「来月の誕生日に何が欲しい?」
夏休みも目前に近付いた7月の某日。
並んで歩く和服姿の青年と、セーラー服の少女。
「御堂君覚えていてくれたんだ」
ちょっと気が早いけどね、と付け加えて葉月は笑った。
長い髪をツインテールにしているなかなかの美少女だ。
「16才の誕生日は特別だからね」
陰鬱ともとれるが、整った涼しげな顔だちの青年は、そう言うと僅かに微笑した。
元来表情が乏しく、人前ではポーカーフェイスの彼も、葉月にだけはいろんな表情を見せる。
「特別?」
「そう、特別」
「ふうん‥‥そういうものなんだ」
納得した訳ではない。ただ、この全幅の信頼を寄せる彼がそう言うのなら、きっとそうなんだろうな、
と思うだけだ。
「御堂君は28才だよね」
「うん、それがどうしたの?」
「――友達に不審な二人連れって言われちゃった」
「ふうん――」
時たま葉月の通う学校まで彼女を迎えにくる和服姿の男性。
恋人と呼ぶには年の離れ過ぎたこの二人の事は、同級生たちの話題になっていた。
ここまでの騒ぎになれば、教師からの呼び出しもあり得る事なのだが、2つの理由を持って、特にとが
められる事はなかった。
1つ、彼、御堂維太郎は葉月の通う『彼岸花高校』の卒業生であり、なおかつ超のつく有名人であった事。
もう1つ、彼女、新名葉月の兄、新名皐月も同じく有名人であった事。
『御堂が新名の妹を迎えに来た』
その一言で済まされてしまうのだ。
「援助交際中のカップルに見えない事もないか」
「えぇー?そんな事言う?――でも、そう思ってる子もいるかも知れないな」
そう言うと葉月はセーラー服の胸元から銀色に光るペンダントを取り出した。
「これ――いつもしてるの」
「昔あげたやつだね」
「御堂君にもらったって言ったら友達びっくりしてたよ。――保育園の時って言ったら2度びっくりし
てたけどね」
クスクス笑いながら葉月はペンダントを戻した。
「あの時の段ボールケーキ、俺今でも持ってるよ」
「うそっ!やだ、捨ててよ〜恥ずかしいなぁ」
あげたと言う事実は覚えてる。どんな形だったとか、そんな事は覚えていないけれど。
彼が今も大切にとっておいてくれたと言う事が、葉月にとって嬉しかった。
「それ、見に行ってもいい?」
「今から家くるの?」
「――だめかなぁ」
「ううん、いいよ」
霊能力者――それが彼の肩書きである。
『見える・さわれる・呼べる・祓える・話もできる』
幼少の砌よりこういった能力に長けていた彼は、高校を卒業後『職業霊能者』として日々の糧をえている。
その高い能力に、今日も霊障で悩む人々が神社に訪れていた。
「お客さん、いっぱいだね」
「みたいだね」
「わたし‥‥帰った方がいい?」
約束も無しに、突然家に押し掛けたのは彼女だ。しゅんと落ち込んだ表情で、葉月は御堂に言った。
しばらく目を閉じ思案顔をしていた御堂が、そのままの表情でぽつりと言う。
「――来てる内の半分は自己暗示ってとこだな‥‥他は、と。――ふん、かなりの低級霊か‥‥あれく
らいなら親父達で何とかするだろう」
「‥‥そんな事まで解るの?」
「解る――。親父達に話を付けてくるから、先入ってて」
「うん」
御堂君はすごいな――神社に向かって歩いていく彼の背中を見ながら、葉月はひとり呟いた。
たくさんの人たちが御堂を頼ってやってくる。
そんな人たちを放って自分を優先してくれている、その事実が少し誇らしかった。
(御堂君の特別になりたい)
彼は子供の時にかわしたあの約束を、覚えてくれているだろうか――
消えていく御堂の背中を見送りながら、彼女はそんな事を考えていた。
綺麗に片付けられている部屋。
片付いている、と言うよりはあまりモノがないと言う方が正しいか。
写経用の文机が彼らしい。
「――?」
誰かがこっちを見ているような気がする。
気のせいかと思い直すより早く、部屋全体が濃い霧に包まれ、何か得体の知れない物が動き回った――
「ひっ‥‥」
何かが――彼女の足を掴んだ――!
