「……嘘だろ」  
 
 
今の俺はこう思うより他ない。(ってか何で、こんな事になってるんだぁーー!?)  
ここは俺の部屋で、俺はベッドの左右から腕を引っ張られている。  
ちなみに秋晴を引っ張っているのは2人……  
 
1人目は、最強…じゃなく彩京朋美、幼なじみ型トラウマ大魔神様。  
2人目は、掘削活動用ダブルドリルヘッド型MSの、セルニア=伊織=フレイムハートである。  
 
今、俺が置かれている状況を整理してみよう、いや…走馬灯か?   
今日は日曜で学校は休みだ、同室の大地は朝早くに給仕の奉仕活動の為に出掛けた。  
 
今日はいつも酷使している体の為に、惰眠を貪ってた筈……その時、ノックする音が聞こえて来た。  
「んぁ? ったく…なんだよ……」  
眠ってる頭を無理矢理覚醒させて、ドアを開けてみたら…金のドリルを2本携えた女が居た。  
 
有り得ない訪問者に、俺の頭は処理落ちしてるらしく、来訪者に声を掛けれない。  
 
「いつまでレディの顔をじろじろと見てる気ですの?   
大体レディを部屋の外で待たせるのは、マナーがなってなくってよ!!」  
「いや…すまん、ってか何で此処に?」  
「別にあなたに逢いに来た訳じゃありませんわっ!!」  
本当は、何故か無性に秋晴に逢いたくて来たセルニア。  
しかし、口から出るのは悪態ばかりである。  
「まぁそりゃそうだ、わざわざ嫌いな奴の所にゃ来ないだろうからな」  
「も…勿論そうですわ!! じゃなきゃ何で私があなたみたいな  
大っ嫌いな人の所に来なければなりませんのっ!!  
そんな事はどうでも良いですわ……で、大地さんは何処に?」  
(うぅ〜…どうして素直になれないのかしら私の馬鹿……)  
 
彼女の心の中は後悔の嵐である。  
ただ、彼女は気付けなかった彼の眼差しが冷めて行くのを。  
「大地ならカフェで給仕してる、もう用件は済んだだろじゃあな」  
バタンッ!! と勢い良く扉は閉ざされセルニアは扉の前で立ち尽くしていた。  
 
「何なんですの!! あの態度っ!!」  
セルニアは、秋晴の予想外の高圧的な態度に怒りを覚え、じたんだを踏んでいた。  
しかし、セルニアは違和感を覚えた。  
今までの秋晴はあんな風ではなかった、正確には、あんな風に対応された事は無かった。  
何だかんだ言いながら話してくれた、心配もしてくれた、しかし先程は?  
セルニアは今まで感じた事が無い位に彼の言葉から、態度から、纏う空気まで心からの怒りを感じた。  
 
「……嫌わ…れた…?」  
セルニアはどうしようもない不安、そして後悔に襲われた。  
何であんな事を言ってしまったのだろう。  
ただただ、言葉にならない後悔の念と恐怖感だけが心の中に積もっていく。  
「別に…あんな粗野な男に嫌われても……関係ないですわ…」  
そう言いながら廊下を歩くセルニアは、無理矢理自分を納得させる。  
 
その頃の秋晴も、同じく後悔の念でいっぱいだった。  
「あ゛〜ちくしょう…何やってるんだ俺は……」  
ベッドに突っ伏して転げ回り、さっきの子供じみた行動を振り返る。  
「大体、んな最初から分かってたのにな……なのに何でか、モヤモヤするんだよな」  
未だに何で、自分があんな行動を取ったのか分からない秋晴は  
はぁ……と溜め息を吐きつつ寝返りをうつ。相当な馬鹿である。  
 
 
そして、本日のもう一人の主役彩京朋美はというと。  
表面上の優等生を演じる為に、昨日出された課題を終わらせていた。  
「さてと…課題も済んだ事だし、アイツでもからかいに行こっ!!」  
 
言うまでもなく『アイツ』とは幼馴染み、兼オモチャの秋晴の事である。  
秋晴で遊ぶのは楽しい、秋晴は自分の思い通りに、  
いや…それ以上に面白い事に巻き込まれるから、見ていて飽きない。  
(それに…アイツと居ると、何か…こう…楽なんだよなぁ)  
 
