日野秋晴が白麗陵に入学して、それなりに時間が経つ。  
大小様々なトラブルに巻き込まれた結果として、ある程度、ハプニングには耐性がついてきたと彼自身信じていた。  
 
 
しかし、こればかりは。  
耐性があるとはいえ、いくら何でも。  
これはあまりに想定外過ぎる事態ではないだろうか。理事長からの軽い頼まれ事。  
図書館にいる人物に届け物を渡して、それで何事も無く終了のはずだった。  
――目的の相手のいるらしい司書室の中から聞こえた不審な物音に、迂闊にも過去の経験を活かさないまま反射的に扉を開けてしまわなければ。  
 
 
荒い呼吸。粘性の水音。鈍い振動。むせるような熱気。  
日野秋晴が遭遇したのは、端的に言えば自慰行為の場面だった。  
 
白麗陵では、過去に一度、無人のはずの教室に入ったら裸の美少女がいた、なんて事件が起こっている。  
それそれに比べれば随分飛躍しているが、これくらいは起こりうるかもしれない。  
いや、決して安易に認めていい事柄ではないが、しかしこの場合には、真っ昼間から図書館の司書室で自慰行為に耽る女性がいるなんてことより遥かに驚愕すべき点が存在していた。  
こんな場所で自慰行為を一番しそうな人物は誰か、などという果てしなく失礼なランキングは存在しえないが、しかし万が一日野秋晴の中でそれが作成されたとすれば、最下位は間違いなく深閑であったはずだ。  
 
「……ひ、日野さん…………?」  
 
日野秋晴は言葉の使い方を完全に忘れてしまった。  
 
「こ、これは、ひゃ……、そ、その、あの、――」  
 
普段の、理知的で落ち着きのある、それでいて切れ味のある声――――ではない。  
頬を真っ赤に染めた深閑の声には、感情と弱々しさが多分に含まれていた。  
随分と、鈍い。  
 
果たして目撃からどれくらい経ったか、日野秋晴にはまるで見当が付かなかったが、ここに来てやっと言葉が舞い戻ってきた。  
 
「――――すまん!」  
 
彼が選んだのは逃走だった。当然の判断とも言える。  
体を反転させて部屋から脱出しようとしたが、しかしそれは叶わなかった。  
思考と身体の接続が余程混線しているようで、足をもつれさせて不様に尻餅を突いてしまう。  
 
「……っ」  
 
混乱した頭を無理矢理抑えつけて、急いで立ち上がろうとして――いつの間にか深閑にマウントポジションをとられていた。  
ただ深閑に乗られているだけなのに、何かの技術の応用か、全く上体が起こせない。  
 
「――な、あんた何やってる……っ!」  
 
質問には答えず、深閑は身体を日野秋晴に預けはじめる。  
胸元のはだけたメイド服から露出している、想像以上に大きい乳房が彼の胸板で柔軟に形を変える。  
上着越しでも分かる柔らかさに、彼の心臓は一層強い脈動を開始した。  
 
ねっとりとした空気を掻き分けるように深閑の両手が伸び、日野秋晴の両頬を包み込む。  
そのまま顔を近付けて、口づけをした。  
 
 
「ん、ふぅ、んんん、ちゅ、ん、ふぁぁ……」  
 
絡まる舌と舌。お互いの間を行き来する唾液が粘り気のある音を出す。  
恍惚に塗れた深閑とは対照的に、日野秋晴は多少落ち着きを取り戻していた。  
身体は燃えるように興奮しているが、頭は意外にも冷えている。  
恐らく、上唇の辺りに残る痛みのおかげだろう。  
誤ったのは目測か力加減か、最初に唇と唇が合わさった時、深閑の歯が彼の上唇に強くあたったのだ。  
深閑もかなり混乱しているのだろう、と勝手に納得する。  
 
「くちゅ、ひぁ、んんん、ん――」  
 
日野秋晴が深閑の舌を強く吸うと、彼女の官能の色はさらに強くなる。  
腰も先程迄のようにもどかしげに動かす動きから、何かに耐えるように跳ねる動きに変化した。  
軽くイったのだろうか。  
 
 
どのくらい長く舌を絡めていたか、二人は大体の見当すらついていない。  
時間の感覚はマヒしっぱなしだった。  
……ここにきて、そろそろ不味いだろう、と日野秋晴の理性が主張する。  
今ならまだ、キスまでならばなんとか引き返せる。  
 
