四月も中頃を過ぎた、とある日の朝。
テーブルには出来立ての朝食が二人分並び、食べられる時をまだかとばかりに待っている。
ただ、この朝食を作った張本人とその妻は、現在目覚ましがてらのシャワー中であり、これらはまだ暫くの間テーブルを占拠したままになりそうだった。
一方、こちらは風呂場。
湯気で視界を隠されるが、朝だと言うのに夫婦が風呂に入っていた。
毎週の日曜日の恒例である朝風呂だが、これは妻の寝起きがあまり良くないことと、昨夜の情事で白濁にまみれた体を清める意味を持っていた。
「目は覚めたか、セルニア?」
「ひゃんっ!?も、もうすっきりはっきりしてますわよっ!」
秋晴――現在は秋晴=フレイムハートだ――に胸の先端を摘まれたセルニアが、甘い声を出す。
秋晴の耳のピンは全てなくなり、また険しいことが多かった表情もかなり丸くなっていた。
「もう、夕べに7回もしたでしょう?朝ぐらいそういうのを抜きに、甘えさせて欲しいですわ?」
「甘えさせて、ねぇ」
「・・・やっぱり秋晴は意地悪ですわ」
デレデレと甘えた顔で、しかしセルニアは頬を膨らませる。
結婚するまえは秋晴の女関係で荒れたりもしたが、結婚してからはセルニアも甘えるようになった。
そして、秋晴が他の女性――とは言ってもセルニアの知己に限るが――と性交渉することも認めているし、自分が一番でさえあれば他に誰が秋晴の愛人になろうと認める旨のことも公言している。
セルニアは、秋晴を自分だけのものにするという選択を拒んだのだ。
最も、秋晴はセルニア以外とそういうことをする気はないのだが。
「秋晴は、本当に私で良かったんですの?」
「・・それ、毎週言ってるぞ?」
「だって、他の女性のほうが私より素敵だったり、秋晴のことを大切に想っていたりしたら・・・・」
「でも、俺が一番大切に想ってるのはセルニアだって。ずっと言ってるけどな」
ぬるくなった湯船の中、秋晴はセルニアを後ろから抱きしめる。
ふたつの果実が、湯の波紋にたゆんだ。
「俺がセルニアを一番に考えてて、セルニアが俺を一番に考えてくれりゃ、他のやつの考えなんて関係ねぇだろ?」
「えぇ・・・そうですわね」
毎週繰り返す問答。
毎週同じ答えを秋晴が出して、セルニアはそれで心を静める。
秋晴は自分を過小評価しているが、実際はそれ以上に魅力的だと知っているから。
「秋晴、今日は1日、ずぅっと家で過ごしますわよ?」
「まぁ、俺は構わねぇけどさ」
「今日はたっぷりと愛し合いますわよ、お父様にも早く孫を見せて欲しいって急かされてますもの」
今は、秋晴の優しさに触れながら、たっぷりと愛されたい。
身も心も捧げたが、それでも足りない。
自分が二度と不安にならないように、自分が秋晴だけのものだと刻んでほしい。
自分を抱きしめる秋晴の手が、豊満な胸の先端で屹立するものに触れたことを、セルニアは咎めない。
今からきっと愛されるのだ、この風呂場の中で。
「じゃあ、まずは最初の一回目だな」
「えぇ、たっぷりと私に注いで、私をとろけさせてくださいまし♪」
セルニアの喜色が混じった艶やかな声が引き金となり、二人の長い長い1日が始まった。
テーブルの上に並んだ秋晴の料理がまだまだ食べてもらえそうにないのは、風呂場に響く肉のぶつかる音とセルニアの嬌声が示していた。