上機嫌で秋晴の居る寮の前まで来ると、意外な人物が中から出てきた。  
「あら、フレイムハートさんこんにちは。」  
セルニアは、声のする方を見ると直ぐに視線を落とし。  
「あぁ…彩京さん、ごきげんよう。」  
おかしい……朋美はセルニアの覇気のなさに戸惑う。  
「ちょーし狂うなぁ…」  
朋美は小声でボソッと呟く。  
「じゃあ…私はこれで」  
「え!? あ、ちょっと宜しいですかフレイムハートさん」  
思わず朋美は、セルニアを呼び止める、この覇気のなさと出てきた場所が  
秋晴が居る従育科の生徒用の寮なのが気になったのである。  
 
 
その後、セルニアと一緒に朋美は校内にあるカフェに来ていた。  
2人は紅茶を給仕のメイドに頼んでから、紅茶が届いてからも無言だった。  
話す事がないんじゃなく、セルニアの雰囲気のせいで  
朋美でさえも切り出しにくい状況であった。  
「あの…フレイムハートさん、何であの様な場所から出て来られたんですか?」  
本来の彼女なら、別にたまたまですわ!! 誰もあんな男には会いに来てないですわっ!!  
とかバレバレな嘘をついてツンぶりを発揮するのだが。  
「私……嫌われ……」  
今にも泣き出しそうなセルニアは、朋美に視線を合わせないまま呟く。  
「…は? え? 誰が誰にですか?」  
「………」  
「黙っていても分かりませんよ? フレイムハートさん」  
「私が……あの粗野で可愛げがなくて、しかもロリコンで!!」  
 
いきなり、まくし立てるかの様な勢いで喋り出すセルニア。  
虚を突かれ唖然とする朋美は、漸く言いたい事を言い切ったのか肩で息をするセルニアを  
見て、我に返ったら、妙にこみ上げてくる愉快な気分にクスクスと笑っていた。  
「な!! 何が可笑しいんですの!!」  
「ぃいえ…あの……プッ…可笑しいなんて、そんな事はありませんわ…フフ」  
否定をする言葉を言っても、行動が伴ってないので、説得力は0である。  
「もう、いいですわ!! 部屋に帰ります!!」  
「帰るんですか? 彼に嫌われたまま」  
「別に…あんな男に嫌われても、痛くも痒くもありませんわ!!」  
 
そう言うセルニアの表情は、今まで朋美が見た事が無い位、辛そうな表情だった。  
しかし、朋美は何故か妙に腹が立っている自分を抑えられずにいた。  
「そうですか」  
朋美は席を立ち、出口に向かって歩き出す。  
歩いている最中もイライラは増し、セルニアに対して何か一言言ってやろうと思うのだが、  
この一言を言うと駄目だと本能的に止める、そんな自分が分からなくて余計にイライラは増す。  
「フレイムハートさん」  
「何ですの…?」  
「彼の事嫌いなら、もう近付かないで下さいね?」  
(私…何言ってるんだろ…)  
 
「え…? 何故!? 彩京さん、あなたに、何でそんな事言われなければなりませんの!?」  
「それは、私が彼の事を……」  
(何で!! 口が勝手に!! 言っちゃ駄目!!)  
朋美は本能で理解した、これからある言葉を言ってしまえば後戻りは出来ないと。  
こんな風に、心が暴走を起こすなど無いと思っていた。  
自分の事は、全て理解出来ていると思っていた。  
しかし、理解していた訳ではなかった。  
ただ、無理矢理に自分自身を偽って来ただけ。  
それを本当の自分だと思い込んでいただけだった。  
自分を偽り続けるのは限界がある、そして限界を越えると、空気を入れすぎた風船の様に爆発する。  
今、正に朋美は限界を迎え、本来の姿に戻ろうとしていた。  
白麗綾学院上育科の優等生、彩京朋美としてではなく、彼の幼馴染みの鈴橋朋美として。  
今まで溜め込んだ感情が流れ込み、体中を満たし、言葉になって流れ出す。  
 
「彼の事…好きだからですよ!! 悪いですか?   
私、好きな人を貶されて黙って居られないんですよ!!」  
気付いてなかった訳じゃない、ただ、子供の時の様に離れ離れになったら怖いから、辛いから、私は逃げてただけ。  
逃げて、自分を偽り続け、ずっと心の底に沈めてた思い。  
彼と居ると私は私に戻れる、もうずっと前から好きだった。  
(認めた後は進むだけ!! みてなさい秋晴、あなたを私の虜にする!!)  
 

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