「お待ちになって―――」  
女の声を背に受け、黒衣の男は立ち止まる。  
「もう一つだけ―――お願いが―――」  
男は静かに振り返る。その肩に、桜の花弁がぽつり、ぽつりと舞い降りる。  
「何でしょうか?」  
「その―――」  
問われ、女は何故か下を向く。桜色の女の頬が桜色に染まってゆく。  
それに気付いているのか、いないのか―――男は無言のままである。  
二人の時間は暫し停滞し、ただ宙を舞い散る無数の桜の小片だけが、  
果敢なき時の流れの中を生き、地に落ちては死んでゆく。  
やがて女は顔を上げる。  
「私から、落として欲しいものがあるのです」  
男は再度、意外そうな表情を浮かべる。  
「何のことでしょう? 先程言ったように、あなたから落とすべきものなど―――」  
違うのです、と女は首を振る。  
「あなたは―――私の過去を善く見通していらっしゃる。わかりませんか?」  
男は少し間をおき、  
「わかりませんね」  
と言った。  
「嘘―――私にはわかります。あなたは、私が抱える古傷にこれ以上触れるまい、  
と慮ってくれているのでしょう。でも、違うのです。私には―――」  
男の瞳が深い憂いを帯びる。  
「止めておいた方がいいでしょう。『そうした』ところで、あなたの傷が完全に  
癒えることはありません。僕は拝み屋に過ぎない。あなたの記憶を消し去ることも  
塗り潰すことも出来ないのです。それに結局は―――哀しみを深めるだけだ」  
「お言葉を返すようですが、その読み方では、あなたに私の本意は解りません」  
男はもう一度、少し驚いたように、ほう、と息を漏らした。  
女は目を細め、今まさに陽の落ち行かんとする海の彼方を眺めながら、言葉を紡ぎ出す。  
「ただ一度でいいのです。それ以上は望みません。その一度の経験があれば、  
それを支えに前へ進める、過去にだって耐えて行ける―――私は―――  
そう信じて―――しまっているのです」  
女の声が揺らぐ。しかし女はさっき決めたばかりなのだ。之先一生泣きはせぬ、と。  
誰よりも強く生きてみせる、悲しくとも辛くとも笑っているのだ、と。  
「その後で、どれだけ悲しくなっても、淋しくなってもいいのです。それだけの覚悟は  
出来ています。ですから、お願いです―――」  
女は真っ直ぐに男の目を見据えた。濡れた瞳だった。  
「私を―――抱いて下さい」  
 
 
部屋に入るなり、中禅寺と茜は口づけを交わした。  
最初は唇を触れ合わせるだけ。胸の動悸が高まるにつれ、より深く。  
いつしか二人は貪るように激しく舌を絡ませ合っていた。  
じゅるじゅると唾液を啜る音が、ぴちゃりぴちゃりと舌同士がぶつかる淫靡な音が、  
それまで静謐に満ちていた部屋に響き渡る。  
互いが十分に味わったと感じた時、二人は口を離した。  
その際、舌先と舌先の間を、ゆらりと透明な糸が引いた。  
「意外―――でした」  
茜が中禅寺の胸に顔を埋めながら、呟くように言った。  
「きっと断られると思っていました。あなたのことですから、『残念ですが、  
御期待には添えません』とでも仰るかと」  
「いい読みです。やはり、あなたは―――何度も言うようで恐縮ですが―――  
とても聡明い」  
「あなたこそ―――やっぱりお優しい」  
「誤解です」  
「そうでしょうか」  
憮然とする中禅寺の顔を見て、茜はくすり、と笑った。  
茜は後ろを向き、和服を下ろして肩を露にする。  
淡雪のように白い肌が目に眩しい。  
首筋に顔を寄せれば、細かい金色の産毛が、窓から差し込む夕陽を受け、結晶のように  
煌くのが見て取れる。  
中禅寺は後ろから茜を抱き締めた。  
茜の頬に己の頬を寄せる。  
茜のはだけた胸元に手を入れ、温かく柔らかな乳房を掌で包み込む。  
「あぁ」  
恍惚の吐息が茜の唇から漏れた。  
二人は其の侭、寝床に倒れ込んだ。  
 