だが、日野秋晴の中の何かは理性の主張には従わなかった。  
まだ、足りない。  
深閑の後頭部に回した右手と、腰に回した左手に力を込めて、より強く身体を密着するようにすると、さっきより数段激しく腰が跳ねた。  
 
動きが止まる。  
一旦休憩といった感じでお互いの口が離れた。  
息も絶え絶えで、大きく肩を揺らしている深閑だったが、ふと自分の太もも辺りにある熱さに気付く。  
右手で探ってみると、鉄のように固かった。  
 
「……あ、」  
 
日野秋晴が狼狽えたのを見て、深閑も熱源の正体を察した。  
 
「おっきく、なってますね」  
「頼むから言わないでくれ……」  
「続き、しませんか?」  
「……キスのか?」  
「女性に言わせるなんて、デリカシーが無いですよ」  
 
深閑はベルトに手を掛けて外し、そのままズボンのジッパーも最後まで下げる。  
 
「熱い、ですね……」  
 
トランクス越しにモノを撫でられた。  
 
「それに、硬い……んですね」  
 
日野秋晴に馬乗りになっていた深閑は、ここで体勢を入れ替えた。  
日野秋晴の胴体を、顔が彼の足の方へ向く形で跨ぐ。  
深閑の背中が壁になって見えないが、日野秋晴は自分のトランクスが勢い良く下げられたのを認識する。  
 
魅力的な雌を前に、ほとんど刺激を与えられず、最早収まりのつかない状態であろうペニスに、ひやりと冷たい感覚。  
思わず日野秋晴の腰が震えた。  
 
深閑のほっそりとした綺麗な指が絡み付つき、そのまま、ゆっくりと竿の部分を上下にしごきはじめる。  
 
「……っく、あ」  
 
僅かに声が漏れた。  
 
「こうすると気持ち良いと聞きますが」  
「あ、ああ、したこと、無いのか」  
「……ええ、キスもさっきが初めてでした」  
「…………ぇ」  
 
思わぬ告白に言葉が詰まったようだ。  
 
二人の間に沈黙が横たわる。  
何となくこそばゆい雰囲気だった。  
 
「…………」  
 
その雰囲気を振り払うように、深閑はより力を込めて上下運動を再開した。  
さっきまでのでは物足りなかったのか、やっと日野秋晴のモノは体力の先走りを吐き出しはじめる。  
手が盛大に汚れたが、深閑は気にしていないようだった。  
 
発情した雌の芳香と、汗ととが入り交じった匂いに満ちていた空間に、若い雄の匂いが割り込む。  
鼻を通り抜けた性臭に、一瞬深閑の目の前が白くなる。  
 
肉付きの良いヒップを、ずりずりと日野秋晴の頭部の方へずらしていく。  
接触まで残り数センチ足らずのところまで接近して、尻の侵攻は止まった。  
そして。  
 
「んっ……」  
 
未だに脳髄を揺さ振る匂いに誘われるように、深閑は躊躇いなく日野秋晴のペニスを口に含んだ。  
 
「んっ、んんん、んく、んふっ……」  
 
今までとは比較にならない強烈な感触に、日野秋晴はうめき声を上げた。  
 
「ふ、ちゅ、ふっ……っ」  
刺激を与えれば与えるほど敏感に反応するペニスとその持ち主に気を良くしたのか、深閑のフェラチオにより熱が入る。  
口に含んでちろちろ舐める程度だったものが、唾液を塗りこむような動きにかわり、口全体で愛撫しようともする。  
 
「ちゅ、んく、すごい……ひゃう、ちゅ、んく……」  
 
ガチガチに反り返ったペニスから、さっき嗅いだものより何十倍も濃密な雄の欲望の匂いをまともに受け止め、深閑は脳髄を支配されてしまったような錯覚すら感じている。  
 
「やば、出そうだ……」  
 
「ふぁひぃふぇもははふぃまへんよ?」  
「くっ、くわえたまま喋るなって……」  
 
このままイかされるのが癪なのか、日野秋晴が反撃に出る。  
左手で深閑のスカートを勢い良く捲り、右手で尻の肉を思い切り掴んだ。  
何をするんですか、という質問には答えない。  
左手も参戦させて、強く揉みしだく。  
 
