通い慣れた道。  
通い慣れた家。  
通い慣れた部屋。  
もう何度目になるだろう…。旧・藪坂秀、現・藪坂くまの部屋。  
俺、瑠璃門晧一はだらしなく臍を出したまま眠りこんでいる彼女を見下ろしていた。  
彼女…いや正確に呼べば彼、である。  
4年前の秋、理科室の掃除当番をしていた藪坂は複数の薬品をかぶってしまった。  
ふざけていて薬品の棚に激突したのだ。  
その後彼の身体にとんでもない変化が起こることになる。  
俺も含めて誰にも事情を知らせないまま転校して行った藪坂は、去年の春藪坂くまという名で、しかも 
「女の身体」で!俺と同じクラスに転入して来たのである。  
その事を知っているのは藪坂の身内を除けば二人だけ。  
一人は俺、もう一人は俺の彼女でもある麻野宵子だ。  
「まったくだらしないなぁ…」  
始めのうちこそは藪坂の無防備な姿にいちいち動悸を激しくしていた俺だが、もうそろそろ1年5ヶ月 
と言う時の流れにすっかり免疫が付いてしまった。  
もとが男なだけに警戒心も羞恥心もなく、どれだけやきもきさせられて来たか…。  
「おいっ!起きろよ」  
 
「ん…」  
藪坂がうっすらと目を開ける。  
「まったく、いつものことながら人呼びつけといて寝こけんな!」  
「んぁ〜。なんか今日妙に風が心地よくってさあ」  
「…まあな。久々に過ごしやすい日だよな」  
9月23日。秋分の日である。暦の上では今日から秋、こう言った清清しい日が…  
「…って、そうじゃなくって!玄関開いてたぞ」  
「ふうん…カギ締めといてくれた?」  
「おう、全く不用心だな。で、おばさんは?買いもんか?」  
「おかあ?親父と親戚の法事に行った」  
「ふーん…。ヤブサカ行かなかったんだ」  
「たりめーだろ?見せもんにされんのは真っ平だからな」  
なるほど…。そう言われればそうだ。事情を知ってるとはいえ彼女である彼をみんな好奇の目で見るだろう。  
「それにルリカドと約束してたし…」  
「のわりには寝こけてたくせに」  
「言うなって」  
「で、相談ってのは?」  
先週妙に神妙な面持ちで『相談したい事があるんだ』と、言われ今日に至る。  
俺が返事を促すと少し言いにくそうに藪坂が口を開いた。  
 
「…あのさぁ。…俺ってこんな身体じゃん?将来の事とか考えるとさ、いろいろ不安って言うか…なぁ、 
俺って本当に完全な女なんかなぁ…。ルリカド俺って妊娠とかすると思う?」  
「ヤ〜ブ〜サ〜カ〜?!」  
こいつのこういう所にはすっかり慣れっこになった(ハズ)の俺ではあるが、なんつー事を…。  
「冗談は…」  
「俺が冗談でこういう事言ってると思ってんの?…ルリカドすっかり男っぽくなったよな…俺なんか中 
2のまんまほとんど背も伸びなくなっちまった…身体もこんな華奢だし…」  
俺にくるりと背を向ける。  
「18才の青春、男として過ごしたかったな」  
「…」  
「もう女としてでしか生きる道ないのかな」  
「……」  
「将来に不安感じてる事ルリカドなら分かってくれるって思ってたのにな」  
「…悪かった…乗るよ。相談に」  
くるりと振り返って藪坂が満面の笑顔で笑っている。  
「そう言ってくれると思ってた!」  
…ま、またやられた…藪坂の十八番。  
「いや、いつも簡単に引っかかってくれて嬉しいよ。変わらないな」  
 
グラスの麦茶の氷が解けて、からんっ…と音を立てた。  
あのやり取りから10分…。二人分の麦茶を持って来た藪坂がとんでもない提案を持ちかけて来た。  
「はぁ?」  
「だ・か・ら。俺の事抱いてくれって言ってんだけど」  
「…?」  
「簡単な事だろ?いつも麻野にしてる事を俺にすりゃいいんだから」  
…さすがに…さすがに今度だけは赤面もんだ。どこをどう考えりゃそんな台詞が出てくる?  
「俺が正体明かしてまでお前の恋路を助けてやった恩を返そうとか思わないのか?」  
「それとこれとは話が別だろ?!それに前はたとえ俺でも『彼氏距離』に耐えられないって…」  
一年ちょっと前の話だ。  
あの時も女として前向きに生きると言い放った藪坂。俺は鼻先がくっつくほど藪坂の顔に自分の顔を近 
付けて『お前この彼氏キョリに耐えられるか?』と聞いた。  
「鳥肌立ててたくせに」  
「…今は平気。実際自分でも驚いてんだ…俺ルリカドの事男として意識してる。一緒にいてドキドキと 
かすっし…ルリカドはそんなふうに俺の事意識したりとかしない?」  
「ヤブサカ…俺の事からかってる?」  
「…からかってない…」  
突然伸びてくる細い手。  
藪坂は俺の首に腕をまわすと唇を押し付けて来た。  
そのとき何かが切れるような音がして、気が付くと俺はベットに藪坂を組み敷いていた。  
 
