いつもこの狭い部屋を賑やかにする顔ぶれは今日も来た。  
そしていつも通り、夕飯を済ませ、彼らは各々の家へと帰って行った。  
「全く、人の家をなんだと思っているんだ」  
夫がこれまたいつもの通り、不機嫌極まりないといった風な声でぼやいた。  
千鶴子もいつもの通り、その言葉に応える訳でもなく、  
ただ黙って夫の前に湯のみを置いた。  
「君は構わないのか」  
珍しく問い掛けてきた夫に顔を向ける。  
「何故ですか? 賑やかで良いではありませんか」  
茶をすすりかけた夫の、元より不機嫌そうな顔がより一層不機嫌に彩られる。  
「そうか、君は良いと言うのだな」  
「良くないのですか?」  
「このところ、いつもじゃないか」  
そう言われれば確かにそうである。  
この一月、客が敷居を跨がなかった日が思い出せない。  
夫の妹、友人、果ては初見の刑事までやってくる。  
千鶴子はその面々を思い浮かべてから、そう言われればそうですね、と笑った。  
「何が可笑しいんだ」  
「可笑しい訳ではありませんよ」  
「だが顔が笑っている」  
「強いて言えば、嬉しいから笑っているのかもしれませんね」  
膝の上で弄んでいた盆を脇に置き、千鶴子は夫の顔を覗く要に首を傾げた。  
 
「嬉しい? 毎日の様に客が来て嬉しいのか?  
店でもあるまいし」  
今度は夫の言葉が可笑しくて、千鶴子は口に手を添えて小さく笑った。  
「あなた……一応、ここは本屋でしょう?」  
夫が片眉を寄せて、小さな咳払いをするのを見てから、千鶴子は再度口を開いた。  
「あなたの周りに人が居るのが嬉しいのです」  
そして、なんやかやと文句を言いながら、来る人を放っておけないあなたを見るのが。  
きっとこんな事を口に出したら、夫はまた不機嫌になり、照れを隠して、  
無口になり、下手をすれば寝てしまうかもしれない。  
だから、それは口に出さなかった。  
きっとそんな気持ちには気付いていないのだろう。  
夫は憮然と口を開いた。  
「僕は嬉しくない」  
「はい」  
「はい、と言うが、本当に分かっているのか」  
「何をです?」  
「ほら、分かっていないじゃないか」  
「何が嬉しくないのかは分かりませんが、  
人が来ることを快く思っていないのはよく分かります」  
「存外鈍いな、君も」  
笑顔で返すと、夫の不機嫌はその色を増した。  
けれどその口ぶりと言葉に、夫の不機嫌の理由がなんとなく分かった気がして、  
千鶴子はカマをかけてみる事にした。  
「でも……あなたと二人きりで夕食を取る事が最近、ありませんね」  
夫の不機嫌が僅かに弛緩する。  
 
自分の勘が当たったらしい事に千鶴子はまた笑みを零しそうになったが、  
それは夫の唐突な言葉に止められてしまった。  
「明日は何か用があるのか?」  
「……いえ、何もありませんが……」  
「関口君の細君とどこかに出かけるとか、そういう用は無いのかと聞いている」  
「ですから、何もありません」  
「という事は多少の夜更かしは構わないという事だな」  
こちらを向かないまま告げられた言葉に、はじめ夫が何を言っているのか分からなかったが、  
ようやく意味を解すると、千鶴子はああ、と小さく声を発してから頷いた。  
「はい。構いません……」  
頬が火照るのが自分でも分かる。  
そう言えば、この一月、下手をすれば客が泊まっていった所為もあって、  
床を並べる事はあっても、共にする事は無かった。  
熱くなった自分の頬に手を添え撫でると、その手を不意に引かれた。  
驚いて思わず声を上げたが、夫は腰に手を回し軽々と千鶴子を膝の上に乗せてしまった。  
布団を敷くでもなく、唐突に抱き寄せられれば、さしもの京極堂の妻と言えど動揺せざるを得ず、  
千鶴子は夫の顔を見上げたが、彼はそんな事は問題ではないのだ、と言う変わりに  
無粋な言葉を口から吐いた。  
「全く、彼らは無神経なのだ。  
僕にだって欲求という物があることくらい、解していい筈なのだが」  
もう少し色気のある言葉を使って欲しいと思う反面、この夫が女を喜ばせる様な言葉を  
紡ぐ姿はどうにも想像できず、またそんな言葉を使って欲しくないという矛盾を感じ、  
千鶴子は黙ったまま、先程より更に火照る頬を、そっと夫の肩に押し付けた。  
 
