白麗稜の夜は静かである。  
 広大な敷地は車両の騒音と縁がなく、そこに住まう淑女達もまた、深夜に騒ぎ立てることを良しとはしない。  
 そして、将来そんな彼女らに仕えることを目指している従育科の生徒に至っては、言わずもがな。  
 わざわざ進んで騒ぎ立てようと考えるはずもなく、そもそも深閑による壮絶な従育科授業に体力を奪われ、すぐにも床に就くのが常である。  
 
 
 その日、大地薫は静かな自室で一人布団に包まれていた。  
 自室に備え付けられた風呂から上がり、髪を乾かしてから間をおかず布団へと潜り込んだ薫の頬は、まだうっすらと赤く火照っている。  
 窓の外で猛威を振るう冬の寒さとも無縁の暖かさが、じわじわと布団に移っていくのがわかる。  
 今は秋晴が風呂に入っており、ちょうどシャワーで体を流す音が聞こえてきた。  
 きっと、もうすぐ出てくるだろう。  
 自然と薫の胸が高鳴った。  
 
 秋晴と薫は、既に男女の関係となっている。  
 家庭の事情で男と偽って従育科に入ったこと。それをこれからも秘密にし続けなければならないこと。そして、秋晴への想い。  
 そういった諸々を、紆余曲折の末に秋晴へと伝えることとなり、秋晴がそれを受け入れた夜に結ばれて以来のことである。  
 
 ちなみに、秋晴と一夜を過ごした翌日、朋美とセルニアの二人に拉致られた。  
 連れて行かれたのは「秋晴共有乙女協定」なる条約に加盟している白麗稜の女性達の会合の場で、そこで秋晴を取り巻く女性関係の事情を知った。  
 自分を含めてそこにいた全員が秋晴に好意を抱いていることを知り、それでもなお想いに代わりがないということも再確認したのは悪夢のような記憶である。  
 だが、互いの秘密の遵守が誓われているあの場で気兼ねなく自分の境遇を打ち明けられたのは良い思い出であると言っていいかもしれない。  
 ……その会議の席で、期待に満ち満ちた視線を向けてきた理事長と王女の表情が、自分の性別を明かした瞬間落胆に染まった理由は今もって不明である。  
 「リアルやおいが」だの「実際の攻めと受けが」だのうわごとのようにぶつぶつ呟いていたが、すぐ深閑によって口止めされたために何を言おうとしていたのかは定かでない。  
 
 ともあれ、そんな関係の変化に伴って、薫と秋晴の二人の間にはいくつかの取り決めが出来た。  
 例えば、その一つがまさに今の薫の状況である。  
 白麗稜の寮は、潤沢な資金力によって従育科のものにも全室冷暖房が完備されている。しかし薫は空調機器が体質に合わないらしく、薫と秋晴の部屋ではその使用が可能な限り押さえられている。  
 そのため必然的に冬の夜の寝具は冷え切り、起きているときよりも床に就いた瞬間のほうが目が冴えてしまうことさえあった。  
 そこで、二人は工夫を凝らす。その方法と言うのが、一つの布団で眠ることである。  
 先に風呂に入ったものが布団に入って暖めておき、後から風呂を出たものと一緒に眠る。  
 布団は十分に暖められているし、あとから入ってきた方の体にくっついていれば寒くもならない。一石二鳥の妙案と言える。  
 
 このことを提案したのは、薫。それまでの彼女からは考えられない、ある意味大胆な発言だったが秋晴は承諾し、それからは二人で抱き合って眠ることが日課になっている。  
 
 そして今日、薫は入浴に際してもう一つあることをしていた。  
 落ち着きなく寝返りを打つ薫の、寮に備え付けられたベッドには似合わない襦袢の胸元から、ほのかに芳香が立ち上る。  
 日々の風呂の支度は薫の役目。そして、今日薫は湯船にアロマオイルを垂らしておいた。  
 きれいな色と細工の瓶に入った上育科の生徒からの貰い物で、なかなか良い香りがするので気に入っている。  
 だが、これを使う意味はそれだけではない。  
 
 湯にアロマオイルを垂らした日は、秋晴を求めているということ。  
 
 いつからだったか、気づけば二人の間でそのことが暗黙の了解となっている。  
 だから薫は今日の入浴の際にアロマオイルを浴槽の湯の中に混ぜ、丹念に体を磨き上げた。その風呂に今秋晴も入っているはずである。  
 そう思うと、ますます薫の胸は高鳴った。  
 
