「すごいねーマチカ」  
「ほんと、ネコ平気になったんだ」  
すりよってきた一匹のネコをこともなげに抱き上げたあたしを、驚いた表情で見る友人達。  
あたし、皆川街香は重度のネコ嫌いだった。  
まあそれもごく最近までの話で、今では寄って来たネコを抱き上げるくらいは平気だ。  
好きな人のために始めた努力だったけど。  
その人にふられても、せっかく触れるまでになったのだから――  
あの時の努力を無駄にしたら、あの恋自体が『無駄な物』になるような気がした。  
あっけなく終わった恋。  
だけど、ただ『かわいそうなわたし』になりたくなくて、一つ成長した私になりたくて、  
ここまでがんばったんだな。  
「でもマチカ、文治はだめだよね、あいかわらず」  
「黒田?――あいつはネコじゃないでしょ?」  
「えーネコだよー、文治、ネコの時はかわいいじゃん」  
かわいい、か――。  
あたしは大袈裟に溜息をつく。  
半径三メートル以内でネコを見ると、ネコに変身してしまう黒田文治。  
うちの生物教師に生体実験され、特異体質になってしまった。  
ま、その生物教師がくだんのふられた相手だったりするんだけど。  
その黒田がどう言う訳か、あたしに触る事であっさりもとの姿にもどったりする。  
おかげで――というか、そのせいで平穏だったあたしの学校生活が  
かき乱されているのだ。  
 
「次、生物だね」  
友達の言葉にハッとなる。  
そういえば、初めて先生――小埜先生に会ったのも、こんな天気のいい日だった。  
「あ、マチカ、言うの忘れてたけど『ネコ』の文治があんた探してたみたいよ」  
「‥‥放っときゃ勝手に人間に戻るわよ」  
「そう言わないの、文治あんたの事けっこうたよりにしてんだから」  
「‥‥たよられたくない」  
黒田には、かっこわるいとこをいっぱい見られてる。  
あたしが失恋した時も――そういえばあんとき、いきなり黒田に抱きしめられたっけ‥‥  
あいつはいつも最悪のタイミングで現れるんだ。  
「あーなんかさ、あたし気分悪くなって来ちゃった‥‥」  
「大丈夫?マチカ」  
「――保健室で寝てくるよ‥‥」  
こういう気持ちがモヤモヤしたときは、保健室で寝るに限る。  
心配そうに見送る友達に手を振って、あたしは教室からでた。  
 
――今頃、先生わたしがいなくて心配とかしてくれてるだろうか。  
女子専用部屋のベットに寝そべりながら、そんな事ばかり考えてしまう。  
きっと、あたしがいないことすら気付かない事をわかっているのに。  
小埜先生は、ネコが好き――  
 
小埜先生はネコの文治が好き。  
だから、黒田がきらい――?  
嫌いじゃない。ただ、あたしは八つ当たりしてるだけ。  
失恋してからもう大分立つのに、いまだこんなにも先生の事が好きなんて。  
指先でそっと、胸の先端に触れてみる。  
「あ‥‥」  
物足りなくてブラの隙間からするりと指を入れる。  
これが、先生の指だったら――。にても似つかない自分の指を、  
あの長い指に見立て乳首を弄る。  
「は‥っんん‥‥」  
トビラ越しに保健医がいるのに――どうしようもなく声が漏れそう。  
アソコが熱い。  
歯止めがきかない自分のからだが、触って欲しいと叫んでいるみたいだ。  
勝手に、自分の意志を無視して  
本能に導かれるまま下着の中に指を入れる。  
もうすでにそこはトロリと淫らな蜜を流していた。  
「あっ‥‥ん‥‥はぁっ‥‥」  
この指はあたしの指じゃない。  
この指は先生の指――  
「っん‥‥あぁっ‥‥せ‥せんせ‥い‥‥」  
 
<クチュ‥クチュ‥‥>  
しっとりと濡れたヒダをかき分け、もうすでに硬くなった蕾にたどり着く。  
指で摘んで軽く擦りあわせるだけで、体全体がヒクついてきた。  
自分のいい所はわかっているから、このままあっさりイってしまいそう――  
「あっ‥‥はぁ‥‥」  
先生の顔が、優しく微笑んでいる。  
あたしに『愛してるよ』とささやきながら、いじってくれている――。  
「っん、あ‥せんせ‥イっちゃう‥‥あっ‥」  
きつく目を閉じ、イメージをくり返す――もうちょっと、もうちょっとで‥‥  
「――?」  
うっすら開けたあたしの目に、黒い物体が飛び込んで来た。  
その物体と目が合う。  
「な、なんで‥‥?」  
「ニャ‥‥」  
ブラの中に入っていた手をさっと抜くと、あたしはその黒い物体――  
ネコ姿の黒田を声にならない悲鳴をあげながら、はり飛ばした。  
まるで蒸気が上がるように白い物が立ちこめ、その中心に人物の影が現れ始める。  
「な、なんであんたが‥‥こんなとこに‥‥」  
「――わ、わりぃ‥‥」  
そうだ、黒田はいつも最悪のタイミングで現れるんだ。  
 
「や、昼寝してたらさ、やたら苦しそうな声が聞こえて‥‥あー具合悪いのかなって‥‥」  
隣のベットからシーツを引っ張り、腰に巻き付けながら黒田は言う。  
赤面し、あたしと目を合わせようとしない。  
まあこちらとしてもその方が助かるのだけど。  
「‥‥誰にも言わないから‥‥」  
「――あたりまえよ。あたりまえでしょ!だいたいなんであんたが、女子専用室で昼寝してる訳?  
 おおかたどっかの女子が入ってくるだろって思ってたんでしょ!」  
黒田が悪い――。  
あたしは押さえた声で、いら立ちをまくしたてた。  
保健医がいますぐにでも、あのドアを開けて入ってくるかも知れない――  
が、しばらく待ってみたところ、誰も入ってくる様子はなかった。  
「黒田――」  
「な、なに?」  
「あんたのやってるとこあたしに見せて」  
「は?」  
「あたしも見られたんだから‥‥おあいこでしょ――見せてよ」  
黒田は赤面したままあたしを睨み付ける。  
「――ティッシュがない」  
今度はあたしが言葉を失った。  
 