額に唇が触れる。  
いつも小難しい事を回りくどく、その割には分かりやすく解き、告げる唇が額から瞼へと落ちていく。  
もう夫婦となって結構な時間が経つと言うのに、まだ心臓がどきどきと打つ。  
まるで十四、五の少女のようだ。  
もしかしたら、布団が無い所為かもしれない、こんなに近く夫に触れるのが  
一月以上ぶりの所為なのかもしれない、とも思ったが、今はその心地よい心臓の刻みと  
夫の外見にそぐわぬ逞しい体つきに身を任せることにした。  
緩い力で瞼を啄ばむ唇に促されてほんの少し顔を上げる。  
薄い唇は今度は鼻梁を通り過ぎ、頬の方へと落とされた。  
自分の唇が夫のそれを欲して震え、手が無意識のうちに夫の着物の襟を握った。  
ふ……、と小さく息の漏れる音が聞こえた。  
自分が洩らしたのか、それとも夫が洩らした物か区別がつかない。  
それでも千鶴子は思わず息を詰め、じんわりと熱を帯びて来た脚を、夫にそれとばれない様にすり寄せた。  
ようやく夫の唇が自分の唇を撫でた。  
それでもそれ以上、深められる訳でもなく、ただ撫でる程度の口づけを  
幾度も幾度も繰り返されて、焦れた千鶴子は眉を顰めた。  
 
以前夫は、口づけは性感を高めるのに必要かつ有意義な行為だ、と言っていた。  
人間とて動物なのだから性欲を有するし、むしろ発情期という物がない所為で、  
人間は性交という行為に快楽を求め、子孫を残すという目的以外の物を見出した。  
その欲求に強度の差こそあれ、性欲を有し、性的な快楽を求めるのは男も女も同じである。  
それ故、口づけを欲する行為は人間として至極当然の行為である。  
だから僕は君が口づけを求めても、ましてや身体を求めても、日本の風習になぞらえて、  
はしたないだの女として間違っているだの思わないから安心したまえ、とも言った。  
しかし、どんなに説き伏せられても理論で固められても、幼少の頃から受けた教えと言うものを  
そう簡単には変えられない。  
女の方から求めるのは、理由以前にやはり良くない事であり、  
良くない事であるが故に、してはいけない事なのだ。  
けれどやはり欲しいとも思う。  
知らないうちは欲しいなどと思う物ではなかったが、あの感触を知ってしまった今、  
それを与えられる事を望んでしまう。  
羞恥と身体を侵し始めた欲情の間で千鶴子はまた眉を顰め、またどちらとも知れぬ息が零れる音を耳にした。  
 