「ふう、いい風呂だった」  
 
 秋晴が風呂から上がってきた。薫が用意しておいた、薫のものと揃いの襦袢を着込み、タオルで髪を拭いているのを布団の中からそっと見上げる。  
 着る物の仕度をするなど、まるで夫婦のようで気恥ずかしいが、そうやって甲斐甲斐しく秋晴の世話を焼けるルームメイトの特権もまた嬉しく思い、かみ締める。  
 湯上りでまだ暑いのだろう。冬だというのにはだけられた胸元が視界に飛び込んできて、薫はたまらず布団に顔を埋めた。  
 急に熱くなった頬を手で押さえ、今見た光景を頭から追い出そうと布団の中で頭を振り回す。  
 
「……大地」  
「ひあっ! な、なんだ!?」  
 
 急に近くで秋晴の声が響き、慌てて布団から顔を出す。これほどの接近を許すとは、不覚。  
 本家にいたころの習慣でそう思う心がなきにしもあらずだが、相手が秋晴であれば腹も立たないというのは、最近知ったことである。  
 ちなみに、轟ならば100%気付く自信がある。ついでに迎撃する。確実に。  
 
「そろそろ俺も布団に入りたいんだが、ちょっと開けてくれないか?」  
「あ、ああ。すまない。は……入ってくれ」  
 
 これからのことを思って、わずかに声が裏返る。しかし秋晴はそんな薫の様子を気にした風もなく部屋の電灯のスイッチを消し、薫がめくった隙間から布団へと潜り込んでくる。  
 男らしく広い肩幅に、従育科の授業で身についたしなやかな筋肉の感触。どれだけ性別を偽ってもなりきれない「男」を感じて、慣れたはずなのにドキドキと心臓が強く鳴った。  
 
 今夜も、自分はこの腕で……。  
 
 今までの秋晴との行為を内心で反芻し、ゆっくりと自分を抱きしめてくる秋晴の腕の中にその身を潜り込ませる。  
 
「大地」  
「……ん」  
 
 秋晴の襦袢をそっとつかみ、ゆっくりとうなずく。秋晴の体から漂ってくる石鹸とアロマオイルと秋晴自身の香りに、思考がうっとりととろけていくのを感じた。  
 
「じゃ、おやすみ」  
「ああ、おやす……はっ!?」  
 
 秋晴の言葉に普通に返そうとして、慌てて顔を上げる。甘い期待に満ちた時間が一瞬で吹っ飛んだ。  
 常夜灯のみが照らす薄暗がりの中でも、夜目の効く薫には秋晴の表情がしっかりと見える。  
 強面の割りにあどけないいつもの寝顔で、既にすうすうと規則正しい寝息を立てている。ちょっとかわいい、とか思ってしまう。  
 
「なあ、おい……日野?」  
「…………」  
 
 返事はない。どうやら、本格的に寝入っているようである。  
 まさか一瞬で寝入ったのか、と疑問に思いもするが、今日までにもこういったことは何度かあった。  
 従育科の授業は回を追うごとに、より厳しく、より高度に、よりハードになっていくため、秋晴は床に入ってすぐに眠りに落ちるということが何回かあったのだ。  
 当然、薫が秋晴を求めるのはそういった日を避けていたし、今日の授業はそれほど体力を使わなかったのだが、どうやら幼少から鍛えこんでいた自分と一般人である秋晴との体力の差を未だ見誤っていたようである。  
 いや、何も言わなかったことを考えると、湯に混じったアロマオイルの香りも気づかれなかったのかもしれない。  
 薫は秋晴の顔を見上げ、自分の手へと視線を落とし、また秋晴を見上げと何度か繰り返し、最後は諦めたように小さく溜息をついた。  
 
「……仕方ない、か。おやすみ。あ、……秋晴」  
 
 そうつぶやいて、そっと秋晴の唇に口付ける。  
 情欲のかけらも感じさせない、秋晴の体を案じる気持ちに溢れた優しいキス。今日はこれで我慢すると決めて、薫は再び秋晴の腕の中へと体を納めた。  
 