全身に悪寒が広がり、一筋こぼれた汗が気化し熱を奪う。
「みっ‥みっ‥みっ‥(御堂君!)」
余りの恐怖で舌がうまく回らない。時間が物凄くゆっくり流れている錯角に陥って、気を失いかけた時、
ふっと部屋の空気が和んだ。
「大丈夫?」
「あ‥あ、み、御堂君――」
恐怖に強ばった身体が溶けていくようだ。御堂が何か言っている声が遠くに聞こえるが、かまわず葉月
は彼に縋り付いた。
「葉月ちゃん?」
「う‥‥こ‥‥恐かった」
ガクガクと震える身体を、ひたすら御堂に寄せ、何度も恐かったと呟く。御堂は葉月の頭を撫でた。
彼女の身体の震えが止まるまで――
「ごめんね、いつもはちゃんと浄化しておくんだけど――」
「‥‥浄化?」
「ほら此処ってあの類いのもの多いから。今日は急で忘れてたんだ」
「‥‥もう、いない?」
「いないよ」
大きく息を吐いて御堂から身体を起こす葉月を、名残惜しそうに眺める。
小さく――柔らかな身体。もう彼女は子供ではない。
「御堂君はすごいね――お兄ちゃんはむちゃくちゃに言ってるけど」
「ま、あいつはね。新名元気にしてる?」
「うん、すごい元気。双子ちゃん追っ掛けまわしてるよ。お義姉さんとも仲いいし‥‥」
「そっか、維積も元気か――」
葉月の義理の姉、維積は御堂の妹である。
「御堂君もっと家に来たらいいのに――双子ちゃんが生まれてからあんまり来なくなったよね」
「取り込んでるからな。それに維積がブラックな時は子守りさせられるし」
――けれど、もっと切実な訳があったりする。
リビングに身の置きどころがない時は、葉月の部屋に連れて行かれると言う事が、彼にとって大きな問
題だった。
小さな部屋に机や本棚がある。――ベットも。
狭い空間の中理性を無くしそうで、リビングなんかより、もっと身の置きどころがないのだ。
今いる自分の広い部屋の中には、そう言った物を連想させるアイテムはない。
「ブラックの時のお義姉さんてすごいんだよ?」
「なにが?」
「ふだん恥ずかしがり屋なんだけどね、あ、これ、内緒だよ?あのね、お兄ちゃんに自分からキスとか
するの」
少し顔を赤くして、結んだ唇に指を1本たてる。『しー』だからね、と。
「へえ、見た事あるんだ」
「うん、何回も‥‥」
この年頃にありがちな、何でも知ってみたいと言う好奇心かも知れない。
たまたま一番身近にいる男性で、かつ仄かに好意を寄せている人物――
「あ、あのね‥‥わたし‥‥御堂君と、キス‥‥してみたい‥‥」
こんな言葉が口から出たとしても、なんら不思議はないのだ。そしてそれが御堂の理性を奪ったとしても。
「葉月ちゃん?」
「だ、だめかなぁ‥‥」
「だめじゃないけど――葉月ちゃんの思ってるキスと、俺が思ってるキスは――違う物かも知れないよ?