「欲しければ……欲して構わない、と前に言わなかったかい?」  
触れたままの夫の口から言葉が聞こえた。  
気持ちを悟られていた事にまた頬に血が上る。  
伏せていた睫毛を上げて、夫を見やる。  
「……ご存知なのに下さらないのは、ずるいです」  
「ずるいものか。言わない君が悪いのだ」  
「……あなたは私を欲しては下さらないのですか?」  
「欲しくなければ君を膝に招いたりなど、僕はしない」  
「……そう、ですね」  
遠回りをして、それでもちゃんと目的地に到達する夫の言葉に千鶴子は小さな笑みを浮かべ、  
夫の襟元を握り締めていた手を首へと廻し、自分から少しだけ顔を寄せた。  
腰に廻されていた夫の腕にも、自分にしか感じられないほどではあるけれど、  
力が篭り、引き寄せられる。  
唇と唇の間にあった小さな空間がぴたりとふさがる。  
欲求が満たされたのとは違う安堵感に身体から少し、力が抜けた。  
緩く、強く、互いに唇を押しつけ合ううちに、閉じていた唇の上下がどちらからともなく  
新しい隙間を作っていく。  
歯が当たる。  
濡れた舌先が感じられる。  
千鶴子は自分からもおずおずと舌を差し出した。  
 
ちゅぷ、と卑猥な音が耳に響き、夫の舌が口内へと侵入して来た。  
一度だけ自分の舌を絡め取ると、すぐにそれは通りすぎ、口の中の輪郭を、歯を一つずつ丁寧に辿って行く。  
頬のうちを擽られれば背筋が意志とは無関係にひくりと反り、  
舌先が歯茎を突つけば身体の芯が熱を零した。  
「ん……ふ、ぅっ……」  
唾液に濡れた舌が自分の口腔を巡る音と共に声が漏れる。  
それが夫を刺激している事など気付きもせず、夫の舌の動きに促されるように、  
千鶴子が漏らす声は次第々々と高まっていった。  
「っ、ふぁ…う……んっ………んぅ?」  
不意に腹にあった圧迫感が抜けた所為で、はたと我に返り、  
自分が出していた声と、いつの間にか自分からも絡めていた舌に気付く。  
千鶴子の動きが止まった事に気付いたのか、夫も舌を動かすのは止めた。  
けれど、帯を解いた手は動きを止めない。  
帯は着物と擦れ合い、しゅるりと音を立てて身体から離れていった。  
下帯にも手がかかり、千鶴子はこくりと喉を鳴らした。  
息を呑んだだけのつもりだったが、予想以上に口を満たしていた唾液が喉を通り過ぎ、  
また、顎が上下した所為で唇の端に溢れていた唾液が首へと落ちていき、  
そんな事にも気づかず夫の舌を貪っていた自分を知って、千鶴子はまた顔を火照らせた。  
 
「君も……」  
下帯を解きながら夫が言った。  
小さく頷き、首に廻していた手を胸を伝わせ、腕の下を通らせて腰へと廻す。  
結び目に届かない。  
千鶴子はそう思って少し身体を寄せた。  
きちりと結ばれた帯の結い目に指が触れたのと同時に、脚に夫の硬く隆起したものが触れた。  
別に今更、どうという訳はない、ないのにどきりとしてしまい、伸ばした手も止まってしまった。  
「脱がなくてはこの先は出来ないだろう?」  
夫の声がした方にはっと顔を上げると、唇がほんの少し笑みをかたどっていた。  
見ようによっては意地悪くも見えるが、いつも滅多に笑みを見せない夫のそれは、  
何故だか千鶴子を安心させた。  
夫の方は下帯もどこかへ投げさり、千鶴子の着物の合わせを既に広げていた。  
肌着の隙間から白い乳房が電灯に浮かび上がるのを隠すかのように、千鶴子はまた身体を寄せ、  
帯の結び目に手を伸ばした。  
大腿部に触れていた形がより明瞭になったけれど、もう構わなかった。  
むしろ晒され、触れられる肌が熱を増し、それを欲しがっているのが自分で分かったから、  
千鶴子は固く結われた帯を片手でどうにかして解こうとした。  
 