 
 しばらくして。  
   
 薫はまだ寝つけていない。  
 それどころか、吐く息は荒く熱を帯び、頬は湯上りのときよりも上気して朱に染まっている。  
 秋晴の襦袢の合せ目に鼻を押し付け、うっすらと開いた目には涙の膜がわずかな光をきらきらと反射していた。  
 誰が見ても明らかだろう。薫は発情している。  
 
 今夜は何もせずに眠ると決めたが、秋晴に蹂躙されることを期待していた体はそれを許さず、ひたすらに内圧を高めていたのだ。  
 あるいは、秋晴から体を離していれば結果は違ったかもしれない。  
 しかし今の薫にそういった仮定をする思考力はなく、うっとりと秋晴の体臭に酔いしれることしかできない。  
 
 自然と、薫の右手は自らの秘所へと伸びていった。  
 秋晴の腕の中というわずかな隙間で指を伸ばし、襦袢を書き分け、下着の上からそっと触れる。  
 びくり、と体が震えた。  
 自分でも驚くほどの刺激が背骨を駆け上がり、がくがくと腰が痙攣する。  
 
「……んっ! ……あ、くふぅぅぅぅぅ」  
 
 軽い絶頂。  
 薫は、自分で慰めることを覚える前に秋晴に抱かれ、その後に秋晴自身から自慰を教わったほど経験が無い。  
 にも関わらず、布越しに指で触れただけで達してしまったことに驚きを覚える薫だったが、指は主の驚きなど知らぬ風に暴れまわる。  
 
「あ、や……ダメ、日野がいるのに……音が出ちゃ……ゆ、指が、止まらな……っ!」  
 
 既に薫の股間は愛液に濡れている。指の動きに合わせて水音も聞こえ始め、そのことがより一層薫を興奮させていく。  
 再び上り詰めていく自分自身を感じ、せめて声だけは押し殺そうと秋晴の襦袢の裾を口にくわえた、そのとき。  
 
「じゃあ、俺が止めてやるよ」  
「え、ふぇっ!?」  
 
 突如、自分の頭の上から声が響いた。低音の、普段ならば薫がもっとも落ち着くことの出来る声。  
 しかし今はその声音が、どこか嗜虐の愉悦に染まって聞こえた。  
 薫は二度目の絶頂に至るまさに直前、股間へ伸ばしていた手ともう片方の手を捕んで引き上げられ、頭の上で両方まとめて片手に掴まれる。  
 下手人はそのまま体を入れ替えて薫の上に圧し掛かり、組み敷いたような体制になってくる。  
 
 言うまでもなく、薫を拘束したのは秋晴である。  
 
 常夜灯の逆光のため、薫の目をもってしてもその表情はうかがい知れないが、それでもどんな顔をしているか予想はつく。  
 これは、秋晴が時々見せるいじめっ子の顔だ。  
 
「な、ひ、日野っ! お、お前起きて……!」  
「当たり前だろ。アレだけ近くでオナニーされて、気づかないわけあるかよ」  
「ばっ、べっ、別に……オ、オナニーなんて私はっ」  
 
 既にこれ以上ないほど赤く染まっていた薫の顔がより一層赤みを増す。唯一の救いは、この暗がりでそれに気づく者が誰もいないことか。  
 秋晴は、薫の手を掴んでいるのとは逆の手で、薫の頬を優しく撫でる。  
 全身からにじみ出る暴君のごとき気配とは真逆なその仕草に、薫は心地よさを覚えると同時に底冷えるものを感じた。  
 
「それに、オイルも使ってあったしな」  
「気付いていたのか!?」  
「当たり前だろ。あんなにたくさん入れやがって。咽るかと思ったぞ。そんなにしたかったんだな」  
「そっ、そんなことない! あれは、ちょっと間違え……んぅっ!?」  
 
 釈明の言葉は、唇で封じられた。  
 とっさに振り払おうと身を捩るが、頬を撫でていた手で首を後ろから押し付けられ、さらに全身でのし掛かられているためにほとんど動けず、空しく体をくねらせるだけに終わる。  
 それがより一層秋晴の興奮を煽ってしまったらしく、さらに激しく唇を貪られた。  
 