「ひぁ、ん、ちょっと、何を……」  
 
日野秋晴は、深閑の悲鳴に甘い響きを感じ取る。  
左手はそのままに、右手を深閑の秘所へ持っていく。  
くちゃ。  
 
「随分濡れてるな……」  
「――――っ!」  
 
日野秋晴の指摘の通り、深閑の股間は粘液でぐちゃぐちゃだった。  
愛液が染みだしている所為で淫唇が透け、下着の股間部分にはうっすらとピンク色が見えている。  
 
ショーツ(蛇足だが、この呼称は女性側からすると一般的でないらしい)に手をかけ、さっきのお返しとばかりに剥ぎ取る。  
ウァギナから布が離れる瞬間の、淫らな水音が印象的だった。  
 
顔を真っ赤にした深閑が振り向くが、日野秋晴はまたも無視する。  
ちゅぷ、と人差し指を深閑の秘所に挿入した。  
そのまま小刻みに入り口を刺激する。  
 
「ひゃっ! んあっ、だめぇ………っ。日野さんっ……」  
「手が止まってるんだが」  
「む、むりぃ……、」  
 
「感じてる?」  
「あ、んっ、気持ち良いっ……!」  
 
指を二本にして広げるように掻き混ぜると、あっさりと深閑は決壊した。  
尻肉をびくびく震わせながら日野秋晴の指を搾り取る。  
 
「……いったのか?」  
「ん、ひぁ、は、はい、……い、いきましたっ…………」  
 
日野秋晴は結局欲望を放出出来なかった。  
溜りに溜まった精液が、マグマの様に渦巻く。  
 
自分のペニスを握り締めながら脱力する深閑を、日野秋晴は抱き抱えるように起こした。  
 
「動けるか?」  
 
こくりと頷いて、深閑は日野秋晴の体から名残惜し気に離れる。  
生まれたての仔鹿のように震える深閑の美脚を見るに、殆ど腰が抜ける寸前のようだった。  
 
「続き、してくれるか?」  
 
日野秋晴は立ち上がり、限界までいきり立っているモノを、女の子座りの深閑の目の前に差し出す。  
一瞬怯む彼女だったが、恥ずかしげにペニスを握り、口に運んだ。  
 
「く、……」  
 
先程同様に熱の入ったフェラチオと、美貌の女教師に己のモノをくわえさせているという状況――しかも、普段の怜悧な表情を崩し、瞳は欲情に潤んでいる――。  
そこに、前歯が軽くカリに引っ掛かった刺激が加われば――日野秋晴の欲望が爆発するには十分だった。  
 
「でるっ……っ!」  
 
なんとか止めようとするが、一度堰を切ってしまえばもう意味を成さない。  
深閑の頭を掴んで無理矢理引き抜くが、間に合わない。  
 
「――っ」  
「ひゃ……!」  
 
ペニスから勢い良く飛び出した精液が深閑の顔面を白く汚す。  
数秒続く射精。吐き出された欲望の殆どは深閑の顔に残ったが、零れ落ちたものは露出した胸の谷間に吸い込まれていった。  
 
「――――前が見えませんね」  
 
日野秋晴自身が驚く程の量の精液が、深閑のメガネを白く汚している。  
彼女はメガネを外し、レンズについた白濁液を舌で舐めとった。  
 
「あまり美味しいものではないのですね」  
「…………」  
「どうかなさいましたか?」  
「……いや」  
 
深閑の仕草の淫靡さに見とれていただけのようだ。  
深閑は美味しくないといいながら、顔に着いた精液も指で掬って舐めている。  
 
一度吐き出して萎えた筈のペニスに、先程以上の量の血液が流れ込む。  
 
「きゃっ……」  
 
日野秋晴は上着を脱ぎ捨て、タイを外し、そして深閑を押し倒した。  
首筋に強く吸い付き、キスマークを残す。  
征服欲が腰から背骨を駆け抜ける。  
ペニスが更に反り返った。  
 
愛撫の対象を深閑の巨乳に移す。  
固くなった乳首を口に含み、少し強めに噛む。  
もう片方の乳房を掌で揉む。  
 
「あ、だめぇ、きゃっ……」  
 
両方の乳首を丹念に唾液塗れにして、更に下へ。  
臍の辺りに舌を滑らせ、股間の茂みに到達する(実際、茂みと言うほど濃くはない)。  
 
羞恥からか深閑は反射的に脚を閉じるが、腰砕け寸前の彼女には日野秋晴の侵攻を止める力はない。  
控えめに表現しても泥沼な彼女の秘所に口付ける。  
濃縮された雌の匂いが拡散した。  
 