千鶴子がやっとの思いで夫の帯を解き終え、夫が自分にしたのと同じ様に、  
しゅるりと音を立てて着物から離すと、夫は千鶴子の肩を押して身体を少し離させた。  
「あ……」  
肌蹴た着物、肌着から乳房が現れ、左の乳首だけがその赤い顔を覗かせた。  
腰巻も露わになり、まだ脚が晒された訳でもないのに、千鶴子は脚を今までよりきつく閉じた。  
その所為で秘部の口までこぼれ出てきていた雫が一筋、尻へと零れ千鶴子は眉を顰めた。  
「こういう君は常と違って厭らしいな。  
まるで何か、関口君や木場修が言うところの妖怪の様だ」  
細い指を乳房に添え緩く動かし、人差し指で乳首の先を弄りながら夫が言う。  
彼なりの誉め言葉のつもりなのかもしれないが、いまいち色気がない。  
それでもそれはそれで構わない。  
千鶴子は与えられる刺激にふる、と肩を震わせながら問うてみた。  
「それは…っ……どんな妖怪です?」  
夫の視線が自分の視線に絡みつく。  
彼もほんの少しのぼせているように見えて、千鶴子はそれだけでまた意味なく嬉しくなった。  
「僕という、男を惑わす妖怪だ」  
「それなら……妖怪でも構いません」  
ふ、と上せた吐息混じりに笑みを零すと夫は憮然としながら、本来の妖怪というのは  
もっと違うものなのだが、と言った。  
言いつつも手はしっかり腰巻の紐を解いている。  
千鶴子もそれに習って夫の着物を肌蹴させ、着物の上からでは解らない、  
意外に筋肉のついた身体を電灯の元へと晒していった。  
 
夫が紐の解けた腰巻を剥ぎ始めると、千鶴子は慌ててそれを押し留めた。  
「今更隠す事もあるまい?」  
「そ、それはそうですが……せめて明かりを落として下さい」  
その言葉に夫はふい、と天井に顔を向けた。  
向けたがすぐに千鶴子の方にそれを戻し、  
「残念だ。僕はあれに手が届かない」  
と真顔で告げた。  
身体中を血が巡るような羞恥に襲われ、千鶴子は子どもがいやいやをするように首を数度横に振った。  
「あ……では、では……それは取らないで……」  
「取らなくては、触れられない。触れられなくては潤せない。  
潤せなくては……君に辛い思いをさせてしまう」  
脚を包む淡い桜色の布の上から、骨ばった手が言葉と共に脚を撫でる。  
腰のあたりがざわりと泡立つ。  
泡立つ辺りから下った所が触れて欲しいと言わんばかりに、痛みにも似た痺れをじんじんと脳に伝える。  
千鶴子はもう何も言えずに夫にしがみつき、その膝の上、彼の腕に支えられ、  
半ば身体が横たわった状態のまま、背にしがみつき、その胸に額を押し付けた。  
熱くなった耳に唇が触れる。  
もしかしたら、夫は宥め様としてくれたのかもしれなかったけれど、  
それすらも千鶴子を高める行為にしか過ぎなかった。  
 
晒された脚が秋の始まりを告げる少し涼しい外気に触れた。  
しかし、それはつまり夫の目に下半身が晒されたという事。  
身体に自然と力が篭り、内から零れた熱い雫が千鶴子の秘部を包む恥毛にじわりと染みた。  
腰の骨から、脚の付け根を辿って指がすう、と滑り降りてくる。  
「はっ……」  
息を呑んだ千鶴子の生態が震え、静かな部屋に声が響いた。  
押しつけていた頭の上で、夫の喉が鳴る音が聞こえた気がした。  
指が下腹部の肌の上をなぞっていく。  
一瞬、その感触が途切れたが、何か違和感を感じる。  
もしかしたら夫が恥毛についた雫を拭っているのかもしれない。  
ふとそんな事が頭に浮かんだが、その羞恥に身を固める余裕はもはや千鶴子には残っていなかった。  
ただ、ふうふうと荒く息を継ぐのが精一杯で、意識も一ヶ所に定めておく事が出来なくなっていた。  
夫の指が秘裂の入り口を幾度も丁寧に辿り、中に侵入して来た時にはそれだけで身体がびくりと反った。  
 
