「最後です。秋晴さんに謝罪のご奉仕を」  
「ぁ……はいぃ……。んむっ」  
「うぁっ!?」  
 
 冷徹な深閑の命令に、楓は熱に浮かされたような声を返して言われたとおりに舌を這わせた。  
 あるいは、命令の内容すら理解せずただ目の前のオスに惹かれただけだったのかもしれない。  
 
 いずれにせよ、実年齢に見合わぬ身体と精神年齢を持つ妙齢の女性が、さきほどまで別の女性と交わっていた自分自身を貪欲に舐め清めているという光景に、秋晴はますますそそり立った。  
 
「んくっ、ちゅ、じゅるる……っ。……っぷぁ、ふーっ、んむ、ぴちゃ、ちゅうぅ」  
 
 深閑によって解かれた拘束は猿轡のみ。  
 いまだ両手もバイブを仕込まれた下半身も役に立たない楓は、秋晴への奉仕といっても口を使う以外のことはできない。  
 楓自身、奉仕を続けるにつれて熱中してきたのか、舌使いは激しくなる一方ではあったが、同時に身体を責め立てる道具の刺激のせいで思い通りには動けないらしい。  
 
 そのため、舐め上げるたびにゆらゆらと揺れるペニスを、懸命に伸ばした舌で必死に追いかけざるを得なかった。  
 非常識なほどの縛りを受けた女にかしずかれているという、この状況。  
 そのことに少なからず興奮を感じていた秋晴であったが、しかし深閑はそれを良しとしなかった。  
 
「……ふぅ、理事長代理、真面目にする気があるのですか?」  
 
 夢中で奉仕に没頭していた楓がビクリと震えて止まる。  
 秋晴も、ついさっきまで見なかった深閑が何をしていたのかと目をやれば、いまだ力なく投げ出された楓の足の間に膝を突き、弛緩した背の上に身体を覆いかぶせるようにしているのに気が付いた。  
 
「あ……ご、ごめんなさい。も、もっとするから、がんばるから……っ」  
「それはもちろんです。ですが、聞き分けの悪い理事長代理にはもっと必死になっていただかなければ」  
「……え、はぁぁぁぁぁぁっ!?」  
 
 秋晴から口を離し、怯え一色に彩られた瞳で深閑を見上げる楓。  
 しかし深閑はそんな様子を一切斟酌せず、楓の双穴に突き刺さったバイブを引き抜いた。  
 
「あ……ああ、ふぁっ……」  
 
 自分の中を満たしていた異物を一気に引き抜かれ、その刺激に意識を失う寸前のところまで引き上げられた楓。  
 力の限り背を反らし、その口の端から涎が零れ落ちるのを止めることもできない。  
 
 ぴくぴくと震える楓。  
 だが、その背後でバイブを抜き出した深閑は、なにやらまだごそごそと動いている。  
 
 楓は気付く様子がないが、秋晴には見えた。  
 
 深閑の腰の横に見える細く黒い紐のようなものと、その腰を楓の尻へと近づけていくのが。  
 
「……深閑ッ、何を……!」  
「ふぇ、深閑……ちゃ……! あはぁあああああぁぁぁぁぁっ!?」  
 
 二人の声に耳も貸さず、深閑の腰が楓へと打ちつけられると同時に、楓はそれまで以上に両目と口を開き、その喉の奥から搾り出すような声があふれた。  
 
「安心してください、秋晴さん。ただ、お仕置きの続きをしただけですから」  
「い、いや安心しろって……」  
「ああっ、や、いやぁっ! だめ、それは無理っ、許して、助けてぇ!」  
 
 平静な声で答える深閑と、泣き叫びながら必死に許しを請う楓。  
 どこまでもかみ合わない二人の様子に、秋晴はもはやどうして良いやら途方にくれた。  
 
 深閑の腰に見えていた黒い紐のようなものは、これも楓の部屋から発掘したと思しきペニスバンドである。  
 以前楓が秋晴との行為の際に嬉々として持ち出してきたが、それだけは許すまじと封印させたものであるが、それを探し当てたらしい。  
 
 なんにせよ、初使用の相手が自分自身というのは皮肉であろう。  
 しかも、ペニスバンドに装着されたディルドが貫いているのはよりにもよって菊穴。  
 それまでよりもずっと太い剛棒に貫かれ、さらには深閑の容赦ないピストン運動も加わって楓は息も絶え絶えの様子であった。  
 
「ぁがっ、あ、ああふ、おぅっ、くふぁあっ!?」  
「どうしました、理事長代理。早く秋晴さんにご奉仕を」  
 
 もはや喘ぎ声というよりも肺から空気が押し出されているだけのような有様の楓だが、深閑はそんな様子も省みず、楓の頭を掴んで無理矢理その口の中に秋晴のペニスをねじ込んだ。  
 