「だめぇっ!」  
 
彼は悲鳴を聞き流した。  
入り口に舌を挿入し、鼻で淫核を軽く刺激する。  
 
「だめ、あ、んんんっ、いく、いくっ、!」  
 
舌で淫核の包皮を退かし、そして吸い付く。  
今までで一番激しく腰が跳ねた。  
それを無理矢理押さえつけて、日野秋晴は秘所への愛撫を続行する。  
ものの数十秒で、深閑の腰は小刻みに震えだす。  
完全にイった様だった。  
 
日野秋晴は愛撫を止めて、口を手の甲で拭う。  
深閑の顔を覗く。  
頬を真っ赤にそめ、口の端から涎が垂れている。  
目にはうっすらとだが涙が浮かんでいた。  
 
「していいか?」  
 
何を、とは彼は言わない。  
 
「……して、ください」  
 
深閑が頷く。  
 
ここに来て、日野秋晴は、自分が随分と欲求不満な状態だったのだと気が付いた。  
肉体的・精神的な疲労と、大地薫という同居人。  
あらゆる状況が、彼が自慰行為に及ぶのを許さなかった。  
そもそも、性欲を持て余していることにすら気が付けなかったのだ。  
 
「――――あ」  
 
気が付いたついでにもう一つ、大切な事に気が付く。  
 
「どうかなさいましたか?」  
「いや、コンドームが無い」  
 
そう。避妊である。  
お互いのために必要な行為だ。  
 
「構いませんよ」  
「いや、だけども……」  
「このままお預けは酷ではないのですか?」  
「…………ああ、辛い」  
 
これだけ寄り道をしても、日野秋晴のペニスは萎える気配がまるで無かった。  
腹に付きそうな勢いで硬化し、栓の緩い水道の様に先走りを吐き出している。  
 
…………私も、もう我慢できません」  
「…………ああ」  
「初めてですから、その、や、優しく、してください」  
 
極限まで恥ずかしげな表情と台詞。  
日野秋晴の理性は吹き飛んだ。  
 
「痛かったら、言ってくれ」  
 
僅かに残留した理性でそう告げた。  
日野秋晴に、最早冷静さは欠片も無い。  
 
深閑の膣の入り口を、日野秋晴のペニスが探り当てる。  
入り口を二、三往復して、遂に二人は繋がった。  
 
「ひ、ひゃ、入ってます………っ」  
「くっ……」  
 
熱い欲望の塊が、己の内部に侵入する快感。  
今まで誰も踏み込んでいない処女地を、己が蹂躙する喜び。  
堪らない。  
 
日野秋晴との肉棒に、何か突っ掛かる感覚。  
彼は構わず腰を進める。  
深閑の顔に苦痛の色はない。  
むしろ、快感の方がウェイトが大きい。  
 
入り口周辺は随分解れていたが、奥に進むにつれて抵抗が強くなる。  
日野秋晴の脳裏に、掘削という言葉が浮かぶ。  
 
すぶずぶ。ズブズブ。  
 
「んんん、っ、」  
「ぐあ、……」  
 
ペニスが遂に奥まで到達した。  
日野秋晴のモノは、殆ど埋没している。  
 
「大丈夫、か?」  
「……ええ、ん、あっ、意外に、大丈夫です」  
 
深閑が日野秋晴の首に手を回す。  
自然に唇が重なった。  
 
「ちゅ、ふ、んん、ぷぁ……っ」  
 
自分の体を貫く肉棒が、ぴくりと跳ねているのを、先程から深閑は感じ取っている。  
 
「ん、……動いて、下さい」  
「本当に、大丈夫なのか? まだ……」  
「ふふ、優しいんですね」  
 
恥ずかしいのか、日野秋晴はそっぽを向く。  
 
「それに、慣れてる気がします」  
 
日野秋晴は答えない。  
代わりに、腰を動かす。  
 
ゆっくり、カリの段差で襞を削るように引き抜く。  
 
あくまでゆっくり、雄の欲望を叩きつけるように、奥までペニスを進める。  
 
「…………ん」  
 
単調な動きだけでは物足りなくなってきたのか、日野秋晴は肉棒を最奥で固定する。  
そのまま押し広げるように、円運動。  
深閑の、新たな快感に戸惑う姿を十分楽しんでから、彼女の感じる部分を探す動きに移行する。  
非常に敏感な深閑である。  
すぐに見付かったようで、日野秋晴はそこを重点的に攻め始めた。  
 