「お前ら女と違ってな、いっぱい出るんだよ!」  
なおもぶつぶつと「そんくらいわかんねーのか」などと言う。  
黒田――ほんとにする気?  
あたしがなおも言葉を失っていると、黒田はいきなりベットに上がって来た。  
「やってもいい――けど最後は皆川が受けろよな」  
「受ける?」  
「イきそうになったら口でくわえてくれって言ってんだ」  
うまれてこの方、男にこんな恥ずかしい言葉を言われたことは――ない。  
赤面するあたしに黒田は更に言う。  
「で、全部飲んでくれよな、そしたら何回でもやってやる」  
沈黙がうまれる。  
きっと黒田は『じゃあ、しなくていい』っていうあたしの言葉を待ってるに違いなかった。  
けれど――元来の勝ち気な性格が災いしたのか、自分の行為を見られた恥ずかしさか  
自分でも良く解らないけど――  
「いいよ」  
気がついたら承諾していた。  
その言葉に案の定、びっくりしているのは黒田だ。  
そして、あたしも待っていたんだと思う。  
『やっぱり無理、ごめん』という彼の言葉を。  
だけど、黒田は腰を覆っていたシーツをするりと外した――。  
 
おもわず、目をそらしてしまう。  
視界の端にチラチラと見えるそれは、昔見た父親のものなんかとは全然違う。  
「しろって言った癖に――」  
「わ、わかってるわよ‥‥どうでもいいからさっさと終わらせてよね」  
「おう‥‥。言っとくぞ?おれは皆川でなら一晩で4、5回は抜ける」  
「意味‥‥わかんない」  
「――さっきの約束忘れんなよ」  
そう言うと黒田は、自分の物を握りしめた。  
それを凝視出来なくて、だけど興味があって――何度も視線をさまよわせる。  
小刻みに身体を揺らしながら、片手で先端を中心にシゴキ上げている。  
半開きの口元からは短い呼吸が聞こえ、眉が苦しげに寄っていた。  
いつ――いつあたしの名前を呼ぶんだろう。それが気になってドキドキする。  
そしてそれは程なくやって来た。  
「あ‥‥やべ‥‥みながわ――」  
黒田の手があたしの頭を引き寄せる。  
あたしは髪を耳にかけて、目を閉じた。  
導かれるように彼の物をくわえると、その瞬間、ビクっと震えるソコから  
痙攣をともなって、熱い液体が飛び出す。  
口一杯のソレを、あたしはごくんと飲み干した。  
 
「にが‥‥」  
軽く咳き込む。  
「‥‥こんなまずいもん飲んだの‥‥生まれて初めてだわよ‥‥」  
「ごめん‥‥」  
照れた顔で黒田が呟く。  
不思議な事に、なんだかそれで全部許せそうな気になるのは、どうしてだろう。  
「いいよ、もう‥‥貴重な体験させてもらったし」  
「はは‥だよなー。あんなもんうまそうに飲むのって、AVの中だけなんだな」  
「――黒田‥‥AVとか見るんだ‥‥」  
「いっ、いや‥‥来過たちと‥‥」  
思い知らされる。  
それとも 気付かないフリしてたのか――黒田はれっきとした男だ。  
「皆川?」  
「‥‥なんでもない」  
小埜先生だって。  
きっと、黒田みたいにHなビデオみたり、さっきみたいなこと――するんだろうな。  
それはあたしとじゃないけれど。  
そんなことを考えてたら、涙が出てきた。  
「あの‥‥ごめん、な?」  
「黒田のせいじゃないよ‥‥ずっとばかだったあたしが悲しいだけ」  
その時、黒田の人さし指が、あたしの下目蓋にふれた。  
「皆川‥‥キスしていい?」  
 
「――やだって言ってもしそうよね」  
すっかり体を乗り出して、後は顔を近付けるだけの状態なら、そうだろう。  
「なんかもう、恐いもん無くなっちまった」  
「――いいの?口の中さっきの残ってるよ?」  
「――まあ、自分のだし‥‥」  
そう言うと、黒田は顔を近付けてきた。ずっと、夢見てたのは――小埜先生とのキス。  
「っん‥‥」  
相手が違っても、想像より甘くなくても、こんなふうにあったかい。  
「あたし、まだ小埜先生がすきなんだよ?」  
「皆川が、誰を好きかなんて関係ないんだ。俺がしたいから――だから、もっぺんさして」  
あたしは目を閉じた。  
さっきより激しいキス。唇の間を割って、黒田の舌が入ってくる。  
口の中をかき回されて、さっきまで残っていた黒田の精液が、唾液と混じりあった。  
舌と舌をからめて、吸って――たまっていく唾液をあたしの喉がごくりと音をたてて飲み込んでいく。  
体の力が抜けて、ベットに沈み込んだ。  
そして黒田の唇が、首筋を這う。  
「く、黒田?」  
「――おまえさっき途中みたいだったし‥‥」  
「でも‥‥ちょっと!黒田!」  
「おっきい声出すなって、保健医に聞こえるだろ?」  
黒田の照れた顔が眩しかった。  
それは、もしあたしが漁師の娘だったら  
ウロコの一枚くらいあげてもいいかな、なんて思ったりするほどに。  
 
■■■おわり■■■  

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