「ごぼっ、んぐ、うむ、ちゅぶっ、んっ! げほっ……んぶうぅぅぅぅ!」  
 
 そこが限界だったのだろう。  
 秋晴のペニスが喉の奥に突き刺さった瞬間、楓の全身がそれまで以上に痙攣し、ぐったりと力が抜けて崩れ落ちた。  
 
 首が落ちるのに合わせてだらりと弛緩した口の中からペニスがこぼれ出て、楓の顔は秋晴の股間へと埋められる。  
 
 身体を前後から貫かれる快感で絶頂に達した楓は、しばらく声もなくわずかな痙攣を続けていた。  
 
 だが、それを許す深閑ではなかった。  
 
「……ふぅ、理事長代理。失望しました」  
「うぇあ……けほ、こほっ……。み……深閑、ちゃん……?」  
 
 深閑ほどの者でなくとも、これだけの責めを味合わせられれば楓がどうなるかなど始めからわかっていただろう。  
 だからだろうか、秋晴にはどことなく芝居がかったように聞こえる言葉をこぼした深閑の表情は、常の無表情からわずかに嗜虐の悦に染まっているように見えた。  
 
「自分ひとりでイってしまってどうするのです。秋晴さんはまだ満足していませんよ?」  
「ぁ……う……、ご、ごめんな……さい……、ま、またします……から……」  
 
 そういって、楓は必死に身体を起こして秋晴への奉仕を再開しようとする。  
 しかし、絶頂直後の余韻も消え去らぬうちに、いまだ拘束された身体でできることなどほとんどありはしない。  
 じりじりと頭を持ち上げようとするのが精一杯で、しかもそれすら結局はかなわない。  
 
「いえ、もうその必要はありません」  
「……え? かはっ!?」  
 
 深閑は楓の脇から手を差し込んで覆いかぶさり、そのまま自分ごと起き上がり、楓の身体を引き起こした。  
 座位の体勢になった楓の肛門にはディルドがより一層深く突き刺さり、絶頂間もない身体に再びぴくりと痙攣が走る。  
 
 
 楓の身体が、秋晴の眼前に晒される。  
 なだらかな胸の頂は硬く尖りきり、すぐそばに貼り付けられ、未だ止まらず震え続けるローターとともにぶるぶると振動し、こぶりな胸までも震えているように見える。  
 怠惰な生活の割りに引き締まった腹部には幾筋も汗の雫が垂れ落ちて、ひっそりと小さな臍の穴に収まっていくものもあった。  
 
 下半身はもっとひどい。  
 薄い茂みの奥にある楓の秘所はとめどなくあふれる愛液によってどろどろに蕩けきっており、滴る蜜が膝まで至っている。  
 そして、その奥に見えるのは菊穴をえぐる黒々とした極太のディルド。  
 
 これ以上ないほどに淫らで危険な香りを放つ肉体が、目の前にあった。  
 
 
 半ば呆然とその様を見つめていた秋晴に、深閑からの声がかかる。  
 
「さあ、秋晴さん」  
「うえっ!?」  
 
 渦中にいたはずなのに、いつのまにやら蚊帳の外に置かれていたような気分の秋晴は、突如の呼びかけに素っ頓狂な声を上げる。  
 意識を戻してみてみれば、深閑は喉を反らして荒い呼吸を繰り返す楓の顔の横で、淫蕩な笑みをこちらに向けてきている。  
 
 かろうじて膝がベッドについているだけで、安定しない楓の身体を支えるためだろう。  
 腹の脇から楓の前身に向かって這わされた深閑の手が、そのまま楓の秘所へと伸びて、楓の花びらを広げる。  
 
くちゅり  
 
 そんな音がして、愛液の塊が再びシーツの上へと落ちていった。  
 
 ごくり、と。  
 秋晴は知らず自分の喉が鳴る音を聞いた。  
 目は楓の身体に釘付けになって離せない。  
 先ほどまで楓の必死の、それでいてどうしてもつたない奉仕を受けていたペニスはこれ以上ないほどにそり上がっている。  
 
「ふふっ、秋晴さん。理事長代理はもう自分ではご奉仕できないようですから、秋晴さんが理事長代理の身体を、『使って』あげてください」  
「……ああ」  
「え、ちょっ、秋晴くん……? 待って、やめ……やめてええええええええ!」  
 
ずっ、ずぶっ、ぐぷっ、ずぷっ……  
 
ぐぼっ、ぐっ、ぬぼっ、ずるるるる……  
 
「あ、……は、ふぁ……ぁぁ……」  
 
 白麗稜の敷地内の一室。  
 代々理事長とその縁者の住居とされてきた屋敷の中、当代の理事長代理が寝起きする、主の安息を何より考えて調度の一つ一つまで揃えられた部屋の中、その静穏を打ち壊すようなくぐもった水音と、肺の奥から搾り出されるような荒い呼吸の音が響いていた。  
 
 その音の源は、部屋の中央に据えられた巨大な寝台の上。  
 丁寧に敷き詰められていたシーツは汗やそれ以外の体液に塗れ、しわくちゃになってかろうじて寝台の上に載っているばかり。  
 
