「この前テレビでヨーグルトばっかり食べるってやつをやってたけど、あれってどうなのか  
なあ」  
「ああ、それ見た見た。九時からやってたやつでしょ? でもさあ、やっぱ運動するのが  
一番なんじゃない?」  
「毎朝ジョギングとか? それができれば苦労しないって」  
「あはは、そりゃそうだよね」  
「うちのお母さんはダンベルがどうとか言ってたけど……」  
 女三人寄れば姦しい。  
 いつも通りの昼休み、5の2の女子達は机を囲んで話に花を咲かせていた。  
「んー、運動は苦手だし……やっぱり甘いもの控えるとかが現実的なのかなあ」  
 その中の一人、日高メグミがため息をつきながらガクリとうなだれる。  
 今の話題は「ダイエット」。年頃の女の子には避けては通れない極めて重要な問題では  
あるが、そうはいってもやはりそれに対する考え方に個人差はあるわけで。基本的には笑  
顔で話を続けている他の女子達に比べ、なぜかメグミ一人が余裕のない表情を浮かべて  
いるのはそういったところもあるのだろう。  
「でもさ、メグちゃん別に太ってないと思うけど?」  
「そうそう、気にしすぎだって」  
 深刻そうな顔でうつむくメグミに、ユウキとチカが苦笑しつつフォローを入れる。どこ  
かその言葉に憐憫の色が見えるのは、彼女達もその苦労をわかっているからか。  
「そうだよー。気にしすぎ気にしすぎー」  
 一方何のてらいもなく笑っているナツミには、どうやらその手の悩みは縁遠いもののよ  
うだ。  
「ありがとう。でも、そうは言ってもね……」  
 メグミの脳裏に体重計の目盛りが浮かび、再びため息。数字はいつだって動かしようの  
ないリアルだ。  
 
 落ち込むメグミを慰めるかのように、女子達が自然と顔を寄せたところに。  
「すぐに体重を落としたいというのなら『アレ』が良い」  
 どこからともなくカズミがぬうっと顔を現し、そう言った。  
「うわっ!」  
 一瞬皆驚いて顔を引くが、その言葉の意図するところ察すると先ほど以上に顔を近づけ、  
声を落とす。  
「ちょっ、相原さん。あ、アレって……」  
 ユウキがごにょごにょと語尾を濁しながら、カズミの肩を押した。  
「アレはアレよ。みんな一度くらいしたことあるでしょう?」  
「え? えーと……」  
「いや、それは……」  
「ま、まあ……なんてゆーか、その……」  
 メグミ、チカ、ユウキは皆顔を真っ赤にして視線をそらす。  
「え? なになに? なんのこと?」  
 ただ一人ナツミだけがきょとんとした顔で聞き返していたが、もちろんそれに答える声は  
ない。  
「まあ……恥ずかしいかもしれないけれど、試してみるのもいいんじゃない?」  
 カズミはそう言うと、またふらりと去っていった。  
 残された女子達はナツミ以外皆恥ずかしそうな、それでいて探るような視線でお互いの  
顔色を伺っている。  
 そしてそうこうしているうちに、昼休み終了を告げるチャイムが響いた。  
「ねーねー。だから、アレってなんなのー?」  
 もちろん、答える声はなかった。  
 
 
 放課後、図書室。  
 夕日が本棚を照らし、赤と黒のコントラストを作り出す中、メグミは一人本棚に囲まれ  
るような場所に置かれた机で静かに本をめくっていた。それは児童文学の有名なファンタ  
ジー小説だったが、今日はその内容になかなか集中することができない。  
 それもそのはず。  
(アレっていったらやっぱり……アレのことよね……)  
 メグミの頭の中は昼休みのカズミのセリフで一杯だったのだ。  
 アレ……つまるところ自慰行為の経験は実のところ何回かある。女子達の話題になった  
ことも何度かはあるが、しかしそれがダイエットに効果があるとは聞いたことがない。  
「本当……なのかな」  
 メグミは本はそのままに席を立つと、そっと本棚の向こうを覗いてみた。時間が遅いせ  
いか、図書室の利用者はメグミ以外いないようだ。奥の司書室に戻っているのか、貸し出  
しの受付にも先生らしき姿はない。  
 メグミはどこかそわそわしながら机に戻ると、開いたままの本を閉じた。  
 その顔が赤いのは、夕日のせいばかりではないようだった。  
 
