういうことでしょうね」  
「そうですね…準備の時に大失敗をして出入り禁止になったとか、あまりの顔の怖さに来るなと言われた、とかですかね」  
 日野秋晴の白麗陵内でのイメージは悪い。それは未だに変わっていない。転入初日からの大騒動、そしてそれ以外にも様々な問題を起こしてしまったし、巻き込まれた。  
そして何より茶髪、傷、耳に安全ピンと単語だけでもトゲトゲしさを感じる外見をしている。それがお嬢様だらけの白麗陵となれば仕方が無い。故にそんな秋晴の担当エリアのテーブルには知り合いしか寄りつかない。  
 それは年が明けたとて変わっていないのだが――変わったものもあった。  
「どうしたのかしら、顔が引きつってますわよ? 秋晴」  
「本当ですね。まるで蛇に睨まれた蛙のようですよ? 秋晴君」  
 秋晴に言葉をかける二人の表情は笑顔だ。傍から見れば午後のお茶を優雅に楽しんでいるようにしか見えない。ただそれは傍から見ればであって渦中にいる秋晴にはお茶を優雅に楽しんでいるようには見えない。  
 もちろんじゃあどう見えるかなんて口にした瞬間に怖ろしい結末が見えるのは確定しているので秋晴がとる行動は一つである。   
「本日のお茶は何をお持ちいたしましょうか?」  
 秋晴は笑顔でそう告げた――できる限り顔が引きつらないように。  
 
 
 目の前、自分の担当テーブルには二人の女子生徒がいた。  
 一対の金色ドリ……見事な縦ロールの髪型を持った碧眼の女性、セルニア=伊織=フレイムハート。  
 ブラックホール以上の腹く……才色兼備の優等生、彩京朋美。  
 共に秋晴のクラスメイトであり、仲が良いかは微妙な判断が必要だが少なくとも親しい間柄と言える関係にある二人だ。  
 その二人が仲良く座っている。正確には明らかな敵意を秋晴に向けて。  
 全く心当たりがないと言えば嘘になる。嘘になるがそれでも秋晴は自分がこの状況に置かれている根柢の原因が分からない。  
「それでどうして今日はここにいらっしゃるの?」  
 ギラリ、と効果音が出そうなくらい鋭い視線。元々眼光の鋭いセルニアだが今はいつもの数十倍キツい。深閑の凍てつく視線に慣れていなければ石になってしまっていたかもしれない。  
「………一人欠員が出ちまったんだよ。急な話だったから代わりもすぐにっていかなかったし、最近ずっと休んでたから俺が代わりにって立候補したんだ」  
「桜沢さんの個展のお手伝いはいいんですか?」  
 ザクリ、と突き刺さるような視線。朋美の表情は笑っているその眼は視線だけで人が殺せる武器のようで、深閑の氷の視線、セルニアの眼光を凌駕する怖ろしさだ。ペルセウスすら石にできそうなほどだ。  
「………今日は元々見学だけの予定だったからな。何日間かかかる準備はともかく一日で撤去しなきゃいけない今日は俺がいたって邪魔になるだけだ」  
「熱心なのですわね」  
「そうですね、まるでこれからも手伝うことがあるのが確定しているような口振りですね」  
「…………」  
 秋晴の担当テーブルに座った容姿端麗な二人はその姿の美しさを忘れさせるほどの怒気を帯びて秋晴を見ていた。もっとも朋美はその様を隠しており秋晴のような朋美を理解する人間しか分からないが。  
 とにかく秋晴は二人にずっと睨まれているのだ。それも今日だけではなく、最近ずっと。  
「……前も言ったと思うが…お前ら何が目的なんだよ」  
 重たい空気、近寄りがたい雰囲気で他の生徒は秋晴たち三人だけを無視――というより飛び火しないように関わらないように離れていた。  
 秋晴も関わりたくはない。しかし二人の標的は自分だし、何より担当テーブルから離れる訳にはいかなかった。  
「も、目的だなんてそんな……まるで私が貴方に興味があるみたいではないですの!」  
「私はありますよ? と言っても秋晴君と言うよりは最近ずっと一緒にいらっしゃる桜沢さんにですが」  
「わ、私もですわっ! 最近よく一緒にいらっしゃる桜沢さんに不埒な行為を働いてないのか、そもそも何故貴方のようなろくでもない庶民が桜沢さんと一緒にいるのかが納得いきませんの!」  
 焦ったように取り繕うセルニアと対照的に落ち着いたままの朋美。  
 そんな二人を交互に見て、空を仰ぐ。と言っても見えるのはカフェテラスの純白の天井であり、気が晴れる訳でも何かが解決する訳でももちろん無かった。  
「あー………結局そこに行きつくのか……」  
 