 窓から入る、沈みかけの陽光でうっすらと朱色に染まった部屋の中、そのベッドの上に、一つの影がある。  
 空調機器が静かに冷気を吐き出し続けているが、それでも部屋の中央で生まれる熱量を打ち消すことは出来ず、部屋にはうっすらとした熱気と、そしてのぼせるほどの淫臭が満ちていた。  
 
 そこにいるのは、秋晴と深閑と、そしてその二人に身体の前後から貫かれている楓である。  
 
 楓はいま、極上の弾力を誇るマットレスの上に腰を下ろし、向かい合って上体を起こした秋晴と深閑の体の間に挟まれている。  
 三人共に全裸。  
 一糸たりとも身にまとわず、楓は先ほどまでの拘束具も全て取り除かれ、あえて挙げるとするならば三人の体から吹き出る汗以外には何一つ身につけているものがない。  
 
 とめどなく愛液をあふれさせる膣には秋晴の剛直が突き刺さり、力強く打ち付けられる腰に抗うそぶりも見せず貫かれている。  
 肛門は深閑のペニスバンドに攻め立てられ、ディルドの振動と共に送り込まれるゆっくりと、それでいて根元深くまで突き上げるストロークを否応なく受け入れる。  
 
 だらりと弛緩した楓の体に自由に動かせる場所はもはやなく、ただ秋晴と深閑の抽挿に体をゆすられることしかできていない。  
 身体につられてかくかくと揺れる頭は天井を向き、だらりと開かれた口の端からは唾液が零れ落ちようとするが、そのたびに秋晴と深閑がすすり上げ、自分の唾液ではなく二人の唾液によって楓の頬はてらてらと輝き、室内灯の明かりを弾いていた。  
 
 ただ空ろに開かれただけの瞳には、もはや人間らしい知性の輝きを見ることは難しい。  
 その瞳の奥に写るのは、何をしても無駄という諦観と、絶え間なく与えられる快楽の炎のみ。  
 
 身体にはもはや一切の力が入らないにも関わらず、秋晴を受け入れた膣はきゅうきゅうと吸い付くように締め付け、たくましい雄に媚びている。  
 舌を絡めて口付けをされれば、懸命に震える舌を伸ばして応え、唾液が流し込まれれば躊躇なく喉を鳴らして飲み込んでいく。  
 小ぶりな乳房は前後から秋晴と深閑の手によって芯まで徹底的に揉み解され、二人の指の痕で赤く染まって湯気すら見えそうなほどに火照っている。  
 
 指一本もまともに動かせないはずなのに、それでも快感には貪欲に反応する淫らな身体。  
 秋晴は、目の前で揺れ動く楓のそんな有様を、深閑と共にたっぷりと堪能していた。  
 
「くぅっ……、も、もうそろそろ……」  
「はい、秋晴さんっ。どうぞ、思う存分出してあげてください。理事長代理も、かまいませんね?」  
「あ……っ、ら……めぇ……。い、いま……なか……出されたらぁ……っ!」  
 
 そうしてようやく秋晴にも限界が訪れる。  
 ただでさえ気が狂いそうなほどの快感に翻弄されている楓は、わずかに残っていた理性で拒絶の意思を示す。  
 もしも今秋晴に射精されれば、自分がどうなってしまうか予想も付かない。  
 
 しかし、そんな思考とは裏腹に、楓の身体は秋晴の絶頂が近づいたことを感じてか、より一層ざわざわと膣内を蠢かせ、その動きもあって秋晴の分身がびくびくと震えだした。  
 
「うぅっ……、もうダメだ……出るっ!」  
 
 秋晴はラストスパートとばかりに残った力の全てで楓を突き上げる。  
 そしてそれと同時、楓の向こう側で同じく楓を攻め立てている深閑の胸を掴み、乳首を強くひねり上げた。  
 
「はぁっ……はぁ!? あ、秋晴さん、わ、私はいいですからっ! んあぁあああああああ!」  
「あ、や……やぁぁぁああああああああ!!?」  
 
びゅくっ、どぷっ、びゅるるるるるる!  
 
「……ぁ、……ひっ……ぅぁ……」  
「ふふ、すごい表情ですね。ここまでイった人を見るのは初めてです」  
「……ああ、そうだな」  
「秋晴さん。……まだ、し足りませんか?」  
「うっ」  
「なら、遠慮することはありませんよ」  
「いや、でも楓はそろそろ……」  
「あら、私にはもうしてくれないんですか?」  
「えっ……」  
 
 その後、秋晴は意識を取り戻した楓と深閑の二人を相手に、三人そろって気絶するまで交わったという。  
 
 その甲斐あってか、しばらくは楓の無茶・暴走の類がなりを潜めたというが、この一件以来楓は極度のMプレイに目覚め、深閑もSとMを巧みに使い分けるようになったため、秋晴にとっての収支は±0だったとかなんとか。  
 いずれにせよ、騒動の種がまた増えたことだけは確かであった。  
 

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