――― なんでこんな奴と……  
 
夜明けの光を浴びて目を覚ました私は、同じベットでまだ眠っている彼を睨んだ。  
まだ夢の中だと思いたい……、そんな無駄な思いとは逆に、私の躰は満ち足りた感覚に包まれていた。  
初めての相手。誘うようにして自分から抱かれた。  
覇気が無く、後ろ向きな考え方をする軟弱な男、被害者意識の固まり……  
 
――― でも、わたしの好きなひと……  
 
私は、彼の髪に手で触れるとそのまま彼を見つめた。  
 
彼が「同族(なかま)」だと知ったのは少し前のこと。  
転校した高校で何かを感じた友達についていたら、偶然に見つけた仲間。  
いじめるのが楽しいからだと思っていた……無意識に私の目は彼を探し、彼の行く場所を聞いては待ち伏せた。  
どうしても気になってしまう思いに気付いたのは何時だろう……?  
仲間だと知る前からだったその思いは、知った後に更に強くなった気がした。  
そしてある日、私の中を流れる獣の血が騒ぎ、「彼(オス)」を求めるように躰が熱くなった。  
発情……私の中の本能が彼という雄を求め、彼の種を子宮が求めて疼いてくる。  
 
――― 認めたくない。こんな軟弱な奴を私が求めてるなんて………  
 
私の思いとは裏腹に、彼の姿を追い求める行為が日に日にエスカレートしていくのを自分でも感じていた。  
そんな時、彼を見続けているうちに、私は偶然見つけた。  
本当に気付きにくい、軟弱な優しさに隠れた本当の強さ……  
それが私の中にあった最後の抵抗を溶かしてしまったのだと思う。  
 
――― 私は彼に恋をしてしまった……  
 
普段の行動は変わらないけど、彼を見つけると胸が熱くなる。  
いじめるのも変わらない。けど、彼と一緒のいることが嬉しかった。  
でも、他の彼女が好きな彼……そのことが辛く心を突き刺した。  
 
――― いじめてばかりの意地悪な私を好きになってくれるとは思えない  
 
そんな思いのまま日々を過ごしていたが、月の満ちたある日、私は自分の気持ちが抑えられなくなった。  
偶然、一緒に暮らしている親戚が休みの間、泊まりで留守にするということが、私の心を突き動かした。  
「お願い、すぐに家に来て……」  
彼は私からの突然の電話に驚いたようだったが、何時もと違う私の様子に彼は息を切らせて走ってきてくれた。  
そんな彼を部屋に迎えると、私は彼の前で服を脱いだ。  
驚く彼に抱きつき、キスをするとそのままベットに押し倒した。  
彼は初め戸惑っていたが、求める私に答えるように抱き締め、そして私と一つになった。  
 
 
その日私は、彼の腕に抱かれたまま初めての夜を過ごした。  
 
 
「おはよ」  
彼が目を覚ましたのに気付いた私は、優しく笑いながらもワザと素っ気ない挨拶をした。  
昨夜のことを思い出し顔を真っ赤にする彼の唇にそっとキスをして、私は彼に伝えた。  
「私はあなたのことが好きよ」  
彼が誰が好きでも関係ない、私は彼を好きなのだから私を好きにさせてみせる。  
私は好きの言葉に全ての思いを載せ、再び彼にキスをした。  
 
 
終わり  
 
 

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