 秋晴は去年の終わりから上育科の先輩である桜沢みみなと付き合っている。互いに健全……では初めからなかった気がするが、真剣に、互いを想い合っている。  
 二人はそれを白麗陵という場所、互いの立場を考えてそれは秘密にしている。少なくとも秋晴は秘密にするべきだと思っている。  
 しかし実際は――怪しいなんてものじゃないんだよなぁ……と秋晴は溜息をついた。  
 秋晴とみみなが想いを伝えあう機会を作ったとも言えるみみなの個展、その作品の制作作業、従育科の鍛錬である奉仕活動、そのほとんど全てにおいて秋晴とみみなは一緒にいた。  
 先日の個展の準備開始期間まで秋晴の横には必ずみみながいて、みみなの横には秋晴がいた。秋晴が奉仕活動の日は秋晴の担当テーブルには必ずと言っていいほどみみながいたのだ。  
その上個展の準備期間中には秋晴はみみな同様公欠扱いで授業を休んでいた。これでは何かあると思わない方がおかしい。それは秋晴にも分かっていた。  
 当然周りは騒ぎたてる。そして中でも――今目の前にいるこの二人はしつこかった。普段なら適当な理由をつけることができるし、一緒にいるみみなの目の前では突っ込んだことも聞けないでいたのだが今日はそのストッパーは期待できない。  
「それで、結局どうなんですの?」」  
 好機、とでも言うべきかこの状況はセルニアと朋美には好条件だ。しかし、秋晴はなかなか口を割らないので痺れが切れてきたようだ。  
「それで、結局どうなんですか?」  
 元々気の短い猪突猛進なセルニアはともかく冷静沈着な朋美まで変わらない状況にイライラしているのだろうか、その言葉は酷く重たい。体中が重たい鎖でがんじがらめにされたようだ。  
「どうにも何も前から言ってるだろうが……大きい画材を持つのに多少でも力のある男がいい。 んで、男の従育科生徒は四人だろ? 消去法で俺になったんだよ」  
 思わず屈してしまいそうな空気の中、幾度となく口にしてきた言い訳をする。それは全てが嘘という訳ではない、というよりみみなが秋晴を手伝いに選んだ建前だった。  
「それは前にも聞きましたわ」  
「それだけであの桜沢さんが秋晴君を選んだというんですか?」  
「う………」  
 聞き飽きた言葉に二人のイライラは明らかにましたようだ。実際にそれは秋晴が選ばれたきっかけにはなってもみみなとほぼずっと一緒にいる理由にはならない。去年末から秋晴とみみなは絵の制作有無問わずに四六時中一緒にいたのだから。  
 そもそも一緒にいるを減らしていればよかったのだが、それをすると秋晴はともかく小さな先輩が酷く悲しそうな顔で「う、うん、分かったよ……」と全然分かってない涙目の顔で明らかに元気なく呟くのであった。  
現に一緒にいない一日は元気がなく、翌日の制作活動に支障が出た。そんな調子だ、既に二人がただの主人と従者であるなんて納得できる人間はいないだろう。  
 それでもなぁ、と秋晴は頭を悩ませた。  
「……そこら辺に関しては朋美、お前が一番よく知ってたろうが」  
「それは……」  
「何のことですの?」  
 朋美も知る秋晴とみみなの接点。秋晴が転入してきて最初の従育科試験。秋晴とみみなを接近させた最初の出来事で、それを仕組んだのは朋美である。  
「他にも一緒にピナの手伝いもしてるしな。 そもそも執事ってのはそういう手伝いもひっくるめて執事だと思ってるから俺にしてみればいい経験だし、やるからにはできる限り力になりたい。 だから個展の手伝いもしたってだけだ」  
 桜沢みみなの交友関係は狭い。元々生徒数の多くない白麗陵であるが、本人の知名度が高いせいと本人の性格が相まって友人が少ない。その少ない友人は秋晴を起点にしたピナだったりともかく秋晴との接点が多いのも事実だ。  
「………一応理屈は通ってますわね」  
「………ですね」  
 笑顔のままの朋美に対してセルニアは明らかに苦虫を噛み潰したような顔をしている。明らかに納得はしていない顔だ。  
「理屈も何も事実だっつーの」  
 嘘は言ってない。その先の本当を伝えていないだけだ。そんな状況に少しだけ負い目を感じつつとりあえずは切り抜けれたかな、と秋晴は溜息をついた。  
 