帯をとき、薄紅色の和服をふわりと開くと、茜の裸身が夕陽の下に晒された。  
ほどよく均整の取れた女らしい体つき。雪のように白い柔肌はとても滑らかで、艶やかで、  
しかも張りがある。  
形の良い、ふくよかな乳房の上では、膨らんだ桜色の蕾が春を待っている。  
肩から腰に掛けての優しい丸みを帯びたラインが艶かしい。  
頬は体を視られることへの羞恥で、ほんのりと朱が差している。  
成熟した女の匂いたつような色気と、若い女だけが持ち得る新鮮さが渾然として、  
息を呑むほど美しく官能的な体だった。  
女性経験に乏しい男なら、一目見ただけで眩暈を起こすに違い無い。  
 
茜は中禅寺の動きを待って、少女のような恥じらいを顔に浮かべ、息を顰めている。  
中禅寺はまず茜の左胸に耳を当てた。目を閉じて、茜の高鳴る鼓動に耳を澄ます。  
 
「―――よく聴こえますよ。茜さんの音が」  
 
そう云った中禅寺が愛しくて、茜の胸は恥ずかしさと嬉しさの入り混じった  
気持ちで温かく濡れる。  
同時に罪悪感で胸の奥がチクリと痛んだ。  
中禅寺は妻帯者である。そして余程の理由が無い限り、妻を裏切るような男ではない。  
そんな男を茜は寝床に誘い込んでいるのだ。妻―――千鶴子さんと言ったか―――が  
知ったら大いに悲しむことだろう。  
 
「……あ」  
 
思わず茜は小さな声を上げる。  
中禅寺が右の乳房を口一杯に頬張ったのだ。  
うっとりするほど甘くて柔らかな肉を、形が変わるほど強く吸い、緩め、また強く吸う。  
緩やかなペースでそれが繰り返される。  
 
「ん……んぁっ……はぁん……」  
 
そして、その間中、中禅寺の舌は茜の乳首を集中的にねぶり続けていた。  
慈しむように、優しい舌の動きで。と思えば、舌が乳房にすっかり埋まるほど、  
尖らせた舌先を強く乳首に押しつけてくる。  
左の乳房に中禅寺の左手が掛けられ、右手が背中に回される。  
右手は初め茜の背中を撫でていたが、やがて下に降り、より柔らかな部分に辿り着く。  
 
「……あぁ……ん……くぅんっ……」  
 
右の乳房から伝わる中禅寺の口の温もり。  
優しく揉みしだかれ、解きほぐされてゆく、左の乳房と尻の肉。  
茜の意識を甘美な陶酔が占領していく。  
 
「ちゅ……あぁっ……ちゅ、中禅寺さん!」  
 
事もあろうか、中禅寺の右手の指が茜の肛門をなぞり始めた。不意のことで、背筋が  
ぞくりと震える。  
 
「お嫌ですか?」  
「そ、その、汚い……です……から……あっ…ん…」  
 
羞恥心で言葉が尻すぼみになってしまう。  
 
「汚くなんかありません。僕は汚いものになど触りませんよ。ただ―――茜さんが、  
不快にお思いになるようでしたら、止しますが」  
 
実際、気持ち良かった。このまま続けて欲しいと思った。  
勿論、そんな事を言える筈も無く、茜は口を噤み、顔を横に背ける。  
きっと中禅寺は自分の赤くなった顔を見ているのだろう、そう思って茜は益々赤くなった。  
 