 たとえ今のような状態であろうとも、本来の大地薫の実力を持ってすれば荒事の素人である秋晴を払いのけることなど造作もないことである。  
 しかし、現実として薫は秋晴に組み敷かれ、乱暴に口を吸われている。  
 既に口内へと侵入した舌は歯茎を舐め、頬の粘膜を擦りあげてくる。  
 薫が今までの口付けの際の習慣に従って舌を差し出せば、すぐさま秋晴の舌に絡めとられ、唇に挟まれしごかれる。体中に、甘い痺れが伝染していく。  
 
 まるで秋晴に犯されるように、されている。  
 
 その事実が薫の中から少しずつ抵抗の意思を削いでいった。  
 
 薫は、こうして強く求められることに弱い。  
 長らく俗世間と隔離されていた上に、白麗稜では性別を偽らなければならない薫は自分の高い能力に反して、自信というものがない。  
 
 自分は、人の期待にこたえられているか。  
 自分は、人の輪になじめているか。  
 自分は、人に必要とされているか。  
 
 自分は、人に愛されているか。  
 
 
 意識の表層に上ることこそないものの、無口だが思慮深い薫の中には常にこの疑問が渦巻いていて、不安を誘う。  
 だからこそ、強引なほどに求められると、自然と喜びを感じてしまう。  
 自分を求めてくれていること、自分を愛してくれていること。それを他のどんなことよりも強く感じさせてくれるこの無理矢理な行為を、だから薫は拒めずにいるのだった。  
 
「ああぁっ……ひ、日野ぉ……」  
 
 秋晴は既に喘ぎ声しか上げられないと察して薫の口を解放し、その矛先を別の場所に移している。  
 舌は首筋から胸元にかけての敏感な柔肌を這い回り、自由な片手で襦袢の帯を解いて前半身をあられもなく露出させる。  
 常夜灯のうす赤い光に照らされて、薫の白磁の肌がわずかに浮かび上がる。  
 秋晴の指と舌が這い回るたびにくねり上がるその姿は、どんな淫婦でもかなわない艶美な舞を舞っているようだった。  
 
「こぉら、いつも言ってるだろ。こういうときは、名前で呼べよ」  
「で、でもぉ……」  
 
 秋晴からの『命令』に、弱弱しく首を振る。行為の際には秋晴の言葉に従うことに対して喜びを覚えるとはいえ、薫はいかんせん羞恥心が強い。  
 
「ふーん、じゃあしょうがないな……」  
「ふぇっ!?」  
 
 秋晴は、掴んでいた薫の手を放し、その代わり両脇に手を差し込んでその細い体を抱えあげる。  
 そのまま後ろへ倒れこむように座り、自分の足の間に薫の体を押し込んで、言う。  
 
「口でしてくれよ」  
 
 その言葉に、薫は息を呑む。  
 目の前には、襦袢の裾を割らんばかりの勢いで屹立するものがある。それに口で奉仕しろ、といわれているのだ。  
 
「……な、なんで」  
「だって、名前では呼んでくれないんだろ? だったらいっそ、呼ばなくて済むように口を塞いでやろうと思ってな」  
 
 薫は問いかけながらも、目の前にあるものから目を離せない。そこから漂う秋晴自身の濃い匂いに、頭がくらくらとしてまともに考えることもままならない。  
 
「さっきから薫をいじってばかりだったからな。実はもう結構キツイんだよ。なんとかしてくれるか」  
「ぁ……はぃ……」  
 
 だから、言われたことを吟味するより先に体が動いていた。  
 秋晴の既に緩んだ帯を解き、襦袢の隙間に手を差し込み、下着をずらして秋晴のペニスをあらわにする。  
 目の前にたくましい肉槍が震えながら現れるのを見て、ほう、とため息が出た。  
 
「ん……はぁ、ちゅ」  
「……くっ」  
 
 薫を責めている間に興奮して反り返った秋晴のペニスは、薫の唇が軽く触れただけでぴくりと跳ねた。  
 なんどか先端にキスを繰り返すが、そのたびにあちらこちらへ跳ね回る。  
 しばらく律儀にそれを追いかけていた薫だったが、ついに痺れを切らしたか小さな口を精一杯に開き、くわえ込んだ。  
 
「くぷっ……ちゅ、ずずっ……れるれる」  
 
 唇を蕩かしそうな秋晴の熱さを感じながら口内に大量の唾液を含み、舌で刺激しながらゆっくりと深く飲み込んでゆく。  
 カリを唇の内に収め、裏筋を舌でくすぐり、幹を何度か往復しながら唇でしごき、ついに根元までを口に含む。  
 