「で、実際はどうなのよ」  
 セルニアが鳳と用事があると退席してしばらく、無言で座っていた朋美が口を開いた。  
 周りの視線がある場所だからか笑顔だが、先程までの笑顔とは微妙に違い、その裏に本当の感情が見え隠れする。本性を知る秋晴にしか分からない笑顔――というよりは本性を知る秋晴に向けられた笑顔と言うべきか。その裏には先程まで以上の不機嫌が窺える。  
「……実際って何だよ」  
 彼女の怖さは知っている。というよりセルニアと言う外面を気にする要素が減った分、より一層のプレッシャーに押しつぶされそうになる。秋晴は負けるな俺、と平静を装った。  
 そんなうちの葛藤を知ってか知らずか朋美は小さく溜息をついた。イライラを通り越して呆れかえっているのかもしれない。  
「………強情ね」  
「強情も何も……むしろどう説明したら分かってくれるんだよ」  
 嘘をついていることに対して負い目がある。自分が隠すと決めたこと、自分が守ると決めたこととはいえ朋美をはじめとする友人たちに嘘をつくのは心が痛んだ。  
 秋晴が意識的に避けている為に同じ会話が繰り返されている、というのもあるが今年に入ってからずっとこんな会話、状態が続いていた。秋晴としては前みたいに過ごしたい。互いの関係が変わった訳ではないのだが、まるで自分だけ対岸にいるように距離を感じる。  
「ただ絵の手伝いをしてるだけ、か……」  
「ああ」  
 窓の外は赤く染まっていた。外を見ている朋美の顔は秋晴からでは見えない。  
「あれだけ四六時中一緒にいて、ね」  
「…………ああ」  
 その言葉は独り言のように、小さく呟かれた。  
 普段から感情の分かり難い朋美だが今日はいつも以上に分かり難い。彼女のことは知っているつもりだ。それは幼馴染がどうとかではないし、自分が知らない空白の数年は彼女を普通の女の子から社交界の令嬢に変化させた数年であるたから彼女の全てを知っている訳ではない。  
それでも彼女の本性、いや本質は自分が分かっているつもりだった。ただ今の朋美の背中を見て、それは思い上がりだったのかもしれない、と秋晴は感じていた。  
「秋晴」  
 ぼーっと考えていた秋晴を引き戻したのは凛とした朋美の声だった。  
「何だよ」  
 先程まで考えていたことが知られる訳でもないのに少しだけ恥ずかしくなり、取り繕って答える。  
「どうしたの? まあ、いいわ。もし桜沢さん……いや、他の人でもいいや。白麗陵の誰かと付き合うことになってもそれを周りには言わないわよね?」  
「結局そう言う質問かよ……」  
 自分が原因とは言えウンザリするくらいの会話のループ。何度目だろうか、秋晴は溜息をついた。  
 もう大人しく隠すのを止めた方がいい気がするくらいにしつこい。どうしてこんなにも諦めが悪いのだろうか。  
 とにかくどうにかこの終わりないやり取りを終わらせるために――  
 
「答えれないの?」  
 
 秋晴はずっと逸らしていた視線を朋美に向け、正面からその顔を見た。外からの光は一層傾き朋美の顔ははっきりと見えない。朋美の瞳だけが暗闇の黒猫のように光っている。    
「それとも答えたくないの?」  
 一言、口にすればいいだけだ。何でもいい。とにかく何かを言えばいい。そう思いながらも秋晴は固まっていた。蛇に睨まれた蛙というよりは、上手く表現できないが恐怖では無い。目が離せない、逸らすことを体が拒否していた。  
 