「――――ひっ、あ、なに!、?」  
「気持ちいいか?」  
「ん、はいっ、いくいくっ……!」  
 
膣内が盛大に締まる。  
急激な刺激に、ペニスのタガが外れた。  
 
「ぐ、あっ……!」  
 
ごぶ、ごぶ、どぶ。  
 
とても一度出しているとは思えない大量の精液が、深閑の膣内に注がれてゆく。  
 
ペニスに敏感な所を擦りあげられて一回。  
精液の熱さにもう一回。  
日野秋晴の欲望を注ぎこまれたという事実に、さらにもう一回。  
深閑は絶頂に叩きつけられた。  
目の前が真っ白になる強烈な快感。  
子宮が精液に溺れ、染められていくイメージ。  
ファーストキスや、処女以上に大切な何かを奪われる感覚。  
 
否、奪われていない。深閑は捧げたのだ。  
大切な何かを、自分から進んで日野秋晴に。  
爪先から髪の毛の先端まで、快感ががんじがらめになっている。  
女性としての、ある種の到達点。  
日野秋晴の物に――女に、なってしまった錯覚。  
錯覚?  
 
 
日野秋晴がペニスを引き抜くと、信じられない勢いで精液が溢れだす。  
創作の中だけの出来事かと思っていたが、実際に起こりうるらしい。  
 
信じられないといえば、未だ萎えない己のモノだ。  
まだ吐き出し足りないと訴えている。  
 
熱に浮かされたように焦点のはっきりしない深閑。  
彼は構わず肉棒をあてがった。  
ズブズブ。  
 
「――つ、ひぁ、だめ、まだいってるんです……っ!」  
「大丈夫だって」  
「壊れちゃうっ……」  
「……善処する」  
「だめ、――ああ、いいっ! いくっ! だめ、いくっ……」  
 
――――三回目。  
 
「……ひっ、だめ、いくっ、らめぇ、あ、あっ――」  
 
――――四回目。  
 
「……っ、あ、んっ、ひっ、あ、…………」  
 
――――五回目。  
イラマチオの要領で、深閑の口に白濁の欲望を吐き出す。  
苦しそうだったが、彼女は律儀にも全て飲み干した。  
 
――――六回目。  
深閑の胸で挟み、扱く。  
彼女の大きな二つの果実は、日野秋晴の肉槍を包み込むにはいいサイズだった。  
谷間に精液をぶちまけた。  
 
――――七回目。  
また子宮を蹂躙する。  
 
――――八回目。  
 
…………………………。  
 
それ以降の記憶は、二人とも正確に思い出せない。  
 
 
日野秋晴の睾丸の中は、完全に空っぽだった。  
深閑の指摘どおり、性行為自体は初めてではない。  
ただ、こんなに相手に夢中になったセックスも、欲望を全て吐き出したセックスも、避妊をしないセックスも初めてだった。  
 
最後のに関しては、後悔と情けなさが頭の中を駆け巡る。  
 
深閑は、全身を精液と愛液、唾液その他あらゆる液体に塗れながら、隣で静かな寝息をたてていた。  
 
「……とりあえず、片付け、しなきゃな」  
 
日野秋晴は、やっと重い腰を上げた。  
 
■  
 
「……日野さんとの生活で多少の改善は見受けられたので、頼りにしていたのですが、これは……厄介なことに、文句のつけ難い結果を出してますし……」  
 
複雑な表情とはまさにああいう表情を指すのだろう。  
大地薫の弱点克服の手助けを請け負っていた日野秋晴――そしてつい先日、私を抱いた男――の顔を見て、そう思った。  
あれ以来、そういった行為は全く行われていない。  
 
「えーっと……つまり、結果オーライってことで……?」  
 
実際、彼はよくやってくれた。  
たった今目の前で繰り広げられた惨事は無視できるものではないが、今回ばかりは指導の対象としなくとも良いかもしれないとも思う。  
けれども。  
 
「――いいえ、日野さんには後で話があります。今夜の睡眠は諦めてください」  
 
私情の為に教師としての権限を使う。  
言われる迄もなく、教師としては、失格。  
――では、女としては?  
日野さんは、私の考えを、きっと少しだって感じ取ってはいないのでしょう。  
鈍感な人。でも、それでいいと思えた。  
彼に犯された瞬間の、衝撃とともに何かが奪いとられる――全てを捧げる感覚が全身に走る。  
子宮が熱を帯びたのがわかる。下着はもう濡れてしまっている。  
――数時間後にやってくるであろう、彼専用の物に――女になる至福の時。  
彼に隷属する瞬間、彼に自分の愛を伝える瞬間を夢想して、私の中にある雌の部分が期待に震えたのを――。  
私ははっきりと認識できたのだった。  
 

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