それでもいい?」
頭のすみで、キスに種類があるの?と、考えたりもするのだが、『御堂とキスがしたい』という思考が
大部分を覆ってしまう。すべてはしてみてから――葉月は目を閉じた。
御堂の手がゆっくりと葉月の両頬に掛かる。角度を少し上に向けると、彼は唇を落とした。
柔らかな感覚。
それを楽しむかのように、何度も角度を変えながら唇をついばむ。
高揚した葉月の唇が息苦しそうにうっすらと開かれた。
「っん!」
開かれたわずかな隙間から、御堂の舌が侵入する。その初めての感覚に戸惑う葉月の身体がビクッと震えた。
口腔をかき回されるような激しい舌使い。おびえるように小さくなった葉月の舌を御堂の舌が絡め取る。
頬に添えられていた手がするりと滑り、彼女の耳を優しく愛撫した。
「はっ‥‥ん‥‥」
頭に血が昇って、何も考えられない。ただ、じわじわと甘い痺れのようなものが広がっていく。
今や葉月は御堂のされるがまま、力の抜けた身体をなんとか支えるだけで精一杯だ。
ゆっくり銀の糸を引いて唇が離される。
もう自分で身体を支える事すらままならない。葉月は御堂の胸に倒れ込んだ。
「どう?」
「‥‥‥」
「よかった?」
「‥‥‥うん」
自分の身体を御堂に預けたまま、葉月はそう一言だけ頷いた。
「もっとする?」
「‥‥うん‥‥」
そうとは知らず、御堂の手の内ですっかり性感を高められていた葉月は、素直に頷いた。
もう一度御堂の唇が葉月の唇に触れる。
先程とは違い、葉月は侵入してくる舌に自分の舌を自然に絡めた。
背中にまわされた手が、体中を這って行く。
彼女は自分の身体に溢れてくる甘い痺れに戸惑いながらも、その先を知りたくてたまらなかった。
セーラー服の裾から御堂の手が入ってくる。
――ひやりとした手が火照る身体に気持ちいい。
「さわるよ」
御堂はブラジャーの中に手を入れた。
その中におさまっている膨らみをゆっくり揉みしだく。
「っん‥‥はっ‥」
「気持ち良い?」
「‥‥うん」
葉月の頷きを聞き、僅かに微笑む。
「じゃあ、これはどうかな?」
御堂は乳房の頂きを軽く摘んだ。
「っん!あっ‥!」
ビクンッと葉月の身体が反応する。
「服――邪魔だよね。脱ごうか?」
もうすでに、彼女が嫌がらない事を確信している御堂は、返事を待つ事もせず、セーラー服をたくしあげた。
慣れた手付きでブラジャーのホックを外し、脱がせた服の上に無造作に放り投げる。
そのまま上半身裸の葉月をゆっくり押し倒した。
触れていない方の乳房もその先端を硬くとがらせ、葉月の呼吸に合わせて上下している。
両手で優しく円を描きながら乳房を揉み込み、乳首を口に含む――と、葉月が甘い声を出した。
「あぁんっっ‥‥」
御堂は彼女の反応を楽しむかのように、激しく乳首を攻めはじめた。
両手ですくい上げるように乳房を中央に寄せ、代わる代わる先端を吸い上げ、舐め転がす。
みだらな水音が、しっかり目を閉じた葉月に『舐められている』事を確信させ、いやが上にも高まる官
能に、喘ぎが激しくなった。
「下もしてあげようか?」
「あ‥‥でも‥‥恥ずかしい‥‥」
「俺も脱ぐから――」
「う‥うん‥‥」
シュルっと滑りのいい音を立て、御堂の帯が外される。ずれた和服の襟から僅かに肩が覗いた。
次々とはだけられて行く彼の身体を、 熱に浮かされたような葉月の瞳が、うっとりと眺めている。
(お兄ちゃんとは違う)
一回りも年の離れた兄。
幼い頃から男の身体を見なれていたはずなのに。
「きれい‥‥」