「ふーっ……ふーっ」  
「ん、上手いぞ薫」  
 
 口はふさがっているので、鼻から荒い息を吐きながら秋晴を見上げると満足そうに微笑んだ秋晴がそっと頭を撫でてくれる。  
 こみ上げる歓喜に、思わず「くぅん」と喉が鳴ってしまう。  
 その振動がまた秋晴にとっては快感だったらしく、喉奥にぴったりとはまり込んだ亀頭が再び力強く脈打った。  
 
「んっ……んっ、じゅるるる……むぐぅぅぅ」  
 
 薫が首を振るたびに、唇の端からは唾液がこぼれ出て、秋晴の腰をぬらしていく。  
 何度も喉を突かれるのは苦しいはずだが、薫の表情は上気したように蕩け、夢中になって秋晴に奉仕している。  
 
 ……薫は人一倍強い羞恥心を持っているが、それだけに普段から秋晴への感情や情欲を溜め込んでいる。  
 なので一度箍が外れてしまえば、他の誰よりも積極的に、そして従順に奉仕する雌となるのだった。  
 
「じゅっ、じゅぷっ、ずっ、んむぶっ!」  
「くぅっ……薫!」  
 
 唇から伝わる秋晴の熱と震えが限界に近いと感じ、一層熱が入る薫のフェラチオ。  
 しかし秋晴は絶頂の寸前で自ら薫を自分のペニスから引き離した。  
 いきなり引き剥がされた薫は口の回りを自らの唾液まみれにしながら体を起こし、驚いた表情で秋晴を見る。  
 
「あ……。すまない、上手く出来なかったか?」  
「いや、そうじゃない。薫はすごく上手だったよ。……ただ、薫もそろそろ我慢できないだろ?」  
「……んっ!」  
 
 不安げな顔を見せる薫に、秋晴は秘所をまさぐることで答えた。  
 ぐっしょりと濡れたそこは指で触れるだけで粘着質の音を出し、薫の身を震わせる。  
 
「や、だめっ、日野、そんな……二本もっ!」  
「やっぱり、出すなら薫もこっちの方がいいと思ってさ。……どうだ?」  
 
 秋晴は人差し指と中指で薫の膣壁を擦りあげる手を止め、まっすぐに薫の瞳を覗き込みながら聞いてくる。  
 それだけで薫の背筋にぞくりと何かが這い上がる。目を見ればわかる。秋晴は、薫がいやらしくおねだりをすることを期待しているのだ。  
 
 互いに見詰め合っていた時間は数秒もなかったろう。薫はそっと秋晴から身を離し、ベッドへとうつぶせになって肩越しに振り返る。  
 シーツに頬を押し付けて、ヴァギナを両手で広げるという秋晴が好きなポーズになり、精一杯淫蕩な言葉を絞り出す。  
 
「し、して……くれ、日野。私の中に、日野をたくさん……っ!」  
「っ! ……ああ、任せとけ」  
 
 淫靡な誘い文句というにはあまりにもたどたどしい。  
 しかし、既に自分も限界に近い秋晴は、これ以上焦らすことなく薫の広げられた部分へと、自分のペニスを押し付け、一気に押し込んだ。  
 
「あ、あぁぁぁぁぁぁっ! 秋晴っ!」  
「くぅ、薫っ!」  
 
 薫の内側は、既に十分以上に濡れそぼり、無数の襞が歓喜にうごめき秋晴のペニスを吸い上げる。  
 対する秋晴も、薫の腰を掴んで持ち上げ、お互いの肌が当たるたびに音がするほど強く打ち込んでいく。  
 浅いところを何度も擦りあげ、ペニスが抜け落ちるほどに腰を引いたところから一気に叩きつける。  
 そのたびに薫は切なく、甘く叫び声を上げ、自分からも精一杯腰を動かして秋晴との行為に没頭する。  
 薫の足先ががくがくと震え、だらしなく開かれた口からは唾液とともにかすれた喘ぎがこぼれ落ちる。  
 