「もうさ、戻れないって思うんだ。それなら女の幸せってやつを味わってみたいし…俺ルリカドしかい 
ないし…女言葉で話そうか?」  
「いや…そんままでいいよ。…ヤブサカ軽く口開けて」  
うっすらと開いた唇に舌を入れる。ビクリと藪坂の身体が反応した。  
「んっ…」  
歯列を割って舌を何度も絡め取ると藪坂も同じように返して来た。  
唇が離れる…。上気した藪坂の顔と濡れた唇。  
「ルリカド…」  
「うん…」  
首筋を唇でなぞりつつ、Tシャツの上からそっと膨らみに手を当てる。相変わらず家の中ではノーブラだ。 
あっさりの乳房の頂きを見つけゆっくり指で摩ると藪坂が呻いた。  
「はぁっ…なっ…女ってみんな…こんな気持ちいい事…してんの?」  
「さぁ…どうかな…ハイ、バンザイして」  
Tシャツの裾を掴んで一気に脱がすと、日に晒されていない真っ白な胸があらわれた。色素が薄めの藪 
坂の身体。綺麗なピンク色をした乳首に変に感動する。  
「俺にも脱がさせろ」  
「はいはい」  
一つ一つシャツのボタンを外して行く小さく細い指。少し寄り目になりつつ真剣な顔。外しにくさにぶ 
つぶつ文句を言っている藪坂が可笑しいほど可愛らしい。  
すべてのボタンを外し肩からするりとシャツが脱がされた。  
「はい、ルリカドもバンザーイ」  
シャツの下のランニングを引っこ抜いたはずみに俺の眼鏡がベット下に転がった。  
 
「さっきさぁ…たまにガッツンガッツン眼鏡当たってちょっと痛かった」  
「…わりぃ。夢中だったし…」  
「夢中ねぇ…さてはルリカド俺の身体に溺れたな?」  
「ハァ?まだほんの障りで何言ってんだか」  
そう言いながらむき出しの乳房をすくいあげるように掴む。  
「わっ…わわ…」  
藪坂の背中に手をまわし、そっとベットに横たえた。  
Tシャツ越しでは分からなかった柔らかな胸。軽く乳首を摘むと藪坂が甘い声を漏らした。  
「あっ…ん…」  
藪坂が口に手を当てる。  
「ルリカド…俺、女みたいな声出しちまった…?」  
「うん…いい声」  
「そんなん言うなよ…」  
「もうさ、あんまりそう言う事気にすんな。自然と出ちゃうもんだろ」  
そう言って俺は行為を再開した。  
わざと大きな音を出して乳首を舌で攻める。  
ちゅっ…くちゅっ…  
「あっ!…すごっ…なにこ…れ…ああっ…!」  
 
ショートパンツの中に手をつっこみ下着の上から指でなぞるとそこはすっかり湿っていた。  
「脱がすぞ…」  
「…うん…」  
下着ごとショートパンツに手をかけ一気に脱がす。ぴたりと閉じられた膝に手を駆け足を開かせる。 
身体を割り込ませた所で藪坂が不安げな声を出した。  
「も、もう入れるの?」  
「まさか。それとももう欲しいのか?」  
「ばっ、ばかか!心の準備ってのがあるだろ?!聞いてみただけだっ!」  
もうけっこうヤバくて、本音を言えば早く入れてしまいたい。  
そう言えば麻野とする時はこのくらいの時間でさっさと入れちゃってたような気がする。いや…よそう 
麻野の事を考えるのは。  
「ヤブサカ初めてだし…ま、もうちょっとアレコレしてから」  
「アレコレ…って」  
「まぁこんな事とか…」  
しゃべりつつも藪坂のあそこに手を伸ばす。  
濡れそぼった割れ目にそって指を動かし、一番感じるであろう蕾にあてがった。  
嬲るように指を動かしながらもう片方の手はヒダをまさぐる。  
「あぁんっ…!あっ…!は…んんっ…やっ…!あんっ…!」  
ヒダをまさぐっていた指を藪坂の中に入れ、ゆっくり抜き差しをくり返した。  
「ルリカド…俺…どう…なっちゃうの…?こ…こわいよ…」  
 
カチャカチャと音を立て、俺はベルトを外し準備を始めた。  
もう洒落にならない状態になっている…。入れた瞬間に出ちゃったりせんだろうな…  
「ヤブサカ…そろそろ…」  
「う…うん…」  
片手を藪坂の腰に当て、もう片手を自分の物に添えてぐっと前のめりに体重を掛ける。……。  
「ヤブサカ…もっと力抜けって…」  
「や…けど…も…無理!絶対無理!もう入れなくていい!」  
「ばかかぁ?お前はよくてもおりゃそうはいかねーんだよっ!」  
「…な事言ったって…」  
「ほら、こうフーってしろ息を、長くな」  
「ふ、ふうぅ?」  
その瞬間ふっと薮坂の力が抜けた。同じ手は二度と食ってはくれないだろう。  
絶妙のタイミングで一気に薮坂を貫いた。  
「いっ…痛て〜〜〜〜!!!!」  
涙目になった薮坂が俺を睨む。それがどうにもこうにも可愛らしくてぎゅっと抱き締めてしまった。 
優しく髪を撫でると薮坂が俺の身体に腕を回し呟いた。  
「ま、女ってやつも悪くはないよな…」と。  
 
 
 
その後の事は余りにも怒濤の連続だった。  
あっさり薮坂の中で果ててしまい、それが元でと言うかなんと言うか…。  
『7月の始めにはお前父ちゃんだぜ』  
と言う薮坂の照れた顔。  
麻野と自分の両親にぶっ飛ばされ、平謝りしに行った薮坂の両親はなんだか嬉しそうで…。  
お前は『どこぞのミステリーおたくの少女か!』と、つっこみたくなるほどお腹が目立たなかった薮坂 
は、無事卒業式に出られた。  
俺はと言えば『産まれてくる子供のためにも薮坂の男喋りを治さねば』なんて事を考えつつ大学に通い、 
たまに会う元同級生達にからかわれたり、祝福されたりそんな日々だ。  
そして思う。  
薮坂…やっぱりお前は答えを持っていたんだな、と。  
 
        <お終い>  

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