 一方。  
「ったく、コウジ達どこにいったんだよ」  
 リョータは口を尖らせつつ、友人達を探して校内をさまよっていた。   
「まさか先に帰っちゃったんじゃないだろうな……」  
 先ほどまでは校庭で一緒に遊んでいたはずだったのだが、リョータがトイレから戻って  
きてみると、すでにそこには友人達の姿はなかったのだ。それからしばらく待った後、し  
びれを切らして思いつくままに校内をあちこち見て回ることにしたものの、もちろんそん  
な当てずっぽうな探し方でどうにかできるはずもない。  
 結局、リョータにとっては無駄に足を疲れさせただけの結果に終わっていた。  
「ん?」  
 そんなリョータの足が、「図書室」と小さく書かれた扉の前でピタリと止まる。  
「まあ……ツバサが一緒だからありえなくもない、か」  
 普段縁遠い場所ということもあってか、リョータはおずおずと扉を開けた。  
 扉から顔だけ出して、中をぐるりと見渡してみる。夕日が差し込む図書室は、蛍光灯の  
明りと相まってどこか物寂しい雰囲気をかもし出していた。  
「なんだ、誰もいないじゃんか」  
 ここも無駄足だったかと扉を閉めようとしたその時、リョータはどこからか小さな声が  
聞こえてくることに気が付いた。  
 しかし改めて図書室を見回してみるが、やはり人影らしきものはない。  
「奥……かな?」  
 自分でも良くわからないうちに息を潜めながら、静かに本棚の向こうを除き込む。  
 そこには見慣れた女の子が一人、机に身体を預けるようにして立っていた。  
(メグミ?)  
 声を掛けようかと思ったが、どこか様子がおかしい。  
 
「ん……ん……ふぅ……んっ」  
 よくよく見ればメグミは机に寄りかかっているのではなく、スカートの上からその股間  
を机の角に押し当てるようにして、ゆっくりと腰を上下に動かしいた。  
 その行為の意味するところは理解できなくても、なんとなく見てはまずいものを見てし  
まったのではないかということだけは、さすがのリョータにもわかる。  
 しかしまずいまずいとは思いつつも、その視線をメグミから外すことはできなかった。  
「……んんっ、や……こんな……くぅん……」  
 メグミの方もリョータの視線に気が付いてはいないのだろう、小さく首を振りながらも、  
次第に股間を擦り付ける動きが大きくなっていく。  
「ダメだよ……ん、んんっ! あ、ああっ、こ、こんな……ダメなのに……んん……!」  
 そう言いながらも、メグミの腰は止まろうとはしない。  
 しばらくすると口元に当てていた手が戸惑いながらも下りて行き、おずおずとスカート  
を捲り上げた。  
 夕日に照らされたその真っ白な布地を目の当たりにして、リョータが思わず喉を鳴らす。  
自分の中に響いたその音に一瞬驚き、慌てて身を縮み込ませる。  
「ああ……んあっ……んっ! んっ! ああっ! いやあ……声が、んんっ、んんんっ!」  
 漏れ出した声を押さえようとしてなのか、メグミは捲り上げたスカートの端を口に咥え  
た。  
 いつのまにかその手は胸に当てられ、顔は真っ赤に上気している。  
 