「秋晴がもし白麗陵の誰かと付き合うことになったらきっと誰にも言わないと私は思ってる」  
 その言葉は先程までとなんら変わらない口調で  
「共学になって一年目、従育科ができて一年目、そんなことになったらああやっぱりって言われるだけ」  
 その台詞はいつも通りの彼女ので言葉で。  
「それに秋晴自身の評判は決して良くないから、だから相手の評判を気にして付き合ってることを隠す」  
 それでもなぜか秋晴の脳を直接揺らすような台詞だった。  
 秋晴から朋美の顔は見えない。そして普段通りの彼女の口調からは怒りも悲しみも喜びも何も感じない。事実を淡々と報告している新聞記事の朗読のようだった。  
「……だろうな」  
 短い沈黙の後にどうにか肯定の言葉を口にする。彼女に圧倒されることなんて日常茶飯事である。それどころか他の誰かに押し切られることは多い、恥ずかしい話だが。しかしそれは相手の感情に呑まれることがほとんどだった。  
 喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、勢いに押し切られたり冷たい空気に黙ってしまったり。でも今の状況はそれのどれでもない。今の朋美の感情が秋晴は分からなかった。  
「相手を気遣って……自分を殺して相手を立てて…………それは親切というか……なんだろ、責任感…なのかもしれないわね」  
 朋美はそのまま一方的に固まった秋晴へと言葉を投げかける。少しずつ言葉を選びながら。  
 それは秋晴に対しての言葉であると同時に自らに確認しているような話し方だった。  
「ねぇ、それは私達に対してもするの? セルニアさんや大地君、四季鏡さんや……ううん、違う」  
   
「私に対しても同じなの?」  
 
 
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  
 
「どうしたの?」  
「あーいや、大丈夫だ。 ちょっと考え事してて」  
「……ならいいけど」  
「…………にしてもすごいな、ここ」  
「うん、まさかみみなもこんなにすごい場所を貸して貰えると思ってなかったの」  
 秋晴とみみながいるのは白麗陵内の小さな小屋だった。小屋と言ってもログハウスのようなものではなく詰め所、と言った方がいいかもしれない。  
 寮から歩いて十分ほどの場所にある小さな家。  
 中には多くの画材や絵、様々な道具が運び込まれておりその中心にある大きな四角いクッション(イスかもしれない)に二人は座っていた。  
 
「鍵は深閑センセイが預かっててみみなしか借りちゃダメだって。 あと、大きなものを入れたい場合は必ず申請することだって」  
 ここはみみなのために用意されたアトリエだった。一生徒のためにそこまでするのか、とも秋晴は考えたが白麗陵ならやりかねない。それに今回の個展で桜沢みみな個人の名声だけでなく白麗陵の評判も上がったようで特別扱い、ということなのだろう。  
ある意味アイシェも特別扱いだし、そこまで特例でもないのかもしれない。  
「で、ベッドと冷蔵庫…台所に浴室まであるのはなんでだ?」  
 今いる部屋に加え、キッチンにバスルーム、寝室まである。本来の寮から十分ほどしか離れていないのだからキッチンはまだしもバスルームや寝室はいらないだろう。  
「元々警備さんのお部屋だったらしいの。 といっても数年前から使ってなかったらしいけど」  
「あー……」  
 警備の部屋、おそらく白麗陵内の守衛室だったのだろう。今でこそ防犯カメラや各種センサーがあるが由緒正しき白麗陵とはいえ昔からそんなものが完備されていた訳ではなかったのだろう。取り壊してなかった小屋を綺麗にしてそのまま使った、という事なんだろう。  
深閑に直接聞いた訳ではないので全て推測だが。  
「家具とかは泊まったり夜の時間も活動できるようにって用意してくれたの。 泊まる場合は前もって鍵を返せないのを言わなきゃいけないのとお休みの前の日しかダメなんだけど」  
「はー……」  
 みみなが信用されていると言うのもあるんだろう、ほとんどその扱いを一任されているようだ。基本的には好きに使っていいらしい。そしてその管理をみみながやると思われていないだろうことも裏に見え隠れする。というか俺がやるって見抜かれてるんだろうな。  
先週深閑に呼びだされ、復習と称した炊事洗濯掃除メインのマニュアルを読まされたことを思い出す。  
「なんつーか……至れり尽くせりだな」  
「うん」  
 みみなは秘密基地ができた子供のように嬉しそうな返事をする。対して秋晴はその肩に乗せられた見えないプレッシャーを感じ、少し気が重くなったり、みみなはともかく自分のためにここまでやってもらえたことに引け目を感じていた。  
「んでさ、今日はてっきり掃除の手伝いとか持ってくる画材でもあると思ったんだけど……俺は何すればいいんだ?」  
 秋晴が来た時点で大量の画材は既に部屋にあり一つ一つ整理されていた。荷物が入っていると言うことは当然掃除もほとんど終わっている。キッチンや寝室も新品のものが綺麗に用意されていた。  
 秋晴がすることと言えば今後のために家具や配置を確認することぐらいだがそれもすぐに終わってしまっていた。  
 が、待っていても返事はなかった。代わりに秋晴の体が小さな手に包まれる。座ったままの格好でみみなに後ろから抱きしめられたのだ。  
 
 
 

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