そんな千鶴子に夫が囁いて来た。  
「君、立てるかね?……膝で」  
もたもたと顔を上げると、見なれた顔が熱のせいか少し滲んで見えた。  
諭された幼子のようにこくん、と一つ頷き、千鶴子は力の入らない脚にどうにか力を入れ、膝で立とうとした。  
夫もそれを手伝う。  
肌蹴ていた腰巻がする、と畳の上に落ち、夫に頭を預けていた所為で乱れていた髪が一房目の前で揺れた。  
半ば恍惚感に浸っているとはいえ、着物を猥らに身体に羽織った状態の身体を  
夫に晒すことにはやはり抵抗があったけれど、もう抵抗する術も力も見つけられず、  
千鶴子はただ夫に促されるまま、彼に身体を預けた。  
夫もまた着物を肩から羽織っただけの状態で、片腕で千鶴子の腰を抱き身体を支え、  
やわらかな乳房に鼻先を埋めながら、その下でもそもそと手を動かしていた。  
そう言えば、自分は途中で夫を脱がす事を止めてしまった。  
ふと、それを思い出したが、夫の動きが何故だか妙に少年の様に見え、  
千鶴子は力の入りづらくなってきている腕でそっと頭を抱きしめた。  
 
「あっ!」  
突然、乳房に走った痛みに千鶴子は思わず声を上げた。  
今度はその場所を舌が突つく。  
身体をほんの少し引くと、夫がこちらに目を向けた。  
何を言われた訳でもないが、千鶴子は一つ頷くとゆっくりと身体を落としていった。  
熱く猛った肉が、自分の中に入ってくる。  
膣壁が押し分けられているのが、生々しく感じられ、身体が埋められる快感と羞恥に  
千鶴子はまた頬を朱に染め、眉を顰めた。  
身体の中がきつく満たされると、二人はしばらく唇で互いをなぞり合った。  
なぞり合ううちに、身体が自然と揺れてくる。  
支える様に腰を抱いていた手が着物をたくし上げ、いつしか双丘を包み込み、  
千鶴子の身体は徐々に、そしていつしか激しく揺さぶられ、乱された。  
「あっ!ああッ!……ふ、んっ、んッ…んうぅっ!」  
夫の荒い息遣いが、自分が上げる声が、そして粘膜の擦れ合う卑猥な水音が耳に届く。  
必死で夫にしがみついては見たものの、身体にかかるだけの着物は確固たる拠り所にはならず、  
却って不安定さが、押し上げられる快感を促すだけ。  
耳に届く声や音も消える筈がなかった。  
ただ、その中に自分の名を呼ぶ夫の声も聞こえた気がして、千鶴子は何の躊躇いも無く意識を手放し、  
それを追う様に夫も腕の中で身体を震わせ、彼女の中へと熱を放った。  
 
気が付くと千鶴子はまだ夫の膝の上に居た。  
随分と心地よい夢の中に居た気がしたけれど、もしかしたらそれほど時間が経っていないのかもしれない。  
実際、馴染んだ古本の匂いに、まだ自分たちの汗と、それ以外の物の匂いも混じっている。  
ゆっくりと上下する夫の肩に頬を摺り寄せると、夫が口を開いた。  
「なんだ。起きたのか?起きたのなら、どいてくれても」  
「駄目。……もう少しだけこうして居させて下さいな」  
相変わらず拠り所なく夫の上にかかっている着物を握り締めてそう言うと、  
夫は何も言わずにまた黙った。  
きっとあの仏頂面を浮かべているのだろう。  
千鶴子はまたふふ、と小さく笑った。  
「何が可笑しいのだ」  
返ってきたのは想像していた通りの不機嫌な声。  
それでも自分の背を撫でる手は不機嫌ではない。  
「何も……可笑しい事などありません。嬉しいだけです」  
夫はもう何も言わなかった。  
代わりに外し時を逃した風鈴がリン、と鳴った。  
 
(了)  
 

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