「んぁっ、ふぁぅ、あん……っ! や、だめ、そこ擦られたらぁ……!」  
 
 秋晴は、薫を突き上げるたびに彼女の弱点を刺激する。  
 そのせいで薫にも秋晴にも強烈な快感が走り、挿入間もないというのに既に二人とも限界に達しようとしていた。  
 
「秋晴、秋晴ぅっ!」  
「あああっ、薫!」  
「な、中……中にちょうだい、秋晴!」  
「くぅっ、わかった。行くぞ!」  
「うん、嬉しいっ、一杯、一杯注いで……んんっ、くふああああああああぁああああああ!?」  
 
 秋晴は最後に一番奥まで捻じ込んで、白濁を弾けさせた。子宮に直接熱い子種を浴びて、薫の思考も白く染め上げられる。  
 自分の膣内を満たす精液の感触を味わいながら、薫は絶頂に達した。  
 ベッドのシーツを強く掴んで背筋を限界まで反らし、その喉からは甘く切ない叫びが伸びる。  
 万全の防音を施された寮の部屋の中、少女の声は長くこだました。  
 
「あ……、秋晴、も……無理ぃ……」  
「……俺もだ」  
 
 ベッドの上で、秋晴と薫は並んでうつ伏せになって荒い息をついていた。  
 そろって大量に汗をかき、部屋の中には濃密な性臭が満ちている。  
 あの後、抱き合って一回、壁に押し付けられて立ったまま一回、ベッドに戻ってアナルに一回と、何度も交わった。  
 さらにその合間には手や素股でもしたので、薫の体はいたるところに白濁と愛液の飛沫が飛び散り、秋晴が強く掴んだ腰や、何度も撫で回された尻と胸には赤く指の痕が残って無理矢理犯されたようになっている。  
 しかし、薫は幸せそのものといった表情を浮かべ、うっとりと体に付いた精液とその下にある秋晴の指の痕を撫でている。  
 その姿がたまらなく淫靡で、秋晴は思わず視線を逸らす。今晩は自分でも制御できないほどに興が乗ってしまったため、これ以上の交わりをすれば明日の授業に障りが出てしまうだろう。  
 いや、だって普段から控え目な大地がしてもらえないからって腕の中でオナニー始められたりしちゃったら、ちょっと意地悪するつもりだったのがエスカレートしたとしても不思議はないだろ?   
 と必死に内心で弁解の言葉を並べながら平常心を呼び起こす。  
 
「なあ、あき……日野?」  
「お、おう。なんだ、……大地」  
 
 薫が、秋晴のことを名前ではなく苗字で呼んだ。  
 つまり、それが今日の夜を終わりにしようという合図だ。  
 秋晴もいつものようなぶっきらぼうな声で、薫の苗字を呼ぶ。  
 秋晴が薫のほうへと振り向くと、まだ少し赤い頬にいつものような凛々しい表情を一瞬浮かべ、すぐにはにかむような笑顔を向けてきた。  
 
「あの、その……な? もうちょっと近くに行っても……いいか?」  
「……ああ、もちろんだ」  
 
 甘えたがりの子供のような顔をした薫を、秋晴は軽く微笑んで受け入れる。  
 両腕を広げると、薫がいそいそとその中に納まってくる。  
 軽く抱きしめてやれば、薫はわずかに身じろぎをし、次いで満足そうな息をついて胸板に額をこすりつけてきた。  
 
「おやすみ、日野」  
「ああ、おやすみ、大地」  
 
 抱きしめあって言葉を交わし、ゆっくりと目を閉じて眠りに落ちる。  
 今夜は良い夢が見られるだろう。  
 
 
 後日のこと。  
 
「ところで、日野」  
「なんだ、大地?」  
「お前はあの日私のオナニーを見たのだから、今度はお前が私の目の前でして見せるべきだと思わないか?」  
「……えーと、大地薫さん。ひょっとして根に持ってたりいたしますでしょうか? あとここは放課後の教室で、人が来ることもありえる場所だって理解してます?」  
「無論、理解しているし根に持ってなどいない。ただ、お前が今すぐこの場でその腰履きを下ろし、情けない表情を浮かべながら自慰をする姿をとても見たくなっただけだ。さあ」  
「いやさあじゃなくて! 言葉にトゲありすぎだし絶対怒ってるだろ!?」  
 
 この後、秋晴はまた一つ消えないトラウマを植えつけられたと言うが、その内容までは定かではないことを記しておく。  
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル