重ねられた唇から、熱と快感が伝わってくる
その事実にセルニアは驚愕した
(わ、私がこんな下品な男に……)
目を固く閉じているため、目の前の男――日野秋春の表情はわからない
生意気で乱暴で礼儀知らずで男性としての魅力など皆無であるはずだった
(なのに…………)
彼との口づけは不快感とはかけ離れていた
彼は酒に酔い人格が変わり、更に押し倒されているというのに
そこまで考えると、彼の唇が離れた
「あ……っ///」
自身の口からこぼれた惜しむような声に
セルニアは紅から真紅へと顔色を変えた
「甘いな……」
「え……?」
秋春は気づいてないのか、そっとセルニアの唇を指でなぞり
小さく呟く。セルニアは思わず聞き返した
「女の唇ってよ……こんな甘いんだな」
「なっ、何を……///」
「それによ、『キスは麻薬に似る』って聞いたことがあるけど……」
「ん……!」
秋春は途中で言葉を区切り、再びセルニアに口づけをする
先ほどより深く、奥へ奥へ潜るように口づける
息が続かず、セルニアが空気を求めて口を開けば
その隙間から秋春の舌が入り込む
「んんっ……!?」
突然の事にセルニアの思考は停止する
それに構わず秋春の舌はセルニアの舌をからめとった
「ん……」
「んぁ……ふ……」
秋春はかすかに目を開けて、セルニアの表情を見る
完全に停止していた思考は戻りつつあるらしい
意識してか無意識なのか。秋春の舌の動きに懸命についていこうとしている
「あっ……」
秋春が舌を戻すと、セルニアは名残惜しそうに声をだした
「ん…? どうかしたのか?」
「え……なっ…!?///」
秋春が浮かべた笑みにセルニアは恥ずかしさで顔をそむける
だが秋春は気にしたそぶりを見せず、こちらに向いたセルニアの耳に顔を寄せた
「気持ち良くなかったのか?」
「あ、当たり前でしょう!? 私があんな……」
「俺は良かったぜ」
顔を向けず必死で否定するセルニアの言葉を途中で切る
更に口を耳のすぐ傍まで近づけて囁いた
「これが麻薬なら、このまま落ちてもいいくらい、な」
「―――っ///」
普段では考えられない殺し文句に、セルニアは背筋を走る電流を感じた
「素直になれ……理由なら後でいくらでもつけられるだろう?」
そう言うと秋春は優しくセルニアの顔を包み、正面を向かせた
セルニアの瞳は虚ろで、後一押しで崩れそうだった。それを
「今は俺に――いや、俺と落ちることだけ考えてろ」
三再びの口づけとともに、簡単に崩してみせた