 腰の動きもただ押し付けるようなものから大きくグラインドするような動きに変わり、  
夕日を跳ねるそのメガネは浅くズレ込んで、鼻の上に辛うじて引っかかっているだけに  
なっている。  
「ふぅ、んんっ……ふぅうう! んんんっ! んっ、んんっ、ふぅんっ!」  
 潤んだ瞳からこぼれた涙が、頬に一筋跡を作っている。  
 やがてメグミは片足を持ち上げると、膝を曲げながら机の上に乗せた。ちょうど机の角  
に跨るような形だ。  
 差し込む西日に、スラリとした太ももが赤く染まっている。  
 そしてそのまま再びゆっくりと腰を前後に動かし始める。  
「んっ! んんっ! ふぅあんっ! やっ、ダメっ! んんんっ……んっ! ふあぁぁっ!」  
 何度も漏れ出しそうになる声を必死に押さえながらも、だんだんとその身体が前のめり  
になっていく。  
 メグミの荒い息と、微かな粘着質な水音だけが静まり返った図書室に響き渡り、リョー  
タは身動き一つせずにメグミの痴態を見つめていた。一刻も早くここを離れなければなら  
ないとは思っているのだが、まるで床に足が張り付いてしまったかのように動かない。  
「ああっ! やだ……んんっ! き、気持ちいいよう……こんな……ああっ、だ、ダメな  
のに……ふぅんっ、んんっ、こんなところで……こんな……ああぁっ! でも……んんっ!  
んんんんんー!」  
 すでに声を押さえることができなくなったのか、メグミの口からうわ言のような喘ぎ声が  
こぼれ出ていた。  
 
 上半身は完全に机に預け、下半身だけが別の生き物のように大きく蠢いている。  
「あー! んあ、んんっ……ああああっ! あっ、あっああっ、ん、ダメっ、な、にか……  
んっんっ! く、くるのぉ……!」  
 身体をぶるぶると振るわせ、口の端からは涎が一筋こぼれている。  
 すると。  
 思わず身を乗り出したリョータのランドセルが本棚の一冊に引っかかり、床に落ちた。  
「っ!?」  
(やばっ!)  
 そう思った時にはすでに時遅し。  
 メグミとリョータの視線が絡み合う。  
 メグミは一瞬だけ驚いたような表情をその瞳に浮かべたが、しかしそれはすぐに再び快  
楽の色に取って代わられる。  
「いやっ! あああっ……ダメっ、そんな……んんっ、み、見られてるのにっ! や、や  
だっ! んんんんっ、み、見ないでっ! あっ、んっ、あぁぁっ! と、止まらない……!」  
 そして。  
 メグミは一際強く腰を押し付けると、手足を震わせながら大きく仰け反った。  
「んっ、んんっ、ああっ! もうっ、ふぁあああっ、んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」  
 
 リョータは未だに小さく身体を震わせているメグミから、目を離すことが出来なかった。  
 今すぐにでもこの場から逃げ出したいのに、身体を動かすことができない。  
 そして荒い息をついていたメグミが、気だるそうに顔を上げる。  
 その目はリョータを非難するようで、それでいて熱く潤んでいて、どこか虚ろだった。  
 そのまま二人は無言のまま見詰め合う。  
 どれくらいの時間そうしていたのか、メグミが身体を起こし、その口がゆっくりと開い  
たその時。  
「えー? まさかここにはいないだろー?」  
 唐突に図書室の扉が開き、コウジとツバサが顔を出した。  
「なっ!」  
「お、いるじゃん」   
 思わず固まったリョータに構わず、コウジとツバサが中へ入ってくる。  
「いやー、悪い悪い。急に先生に手伝い頼まれてさー」  
 苦笑いしながらズカズカと近づいてくるコウジを見て、リョータはようやく我に帰る。  
「あ、あー! いや! いいんだいいんだ! 全然おっけー! そ、それより早く帰ろう!  
 すぐ帰ろう!」  
 慌ててその行く手を遮り、いぶかしがる二人を無理やり押し出すように図書室から追い  
出す。  
 そしてちらりと奥を確認し、自分も図書室を出てぴしゃりと扉を閉めた。  
 
 一方奥の机ではメグミが今更ながらの羞恥心と後悔に顔を覆いつつも、安堵のため息  
を吐き出したところだった。  
 
 
 翌日。  
「あ……相原さん。お、おはよう」  
「おはよう。アレ……試してみたの?」  
「えっ!? い、いや、あの、そ、それは……」  
「なんだ……してないの。やっぱり浣腸は恥ずかしい?」  
「……え?」  
「ん?」  
「……今、なんて……?」  
「浣腸」  
「……はい?」  
「体重、減るでしょう。すぐに」  
「……それは……そうだけど……」  
「どうかした?」  
「ううん……ただの自己嫌悪……」  
 
 

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