茜は男を知らない訳では無い。寧ろ普通の女より、遥かに経験は多い。  
だが、本当に抱かれたいと思って抱かれたことは一度も無い。  
なにしろ―――  
まだ年端も行かぬ少女だった頃の残酷な記憶は未だに茜を苦しめているのだ。  
また、茜は一時期とある事情で進駐軍専門の娼館(SA)にいたが、  
そこにもいい思い出は無い。  
初めは、与えられた居場所と己の存在理由が在ることへの安堵があった。  
しかし、それと引き換えに課せられた地獄のような日々は、当時の茜の肉体と精神を  
限界を越えて蝕んでいった。  
結局、半年経ってSAは崩壊し、茜は再び居場所を失った。  
何処にも居場所が無かった。  
居場所が無くて家を飛び出したのに、与えられた居場所も駄目だった。  
個を求め走り続けて最後に得られたのはボロボロに傷ついた自分だけだった。  
茜はその記憶を今日まで引き摺って生きてきた。  
この先も一生、苛まれ続けるのだろう。  
だから―――だから、中禅寺に期待したのだ。  
中禅寺は生まれて初めて茜が本気で言葉を闘わせた男である。  
そして中禅寺は云わずとも茜の過去をわかっていた。  
中禅寺ほど茜を理解する者は他にいないし、いなかった。  
死んだ肉親でさえ、ある意味他人以上の隔たりがあった。  
それに中禅寺は否定するが、彼は優しい男だ。憑き物落としという立場上、  
己の感情を徹底的に殺さねばならないだけなのだ。  
茜には分かる。彼は本当に辛い境遇に身を置いているのだと。  
愛しかった。狂おしいほどに。切なくて、切なくて―――  
一度でいいから、抱き締めて欲しいと思った。  
中禅寺の体温を感じたかった。  
これが恋なのだろう。それも決して叶わぬ恋なのだろう。  
だからこそ、今この時、一瞬一瞬が愛しく大事に思えた。  
中禅寺の温もりを、この胸に、肩に、唇に、舌に、頬に、腕に、体中の深い所に  
焼き付けて永遠に離したくなかった。  
 
「……あ…ぁ……んく……ぁ…ああああっ」  
 
中禅寺の人差し指が茜の肛門を貫き、敏感な粘膜の中を自由に遊び回る。  
同時に、濡れそぼった膣にも中指と人差し指の二本が同時に差し込まれ、ゆっくりと  
前後運動を開始する。  
 
「ひぅっ……ああんっ……や、いやああああ!」  
 
堪らず嬌声を上げる。中禅寺の手は止まらない。茜は身悶えしながら、必死に中禅寺の  
体にしがみつく。爪を立てないよう、意識を保つので精一杯だった。  
不意に中禅寺の指の動きが止まる。  
 
「あ……」  
「悪乗りし過ぎましたか?」  
 
中禅寺が問う。顔が見えなかった。悪戯っぽく笑っているのかもしれないし、  
あるいは中禅寺らしい、あの無表情でいるのかもしれない。  
声から中禅寺の感情を読み取ることは出来ない。  
 
「い、いえ……」  
 
気付けば完全に中禅寺のペースに嵌っている。  
思わず下を向くと、自分の愛液でべとべとに濡れ光る手首が目に入り、余計に茜は恥じ  
入った。  
 
「もし、お嫌でしたら我慢せず云って下さい。僕も男です。気づかぬ内に、  
巷の破廉恥漢と同じことをしているかもしれない。  
尤も破廉恥漢と普通の男を別つ境界など幻想に過ぎませんけどね」  
「そんな、破廉恥漢だなんて……むしろ……」  
 
茜は消え入るような声で、気持ちようございます、と云った。  
恥ずかしさで一瞬、意識が飛びそうになる。  
そんな茜の頬に中禅寺の唇がそっと触れる。  
そこで初めて茜はある事に気がついた。中禅寺がしてくれる一つ一つの行為が茜を  
少しづつ解き放っている。  
気づいた途端、涙が出そうになった。しかし、必死で堪える。潤む瞳を見られたくなくて、  
茜は中禅寺の顔をそっと胸に抱いた。  
 