いくぶん白めの肌、しなやかに引き締まり、無駄な肉もない。
と、そんな御堂の姿体を眺めていた葉月の目が驚きに変わる。
見た事がないとは言わないが、その状態になっている物は、葉月を驚愕させるに十分だ。
御堂の身体の中心でそれが剛直にそそり立っていた。
「きゃっ」
小さな悲鳴を上げ、彼女は両手で目を覆った。
「どうしたの?」
「‥‥だって‥‥」
「――で、どうする?葉月ちゃん自分で脱げる?」
彼女はまだ目を覆ったままだ。
「じゃあ、脱がせてあげるね」
もう、頷くしかなかった。
御堂の手が葉月のスカートのホックに掛かる。チャックを下げる『ジー』と言う音が、広い部屋に響く。
するりとスカートが脱がされ、その手が小さな布に触れた時「待って」と、声が上がった。
「恥ずかしくなんかないよ」
「でも‥‥」
「大丈夫、俺も裸だし」
「‥‥」
男が裸になるのと、女が裸になるのとでは、天と地ほどの差があるにも関わらず、余りにも普段の現実
と懸け離れた行為の後で痺れている頭は、思考を鈍らせる。
葉月は顔を覆ったまま、コクンと頷いた。
身体を覆っていた全てを脱がされ、生まれたままの姿になった葉月を御堂は眺める。
羞恥に上気した身体は、うっすらと赤みがさし、唯一銀色をしたペンダントが光った。
きつく閉じられた膝を、力で開かせ顔を埋める。
「やっ!」
頭を両太ももで強く挟まれたまま、御堂は舌を這わせた。
柔らかな恥毛をかき分け、筋にそって丁寧に舐め上げる。指でヒダを押し広げながら、敏感な肉芽を力
を込めた舌先でくじると、葉月の身体が弓なりに反り嬌声が上がった。
「やあぁん!‥‥あぁっ‥‥っんん」
御堂を挟み込んでいた太股から徐々に力が抜け、足が開き出す。
すっかり露になった葉月の秘所は、蜜を溢れさせながらひくついていた。
「いやらしいね、葉月ちゃんのここは」
指をあてがい葉月の蜜を絡めとると、御堂はそれを葉月に差し出した。
ぬらぬらとしたその透明な分泌物が、自分の体内から出された物であると言う事が彼女の羞恥を煽った。
目の前で御堂がそれを舐めとる。
「いや‥‥御堂君‥‥」
「どうして?おいしいよ?」
いやいやをするように葉月はまた、両手で顔を覆った。
そんな彼女に苦笑しながら、御堂は秘所への攻めを再開する。
しっとりと濡れそぼったそこに指をゆっくり挿入し、内壁の蜜をかき出すように、抜き差しをくり返す。
初めての異物感に葉月が身体を捩った。
「っん‥‥あ‥‥」
「フフ――気持ちいいんだね。もう1本あげる」
指が増やされ、圧迫感とともに葉月の身体の中に恍惚が生まれた。
じわじわと昇ってくるその感情は、指の動きが激しくなると共に増していき、留まる事を知らない。
「はっ‥あぁん‥み、御堂君‥‥わたし‥もう‥」
葉月の内壁を掻き回す指を速め、もう片方の指で肉芽を摘み擦る。
敏感なところを同時に攻められた葉月は、ぶるぶるっと震えた。
「あぁぁっ!‥あ‥ん‥‥はぁ‥‥」
ぐったりと放心する葉月の耳元に唇を寄せる。
「イっちゃった?」
「‥‥わたし‥‥こんなの、初めて‥‥」
「そう――でも葉月ちゃん、まだ足りないでしょ?」
その言葉の意味が葉月には解った。
ぼんやりと『ああ、わたしにもこういう時が来たんだな』――と。
それに対する恐怖心が大きく頭をもたげるが、こんなにも高められた身体が『したい』と疼く。
「いっぱい濡れてるから、きっと痛くないよ」
「――そう‥‥かな」
「うん、葉月ちゃんの中に入りたいんだ」
もう、あがらえない――。