「くぅんっ……」  
 
下半身の二穴への攻めは続いてゆく。腹の底から湧き上がる快楽に、茜はたまらず右へ  
左へ身をよじる。  
そして、絶頂が近づいて来た時、全ての指は抜き去られた。  
喪失感と開放感の交じり合った矛盾する感覚。  
息をつく間も無く、中禅寺が茜の体に腕を回し、押し倒してきた。  
茜も中禅寺を抱き締めた。中禅寺の胸板にぴとりと乳房が押し付けられ、  
一様に潰れ広がるのがわかった。  
 
「茜さん」  
 
中禅寺の声。意味を悟り、茜は何も云わずに頷いた。  
中禅寺が茜の足を蛙のように開かせ、正常位の体勢を取る。  
最初、中禅寺は直ぐに挿れず、数回、茜の肉壷の入り口に己の肉樹を擦り合わせてきた。  
そして、待ち望んだ瞬間が訪れる。  
柔らかな肉壁を掻き分け、怒張した肉の突起がぬるりと茜の中に入ってくる。  
 
「あん……」  
「くっ……」  
 
中禅寺がゆっくりと動き出す。浅い位置から、中禅寺が辿り着ける内で、茜の最も深い  
部分まで深々と男根が突き刺さる。  
そこで茜は中禅寺の腰に足を絡めて、中禅寺の動きを止めた。  
 
「―――茜さん」  
「しばらく……このままで……それと……」  
 
茜は目を伏せる。  
 
「中に……お願いします」  
「いいのですか?」  
「避妊薬を飲んでいます」  
「なるほど」  
 
茜の体は前戯の時点で熱く火照り、秘孔からは大量の熱い汁が分泌されている。  
故に茜の膣内はとても暖かく、極上の潤滑油に濡れそぼち、柔らかく、それでいて  
きつく、すっぽりと中禅寺の肉樹を呑み込んでいた。  
茜が足を解くと、中禅寺は直ぐに動きだした。  
徐々にピストン運動が加速し、二人の呼吸も荒くなって行く。  
中禅寺が腰を茜の股ぐらに撃ちつけるたび、結合部からぴちゃぴちゃと卑猥な水音がする。  
 
「ああっ……んん…あああっ!」  
 
茜の胸が―――二つの白き肉球が、ふるふると揺れる。  
中禅寺がそれを激しく揉みしだく。  
中禅寺が茜を抱き上げ、膝に乗せる。  
抱き合い、唇を求め合いながら、二人で腰を動かすリズムを合わせる。  
 
「あんっ!」  
 
深く柔らかい所を貫かれ、茜は、今日最も高い声で嬌声を上げる。  
 
「くっ……ああ! 茜さん、いきますよ!」  
「ひゃうっ……ぅ…は、はいっ!」  
 
中禅寺が一層激しく腰を突き上げる、膣の奥の奥まで激しく刺激される、ぐちゃぐちゃに  
中を掻き回される、空気と混じり合い白くなった粘液が飛び散る、ぞくりぞくりと快楽が  
足の裏から這い上がってくる、絶頂が―――絶頂が近い!  
 
「うっ……ああああああ!」  
「あああああんっ!」  
 
そして―――二人は―――同時に―――  
 
果てた。  
 
茜の膣がビクビクと痙攣し、内に包み込む中禅寺を一層きつく締め上げる。  
痙攣は暫く続いた。中禅寺が放った熱い白濁液は、その痙攣によって、茜の体内へと  
吸い込まれていった。  
 
「ああ……」  
 
茜が胡乱な視線を中禅寺に送る。中禅寺も見つめ返す。そうして、長い間、二人は見詰め  
合っていた。  
 
「茜さん」  
「中禅寺さん」  
 
二人は堅く抱き合い、そっと唇を合わせ、足を絡め合い、産まれたままの姿で―――  
一つになった。  
 
 
 
―――何だか、とても温かい。  
 
夢と現の狭間で、茜は穏やかな安らぎを感じていた。  
重い瞼を少しだけ上げる。薄暗い。  
肩に何かを感じた。―――細い―――腕?  
途端に昨日の記憶が蘇る。茜はあのまま意識を失い、今まで眠っていたのだ。  
茜は傍らで静かな寝息を立てて眠る中禅寺の華奢な体に身を寄せていた。  
中禅寺の体温を感じる。肌の触れている部分に意識を集中する。  
朝が訪れたら、彼は彼の日常へ帰っていくのだろう。  
この温もりをこうして感じていられる時間も残り少ない。  
そう思うと哀しくなった。  
 
―――哀しみを深めるだけだ。  
 
あの時の中禅寺の言葉が、茜の胸に寂しく木霊した。  
つう、と温かい雫が茜の頬を滑っていった。勝手なものだ。  
自分で泣かないと決めたくせに。覚悟も出来ていた筈ではないか。  
不意に頬を何か柔らかいものがなぞっていった。  
いつの間にか目を覚ました中禅寺が、涙を唇で吸い取ったのだと、すぐに気づく。  
 
「中禅寺さん?」  
 
―――どうして  
 
「茜さん、あなたは―――泣いてはいけませんよ」  
 
―――どうしてあなたは、こうも私の心を乱すのですか?  
 
湧き上がる感情を抑えきれず、茜は中禅寺の胸の中で声を張り上げ、泣いた。  
一ヶ月前の葬式で枯れ果てた筈の涙が、止め処無く溢れた。  
茜が泣いている間、中禅寺は茜をそっと抱き締めていた。  
哀しくて、切なくて、やるせなくて、茜の胸は今にも張り裂けそうだった。  
やがて泣き叫ぶ力も底をつき、短い嗚咽を繰り返しながら、茜は、ぐったりと中禅寺の上  
に身を横たえた。全身の力がすっかり抜けていた。  
 
「茜さん、あなたに―――僕は一つだけ言い忘れていたことがあります」  
 
中禅寺が語りかける。静かな声だった。  
 
「こんな時に野暮かもしれませんが、どうかお聞きください。  
心とは一体何かという問いは、文明が始まって以来、哲学、宗教、心理学、社会学、  
精神分析、脳外科学など、様々な方面、学問分野から研究されてきた命題ですが、  
それでも未だに答えは出ていません。  
しかし一つだけ確かなことがあります、それは―――」  
 
中禅寺が茜の体を抱く腕に、そっと力を込める。  
 
「心と体は不可分であり、精神とは肉体の写し身だということです」  
 
「そ、それが―――」  
 
「あなたの居場所は、この体ですよ」  
 
―――そうだったんだ。  
 
茜は取り憑かれていたのだ。きっと何処か知らない場所に、無条件の安らぎを得られる  
自分だけの居場所があるという幻想に。  
今までほんの少しも気づかなかった。  
もし気づいていれば―――  
こんなに人が死ぬことも、こんなに悲しみを感じることもなかったかもしれない。  
茜の表情を見て、何かを察したのか、中禅寺が言葉を続ける。  
 
「記憶の中で過去に遡り、実際には起きなかったことが起きたと仮定して、現実とは  
異なる現在をあれこれ想像するのは簡単です。しかし、それは全く意味が無い行為です。  
何故なら―――この世の全ては、なるようにしかならないのですから」  
 
悲しみが篭った声だった。  
何しろ、そこにこそ自分の悲しみがあるのだ、と中禅寺は語ったのだ。  
 
「そうでしたねそうでした」  
 
涙声を絞り出すようにして、茜はやっとそれだけ言った。  
中禅寺はそれ以上何も言わずに、ただ茜の体を抱き締めていた。  
温かい。  
茜はもう何も考えないことにした。  
夜明けが来るまで、朝陽が差すまで、ただひたすらこの温かさに浸っていよう  
と思った。  
 
まどろむ意識の中、まるで体がとろけてしまいそうな優しい安息感に包まれて、茜は  
遥か遠くに雀の鳴く声を聴いた。  
 
 

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