思考を手放すように、葉月はそっと目を閉じた。
「じゃ、葉月ちゃん力抜いててね」
閉じた瞳をOKの合図にして、御堂は己の先端を葉月の蜜に絡め、ゆっくりと挿入を始めた。
「う‥‥い、痛‥‥痛い‥‥」
ほんの入り口に差し掛かっただけで、肉のひきつれるような痛みが葉月を襲う。
「大丈夫、初めの内だけだから――」
「‥‥ほ、ほんとに?」
「もうちょっと入ったらマシになるからね」
未知なる経験に、黙って身を任せるしかない葉月は、苦痛に歪む唇で「うん」と頷いた。
ただひたすら『御堂君がそう言うなら、きっとそうなんだ』――と、耐える。
ねじ込むように挿入される痛みが、絶え間なく襲った。
「もうちょっと力抜いて」
「いっ‥‥痛い、痛いよ‥!」
(辛そうだけど――こればっかりはね)
痛みを早く取るには、さっさと最後まで挿入するしかない。
心の中で『ごめんね』と、呟き、狭く締め付ける葉月の中を御堂は貫いた。
「あうぅ‥‥!」
「――がんばったね、全部入ったよ」
脈の動きに合わせ、繋がった部分がズキンズキンと鼓動する。
二人が一つになった証だった。
「葉月ちゃんの中は温ったかくて、気持ちがいいな――葉月ちゃんは?」
「――痛い‥‥」
涙で一杯になった瞳で、葉月はぽつりと言う。
どうにもそられる顔だな――そんな事を思いながら御堂はぎゅっと彼女を抱き締めた。
「まだ動かないから、こうしていようね」
脈打つように痛んだ部分が、ゆっくり緩和されていく。
緩んでいく表情をみとったのか、御堂は「そろそろ動くよ」と、抱き締めていた腕を外した。
腰をゆっくりスライドさせ、抜き差しをくり返す。
その動きに、初めこそ顔をしかめ呻いていた葉月だったが、身体は不思議に変化していく。
苦痛が快感に変わっていく――
貪欲にもっといい所を探すように、自然と葉月の腰が動いた。
「葉月ちゃんって結構いやらしんだ」
「そんな‥‥はぁっ‥あっ‥」
そんな事はない――と言いかけた唇から、漏れ出るのは官能に浮かされた喘ぎだけだ。
一度昇りつめた身体は、容易く火がつく。
キュッキュと締め付けが増してくる感覚に、御堂は葉月の絶頂が近付いて来るのが解った。
「葉月ちゃん、イきそう?」
「あ‥‥み、御堂君‥‥あ‥もう‥‥」
導くように腰の動きを速め、激しく打ち付ける。
短い喘ぎを呼吸のようにくり返す葉月が、大きく仰け反った。
悲鳴のような声を上げ、びくっびくっと痙攣をくり返す葉月の白い腹部には――
――御堂の放った飛沫が散っていた。
古びてはいるが、埃一つなく、それはしまってあった。
「なつかしいな‥‥」
言われなければ何かのオブジェの様な――ずっと昔、葉月が作った段ボールのケーキだ。
「葉月ちゃんのくれた物はなんでも残してあるよ」
「――なんでも?」
「物だけじゃなくて、言葉とか思い出とかもね」
「‥‥うん」
彼は、覚えているだろうか?あの日の約束を。
葉月はおずおずと切り出した。
「あのね‥‥御堂君覚えてるかなぁ‥‥あの、その‥‥」
うまく言葉が出てこない。『なんのこと?』――だとか、そんな台詞を想像する。
「――するよ?葉月ちゃんをお嫁さんに」
ふいに言われた言葉に彼女は昔を思い出す。
『葉月ちゃん大きくなったらなんになるの?』
『みどうくんのオヨメさん!』
『ほんと?約束だよ』
「じゃあ‥‥誕生日に指輪かってね?」
「――いいよ」
大好きな人の腕の中で、いろんな思いが駆け巡る。彼女の兄の顔も。
今日あった事、お兄ちゃんには――おそろしくて言えない――と。 ■おわり■